*A部門入選作発表*


当季雑詠=全89投句(入選57句)

【特選】

一席
●おにぎりの光の粒や春田打=秋波


◎ま、ス、入、遊○資、水、ぼ、紅、秀△葱、白=24点
(ま:おにぎりの粒の美しく美味しそうな姿に魅かれました。季語が力強く引き立てていると思う。 入:春の田んぼですが、秋の実りのおにぎりも登場。豊か。 遊:何とも言えない充実感。 資:お昼のおにぎりがまぶしい。 水:今年も豊作に、という期待が光の粒に現れてる。 紅:コロナ禍にあっても、黙々とと日常を続けている姿に打たれました。 ぼ:健康的で気持のよい句。 秀:春田打という季語は素敵ですね。おにぎりの一粒一粒が輝いているんですね。 葱:農作業の合間のお昼ごはん、おにぎりが格別に美味い! 白:ほっとひと息。)


二席
●薫風をつかむベンチの背伸びかな=十志夫


◎資○香、智、喋、裕、秀、メ、砂△葱、朱、入、遊=21点
(資:ステイホームの日課。 香:穏やかな公園の一角が目に浮かびます。 智:薫風を掴むが良いですね。清々しい景色です。 裕:こういう普通の春が恋しい。 秀:背伸びしたポーズ。薫風を?むという比喩がすばらしい。 葱:賀茂川の河原のベンチでもよく見かけます。 朱:「つかむ」「背伸び」と言う動きが成功した句だと思います。 遊:サラリーマンか?ホームレスか?^^ 入:コロナ禍でこんなにほぼ毎日ベンチにご縁ができるとは!共感出来ます。)


三席
●誰も拾はぬ一円玉や昭和の日=ラスカル


◎雪○秋、清、十△葱、ま、メ、久=13点
(雪:もはや令和はキャッシュレスの時代になってしまいそうです。 秋:昭和も遠くなりました。 清一:戦前の一円札とは大違いの軽い一円玉、昭和も遠くなりにけり。 十:一円玉に託した昭和の記憶と豊穣の今。 葱:小銭入れの中で邪魔なだけ! 値段は十円単位でいいんちゃう? ま:季語とうまく合っていて、昭和を思い返しました。)


三席
●行く春や折り目に破れ京の地図=秋波


◎清、久○朱、入△秋、香、砂=13点
(清一:京の町をあちこち回り折り目に破れた地図、巧い表現だ。 朱:何度も畳直して破れた地図と春の終わり、上手い取り合わせだと思います。 入:地図の折り目という具体から、京都の行く春という時空まで想像する豊かさに惹かれました。香:何度も訪れた京都、暫くは行けないけど、また訪ねたいですね。)


【入選】

●紙に指切られ春愁深まりぬ=水音
◎紅○雪、遊△五、入、秀=10点
(紅:紙で指を切るのって、刃物で切るより嫌な感じがしますよね。共感しました。 五:紙で指に切り傷をつくることがある。春愁に追い討ちをかけられた感じである。 遊:実感・共感 入:自損事故のような不意打ち、年をとると憂いの原因も様々です。共感ですが、お若い方の句? 秀:たまにやりますよね。あの痛みは春愁と似合っているような。) 

●初蝶来市民農園開所式=資料官
◎秋○朱△水、智、入、十、砂=10点
(秋:漢字表記で字面は硬いのに見える景は柔らかい。 朱:オール漢字、名詞ばかりなのに明るい長閑な景色が広がる。 水:シーズン到来。初蝶の出現で気分も上がる。 智:漢字ばかりなのにほのぼのと。 入:漢字のみの表現が新鮮です。平常を、日常を、外で祝う慎ましさを味わい深い句だと思います。 十:蝶もお祝いに駆けつけた来賓なのでしょう。)

●亀鳴くやスペイン風邪の時代より=清一
◎ぼ、秀○ま△資=9点
(ぼ:今はコロナと暗に言っている。この亀の声は経読む声であろうか。 秀:亀鳴くという季語に、希望の光が見えるようです。 ま:季語が上手に使われていますね。 資:コロナ禍ならではの発想。)

●空狭き糺の森や百千鳥=智雪
◎資○紅、裕△秋、ぼ=9点
(水:千年の森に小鳥たちの躍動感があふれて。 裕:下鴨神社の鬱蒼とした森に小鳥の鳴声、いい景です紅:緑豊かな糺の森の大きさをうまく詠まれていると思います。 秋:森林浴! ぼ:行きたいなあ。)

●桜蕊降るぺらぺらのアンソロジー=秀子
◎始、十○ま=8点
(十:度重なる句会、吟行の中止で、我が結社のアンソロジーもまさにそんな状態です。 ま:ぺらぺらに引き付けられました。コロナのせいでしょうか。)

●母の足に足ひつかけて昼寝の子=修一
◎葱○ぼ△ラ、朱、ス=8点
(葱:観察眼にも愛が溢れる。 ぼ:おお可愛い! ラ:可愛い〜! 朱:可愛らしい小さな発見の描写。)

●パッチワークの針の目歪む目借時=雪絵
◎五○ス△朱、水、メ=8点
(朱:目借時ってこういう昼下がりの感じなんでしょうね。 五:根気の要るパッチワークの作業をしている。ポカポカ陽気でついつい眠くなりながらの作業のようである。平穏な春の陽気を感じさせる。 水:あるあるですね。)

●たんぽぽやキャラメル好きの母のこと=雪絵
○資、清△ラ、水、始=7点
(資:森永ミルクキャラメルの黄色い箱が懐かしい。 清一:昭和のお母さんの時代グリコなど色々なキャラメルがあったね。 ラ:ほのぼの〜♪ 水:タンポポの黄、森永のキャラメルの黄、お母さんはきっとよく笑う人。)

●花吹雪うねりて一人残さるる=朱河
○ラ、入、遊△五=7点
(ラ:孤独感がひしひしと伝わってくる。 入:うねるということが凄いです。孤独はこんなところにもあると気付かせてくれます。 遊:るるに花弁が見える〜 五:花吹雪の花見に何故か一人残される羽目になった。どうして、そうなったのか?その理由は定かではない。察するに、この一人だけ、花との別れが辛かったのだろうか?)

●ゆく春の八宝菜のとろみかな=ラスカル
○葱、秋△雪、紅、清=7点
(葱:こういう句はラスカルさんにしか詠めませんね^^; 秋:晩春ののったりした空気感と中華あんのとろみとがよく合っていると思います。 紅:「とろみ」と季語が合っているような・・。 清一:季節によってとろみの味が変わりそう。)

●尻ポケットに地図突つ込んで夏隣り=秀子
◎香△し、秋、清=6点
(香:字余りだけど、リズムもよくて軽快です。 し:山歩きの気持ちの良い頃ですよね。 秋:中七の突っ込んでという表現に勢いがあり、季語の力強さともよく合っていると思います。 清一:夏山登山者の姿にも見える。 )

●新緑の山野に遊び牛を見る=喋九厘
◎子、修=6点
(修:遊んでいる牛、自由な牛はきっとわらう。)

●水彩の滲んだ空に風光る=メゴチ
◎喋△子、し、始=6点
(し:水彩で描く空に風がぬけて、素敵な風景画を想像します。気持ち良さそう。)

●無くなりしものを数へてゐる夕焼=十志夫
◎白○ラ△砂=6点
(白: 感傷がよく伝わってきます。(夏の句ですが) ラ:「夕焼」という季語が利いている。)

●ペコちやんの舐めたさうなる春の雲=紅椿
○水△葱、し、ま、清=6点
(水:ペコちゃんの気持ちに納得。 葱:面白い! し:ふわふわで美味しそうな雲ですね。 ま:店頭のぺこちゃんを思い出しました。そんな風ですね、ぴったり。 清一:不二家のペコちゃんこの子の舌が可愛い。)

●晩春のバームクーヘン層を増す=水音
◎智△五、香、雪=6点
(智:バウムクーヘンの層、面白い例えです。晩春の気分とも良く合っています。 五:ば音のリフレインに触手が動いた。下五にもう一つば音があるのも面白かったかも? 香:丁度、知人が脱サラで始めたバームクーヘン工房が三周年でした。また層を増すことでしょう。)

●ガートル台の行き交ふ廊下暮の春=雪絵
◎裕△修、ぼ=5点
(裕:ガートル台が行きかう病院、春を惜しむのではなく、早くコロナ禍が終息してほしいという気持ちを感じた。 修:寛解した患者さんが、病衣のまま歩いているほっとした感じがいい。 ぼ:病棟での暮春を淡々と描写し、かえって思い深し。)

●紋白蝶近頃たったひとりきり=白馬
◎し○始=5点
(し:紋白蝶がこんな心情にあっています。)

●新しき制服に風花ミモザ=茶輪子
○修△智、紅=4点
(修:新しい制服とミモザの花の明るさがぴったり。 紅:清々しくて、気持ちいいです。 智:ミモザの明るさが良く似合う。)

●駆けて来るピンクのドレス花水木=五六二三斎
○白△智、雪=4点
(白:おさなごの弾んだ景色が楽しい。 智:花水木の精のようです。)

●緩衝の地方紙駄菓子草の餅=智雪
◎朱△白=4点
(朱:地方紙が良いなあと。あとリズムも良い。古新聞に埋もれた駄菓子と草餅に愛情が見えます。 白:田舎からの贈り物の懐かしさ。)

●銀色の無数のまなこ生しらす=秋波
○白△裕、十=4点
(白:小さな魚の小さな眼に着眼。 十:景が見えます。)

●卒業や夢を詰め込む旅鞄=しゃが
◎砂△清=4点
(清一:今はコロナで大変だが人生一度の卒業旅行。)

●二枚目は青き瞼の桜鯛=メゴチ
○雪△子、喋=4点

●春深し返し忘れた俳句集=始祖鳥
○香、智=4点
(香:また、読み返してるんでしょうね。 智:ほんの少しの憂鬱。)

●柔らかき穀雨の滴三拍子=久郎兎
○喋△資、ス=4点
(資:下五できりっと締まった。)

●我が場所のどこにもなくて修司の忌=秀子
○し、久=4点
(し:寺山修司は寂しがりやだったとも。そんなことも思う句です。)

●アーシング雀隠れを踏みしめて=葱男
○修△ま=3点
(修:気持ちよさそう。 ま:私たちの幼いころはこうやって育ちましたがいつのまにか、、、原点に返って。)

●かげろひて海に溶けこむ夫婦墓=葱男
○始△遊=3点
(遊:永遠の至福の風景。)

●白壁のペンキ塗りたて松の芯=紅椿
○五△ラ=3点
(五:松の芯は、若緑の傍題季語。家の壁の白いペンキの塗りたてと若緑の松の芯が呼応している。 ラ:色の対比が鮮明。)

●泥つきの家督継ぎたる根分けかな=十志夫
○ス△ク=3点

●庭に過ぐる時のゆつくり草を引く=まさこ
△葱、ス、修=3点
(葱:庭仕事、気持ち良い季節ですね! 修:何故か気がらくになる。実感。)

●ブレザーの校章白く風光る=香久夜
◎ラ=3点
(ラ:颯爽と歩く姿が目に浮かぶ。)

●紅バラや沖に無言の自衛艦=ぼくる
○砂△秋=3点

●逝く春や大往生の師の訃報=資料官
○子△葱=3点
(葱:合掌!)

●行く春や門扉のねじの錆びつきぬ=裕
◎メ=3点

●老木の洞より出づる巣立鳥=ラスカル
○子△裕=3点

●保護色の銀の脈動アマガエル=遊歩
○メ△裕=3点

●挨拶のさやかに渡る新樹光=茶輪子
○久=2点

●遠足の波間に失せし腕時計=香久夜
△喋、遊=2点
(遊:記憶の中の時間だろうか?実景だろうか・・)

●広告のなき鉄塔や薄暑光=茶輪子
△秋、久=2点
(秋:そういえば昔は広告看板がよく掛かっていました。見かけなくなったのはいつ頃からなんでしょうか。裸の鉄塔に日が当たる様、景がよく見えます。)

●この二年何を学びし蝌蚪の国=スライトリ・マッド
△葱、紅=2点
(葱:ほんま、どこの誰の指示を受けて国民を規制しとんねん!! 紅:「飛鳥2」の記事を読んだ時、まさにこんな気持ちになりました。)

●沈丁に酔つて候ふ宵の雨=朱河
△喋、メ=2点

●バス降りてマスクを外す朧かな=裕
○十=2点
(十:マスクだらけの車中は或る意味で非日常。そこから出て漸く日常に戻れるというレトリック。)

●春風の色のインクと硝子ペン=スライトリ・マッド
○し=2点
(し:取り合わせがとてもきれいですね。)

●ひとここち藤棚揺れて立ち話=香久夜
○五=2点
(五:藤棚の下で立ち話は続く。この作者は、おそらく聞き手になっていたのだろう。藤棚の藤がそろそろ終わりにしたら?と笑っているようだ。)

●百円のコミュニティバスみどりの日=智雪
△秀、修=2点
(秀:いいところに眼をつけましたね。『コミュニティバス』がいい感じ。 修:高齢社会にはますます大事なこと。みどりとはみんなに優しい色のことか。)

●焼肉屋のけむにまみれし燕かな=裕
○葱=2点
(葱:なるほど、あるあるのリアル!)

●公園の春早や子等の大天下=砂太
△始=1点

●コロナ禍は紫陽花植えて休業す=子白
△資=1点
(資:割り切り方がさわやか。)

●五月晴れ哲学の道犬ばかり=子白
△白=1点
(白:人間より哲学的。)

●筍の刺身いただき旬を知る=喋九厘
△子=1点

●春満月東京タワーも消灯=資料官
△ぼ=1点
(ぼ:いいねえ、粋な風景。)

●廟の扉の孝行譚や春時雨=しゃが
△十=1点
(十:孔子廟の扉に書かれた孝行話でしょう。季語が微妙。)

●良い風だ南から夏やって来た=砂太
△秀=1点
(秀:話し言葉が成功していると思いました)


A部門入選作〈back number〉

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号 63号 64号 65号 66号 67号 68号 69号 70号 71号 72号 73号 74号 75号 76号 77号 78号 79号 80号 81号 82号 83号 84号 85号 86号 87号 88号 89号 90号 91号 92号 93号 94号 95号 96号 97号 98号 99号 100号 101号 102号 103号 104号 105号 106号 107号 108号 109号 110号 111号 112号 113号 114号 115号 116号 117号 118号 119号 120号 121号 122号 123号 124号 125号 126号 127号 128号 129号 130号 131号 132号 133号 134号 135号 136号 137号 138号 139号 140号 141号 142号 143号 144号 145号 146号 147号 148号 149号 150号 151号 152号 153号 154号 155号 156号 157号 158号 159号 160号 161号 162号 163号 164号 165号 166号 167号 168号 169号 170号 171号 172号 173号 174号 175号 176号 177号 178号 179号 180号 181号 182号 183号 184号 185号 186号 187号 188号 189号 190号 191号 192号 193号 194号 195号 196号