*B部門入選作発表*

兼題「病気・関連」*全48投句(入選36句)


【特選】

一席
●神の留守羽毛のやうに告知さる=水音


◎葱、久、香○二、五、入、夏、白、雪、砂=23点
(葱:「羽毛のやうに」という形容で、ゆっくりひろがりゆく病巣の怖さがよく伝わります。 久:真綿で首締めよりソフトな悪魔の囁きということなのでしょう。 五:告知と言えばガン。しかし、「羽毛のやうに」に救いがある。最新医療では、ガン撲滅も夢ではない。ふわふわしたものと思いたい。 入:◎を迷いました。 夏:「羽毛のやうに」が心に迫ります。 白:〈どうか軽い告知でありますように…〉むしろ受胎告知だったら…羽毛のような告知ってある種残酷な感じもしますね。 雪:季語がぴたり!「羽毛のように」が効いてます。)

二席
●青蜜柑ほんのり熟るるまでの鬱=雪絵


◎砂○葱、久、水、香、ス△資、五、澄、夏、白、喋=19点
(葱:「鬱」の時間としてはそれほど長いわけではありません。「鬱」というよりは「「秋愁ひ」の部類でしょうね。 久:やはりそれは鬱なんでしょうか。色づくことが?貌?、それとも虫食いのためか。 水:決して深刻ではなく、なんとなく物憂い感じが好き。 ス:熟したら気も晴れるかもですね?! 五:鬱を思い付かれた機転に△。どうも、フィクションと読まれるところがマイナスか?俳句する人に鬱が居る?と言いたくなる明るさがあって・・。 白:短い鬱でよかった…。私の友人が鬱病になったのですが、それはそれは悲惨だそうです。)

三席
●一病を月に授かる詩人かな=葱男


◎五○前、白、香、君△小、資、水、喋=15点
(五:「病」句は、お涙頂戴句では付きすぎです。掲句は、病を肯定的に捉えて、それを詩に昇華しようとしている。そこを評価しました。 白:おそらく詩人の病はもっとどろどろしたところから感染するのだと思いますが、 「病」句のまとまりとしてはよかったかと…。 君:部長のことかな? 水:心の病か、命の病か??)

三席
●西病棟0時どんぐりの船来る=スライトリ・マッド


◎入、夏○二、メ、喋△葱、水、白=15点
(夏:眠れぬ夜、「どんぐりの舟」に救われることでしょう。 葱:こういうなんだか良くは分からないけど具体的な句、っていうのに引っ掛かるんですよね! 水:メルヘンの世界へいざなう船? 白:この句を死の句だと感じたのは私の読み違い? 選外にしたかったんですが、印象が強すぎて選んでました。)


【入選】

●ほすぴすのろびーのぴあの秋の薔薇=夏海
◎澄、喋△葱、二、資、メ、雪、香=12点
(葱:上五、中七の平仮名が見事に効いていますね、やや技巧的ではありますが、上手い! 最後の体言止めの「薔薇」が鮮やかです。)

●木犀の夜を切り裂き救急車=夏海
◎雪○小、五、澄△二=10点
(雪:「切り裂く」が救急車の緊迫感をより一層深めています。 五:金木犀の匂う晩の救急車。静と動の対比。病はいつ起きるかわからない。ましてや死も。)

●やむねこや百葉箱に月照りて=入鈴
◎白○二△前、雪、香、君=9点
(白:百葉箱などとんとお目にかからなくなりましたが、われわれの世代にはノスタルジーを感じさせます。ちょうど宮沢賢治の童話の世界のような…。私は病の句はとうとう作れませんでしたが、この句の病には癒しを感じました。)

●癌という伴走者得たり桐一葉=小夜女
◎資○久△君、喋、ス=8点
(資:江國滋の「おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒」みたい。 久:「伴走者得たり」は字余りなので「伴侶」にしたらどうかと思いましたが、なんだか悲しすぎますね。 葱:死ぬまでにある程度の時間がある、というのは「死」の覚悟、人生の終末をみずから演出できる良い時間だ、と考える人も多いようです。 ス:日本人の2人に1人はガン患者でしょう?!早期発見、早期治療で完走できるはず!)

●草紅葉病記せる石の山=五六二三斎
◎二、ス○夏=8点
(ス:病気平癒を祈願して石に書く風習、安産祈願とかも神社にありますよね?! 夏:平癒祈願のための石でしょうか?)

●CTに色なき風のゆく虚空=水音
◎小○雪△百、前、白=8点
(雪:CTをここまで詩的に表現する凄さ。 百:CTスキャンのこと?「色なき風」が季語だとは!すばらしい! 白:目にも見えず、耳にも聞こえず、触れることもできないものが、確実に存在していること。その不思議をうまく表現しているところが気に入りました。でも、これって病の句かな?)

●大らかな主治医の言葉冬を待つ=スライトリ・マッド
◎君○前△小、メ=7点
(君:色々なドラマが思われて。 入:ちょっと深読みしたくなります。)

●半月夜窓べのいすの白きこと=入鈴
◎メ○君△五、百=7点
(メ:静かな病室が浮かびます。 五:掲句も病気は匂ってこない。窓べは病院のことだろう。きっと退院できると伝わってきたら、作者の成功であろう。 百:白いいすがますます白々と見えます。)

●秋風邪の夫の布団はたたみ置く=香久夜
◎水○砂=5点
(水:軽い風邪、でも倦怠感、そんな感じが良く出てる。)

●秋晴れやピンクリボンをつけた医師=スライトリ・マッド
○葱、百△雪=5点
(葱:老医師とピンクのリボンの対比が面白い句です。先生はいたって真面目に医療に取り組んでいるところにかえって可笑しみがあります。 百:乳がんだっけ。)

●芋煮会どこかでみんな病気です=葱男
◎百△二、砂=5点
(百:芋煮会に出られれば大丈夫。)

●残菊や明日の約束ためらひて=水音
◎前○メ=5点

●日溜まりに不随なる身よ永き秋=久郎兎
○小、資△ス=5点
(ス:神様はみんな平等に作っている。きっといいこともある。病気に負けないでもらいたいです。) 

●寒いねと妻言ふ朝の大嚔=砂太
○百、喋=4点
(百:「嚔」なんて書けないよ。)

●秋風や嫌なことから物忘れ=資料官
△小、澄、夏=3点

●運命と居直りつつもマスク付け=前鰤
○百△入=3点
(百:予防に越したことはありません。 葱:「新型」となると得体がしれない分、やっぱり怖いよねえ〜〜。)

●恋を患む牛は花野を見詰めをり=砂太
○ス△葱=3点
(ス:牛も恋をするのね?! 葱:「恋をやむ」と読むのでしょうか? いつものんびりしているように見える牛にも恋の季節があるのでしょうね。)

●躁鬱の波ゆるやかに末枯れる=ひら百合
○水△久=3点
(水:句全体が無彩色、無音の感じ。 久:快方に向かっているのか、枯れるというのが気になりますが。)

●櫨の下一二の三で走り抜け=久郎兎
△五、入、君=3点
(五:櫨負けを避けて通った昔の思い出が甦る句。こういう句材は歓迎。 )

●無口なるマウスピースの夜寒かな=メゴチ
○入△久=3点
(久:口開きの状態、語らずと言うことですか?お大事に。)

●朝寒や小さくなりし老いた母=メゴチ
○澄=2点

●命短し健忘症に柿熟るる=砂太
△二、夏=2点

●秋の虹死にたくなるとよ友の言ふ=君不去
△久=1点
(久:時雨の後の冷たい虹、切なくなります。)

●秋日向咳も新型茶をすする=喋九厘
△砂=1点

●錦秋や戀患ひも今は昔=君不去
△メ=1点

●子の熱に怯え眠れぬ長夜あり=君不去
△前=1点

●シスターも目が歯が足がと冬隣=小夜女
△香=1点

●退院と友の伝言風さやか=雪絵
△澄=1点
(入:迷いましたが、風さやか結句に?でした。)

●ハロウィーン指揮者はパニック症候群=葱男
△ス=1点
(ス:おもしろくて!)

●病歴にもひとつ加ふ冬隣=雪絵
△水=1点
(水:冬隣 なるほどねって感じ。 葱:俳句的に言うと「病歴にひとつを加ふ冬隣」ですか。)

●病垂(やまいだれ)だけどフロントグラスに月=入鈴
△砂=1点 

●やまいだれ何するものぞ新走=夏海
△資=1点


【無選】

●黄昏れて互いに不眠暗き朝
(葱:お互い歳をとったなあ〜という感慨ですね、「黄昏期」の 不眠は「更年期障害」のうち?)

●玻璃の家(はりのいえ)顔がわからずうそ寒し
(メ:「玻璃の家」は松本寛大の小説です。)

●腰痛と二年付き合ひ冬支度
(入:程よいぼやきに魅かれます。)


B部門入選作

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号