*B部門入選作発表*

兼題「本」*全50投句(入選39句)


【特選】

一席
●古き譜の四角い音符寒すばる=夏海


◎白、水、二、ス○葱、砂、五、メ△雪、百、前=23点
( 夏:「四角ネウマ譜」=グレゴリオ聖歌譜など・古い記譜様式で装丁も優美。 白:人間の音楽の感性は、四角い音符から、五線譜の中を自由に動く曲線までも生み出しているんですね。エクリチュールもそのような自由さを得られるのでしょうか? 水::へぇ 四角とは知りませんでした。 ス: 四角音譜があるなんて知りませんでした! 葱:はじめて「四角ネウマ譜」なるものを知りました。 「寒すばる」もこの句においてはなぜか「付き過ぎ」を感じませんでした。 五:寒すばるがうまくマッチしている。佳句。 メ:四角い音符というのがよくわかりませんが、流れがいいので。 百:そう、四角い音符が星座を思わせる、ような、気にさせる。 入:ちょっとマニアックだけど、開けばネウマ音符のたなびきに出会える。)

二席
●辞書割って一語正せり冬日和=砂太


◎雪、君○喋、久、資、秋△葱、夏、五=17点
(雪:辞書を割る、まさにその感覚ですね! 久:「割る」に老いてなお言葉知らない苛立ちのようなものを感じさせます。(Letter)最近私は15分の余裕ができたら国語辞典を一日1ページ目を通しています。 葱:「割って」がキャリアですね! 断定が強まり、気持ちの良い句になっています。 夏:「割って」に辞書の厚みが見えます。 五:俳句つくりが佳境か?)

三席
●コインほど小さき聖書や冬の薔薇=夏海


◎資○砂、水、香、メ△君、二=13点
(水:古いイタリアの映像が浮かぶ。小さくても鮮やかな冬のバラが、小さい聖書を際立たせてる。 葱:本当にそんなに小さな聖書があるんですか? 凄い!)


【入選】

●聖老人手水のあとの日和ぼこ=葱男
◎五、香○雪△砂、メ、ス=11点
(葱:「聖老人」山尾三省著。拙句を選んで頂いた方々には大変申し訳ありませんが、「日和ぼこ」は「日向ぼこ」の単なる打ち込み上のミステイクでした。意味としては同じなのですが、この句は正確には、季感のある「無季句」ということになります。 五:うまい。今回の難しいお題に応えています。 雪:日和ぼこが新鮮!季語? ス:なんだかほんわかしたお句ですね。)

●かじかみて電子の粒を拾い読む=久郎兎
◎入、前○君△白、資=10点
(入:老眼になってからは殊にパソコンから遠のく予感がします。 君:”電子の粒”ってまさしく実感です。 白:科学の本を読んでいるときに感じる感官に共鳴。冬に限らず本当にこんな感じを受けるんですよ…。 葱:携帯かパソコンメールのことでしょうか?)

●教科書に残る押葉や冬温し=砂太
◎夏○喋△資、入、香、秋=9点
(夏:愛読書としたら月並み、「教科書」だから成功ですね! 入:懐かしい、温かい。)

●誇りさえあれば悔いなし冬木立=香久夜
○澄、水△久、男、百、メ、ス=9点
(香:半落ち。 水:いい得ていると思う。 百:厳しい世界ですな。 ス:映画も原作も知りませんが・・。)

●教科書のメモに見入りて大掃除=久郎兎
◎百、秋△雪、君=8点
(百:ありそうなことですが、教科書っというところがユニーク。 雪:ちっとも進まない大掃除!? 入:メモ見入りつつ?あるいは大掃除はかどらず。)

●魂の一行添へり木の葉髪=五六二三斎
◎澄、久○白=8点
(久:最初の魂と最後の髪が妙に惹かれ合い、手紙のようでもあり栞のようでもある。メモかもしれない。 白:「添えたり」ではなくて「添えり」という能動詞的な句の動きがよかった。)

●ポケットの歳時記替へて冬に入る=資料官
○入、秋△夏、砂、男、ス=8点
(夏:俳句と仲良く暮らしている日常が伝わってきます。 ス:文庫版のかしら? 葱:確かに。)

●長き夜の時刻表の旅果てしなく=資料官
○夏、男△砂、喋、前=7点
(夏:そういう旅、好きです。 男:結構はまるんです。)

●ウナ電のコンヤユケヌ」ク蜜柑むく=スライトリ・マッド
◎葱○君△夏=6点 
(ス:向田和子「向田邦子の恋文」2002。 葱:「ク」が思いっきり効いています! 信子、多佳子に比肩できる恋句だとおもいます。 いい!!! 夏:メールなど無い時代の「電報」という手段のもどかしさ、切なさ。ところで、俳句としては「ク」は必要でしょうか?)

●バイエルの古びしカバー冬いちご=雪絵
○百、入、二=6点
(百:カバーにいちごの絵があったような気にさせられる。 入:バイエルって冬いちごのように、今は教材として隅の方に。 葱:懐かしさ。可憐さのある句です。好きな一句でした。)

●冬めく日紅茶の横に数字錠=メゴチ
○葱、二△入、香=6点
(メ:「数字錠」島田荘司著。 葱:中七、座五のミステリアスな取り合わせはセンスいい! 入:島田荘司のみたらい系は、紅茶片手に。)

●ミステリーなど読まない白鳥来る=入鈴
◎砂○夏△水=6点
(夏:面白い!! 「読まない」事を句にする作者のセンスに参りました。 水:そんなに断固としていわなくても、、、面白いよ。)

●銀杏落葉選りに選びて枝折とす=君不去
◎男△澄、久=5点
(男:本を開くと黄色のしおり。)

●今朝の冬活字小さき広辞苑=君不去
○百△葱、雪、水=5点
(百:広辞苑の字を大きくしたらめちゃ厚くなってしまう〜。 葱:だんだん老眼が進みます。 水::老いを感じます。)

●徒然に宰府巡らば冬入りぬ=喋九厘
○雪、男△入=5点
(雪:自然体に行きたいものです。 男:宰府の響きが気に入って。 入:冬の光明院?まで、足が伸びますよね。)

●菊人形ストレイシープや雲に乗る=ひら百合
○澄、白=4点
(白:三四郎にノンちゃんかな? でも菊人形は何だろう? まさか犬神家の一族ではないでしょう。でもとてもストレートに句になっているのが好印象。)

●銀の匙その晩秋や時を病む=入鈴
◎メ△男=4点
(メ:時を病むが気に入りました。 葱:どうやらこれは尾関 茂雄のビジネス指南書『金の匙 銀の匙 〜BUSINESS is LOVEを知る6つの童話〜』のことらしい。「汗水垂らしてビジネス界を生き抜くのではなく、肩の力を抜き、受け身でいながらも勝ってしまう成功の秘訣は、童話の中にあった―。誰もが知っている童話を、IT業界のカリスマがビジネスにも恋にも効く話にアレンジして紹介。そして、“金の匙 銀の匙”とは?」とあるが、全く内容がわからず、鑑賞できずにすみません。)

●ポインセチアうまが合ふよな江國滋=スライトリ・マッド
◎喋△資=4点
(ス:江國滋句集「癌め」1993。)

●運慶の埋もれし仁王十夜かな=スライトリ・マッド
△久、百、メ=3点
(ス:漱石「夢十夜」1908。 百:漱石はすきなんです。)

●贄の熊不合理ゆゑに吾信ず=葱男
○五△君=3点
(葱:「不合理ゆえに吾信ず」埴谷雄高著。 五:お題タイトルがすっぽりですが、上五がうまい。)

●冬の浜マルドロールが手に重し=白髪鴨
○ス△五=3点
(ス:マニアックですね〜。 五:よくわからずに採りました。 葱:ロートレアモン「マルドロールの歌」ですね、むかーし読んだことあるのですが、すっかり忘れています。ネットで調べると、「ぼくは鋭い刃のナイフを握って、二枚の唇のあわさっている肉を切り裂いた」について粟津潔が唇をモチーフとしたことの意味を論じているらしい。大変先鋭的な好奇心をくれますが、いかんせん、内容が思い出せず、ちゃんと鑑賞できず、すみません。)

●秋の夜や子の寝床にて読む童話=前鰤
△喋、秋=2点

●大石の身代りの尼冬の雷=五六二三斎
○香=2点
(葱:尼とは「清円尼」のことか。それとも八百屋の「お玉」のことか、よく分かりませんでした。解説乞う!))

●古詩集の言の葉辿る小春日や=君不去
○前=2点

●シャンパンの冴える世にあれ光源氏=水音
○前=2点

●天狼は翔くる忘却の河の辺=夏海
○ス=2点 
(夏:「忘却の河」:福永武彦著・忘却の河とは三途の河。 ス:よくわからなかったのですがついつい・・。)

●石蕗の花あした来る人夢を追ふ=五六二三斎
△喋、久=2点
(葱:「あした来る人」(井上靖著)

●万葉霜てくてく旅人いとおかし=喋九厘
△葱、白=2点
(葱:なんとなくユーモラスでいて、それでいて俗に堕していない。 白:私自身は万葉集をこのような感じで捉えたことはないのですが、いとおかしな感じが伝わってくる句だと思いました。)

●「忘れ貝」まどかの惑ひ冬の恋=雪絵
○資=2点
(葱:「まどか」の「まどひ」ですか、う〜〜ん、甘そうやなあ〜。)

●音読し老いの翳りか風邪給ふ=久郎兎
△前=1点

●空港の冬日の新書待ち時間=ひら百合
△秋=1点
(葱:「冬日」がちょっといいな。)

●小春日やハリーのかけし魔法かな=前鰤
△水=1点
(水::どんなに面白い魔法でしょう? 葱:おしせまる街一日の小春かな 葱。 夏:(次点)ハリーは武装解除の呪文「エクスペリアームズ!武器よ去れ」が得意。テロだなんだという現状にもハリーの魔法が欲しいものです!この句の「や」と「かな」の切れ字の重なりは、直ぐに修正できる些細なことでしょう。)

●三味線に挑む太夫や空っ風=水音
△澄=1点

●秋色の彩りシャベ栗写真館=資料官
△香=1点
(葱:「秋色」は「しゅうしょく」と読むのでしょうね。悪くない句ですがちょっと贔屓目かも。)

●「鈍感力」見抜く敏感さえざえし=雪絵
△五=1点
(五:少し理屈かな?まあ、よしとしましょう。)

●冬薔薇よさよなら晶子ソクラテス=葱男
△澄=1点
( 葱:「さよならソクラテス」池田晶子著)


【無選】

●北方(きたがた)水滸伝めくれば遠く冬の雷
(葱:思いきった上九ですね! 北方謙三を省くと確かに平凡な句になってしまいますからこれはこれでいいと思います。)

●小春日の九州歩いて阿呆列車
(葱:「鹿児島阿房列車」のことか。)

●同窓ヱ旅行紀に倦みせな蒲団
(葱:「ヱ」と「倦みせな」は勉強させて頂きました。)

●バトンパス見届け走路冬ざるる
(葱:「バトンパス」がお題なんでしょうが、前詞がないのでなんだかよく分かりませんでした。)

●夜着重ね読む悲しき熱帯また悲し
(葱:「悲しき熱帯」はレヴィ・ストロースのブラジル紀行文。読者を信頼して「読む」を省いたら特選です。)


B部門入選作

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