*B部門入選作発表*

兼題「過去」・「未来」*全37投句(入選33句)

【特選】

一席
●来世では鯨か冬の金魚かな=スライトリ・マッド


◎五○月、木、入、君△喋、久、前=14点
(五:昔、「私は貝になりたい」という映画があったことを思い出しました。来世のことを考えるまでに歳をとったか! 月:来世では五体倒地か尺取り虫。 入:こういう想像は脳みそを掃除してくれるから好きです。 久:今、来世のことを考えるのは、ちょっと切ないけど。何故泳ぐものがいいのか、冬の金魚は冬眠だから、やめたほうがいい。来世を考えずに今を生きようではありませんか。)

二席
●老いて今 八割過去の初冬かな=前鰤


○五、里、メ、喋、百、砂△月=13点
(五:人生八割を終えたのか?53/0.8=66.25があなたの寿命か? メ:しみじみとしてしまった。 百:確かに。 月:大酒呑みは五分増しです。)

二席
●半熟のデジャヴュの月や厨窓=入鈴


◎メ、二、ス○里、久=13点
(メ:過去未来とデジャヴュ、うまい! ス:窓がフレームの夜空に半熟の卵!があったらいいね。おなかすいたら食べる! 久:お題を十分に咀嚼したこの句にシットやニクサさえ感じる。多分多くの票を集めるだろうから○にしました。半熟→目玉焼き→月→厨房がデジャヴュでクルクル廻っているようです。)


【入選】

●小春日や鉄路に写す過去未来=月下村
◎百、砂○水△木、資、入、二=12点
(百:実感の強み。読み手が推測されるものは普通避けるんですが。 資:時の流れを感ずるのも鉄道風景。高千穂鉄道の未来はあるのだろうか?これは採らねば。)

●現在(いま)は過去今は秋過ぐ心字池=資料官
◎月○木、二、ス△喋、砂=11点
(月:古河庭園の心字池は「心」という字に似せて作られたそうですね。 ス:うーん、哲学的!)

●過客なり北山を越す冬の月=月下村
◎資、喋、前=9点
(前:大きなスケールですね。)

●赤林檎過去を背負ひて虫の宿=喋九厘
◎里○久、前△月=8点
(久:リンゴが熟した様子を、赤を付けて表現しているところがいいです。そのあとは、人生を例えたような、ちょっぴり辛いですね。 前:寂しい宿命か・・・。 月:虫から見たらお菓子の家ですね!)

●過去忘れ未来諮らず今を喰う=五里
◎澄、君△久、水=8点
(久:「喰う」が季語かもしれないが、身につまされます。)

●旧き友過去はと言はじ冬の宿=君不去
◎木○月△資、百、入=8点
(月:よっしゃ〜!皆で温泉行こう!! 資:うーん,ただ飲むだけか。それも良し。 百:「言はじ」は、これでいいのかしらん。)

●犬咆ゆる瞬く過去や冬の星=スライトリ・マッド
○資、入△里、メ、水=7点
(資:目に見ゆる星の光もまたたく過去か。 メ:冬の星って何故か寒く感じる。 入:犬のしこたま咆える現在と、恒星のしっかり瞬く過去との関係は?こんぐらがってて面白いです。)

●いまだ来ぬ人待ち顔に茶の花や=君不去
◎入○喋△澄、前=7点

●悔いなきは無きと知りつつ春を待つ=ひら百合
◎久、水△砂=7点
(久:否定の否定ときて、韻をふんでいるようで、今回の硬いお題を逆手に取っているようでおもしろい。)

●小夜時雨母の紬に袖通す=スライトリ・マッド
○資、百、二△砂=7点
(資:亡き母のことを振り返る,暖かな夜の幸せな気持ちを感じました。さよしぐれということばが良いですね。 百:これも誰か分かるけど、テーマにぴったりの素直さ。)

●石積みし過去に一石冬の朝=木笛
○砂△五、喋、入、君=6点
(五:宇美八幡の石積みを思い出しました。)

●稚児の手に未来の夢あり七五三=木笛
○前△里、百、水=5点
(前:夢があったのは、親の方でした。 百:すなお。)

●長き夜 夢も想いも 宙翔ける=久郎兎
○澄、水=4点

●幾千代を過ぎ去りしかな霜月も=喋九厘
○メ△澄=3点
(メ:スマートな句です。)

●過去未来秋風渡る太鼓橋=資料官
○ス△二=3点
(ス:アーチの橋がピッタリ!それもコンクリートでなく石や木の橋!)

●来し方の吾を吾とて抱締めつ=入鈴
○君△ス=3点
(ス:わたくしもさう思ひたい。)

●過ぎし日は小雪とともに降り積もる=メゴチ
○澄△君=3点

●二の酉で未来かきとる熊手かな=メゴチ
○五△月=3点
(五:よい着想でしたね。 月:縋っても詮無い事と知りながら・・)

●野菊咲く過去の一こま香りけり=木笛
△メ、久、前=3点
(メ:絵になります。 久:映画野菊の墓の最初のシーンのようです。)

●知りたくないあなたの過去を片時雨=五六二三斎
△メ、二=2点
(メ:片時雨がいいですね。)

●葱葱と過ぎ去る白きぬくきもの=月下村
△資、ス=2点
(ス:ぬくきものって何だろうな?おもしろくて。)

●ふと白秋下るしかない未来かな=資料官
△里、君=2点
(月:玄冬まで下りながらも未来なり。)

●秋過ぎて寂寥たるやブナ林=五里
△百=1点
(百:共感。)

●言の葉に託す過ぎし日感謝祭=ひら百合
△五=1点
(五:やさしい気持ち、有難うのその一言!これが大事だよ!)

●七五三未来へその笑み繋げてむ=君不去
△澄=1点

●ディラクエや孤高未来へ帰り花=五六二三斎
△ス=1点
(ス:ディラクエって何でしょう?花で希望が見える感じ。)

●バスハイク 一期一会の 小春かな=久郎兎
△木=1点

●ひとり夜に アルバム語り 燃える秋=久郎兎
△五=1点
(五:真野響子主演の「燃える秋」という映画を思い出した。)

●稜線の初冠雪や解ける未来=入鈴
△二=1点

●忘れんと思えばとこそ時雨ゆく=ひら百合
△木=1点

■雑感
 二六斎先生から次のようなアドバイスを頂きました。 『B部門のテーマ出題の部ですが、「過去と未来」は、句友の皆さんがチャレンジするには無理があるお題でしょう。私には出題にも問題があると見えます。季語を出題して(基本季語800)、歳時記で調べることを強いる方法もあるはず。例えば掛乞、媒逃とか。漢字ひと文字をお題として、熟語を調べてもらい、取り合わせの句として季語をいくつか、ふさわしいものを見つける手順を求める方法とか。』
先生の我が倶楽部に対する愛情と、質の向上を願う気持ちは本当にありがたいと思いました。何人かの句友にも相談してみたのですが、賛成、反対相半ば。私の意図するところは全くの初心者にとってまずは俳句を楽しむ事が一番。それから基礎をしっかりと勉強する。スポーツに例えるならルールもまだよく分らない段階で実戦練習をする。基礎体力をつけるのはそのスポーツが面白いと思えたあとからでも遅くはない、という考えでした。まだまだ季語の季の字も良く分らないというのが、多くの会員の現状だと思います。 でも、だからと言ってテーマ出題で俳句が楽しめるのかどうかは分りません。ただ、2年目からの熟語:反対語のテーマ出題の意図するところは、会員のみなさんのものの考え方(そこまでいかなくとも、個々の性格のようなもの)をお互いに知り合う事ができるのでは?と思ったからです。二六斎先生の意図するところを踏まえながら、もう少しこのテーマ出題を続けようと思いますが、皆さんの意見もどんどん聞かせて下さい。それを参考にして今後の兼題の出題の仕方を探っていきたいと思います。(本当は季語を兼題にするほうがテーマ出題を考えるよりずっと楽なんだけどね!)

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