*B部門入選作発表*

兼題「食」・「芸」*全27投句(入選21句)

【特選】
一席●月が食う日が食う夢の一夜かな=五六二三斎 
◎木、喋、ス、一、君◯月、入、久=21点
(ス:邯鄲と同じ作者?これも好きだな。 一:あまり意味がわからないけど、夢だからいいのかも……。 月:う、うまい! 入:やられたーって思った。 久:はっきり言えば、意味不明。月食かなあ?日食かなあ?夢=考慮?している夜?それとも、たくさんの夢を見た夜ということか。なかなか考えさせる句なので選びました。)

二席●遠のきつ 記憶を食むや すがれ虫=月下村 
◎平、資○五、前、ス、一△入=15点
(月:すがれ虫=残る虫。季節を過ぎてもまだ精一杯鳴いている虫けらって感じ。 平:こんな句が詠めるのはあの人かあの人 すがれ虫なんてしらんかった。 五:記憶をはむという表現がよいですね。 前:すがれ虫って、どんな虫? ス:すがれ虫って何?なんか面白い。 入:ウーン、シュール。)

三席●一発芸 落ち葉の宙返りはらはらと=喋九厘
◎前◯澄、資△月、久=9点
(前:こんな発想をしてみたい・・・。 資:静岡では大道芸ワールドカップ開催中。枯葉の動きをよく見ている。 月:物事を愉しんで観る目線かな。 久:風のいたずら一発芸ですね。個人的には「ひらり」を使ってみたいですが、「はらはらと」には見ている本人の「宙返りできるかなあ」というドキドキも含まれているのでしょう。)

【入選】
●園芸に 苗求めてや 秋日和=木笛
◎澄◯平、入=7点
(平:女性の句、私も園芸が趣味、苗と球根を植えました。 入:芸にも色々、秋にぴったり。)

●邯鄲を 食らひて絵師の 無芸なリ=月下村
◯ス、一、久△入=7点
(月:邯鄲とは鈴虫の異名。または春秋時代の中国の地名。邯鄲之夢:廬生という男が、邯鄲の町で道士の枕を借りて寝ているうちに、一生を栄華のうちに暮らした夢を見たという故事。 ス:この人生、もしかしたら一瞬の夢・・と感じることがあって共感。 久:邯鄲は粥?のことか、夢のことか、とにかくお題の「食」と「芸」が入っているし、2語入りの中ではGOOD。 入:厳しさが伝わる。)

●鹿の聲安芸の鳥居に応え無く=五六二三斎
◎月◯澄、前=7点
(月:テレビに映し出されていた、壊れかけた社の蔭に、濡れてかなしげな鹿の眼を思い出しました。)

●秋霞 食らいて風の 波のまに=木笛
◎五○喋△澄=6点
(五:風と来ると、吹くままにかと思えば、波のまに。面白い表現で、風が波のように何度も押し寄せるさまを表わしているのでしょう。)

●友の芸 祝祭あれと願ふ秋=入鈴
○五、君△月、澄=6点
(五:ちゅんさん、中西君の芸のことを言ってるのでしょう。作者は芸術にたいへん造詣が深い方で、丘23思いですね。 君:私もホントにそう思う 月:ありがとうございます。)

●筆措きて 芸も果つるか桐一葉=月下村
◯資△平、五、喋、一=6点
(平:よほど苦労なさっている様子。 五:桐一葉は8月の季語「秋」で、ちょっと季節はずれのように思いましたが、敢えて採りました。)

●食い散らす カラスと人の 柿合戦=木笛
◎久△前、ス=5点
(久:この句が気になって気になって仕方がない。個人的には、人を熊に変えたいのですが、どうでしょう。タイムリーだと思うのですが。 ス:日常をリアルに描きつつユーモアも感じる。)

●波の華 舞うも散りぢり 海食崖=久郎兎
○喋△木、前、君=5点

●古き家鈴生りの柿アートかな=スライトリ・マッド
◎入△木、平=5点
(入:長年風雨に晒された家壁の色に、柿朱の芸術。 平:一つのテーマにこだわった同一人物の句か。)

●風に泣く 安芸の宮島 浪に坐す=久郎兎
△澄、木、入、資=4点
(入:残念なことです。 資:うまいなあ。鹿も待つ安芸(秋の)宮島,今年は残念ですね。)

●蓼食らふ 虫も好きずき 芸の道=前鰤
△平、喋、資=3点
(平:本気じゃないでしょうが。 資:たでくふ虫も好き好きですね。文句なし。)

●夜食して 絵の一枚も上げられず=入鈴
△前、ス、資=3点
(前:試験前の一夜漬けと一緒?? ス:わかるわかる、この気持ち。)

●秋深し茸づくしの芋煮食べ=スライトリ・マッド
◯木=2点

●今思う 欲に対いて 生き来しや=君不去
◯月=2点
(月:「対いて」が解釈しきれないんだけど、なぜだかすごく惹かれてしまいました。無季であることも、句の内実に重味を加えている気がします。)

●終着駅もうラフランス食べ頃か=資料官
△一、久=2点
(久:ラフランスって果物だったような。長旅の列車の中では香りが漂ってきそう。)

●友の芸集うも楽し暮の秋=五六二三斎
△月、喋=2点
(月:Thank you so much!)

●御食いぞめ 春まで待てじと 芸ごとも=久郎兎
△一=1点

●寿司食むとまずは縁側 友と吾=入鈴
△ス=1点
(ス:なんかほのぼのしてていい。)

■雑感
A部門、三度目の『露』に挑戦、見事に本領発揮の入鈴と、初挑戦であっぱれ!一席をゲットされた君不去のお二方に「部長・特別賞」として(おそまつではありますが)個展用に企画・製作した「2005年カレンダー」を3部ずつ贈らせて頂きます。(個展、今回は京都と福岡で開催、という事情もありましたので、あえて東京のおふたりに・・)おめでとうございます。
入鈴は前回、A,B部門ともに「一席」という偉業を成し遂げ、本来なら前回に「部長賞」表彰すべきところ、採点ミスなどもあって編集上でもタイミングを逸してしまい、今回に持ち越しという意味もありました。(ごめん!)
ところで、(今や倶楽部でも、押しも押されぬ実力者!)五六二三斎殿と私とで「口裏を合わせて」実験を試みた回文作戦(上か読んでも下から読んでもおんなじ文)は、技巧だけで内容が薄っぺらな句だったせいか、みなさんの評価ではまったくの不発に終わってしまいました。「受け狙い」の浅ましさ、さもしさはやはり品を欠くものであったと深く、反省!反省! 俳句の道は遠く険しいものであります。だからこそ面白いのかもしれません。これからも焦らず、投げ捨てず、地道に俳句道に精進致す心づもりでありますのでよろしく。 (丘ふみ游俳倶楽部編集長 月下村。)

B部門入選作

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