*B部門入選作発表*


兼題「螢」・「十薬」*全42投句(入選37句)

【特選】

一席
●立ち話弾み十薬背伸びする=夏海


◎入○前、砂、白△資、五、水=12点
(入:どくだみには二つの顔があると思われ、時には10、22や26の句のように映ることもあります。 白:作者は主婦? 情景と語感がよく合っているように感じまた。)


二席
●墨染の森どくだみのありありと=香久夜


◎二、百○夏、君△水=11点
(百:暗いところに白く花だけ浮き上がるように咲く感じがよく出てたので。 夏:薄暗い中で白い花が群れている様子が見えます。)


二席
●包みたる掌に蛍火は囁けり=夏海


◎君○澄、メ、香△男、砂=11点
(男:そうやって不思議な光を覗いてました。 メ:神秘の光りです。 香:そして囁きを聞くようにそっと掌を開くものね。)


二席
●ひとよならいづくへたれとかごほたる=香久夜


○資、五、喋、水、百△君=11点
(五:すごい情熱の句! 百:そんな余裕無いと思うけど。読み手の思い? 月:ひらがな表記がなかなか色っぽい恋句ですね!)


【入選】

●どくだみや羅針盤なき家を呑み=水音
◎五、夏○月△前、入=10点
(五:羅針盤が何とも言えないですね! 夏:「羅針盤」が利いてます、凄い! 月:最近、家族間の悲しい、忌わしい事件をよく耳にします。)

●ほうたる戀甘い苦いと明滅す=月下村
◎水○ス、香△前、メ、百=10点
(ス:わかりやすくていい! 香:歌と掛け合わせたところがうまいな。 メ:短い恋かも・・・。 百:来い」と「戀」。にくい!)

●蛍追ふ子らのひとみにともる灯や=君不去
◎澄、メ○男=8点
(メ:素直ないい句です。情景が浮かびます。 男:ホタルを追うって子どもの自然ですよね。ホタルを追ってた川も今は濁ってしまって 。)

●どくだみの白に囲まれ鯉眠る=資料官
◎月○二△喋、澄=7点
(月:「それがどうした」句の成功例です。妙にこちらを納得させる力があります。説得力があればそれは「そうなんだ☆」句、となります。)

●ほうたるをびっくりばこに幽閉す=月下村
◎喋○水△男、香=7点
(男:ビックリ箱の発想が素晴らしい。開けた人もビックリ。 香:悲劇の予感。)

●蠢きて夜の十薬虫なりき=入鈴
◎前○百△資=6点 (前:不気味です。 百:夜にも怪しく光る蛍のようなドクダミの花。 資:虫のつく漢字は難しい。ホントに好きなんだ。)

●笹竹に蛍放てり父母ありて=夏海
◎男、香=6点
(男:命の大切さを子に教える・・そういう自分だったか反省しつつ。 月:△に採るかどうか迷ったんですが、「父母ありて」の意味がもうひとつ伝わってこなくて・・・。 香:両親の元にいる〈た〉安心感が伝わり悲しい。)

●十薬や佐賀の田舎に母ひとり=資料官
△月、男、五、夏、喋、砂=6点
(男:母には弱いんです。 夏:お母様への思いが伝わってきます。 月:この句では「佐賀」のポストプレーが点に結びついたのではないでしょうか。)

●夕闇の確かな五感螢川=五六二三斎
◎里、ス=6点
(ス:ホタルに会えましたか?夜を感じる五感がユニーク!)

●きっとまたこのひこのばしょほたるがり=五六二三斎
○資、男△百=5点
(男:自然がなくなる中、少なくともそうありたい。 百:ほたるがりの場所は特別な場所。)

●霧深みあくがれ出づる蛍火や=君不去
○里、喋△香=5点
(香:あくがれ出づるがいいですね。)

●この世では添えなかったの恋蛍=水音
○砂△五、澄、香=5点
(香:ひと夜のあはれ。)

●どくだみや家族の記憶埋もれをり=水音
△月、ス、入、メ、百=5点
(月:いつのまにか気がつくと庭を覆い隠すように繁茂している十薬。忘れる事もまた人間の持つ力、すごい生命力です。 ス:近所の空家の日陰にもビッシリと。強くて、さみしいとこのある花ですね。 メ:悪い記憶は早く忘れたい。 百:ドクダミにまつわる家族の記憶。)

●ほうほたる君のためだけ光るんだ=スライトリ・マッド
○白△入、君、メ=5点
(白:賢治風…トシへの挽歌のような感じが気に入って選びました。 入:蛍イカの句とどちらをとるか迷いましたが、前向き作者のほうを。けなげですもの。 メ:振り向いて答えて欲しい。 )

●いぢらしきニ冊の句集蛍籠=月下村
◎砂△ス=4点
(ス:よくわかんないんですが、なんとなく。いぢらしい二冊の句集って?)

●十万の星団となるや蛍合戦=五里
○前、入=4点
(里:昔、基山の地で見られた蛍球。 入:威勢の好い話ではありませんか。)

●十薬とてるてるぼうず雨が降る=喋九厘
○入、夏=4点
(入:幼い頃住んでいた社宅を、懐かしく思い出させてくれました。 夏:子供の頃の記憶がフラッシュバック。 月:「十薬」と「てるてるぼうず」の対比が面白い! で、やはり雨は降ってるんだ、写生句なのか?)

●どくだみや名を知ればなほ深き白=香久夜
◎資△月=4点
(資:私も単なる毒草と思っていました。 月:「薬」でもあり「どく」でもある面白さ。)

●螢袋こひの二文字透かしみる=スライトリ・マッド
○五△資、砂=4点
(五:丘女の情熱には降参!)

●十薬や百千万の祈りあり=五六二三斎
○里△前=3点

●蛍火の閃光のごとプレーリー=ひら百合
○ス△夏=3点
(ス:プレーリーで光るもの、見てみたいです。 夏:プレーリーの蛍は逞しそう!)

●蛍火や網を離れてふたつみつ=男剣士
○君△水=3点

●覚醒と微睡みにある夏至の朝=五里
○メ=2点
(メ:だんだんと苦にならなくなってきました。 月:兼題はいづこ?)

●どくだみやサーカスさみしピエロ笑む=スライトリ・マッド
○月=2点
(月:ピエロのメーク、目の描く白十字。好みの句です。)

●蛍飛び光の糸の先君がいた=前鰤
○澄=2点

●おとめ山 蛍火ひとつ 眼にとまり=男剣士
△二=1点
(男:おとめ山・・・新宿区下落合にある小さな公園。)

●十薬は口には苦し祖父のこと=資料官
△里=1点

●心中の毒出し白し十薬花=君不去
△ス=1点
(ス:強烈!)

●どくだみの十字の花に祈りなば=メゴチ
△里=1点

●(どくだみ)やモルタルの陰鞠隠す=入鈴
△君=1点
(月註:原句「どくだみ」は漢字ですが、文字変換できませんでした。)

●猫の目に蛍追ひけり日射の縁=入鈴
△喋=1点

●ホタルイカ青く光って食べられて=メゴチ
△夏=1点
(夏:「ホタルイカ」も切ない。)

●るんるんと闇の向こうの螢坂=喋九厘
△澄=1点


■雑感

この六月号で丸二年になる。
会員もおよそ、定着してきた。個々のレベルはどんどん向上し、内容はますます充実してきたと思う。
その一方で、見えない表現の壁にぶつかっている、(ぶつかってきた)人も何人かいるのではないか。
新しい表現形式を見い出そうとしている人もいるだろう。まだ模索中という人も、少し掴みかけた人もいるかもしれない。
俳句道とは、このように「それがどうした」句と「なんのこっちゃ」句の間を行ったり来たりしながら、ゆっくりとそぞろ坂を登っていくようなものだ。
たまには休憩することだって必要である。
三歩先ばかり見つめて登って来て、ちょっと見晴らしの良い場所に着いたら、少し休んで、遠くの景をぼんやりと眺めてみるのもいいだろう。

比較的新しい方々の句の鮮度は素晴らしいですね!
帰って来たエースの文体にも、人を惹き付ける感性は相変わらずです。
皆勤でずっと続けてくれている方々、もし、辛いところにかかってきているなら、ここを我慢したらきっと次の段階へのステップアップに繋がると思いますよ。(半分、自分に言い聞かせてるんだけど・・。)

んじゃ、三年目も皆さん、よろしく!
(文責 中島。)
 

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