*B部門入選作発表*


兼題『季語:障子』『漢字:水』=全92投句(入選句)

【特選】

一席
●百畳の障子明かりとなりにけり=紅椿


◎遊、砂、五、ぼ、裕○秀、水△朱=20点
(遊:私もこういう信仰の場によく参りますが俳句にできない情景でした。 五:百畳と云うと、13.5m四方の広さである。京都の名刹の本堂だろうか?その障子から漏れてくる光を詠んだ。身も心も引き締まる瞬間である。 ぼ:スケール大きく、神々しい。 裕:京都のお寺さんでないとありえない光景。 秀:「百畳」が紋切り型にならなくてよかった。 水:大きなお寺の本堂を想像しました。シンプルな構成で大きさが引きたちます。 朱:とても広々とした明かり障子なのか、百畳が照らされているのか、少し分かりにくいが大きな美しい景が見えて頂きました。)


二席
●滔滔と光を研ぐや冬の水=しゃが


◎メ○砂、茶△清、水、智、朱、裕=12点
(メ:光をキラキラと跳ね返す水の鋭さが見える。 茶:水が光を研ぐという措辞がいいと思います。 清一:中七の光を研ぐが良い。 水:「光を研ぐ」がいいです。 智:光を研ぐと言う表現が見事。 朱:中七が活きている。 裕:冬の水をこういうとらえ方が面白い。)


三席
●水音を少し零して冬の滝=秀子


○紅、し、秋△十、や、砂、メ、ス=11点
(紅:「音を零す」に詩心があります。 し:少し零してという表現が素敵ですね。 秋:水量の減った冬の滝をうまく表現している。 十:凍滝の微妙なところを上手く表現。 や:冷たさの極致は痛さとか。 メ:凍てついた情景が浮かびます。)


【入選】

●尼の寺障子のうちの恋語り=ぼくる
◎白○雪、遊、久△秋=10点
(白:尼さんの会話が聞こえてきますね。 遊:瀬戸内寂聴師を思い浮かべました。)

●戯言に本音の透けて白障子=秋波
○メ、香、ま△や、遊、砂、智=10点
(メ:透けてと障子の妙がいい。 香:透けて白障子がぴったりです。 ま:はい、よくありますね。白障子が効いています。 や:心にあるから言葉にもなる。 遊:よくよくわかる句ですね。 智:本音の透けてが白障子とマッチ)

●水仙や海に沈んだ者たちへ=葱男
◎ま○砂、五、喋△ス=10点
(ま:災害があちこちで起きた昨今、鎮魂の花として水仙が咲き満ちているのですね。 五:水仙は岬に群れをなし咲いている。昔、大陸より球根が海を渡り流れ着いて咲いているのか?水仙は海の守り神かもしれない。海に沈んだ者と云えば、日本海海戦のことを思い浮かべた。)

●鳥影の忙しき一日白障子=やんま
◎十○始△ま、智、朱、ス、入=10点
(十:鳥の行き交う音が大きいほど白障子の内側の静寂を強調する役割を果たしている。 ま:障子越しの鳥を感じながら句を詠んでいらしたのでしょう。 朱:類想は感じますが頂きました。)

●水鳥の流されてゐて流されず=清一
◎や○ま、朱△葱、水、し=10点
(や:自分の居場所が定まっている。 ま:ようく観察されていますね。水鳥のようでありたいと思いますが。 朱:まさに水鳥はこういう動きをしますよね。 葱:水面下で必死に水を掻いているのでしょう。 水:確かに。 し:確かにそうです!!優雅に浮いていますが、水の中の足はすごい運動かも。)

●色落葉水底に為す万華鏡=やんま
◎清○香△メ、喋、裕、秋=9点
(清一:色落葉をよく観察している写生句の佳句。 香:万華鏡にたとえるとはきれい。 メ:水の流れで色々の変化が楽しい。 裕:色落葉が水面の揺れで万華鏡のようというのが美しい。)

●水仙の色あつめたる水辺かな=十志夫
◎始○メ、子△香、し=9点
(メ:きれいな句です。 し:水仙も白、黄色、黄色もいろいろな色ありますね。とても綺麗な風景です。)

●「盾」の医と「矛」の商ひ水涸るる=十志夫
◎香○茶△資、ま、朱=8点
(香:このコロナ禍のせめぎ合いをよく表している。 茶:時勢を巧くたとえられているなと。戦わず共栄できますよう。 資:医療か経済か、この一年を象徴するような一句。季語が効いている。 ま:ずーっとこの矛盾を私たちは考え続けた一年でした。巧くたとえられていますね。 朱:2020年にしか詠めない一句として。)

●一人寝る障子の内の安けさよ=ぼくる
◎大○入、秋△子=8点
(秋:少し翳りがあるが温かい。障子の作る空間は何故か落着きます。)

●吾子のごと水仙起こす掌=香久夜
◎朱○裕△十、ま=7点
(朱:さりげないけれど折れやすい水仙の様を詠んだ一句として上手いなあと思います。 裕:優しい作者が浮かびます。 十:景鮮明。 ま:そおっと起こすその、まなざしが優しい。)

●何処より聞こゆミとレの冬の水=スライトリ・マッド
○十、葱、ラ△喋=7点
(十:独特の把握が新鮮。 葱:雨だれか? 絶対音感の持ち主か? ラ:絶対音感をお持ちなのですね。)

●障子貼る記憶の欠片割烹着=雪絵
◎久○資△白、メ=7点
(資:白が重なり合う何か懐かしい光景。障子貼るは秋の季語だけど、まあいいか。 白:あの人の思い出もーーー。 メ:昭和を思い出します。)

●読経の小さき抑揚破れ障子=茶輪子
◎入○資△秀、葱=7点
(資:細かいところへの気づき。障子の破れもそうなのでしょう。 秀:わたしだったら、破れてない障子にしたと思う。 貧乏で鄙びた古寺ですね。)

●独酌の鼻唄軽ろき花障子=朱河
○や、遊△紅、ぼ、し=7点
(や:外出を控え近頃は独酌に慣れた。 遊:こちらまで楽しくなります。 紅:とても楽しいひとり酒ですね。 ぼ:独酌また楽しからずや。 し:なんだか楽しそうな独酌ですね〜。)

●水鳥や三台並ぶ献血車=ラスカル
◎雪、資△五=7点
(雪:近くの川の鴨たちを想像しました!「三台」が生きてます。 資:献血車という意外な展開が面白い。コロナ禍で献血不足というニュースがヒント? 五:新型コロナ禍で献血をする人が減り、輸血の血液が不足しているらしい。だから、三台並ぶのであろう。上野の不忍池に停まる献血車を思い浮かべた。)

●ふくよかな薄茶の泡や白障子=まさこ
◎紅△十、雪、ラ、入=7点
(紅:「ふくよかな」が秀逸。色の対比も鮮やかです。 十:茶会の様子が上手く描かれている。 ラ:色の対比が美しい。)

●熱燗や泣き上戸なる水瓶座=朱河
○葱、ぼ△清、紅=6点
(葱:中島みゆきに歌わせたい。 ぼ:水瓶座への飛躍がいいですね。 清一:水瓶座生まれの人の統計を取って見ないと分からないが、そうかも知れない。 紅:下五が面白いです。)

●お通しの小鉢は雪花菜白障子=朱河
○十△雪、資、茶、ぼ=6点
(十:和食の老舗の様子を「雪花菜」「白障子」に投影して伝えている。 資:雪花菜と書いておからとは。白づくしで美しい。 茶:控えめな風情がいいです。それを拾う視座も。 ぼ: 粋で美味そう。)

●咲き初めし水仙の黙藪の中=砂太
◎秋○大△秀=6点
(秋:藪の中でひっそりと咲く水仙。「黙」という漢語的表現も冷気や水仙の凛とした風情と合っていると思います。 秀: 発想が好きです。下5がやや説明的。)

●牧水の旅恋ふる歌冬茜=秋波
◎し○五△や=6点
(し:今は特に心に響きますね。 五:旅を愛した牧水。宮崎県日向市出身。牧水の「牧」は母の名より、「水」は好きな滝や渓谷の「水」から取ったらしい。今回の兼題の好例であろう。牧水はまた酒豪でも知られていたらしい。水は酒なのかもしれない。《幾山河越えさり行かば寂しさの終(は)てなむ国ぞ今日も旅ゆく》格調高い歌ですね。や:旅に観るは淋しき自分の姿なり。)

●牧水の旅恋ふる歌冬茜=秋波
◎し○五△や=6点
(し:今は特に心に響きますね。 五:旅を愛した牧水。宮崎県日向市出身。牧水の「牧」は母の名より、「水」は好きな滝や渓谷の「水」から取ったらしい。今回の兼題の好例であろう。牧水はまた酒豪でも知られていたらしい。水は酒なのかもしれない。《幾山河越えさり行かば寂しさの終(は)てなむ国ぞ今日も旅ゆく》格調高い歌ですね。や:旅に観るは淋しき自分の姿なり。)

●猫消えて障子のすみの揺れてをり=修一
◎子△十、清=5点
(十:中7、下5のの把握が独特。 清一:障子戸の隅にいる猫の姿が目に浮かぶ。)

●馬鹿ばなし葛湯ふぅふぅ水入らず=大
◎茶△喋、入=5点
(茶:江戸俳諧っぽくていいな。こんな夫婦いいなと。)

●水涸れて果実のやうな落暉かな=ラスカル
◎水○し=5点
(水:「果実のような落暉」はぷっくり柔らかな温かみが、「水涸る」との対比で活き活きとしてきます。 し:果実のやうな落暉が素敵。空気も澄んでより鮮やかな色を想像させます。)

●山の水引いて古寺冬に入る=砂太
○や△大、葱、始=5点
(や: 聞こえて聴かぬ水音のあり。 葱:形が整いすぎの感あり、しかし、字面が美しい。)

●行く年や男やもめの水仕事=ぼくる
△十、雪、紅、茶、秋=5点
(十:ご苦労様です。実は今の状況を愉しんでいるのかも。 紅:破れ障子の句はいくつかありましたが、ドラえもんが最強かも・・。 茶:昭和ですね。今や皿洗いは普通に旦那の仕事かもしれません。)

●昆布浸す琺瑯の水冷たし=まさこ
◎ス○大=5点

●粛々とおおつごもりの水の惑星=葱男
○朱、ス=4点
(朱:惑星は「ほし」と読ませるのでしょうね。年末の静かな緊張感が感じられます。)

●水彩に不向きなのよとポインセチア=入鈴
○智、ス=4点
(智:面白い!成る程そんな感じ‥)

●水仙や畳の縁の濃紫=ラスカル
○水△遊、茶=4点
(水:ほの暗い座敷の淡く光る水仙と畳の縁の色の対比に心惹かれます。 遊:茶席に招かれた気分です。 茶:縁から濃紫へと焦点を絞り込まれたのがいいと思います。)

●散り残る色葉を透かす障子窓=砂太
○紅△メ、香=4点
(紅:上手すぎです。(苦笑) メ:まるで影絵のようです)

●フレンチに梅の箸置新障子=秋波
○智△十、ぼ=4点
(智:近頃流行りの町屋フレンチでしょうか? 十:和と洋の組み合わせた店が今風なのですね。 ぼ:この店是非行きたい。)

●水たまりにいのちの一つ冬晴れる=裕
○白、喋=4点
(白:中7が切ない。)

●破れ障子ドラえもん来て穴ふさぐ=資料官
○ぼ△ラ、紅=4点
(ぼ:ははは、うちのもお願い。 ラ:頼もしい助っ人。 紅:破れ障子の句はいくつかありましたが、ドラえもんが最強かも・・。)

●山眠る流しの水の出づつぱり =紅椿
◎葱△水=4点
(葱:俳味があります。 水:山から引いている水でしょうか、凍らないように流し続ける水でしょうか。うす暗い木造の台所や、ブリキの流し台が見えてきます。)

●起き上がり小法師微笑む白障子=しゃが
○ラ△裕=3点
(ラ:懐かしい昭和の情景。 裕:癒される構図です。)

●海峡よ清水沢から渡り鳥=喋九厘
○入△子=3点

●天国の父母懐かしむ障子かな=五六二三斎
◎秀=3点
(秀:平明。句の形もすっきりしている。)

●人形を閉じ込めてゐる白障子=秀子
○裕△五=3点
(裕:横溝正史の小説のよう。 五:古い家にある人形。白障子に閉じ込められたまま百年が経った人形。雰囲気のある俳句だ。)

●蓮枯るる水の地球の枯るるごと=雪絵
○秀△十=3点
(秀: リフレインが効いています。 十:点としての景を大景に繋げる展開の巧さ。)

●冬の月水平線の先は支那=裕
○久△砂=3点

●水ときに舞ひたくならん浪の花=水音
○清△遊=3点
(清一:強風に煽られ岩場に砕け散る波、水が主役の佳句。 遊:日本海なんでしょうか、演歌じゃない日本海ですね)

●立冬の水神様に鳥の糞=やんま
◎喋=3点

●主亡く愛犬ひとり障子張る=香久夜
○子=2点

●凍月やドラキュラ憂ふ水鏡=しゃが
○雪=2点

●黒猫の影かと思ふ白障子=智雪
○始=2点

●水仙の香に包まれし終着駅=資料官
△大、久=2点

●訪ね来る人影もなし白障子=十志夫
△大、久=2点

●冬の水しびれるような甘い罠=メゴチ
○清=2点
(清一:少し甘く感じる冬の水、それを罠とした所が面白い。)

●丸障子峠をのぼる終列車=資料官
△清、五=2点
(清一:寺の丸窓から峠を登る列車を見ている風景。 五:取り合わせの妙。車窓より目にした丸障子なのだろうか?雰囲気のある俳句である。)

●あるじ留守障子冷たく脚で開け=大
△子=1点

●海に焦がれて水仙のエトランゼ=智雪
△始=1点

●障子開けお針仕事の祖母がゐし=修一
△秀=1点
(秀:ちゃんと景色がみえます。)

●手洗ひの等閑となる冬の水=五六二三斎
△香=1点
(香:ついついね。)

●降る雪に障子の軋み孫の声=久郎兎
△始=1点

●瞼より障子に耳当て時を読む=喋九厘
△久=1点

●水清く彼女の小指に冬も来ぬ=喋九厘
△メ=1点
(メ:木綿のハンカチーフを用意します)

●銛の如く水鳥迅し水のなか=修一
△し=1点
(し:本当に素早いですよね。)

●臘八や水ひとしずく惟みる=大
△資=1点
(資:蝋八会、初めて知りました。師走の八日は色々なことがあるのですね。下五が良い。)

●レモネードの香立ちこむ白障子=まさこ
△ラ=1点
(ラ:ミスマッチが面白い。)

●猫のため破りし障子いまもなお=始祖鳥 △し=1点
(し:いつまでもそのままにしておきたい気持ちわかります。)


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