*B部門入選作発表*


兼題『季語:春塵』『漢字:当』=全84投句(入選59句)

【特選】

一席
●卒業の拳に拳軽く当て=秀子


◎十、葱、ラ○や、ま、ぼ△ぶ、喋=17点
(十:Gの原監督のグータッチのよう。現代の子供たちの明るい別れの様子が浮かぶ。 や:そんな昔もあったっけ。 葱:かっこいいなあ〜! 体育会系! ラ:拳を当てている者同士の、微笑んでいる表情までもが見えてきます。 ま:言葉はないのに深い気持ちがひしひしと伝わってきます。 ぼ:思わず、コングラチュレイション! ぶ:(男子高校か防衛大学みたい。軟派な私には眩しい。)


一席
●当番の子が菜を運ぶ春の雪=ラスカル


◎茶、ぶ、入、香△や、ま、淳、喋、五=17点
(茶:素朴でささやかな役目と「春の雪」に含まれる気配とのマッチングがよいと思いました。景もはっきり浮かんできます。 ぶ:懐かしい風景が記憶の底から甦る。匂いや感傷が喚起されたw 香:菜を運ぶ当番?可愛らしい。 や:ウサギ小屋だと思う。 ま:廊下を渡って教室にと、給食係の子らの様子が見えるようです。)


三席
●春塵や路傍の石に詩の欠片=清一


◎裕、し○ラ、久△ぶ、雪、メ=13点

(裕:なんとなくこの世界に惹かれました。 し:石に詩の破片というのもまた詩的ですね。ラ:何の変哲もない石に、詩の欠片を感じ取る感性に心惹かれます。 ぶ:どうしたって、ヘッセを思い浮かべてしまうのが、△w 雪:小さな発見!)


【入選】

●順当に老いて朝湯やおらが春=ぼくる
○十、や、秀、砂、紅△葱、し=12点
(十:俳諧味。悟りの境地の人間に怖いものなし♪ や:順当に物忘れし人名地名が喪失されて独り朝湯に。 秀:「順当に老いて」なんと目出度い。 紅:肯定的な生き方で、素敵です。 葱:「順当に」が上手い! そこには満足して受け入れている「老い」があります。 し:微笑ましい!)

●ヘッドフォン当てて胎児となる朧=葱男
◎ま、砂、虹○茶△清=12点
(ま:胎児となる朧、巧く表現されていて感嘆いたしました。ヘッドホンするとほんとにそんな気分になれますね。 虹:じっと目を閉じて一人の世界に。その自分を胎児と。 茶:「当」の兼題を上手く使ってお詠みになられていると思います。どんな曲でしょう。想像も働きます。 清:ヘッドフォンで外界と遮断する朧も有るかも知れない。)

●天金の書の春塵を払ひけり=やんま
○ラ、村、修、し、五△砂=11点
(ラ:「春塵」が、とても美しく感じられます。 村:小脇に抱えて外を歩くかっこよさも見える。 し:本も年代もののようですね。季語とよく合っていると思います。)

●当たり前の顔して雛立ちてをり=まさこ
◎水、ぼ○葱、メ=10点
(水:見ようによっては当たり前の顔なんですね。面白い。 ぼ:なるほど、これも発見だ。ちょっとシニカルで俳味あり。 葱:あんまり露骨に笑顔だったりしてないところが上品ですね。)

●弓なりの日本列島春の塵=五六二三斎
○清、虹、喋、香△十、ぼ=10点
(清:南北に長い列島が春の塵に覆われている様子が映像として出て来る。 虹:「弓なり」とは言われるとなるほど、と。やられたー。 十:大景としてよくわかる。その分。多少の既視感はともなうが。 ぼ:言いたいのは、単に地図に溜まった塵ということではなさそう。)

●行く当てのなくて春星みな滲む=秀子
◎紅○葱、虹△ぶ、雪=9点
(紅:発想が素晴らしいですね。「そうなんだ!」と納得しています。 葱:「春星みな滲む」がいいですね、適度に悲しすぎずに。 虹:何だか悲し気。春なのに。 ぶ:坂本九さんの歌が聞こえてきそう。 雪:こんな気持ちになることもあります。)

●日の当たる順にほころぶ梅の枝=秋波
◎淳、五△秀、虹、入=9点
(秀:「日」のありがたさ。 虹:動きがあって情景がいい。)

●下萌や弁当箱にパンダの絵=ラスカル
◎や○秀△清、水、資=8点
(や:癒される。 秀: パンダの絵のお弁当箱だから、せいぜい低学年だと思うんですが、言わずに現したのが、上手い! 清:幼子を下萌えに喩えてパンダの絵の弁当箱が可愛い。 水:ちょっと昔の弁当箱。暖かくなって保育園のお別れ遠足のような。 資:シャンシャンも9ヶ月,ほのぼのとした気分に。)

●春塵の旅の鞄に罪と罰=やんま
◎修○喋、五△裕=8点
(裕:春なのに〜 と歌いたくなります。)

●春塵の道を狭しと弘法市=清一
◎子、資○雪=8点
(資:春の京都の縁日の風景でしょうか。 雪:たまたま行き合わせた時の光景が思い出されました。)

●春塵や職人街の豚テキ屋=しゃが
◎秀○雪△村、水、喋=8点
(秀:職人街の豚テキ屋が絶妙。私だったら、街でなく町としたい。 雪:昭和な雰囲気がありますね。 村:埃まみれの職人がドヤドヤと昼飯へ。 水:スクリーンに見るよう、シーンに紗がかかったような感じがいい。)

●春塵やたこ足配線ほどきをり=まさこ
○香△や、秀、茶、紅、久=7点
(や:生活の垢が思わぬ所に溜っていた。 秀: たこ足配線で頂き。 茶:「ほどきをり」は微妙な気もしましたが、いつのまにか増えていたり、絡まっていたりの「たこ足」と季語との取り合せでいただきました。 紅:この前、たこ足配線をほどいたばかりです。埃もたまっていました。)

●春塵を巻くや馬上の人となり=ぼくる
◎雪○ぶ△子、紅=7点
(雪:「馬上の人」の凛々しい姿が見えてきます。 ぶ:カッコいい!こんな風に馬にまたがってみたい。暴れん坊将軍。 紅:中央アジアあたりの大きな景が見えてきました。)

●遠富士や望遠レンズに春の塵=資料官
○修、淳△十、清、雪=7点
(十:秀麗な富士遠望を撮ろうとしたら・・・一瞬の気づき。 清:望遠鏡越しの春の塵の細やかな観察。 雪:遠くの富士に近くの塵、遠近の対比がいいですね。)

●春塵や円陣を解くスパイク音=秋波
○水△葱、ラ、修、ぼ=6点
(水:うすくぼやけたようなグラウンドにスパイクの音が。いよいよ球春。 葱:「スパイク音」に少しひっかかりましたが、スポーツの美しい一場面ですね! ラ:「音」に焦点を絞った点がよいと思います。 ぼ:青春のエネルギー横溢。)

●春ほこりブリキの猫の尾のらせん=まさこ
◎清△十、茶、メ=6点
(清:ブリキの猫の尾のらせんに春ほこりが見られると言う観察眼が良い。 十:視覚、触覚において硬軟交りあう俳句の良さ。 茶:「の」の繰り返しはこの場合逆に微妙な気もしましたが、「らせん」に春風を感じました。)

●欠け落つる判子の縁や春の塵=十志夫
◎久○水=5点
(水:小さな苛立ちを感じる。)

●黒革の靴春塵を帰り来し=雪絵
○村△砂、紅、資=5点
(村:営業マンの一日の終りのリアリティ。 紅:営業の仕事でしょうか。黒靴に語らせているのが、巧みです。 資:うっすらと塵が付着,ふと気がついた。)

●春塵の本散らばつて仮眠室=紅椿
○茶、淳△ま=5点
(茶:中七のたたみかけに散らばった感がよく表れていると思います。 ま:仮眠室のちょっとけだるいような雰囲気がよく現れています。)

●ストーンの浅き当たりや春弾く=香久夜
◎喋○裕=5点
(裕:まさに時事句?カーリング女子銅メダル。)

●当分は旅の空です春一人=ぼくる
○砂、入△し=5点
(し:私もこうなりたい!)

●春埃税務署に人並びけり=十五
○ぼ△ま、ラ、水=5点
(ぼ:おお、確定申告まだだった。面倒だなあ、埃ほどの存在なのに。 ま:たぶんマスクをした人が長い列を作っているのでしょう。この時期の風物詩ですね。 ラ:季節感がぴったり。 水:面倒くさいけどしなきゃいけない。並ばなきゃいけない。風も埃もうっとおしい。)

●春ほこりブリキの猫の尾のらせん=まさこ
◎清△十、茶、メ=6点
(清:ブリキの猫の尾のらせんに春ほこりが見られると言う観察眼が良い。 十:視覚、触覚において硬軟交りあう俳句の良さ。 茶:「の」の繰り返しはこの場合逆に微妙な気もしましたが、「らせん」に春風を感じました。)

●本当に癌腫なのかと亀鳴けり=清一
◎村△秀、ぶ=5点
(村:江國滋句を想い切なく季語がいい。 秀:「亀鳴けり」という遊び心の季語で救われました。 ぶ:作者を知っているいないに関係なく、この余裕を見習いたい!)

●春塵や通りがかりのロケ現場=しゃが
○資△十、葱=4点
(資:なんだか人だかりに遭遇した時の風景。 十:ロケ現場なんて、どこも慌ただしく埃っぽいものなのでしょうね。 葱:人生で何度か「ロケ現場」に通りすがったことがあります。テレビや映画の画面では見られない素顔が垣間見れて、良くも悪しくも面白い!)

●突き当たる道は迷路や春遅し=雪絵
◎メ△香=4点

●春よ来い当たりはずれの幸ありて=メゴチ
○紅、資=4点
(紅:とても共感できました。 資:春になれば何かいいことあるだろう。軽やかな気分。)

●弁当の桜でんぶや春隣=茶輪子
△砂、虹、入、久=4点
(虹:懐かしいピンクのでんぶ。この季語に合う。)

●弁当の函の隙間の朧かな=十志夫 
○ぶ、メ=4点
(ぶ:こんな俳句をさらっとできるようになりたい。)

●薄氷指を当てれば離れけり=十五
○し△淳=3点
(し:薄氷の繊細さを見事に表現していると思います。)

●春塵や人一様に髪乱る=秋波
△虹、淳、メ=3点
(虹:情景がユーモラス。)

●レシートの一片かごに春埃=茶輪子
○十△入=3点
(十:コンビニにレジにおける超近代的&トリビュアルな視点。)

●当りクジ取らぬ狸の春の夢=喋九厘
○子=2点


●ガラス張りのスターバックス春の塵=修一
△村、裕=2点
(村:外から見える店内のスマートさ。 裕:ガラス張りの店が増えましたよね、特にアメリカ系。)

●ジャイアンに八つ当たりされ杉の花=水音
△十、ぼ=2点
(十:ジャイアンも杉の花粉も困ったものだ<笑> ぼ:ははは、面白い。そしてのび太は花粉症に。)

●春塵の境内あゆむ当麻寺=修一
○子=2点

●春塵やエルサレムにも北京にも=水音
○裕=2点
(裕:春が来たのに世界はきな臭いということでしょうか。)

●春塵を切って団地の一輪車=香久夜
○ま=2点
(ま:切って、が効いていると思います。颯爽と一輪車が走ってくる景が見えます。)

●春塵を巻上げている地平線=裕
○清=2点
(清:カッコいい!こんな風に馬にまたがってみたい。暴れん坊将軍。 ユーラシア大陸の黄砂などの風景が浮かぶ。)

●電柱は地中へ消へて春の塵=水音
○久=2点

●当来の世とて盛りの花ならむ=砂太
△子、五=2点

●春の風循環バスへ当てずつぽう=葱男
○入=2点

●当たり目をあてにあれこれ寒明けぬ=久郎兎
△茶=1点
(茶: 「あ」の反復リズム。調子よく「ぬ」で決まっていると思いました。)

●当て付けに仮病の猫や春埃=しゃが
△久=1点

●麗らかや弁当狙う鳶舞いぬ=裕
△香=1点

●お目当ての二月歌舞伎や七之助=雪絵
△香=1点

●草抜けば土くれ解る春埃=修一
△し=1点
(し:埃っぽさがよく分かります。)

●春暁や当日券にくねる列=紅椿
△五=1点

●春塵や当てずつぽうの恋占=茶輪子
△雪=1点
(雪:恋も何だか春塵のよう。)

●春塵や待てど開かぬ硝子ドア=虹魚
△や=1点
(や:どうしちゃったんでしょうね。)

●春塵を巻き上げ路面電車行く=資料官
△村=1点
(村:春らしい町の躍動。)

●突き当たる道は迷路や春遅し=雪絵
◎メ△香=4点

●霾るや当選番号組ちがひ=十志夫
△紅=1点
(紅:季語が合っています。前後賞の組違いだったのでしょうか。)

●天気良し心地良き風春の塵=淳一
△子=1点

●野良猫の見当てる藪の蛇の色=砂太
△裕=1点
(裕猫には野生の本能が残っていますから。)

●春の塵富士を隠して凪の海=メゴチ
△資=1点
(資:江ノ島あたりから,期待した富士山も見えず。やはり春なんだと納得。)

●春埃みちのくこけしの黒き髪=資料官
△修=1点

●諸子散つて当て推量の的外れ=十五
△修=1点


B部門入選作〈back number〉

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