*A部門入選作発表*


当季雑詠=全87投句(入選63句)

【特選】

一席
●春昼のかばの欠伸を待つあくび=雪絵


◎紅、ぼ○し、香、朱、ス△ま、秀、葱、修、メ、水=20点
(紅:のどかで、楽しいお句。一ひねりあるのがお上手ですね。 ぼ:これぞスローライフ、大らかでいいね! し:かばの欠伸はなかなか見れないのかな。情景がホントに面白い! 香:あくびのリフレインか面白い。 朱:稔典さんのカバを彷彿とさせて如何にも気怠い春の日射しを感じました。 ま:下五まできて、なるほど!楽しいお句です。 秀:俳味たっぷり。 葱:「かばの欠伸」までは稔典さんだですが、下五で上手く本歌取りです! 修:二つのあくび、いい感じ。 水:のどかで平和な春昼。)


二席
●春光の皿をはみ出すオムライス=朱河


◎入、秋、智○砂、久△や、清、紅、水、裕、ぼ=19点
(入:至福の春光とオムライスの黄金期でしょう。 秋:ぷっくり膨らんだオムライスが目に浮かびます。美味しそう。 智:中七下五、活き活きと春の喜びに溢れている。 や:しばし眺めておもむろに喰う。 清一:卵を三個ほど使ったらこんなオムライスになるね。 紅:大きなおいしそうなオムライスが目に浮かびます。 水:美味しそう過ぎて眩しい。 裕:母親の愛情一杯のオムライス。春光が効いています。 ぼ:おお、うまそう!)

<BR> 三席
●春の雪ただ唇が触れただけ=葱男


◎白、メ、喋○香、秋△砂=14点
(白:思い出。あの時も雪が降っていた。 香:意味深で、ロマンチック! 秋:触れただけですぐ溶けてしまう淡雪の描写ですが、中七にちょっとエロスも感じます。)


三席
●遺言は二行で終ひヒヤシンス=朱河


◎香○ま、久、資、ぼ△十、清、紅=14点
(香:遺言を書こうとしたが、いろいろ迷って短くなってしまう。そんなものですかね。 ま:潔くさわやかでヒヤシンスもきいています。かくありたい。 ぼ:いいね、この潔さ。私もそうしよう。 十:「皆で仲良く。財産は均等に」あたりでしょうか。 清一:すくっと立つ風信子のような簡潔な遺言。 資:揉めようのない簡単な遺言。妙にヒヤシンスの存在が効いていると思う。 紅:どんな事を書いたのか気になります。)


【入選】

●紅梅やぴしと嵌めこむ空の青=十志夫
◎し、ス○秀△始、喋、智=11点
(し:石の象嵌細工のように澄んだ青い空をぴしと嵌めこむというイメージが素敵だと思います。 秀:写生の句。「嵌めこむ」が決め手です。 智:中七素晴らしい。)

●猫の恋路地の時空のゆがみたる=水音
◎清、ラ○メ△や、白、裕=11点
(清一:恋猫同士の激しい叫び時空のゆがみは満更大袈裟ではない。 ラ:「猫の恋」ならば、確かに歪むかも! や:路地空間ならではの音響効果。 白:不思議な感覚ですね。 裕:恋猫はかなり遠くまで行くらしい感じがよく出てます。)

●春の星万華鏡へと紛れ込む=まさこ
○清、水、裕、ス△葱、し、香=11点
(清一:春の星は大曲線と呼ばれ万華鏡に通じるものがある。 裕:なんともロマンチック。 葱:美しい。 し:万華鏡へと紛れ込む星なんて素敵なイメージ。メルヘンチックで好きです。 水:綺麗)

●鞦韆の影くっきりと閉園す=智雪
◎秀、葱、朱△十=10点
(秀:子供たちがあれほど喜んだぶらんこの影が閉園された保育園、あるいは幼稚園の庭にくっきり。とても切ない景色。 葱:永遠に揺れないブランコに子供たちの悲しみがあり、社会に対する不安と不条理がある。コロナの真実の正体とはなんだ? 朱:ぶらんこの影がさみしさの塊のように感じられて映像喚起力のある一句だと思います。 十:中7が秀逸。ふらここの揺れていない様子が伝わる。)

●女形の指の先まで春めきぬ=裕
○や、葱、メ△清、ま、し=9点
(や:男が演じる女心の妖艶に。 指の先まで命みなぎる踊りかな。 清一:指の先まで春めく景が良い。 ま:指の先までとはどんな風に?と興味が湧いています。 し:女形の仕草がより色っぽく感じます。)

●蝶を知る人のところへ蝶来たる=遊歩
○子、白、葱、智△香=9点
(白:大坂なおみさんの優しさ。 葱:大坂なおみちゃんは世界にとってとても「マリア」的存在です。 智:そうなんですよね‥。 香:蝶が舞う季節になった喜びと自負?)

●踵上げてゐる早春の深呼吸=十志夫
◎砂○し△修、ぼ=7点
(し:思いっきり早春の新鮮な空気を吸い込んでいる様子が気持ちよさそうです。 修:体が宙にうきそう。空気が感じられる。 ぼ:春到来の喜びを巧みに表現。)

●校庭のトーテムポール木の実植う=秀子
◎遊、や△ス=7点
(遊:懐かしい情景のような、未来のような。 や:母校の記憶にいつも出現。)

●春萌す六年生のランドセル=香久夜
◎十、久△資=7点
(十:大きな体にチョコンと小さな鞄。そこには自分だけが知る6年間の思い出が詰まっている。省略の効いた一句。 資:長い間大事に使ってきた。誰からのプレゼントだったのかな。)

●風光るサイクリストの流線形=しゃが
◎裕△や、ラ、朱=6点
(裕:かっこいい。風光るがぴったりと思う。 や:土手の一本道を流線型が疾駆する。 朱:風光るの季語が生きてるなと思いました。 ラ:「流線形」という表現がお見事!)

●初めての化粧の頬や春の風=水音
○子△砂、久、修、し=6点
(修:口紅とか白粉とか、脱皮する感じかなあ。 し:初々しい娘さんの様子が春の風とよく合っています。)

●鶯や屋根裏部屋はがらんどう=秀子
◎修○遊=5点
(修:取合せがよくきいている。対照の効果なのか? 遊:声がよく響き渡りました)

●帰る鴨まだしばらくをこの町に=遊歩
◎始○入=5点
(入:村里ではなくて、町というのが作者の視線が新しい。渡り鳥の苦楽も感じられます。)

●ガンダムのフィギア動き出す朧=まさこ
○裕△十、葱、ス=5点
(裕:お台場のガンダムを思い出しました。 十:ガンダムに限らず、おもちゃは夜中に行進しているのだとか? 葱:「人形」ではなく、「ガンダム」の同定したところが手柄。)

●水槽に無数の泡や春愁ひ=ラスカル
◎水△清、秀=5点
(水:活き活きとしてくる水草とわが身のギャップのようなものでしょうか。 清一:無数の泡に春愁を感じ取るところが良い。 秀:感覚の句。季語がいい感じについています。)

●留守番のごとくプーさん雛の間=ラスカル
○紅△秋、裕、ぼ=5点
(紅:ちょっとした場違い感がうまく出ていると思います。 秋:可愛い景です。 裕:小さい子供のある家ではあるあるですね。 ぼ:かわいい、かわいい。)

●陽炎や覚悟もなしに高齢者=智雪
△十、入、し、水=4点
(十:中7が洒脱な一句。 入:陽炎が最適格! し:覚悟もなしにがいいですね!!気持ち分かる気がします。 水:自分のことを言われているような。)

●亀鳴くや探し倦ねる本籍地=清一
○資、朱=4点
(資:本籍地なんて亀の声のようなもの。そんな気がしました。 朱:もう本籍地の町名が変わったりしてルーツに対する淋しいようなぼんやりとした気持ちを季語が更に奥行きを与えたと思います。)

●醤油屋の主人饒舌古雛=雪絵
○ラ△ま、朱=4点
(ラ:「古雛」という季語の力を感じます。 ま:古雛で景がありありと浮かんできます。お醤油屋さん、なかなかみないですね。 朱:何となく時代劇か落語の一場面を見ているような錯覚に陥る一句、面白い作風。)

●柱廊に囲碁の一団水温む=秋波
○十、始=4点
(十:よく見かける景。「柱廊」が簡にして要の措辞。)

●月おぼろ古城に錆びし稼働橋=葱男
○や△遊、ラ=4点
(や:月光に照らされた錆びは寂びに通じる。 遊:一度も外国に行ったことはないのですがヨーロッパのお城が浮かびます。 ラ:下五の展開に意外性があります。)

●雪降り積む街空に落ちる私=スライトリ・マッド
○入、智=4点
(入:句またがり?破調でしょうか?雪の落下を首をそらして見つめた時、空に吸い込まれそうな感覚しますよね。 智:不思議な世界観。)

●余震なほ春の夜更けの江戸落語=まさこ
○紅、秋=4点
(紅:あれが余震とは驚きました。眠れない夜をせめて落語で・・。落語はやはり江戸でしょう。 秋:地震は残酷です。春の夜のゆるい幸せな時間も容赦してくれない。上五が、不安や恐怖がすぐ割込んでくる日常の危うさをよく伝えていると思います。)

●朧夜や女将奢りの田舎酒=ぼくる
○遊△十、白=4点
(遊:ご相伴にあずかりたひ。 十:「女将の奢り」というのがいい。 白:ちょっと手を触れてみたり。)

●片付けの済まぬ研究室余寒=五六二三斎
○砂、修=4点
(修:研究ってずっとこんな感じがする。)

●梅東風にだーるまさんがこーろんだ=ぼくる
○喋△葱=3点
(葱:鬼が振り向くときのあの緊張感、たまりませんね^^;)

●囀や羽は何色かと思ふ=資料官
◎ま=3点
(ま:私もよく思います!なかなかよくは見えない庭の鳥のこと。)

●初めてのe-Taxや春しぐれ=紅椿
○ラ△秋=3点
(ラ:現代風俗を鮮やかに活写。 秋:私も今春はじめて自宅で確定申告しました。この先ますます何でもかでもがオンライン、電子化の世の中になっていくんでしょうね。アナログかつ老眼の身にはつらい。)

●春の風邪恋の微熱に似て甘し=やんま
○白△秀=3点
(白:中7に惹かれるました。 秀:やや類想感だし、喋りすぎてると思うんですが、この甘さが好きです)

●万歳をしたるワイパー春の雪=五六二三斎
△十、ラ、葱=3点
(十:景が浮かぶ。 ラ:ワイパーが万歳をしているという発想が楽しい。 葱:「万歳」の措辞。)

●蕗の薹天ぷら旨しほろ苦し=修一
◎子=3点

●仏間より淡きまなざし内裏雛=秋波
◎資=3点
(資:仏間の遺影のおばあ様の古雛を飾ったのでしょう)

●フライパン鮭一切れの余寒かな=久郎兎
△十、始、入=3点
(十:現代社会を捨象。「鮭一切れ」から一人住まいの侘しさを。 入:ソテーでしたら、温もりでしょ。でも一枚なら余寒に思いが行きます。)

●ほろ酔いでタイムトリップ雛の夜=秋波
○ぼ△子=3点
(ぼ:いかにもありそう。)

●道端のちさき手袋春の雨=裕
○修△白=3点
(修:よちよち歩きの子が見えるよう。 白:落としたのは幼い少女でしょうか?)

●をさなごの描くロケット春立ちぬ=ラスカル
△砂、香、朱=3点
(香:力強いロケットだったんでしょうね。 朱:単純な線描のロケット、それがかえって若々しい勢いを感じたのかも知れませんね。)

●朝霞ぬけてぶつかる山のいろ=十志夫
△喋、智=2点
(智:山の色にぶつかるが良い。)

●一木の白梅清し月宮殿=香久夜
○清=2点
(清一:月天子の宮殿に咲いている白梅清し。)

●三川の合ふ古戦場斑雪=智雪
△久、葱=2点
(葱:映画のワンシーンのような情景。)

●住人の老ひて沈丁小さく咲く=香久夜
○水=2点
(水:ストンと心に落ちる景。)

●十年帰還できぬ村つらつら椿=スライトリ・マッド
○秀=2点
(秀:あれから10年。誰にも見てもらえない椿の花)

●主人なき梅晴天へ立ち上がる=五六二三斎
△入、秋=2点
(入:元気もりもりの源平梅を想像します。 秋:東風吹かば…。)
<BR> ●転勤と決まりし庭の梅の花=紅椿
○十=2点
(十:いろいろなことを思わせる。凡にして含蓄のある一句。) 

●二ン月の火星の風の子守歌=スライトリ・マッド
○喋=2点

●念の染む円空仏や雪の果=しゃが
△遊、智=2点
(遊:郷土の有名人です^^。 智:空気がピンと貼って静かな美しさ。)

●やつとこさ退院できて二月尽=資料官
○ま=2点
(ま:実感がこもっていますね、本当に良かったです、くれぐれもお大事にどうぞ。)

●紅梅や願かけるごと枝に満ち=入鈴
△ス=1点

●声すれど姿の見えぬ春の鳥=メゴチ
△子=1点

●下萌や四隅の欠けしプランター=紅椿
△メ=1点

●白梅の匂へる空は水色に=入鈴
△始=1点

●魂の腐るが如きバレンタイン=始祖鳥
△久=1点

●探梅や縁は己れで手繰り寄せ=朱河
△資=1点
(資:あてもなく探し、見つけた時の喜び。)

●椿咲く作つてみようか椿餅=修一
△喋=1点

●涅槃会に年金出るしありがたし=子白
△始=1点

●春一番コロナワクチン第二便=資料官
△紅=1点
(紅:「一」と「二」がうまく呼応しています。)

●頬凍つる夕映への空朱鷺の色=修一
△メ=1点

●文殊堂の子らの神妙うららけし=雪絵
△遊=1点
(遊:賢い子供たちに育ちそう〜)

●宵やみに響く色気や猫の恋=メゴチ
△資=1点
(資:中七が面白い)

●余寒なほ御所の黒猫眼のひかり=清一
△子=1点


A部門入選作〈back number〉

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