*B部門入選作発表*

兼題「山」・「櫻」*全28投句(入選26句)

【特選】
一席
01●雨打ちて木肌芯より桜めく=入鈴

◎月、前、平、喋△ス、里、資=15点
 (月:あまりにもあやふやな存在でしかない自分に比して。 ス:花となるには雨も必要なんですね。)


二席
08●櫻茶や静かに開く夢の先 = スライトリ・マッド

○五、前、澄、入、君△月、二、喋=13点
(五:夢の先を配したのが佳なり! 君:櫻茶大好き! 月:ちょっとしょっぱいの嫌いじゃないです。 入:こんな時間も必要だ。)


三席
23●ボタ山のありかはここぞおぼろ月=君不去

○月、入、久△前、資、平、二、喋=11点
(君:”作兵衛さん”へ 月:ちょっと童話的風景。 入:かつての地形は、弥生の満月と好対照をなしていたことでしょう。 久:この句を作った人の発想はおもしろい。是非解説を聞いてみたい。 資:私どもが高校の頃のボタ山は緑もなくとん がっていましたが,最近は丸くなり緑に覆われて,何か人の姿を映し出しているようで。 ボタ山から蒸気機関車を思い出し採ってしまった。)


【入選】
03●うすべにの桜短歌は祖母口伝=平百合
◎五○喋△久、資=9点
(五:短歌をおやりのあの方の句か?祖母口伝というのが気に入りました。 久:「は」で広がった内容を祖母で締めたところがいいです。 資:ソメイヨシノも良いがうすべにのカンザクラや枝垂れ系の桜が好きです。)

02●一心に愛でる櫻や行となる=五六二三斎
○里、喋△月、久、君、=7点
(月:せめて一心でありたい。 久:おお芸術集大成。 資:阿蘇の名物。人と車に囲まれて。)

07●桜茶やかほりに去年の人想ふ=君不去
◎久○資△前、里=7点
(久:穏やかで品がある、人に紹介するにはgoodですね。)

09●櫻待つ三日つづきの小糠雨=月下村
○五、久、平△里=7点
(五:雨続きは、開花の頃の好天を暗示しているのか! 久:今年は櫻が遅いね。上品な仕上がり。)

15●手鏡ににじむ薄墨山櫻=喋九厘
◎資○前△五=6点
(五:手鏡を見ている方は丘女?丘男?丘男だったら、残念だな!)

19●班雪山(はだれやま)屏風は海に漕ぎ出でな=入鈴
◎ス、二=6点
(ス:なんかいい感じ!)

28●をみなかなやよひの山も花も香も=月下村
○ス、平、二=6点
(ス:私も弥生月生まれのをみなで〜す。)

25●山わらふひとつひとつが生きてをり = スライトリ・マッド
◎君○資=5点
(君:きっと意識しての平易な感じが好きです。 資:春の明るい山の生き生きした風情がにじみ出ている。)

05●裏庭にそっと咲きけり山櫻=五六二三斎
○ス、君=4点
(ス:山桜は孤独だ、私も裏山の山桜を句にしましたが、こっちの方が上ですね。)

12●酔狂やシャツ脱ぎ捨てて山笑ふ=五六二三斎
○月△入、ス=4点
(月:春は弛緩で緊張緩和! 入:この花冷えには風邪ひいちゃうけど、気持ちはわかります。 ス:楽しい感じ!たくさん脱いで!上だけね、これってセクハラ? 資:ひまはしを思い出した。)

20●花本番 根張り達者か 桜守=久郎兎
△前、君、平、二=4点

27●WAONなり櫻に遊ぶにっぽん史=月下村
○二△ス、喋=4点
(ス:桜、サムライ、和・・日本的なるもののキーワードだ!ローマ字書きがイイな。)

14●立山や屹立せるガトーショコラ=入鈴
○二△月=3点
(月:いかにも感じ出てるけど、これって季語はあるのかな? 資:加賀三昧の有閑マダムのどちらかの作と見た。)

21●富士の山姿覚えし日永かな=資料官
◎澄=3点

22●ふるさとのまぶたに桜色濃くて=平百合
◎入=3点
(入:ただ綺麗、ただ懐かしい。ふるさと{や}?)

04●薄桃に独り咲きしや山櫻 = スライトリ・マッド
○澄=2点

06●櫻花散る齢重ねて知覧にも=喋九厘
△久、君=2点
(久:もっと知りたい。是非行きたい。)

13●大地揺れさくらも蕾雨模様=資料官
△澄、平=2点

10●桜山 稜線の奥 透けし青=久郎兎
△澄=1点

11●知りつつも 今満開の山桜=前鰤
△入=1点
(入:このジレンマ。)

17●涙かな山風に発ちし春花粉=君不去
△二=1点
(資:私もこの歳になって杉ヒノキ花粉症候群。つらいつらい。)

18●野焼き済み阿蘇山麓の一心行=喋九厘
△澄=1点

24●山わらい大地ゆさぶり茶碗割る=平百合
△入=1点
(入:寒さの無表情が緩み始めたと思ったら、揺す振られ、一気に非日常の目覚め。 資:博多には地震は縁がないと信じていたのでえらいショックだった。笑ってはおられん。)

■雑感
今月の兼題は「山」と「櫻」。
櫻咲き、櫻散るように静かに狂いたい、といったら、誤解されるだろうか?
私のカウンセラーで友人でもある精神科医に聞いた話であるが、この世界で一番空気が澄んでいる場所というのは精神病院とか結核病棟のある建物の廻りの杜だそうだ。
自然の森や川や木々が一杯の場所の空気は透明ではあっても人間の温かみのない冷たい気配に満たされているらしい。
それに反してそれら病院の廻りの空気は「透明」ではなく、漂泊された色とは異なる、本源的に「白い」気に満たされているらしい。
「老人ホーム」などは全く逆で、彼等老人達を見舞う親戚や知人達の人間的な思惑と煩悩、嫉妬やねたみでとても濁っている(逆説的に言うとカラフル)そうである。
人間社会の思惑や競争や奢り、貪りといったものに敗北して自己を破壊せざるをえなかった狂人というものは、いわば精神的に壊れた玩具のごとく、澄み切った存在でもあるのかもしれない。赤子や痴呆老人がまさしくそうであるように。
これ、狂ってない奴ってどこか濁ってるってことなのでしょうか、何か示唆に富んでいるような・・・むむ。
(丘ふみ游俳倶楽部編集長 月下村。)

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