*B部門入選作発表*

兼題「記念日」「秋の七草」*全45投句(入選36句)


【特選】

一席
●失ひしものと得しものこぼれ萩=五六二三斎


◎白、資、君○百△雪=12点
(白:人を哲学者にするきっかけってまったく意味不明のものだという気がしています。「失ひしものと得しもの」がちょうど按分された狭間に人は何を見るのでしょうか? この句が単に猪鹿蝶を作り損ねたときに読んだ句だとしても、やはりひとつの哲学を感じます。 資:こぼれ萩の句が3句ありましたがなかなか捨てがたくこの句を選。 百:こぼれ萩が多かった中でこれを取りました。)

一席
●月の海漣立ちぬ芒原=葱男


◎久、メ○二△男、白、資、君=12点
(久:海=芒原と解釈しました。情景が浮かびます。月は満月、雲白くでしょうね。 男:似た光景九重で見ました。 白:またまたソ連版「戦争と平和」の一シーンを連想させてくれた句です。ナターシャが月夜の空にはばたく幻想的なシーン。30数年ぶりに再会したそのシーンは記憶の中のものとは違っていたのですが…でも私の好きな情景に違いはありません。 資:写真でよく見るが,すすきのさざなみが良い。ただ漣が読めなくて・・・。)

三席
●けんかして利かぬ口なり白桔梗=雪絵


◎水○ス△葱、五、資、喋、香、二=11点
(ス:桔梗が効いていますね。 葱:「白桔梗」がよく効いています。 五:つんとした女性のイメージか? 香:白桔梗もやがて癒しの花に見えてくるかも。)


【入選】

●千年(ちとせ)過ぎ色鮮やかに式部の実=君不去
◎香、百○雪△男、五=10点
(百:源氏物語千年記念。 五:少し美しすぎるような・・。二六斎宗匠の仰る「せつなさ」を出すには中七を変えることでしょう。)

●悪童の逃がすかなへび葛かずら=スライトリ・マッド
○雪、君△夏、白、香、百=8点
(雪:古きよき時代の子供たち!私もかぁ〜。 夏:いたずらっ子の心優しさが微笑ましく。 白:蔦かずらの中に逃げていくひょうきんな動きのかなへび…その尾はひらかなを描いているよう…〈だからかなへびかって?〉…こんなアホな連想を引き出してくれたこの句はやはり…。 香:中七は、へび逃がすかな、ではいけませんか? 百:秋の風景。)

●星月夜燻し銀なる句集かな=香久夜
◎夏、澄○君=8点
(夏:私たちには一番の”記念”。)

●秋の暮指輪の数字翳し居り=ひら百合
◎砂○香△水、メ=7点

●蓮如へと独りゆく径こぼれ萩=水音
○五、メ△資、喋、砂=7点
(五:これも京都を感じる句!宗教的な感じは、「独りゆく」に表れている。 葱:こういう雰囲気は嫌いじゃないです。五木寛之かと思いました。)

●ろうそく吹く子の目まあるく粒まろん=君不去
◎喋○夏△水、二=7点
(夏:誕生日?子供の表情が生き生き描かれて、上手いなあ! 葱:可愛いんでしょうね、うちには子も孫もいないので、親戚の幼子達とたまに接するぐらいですが、なんか、ちっちゃい子はこちらが変に緊張してだめです。)

●秋鯖を焼いて誕生日の夕餉=資料官
○白、砂△夏、ス=6点
(白:日々是好日という平和を感じると同時に人生の悲惨をも感じてしまいました。昔から記念日というものが嫌いなんです。覚今是而昨非…それが記念日なのですから…。 夏:庶民性が良い。実際、秋鯖は美味しいし。 ス:健康的でよろしおすなあ〜!)

●絵手紙の秋の七草光る文字=メゴチ
◎二△久、百、澄=6点
(百:絵手紙とは風流な。)

●鬼の子や源氏の君も千歳とて=夏海
◎五○水△雪=6点
(五:源氏物語誕生千年!ほんとに千年も愛されてただ者でない鬼か?と言いたくなる源氏の君!感動の句ですね! 葱:「鬼の子(蓑虫)」と源氏の配合に惹かれましたが、座五が流れてしまった感じで惜しい。 雪:「鬼の子」って、蓑虫のことなんですね〜。)

●数ふれどひとつが足りぬ秋七草=白髪鴨
○男、喋、澄=6点
(男:分かるその気持ち。 葱:なんてことはないけど、これが俳句、という感じがします。)

●千年の光の君や神無月=砂太
○葱、香△五、澄=6点
(葱:「源氏千年紀」を詠んで堂々たる句です。 五:天位句との違いは、さらっとしてることか?感動がやや不足!)

●法螺貝の緒房赤しや薄山=夏海
○久、資、水=6点

●行幸の石文古りぬ百舌日和=夏海
  ○砂、二△水=5点

●空澄みて紅き産着を抱きけり=香久夜
△夏、砂、百、君、二=5点
(夏:お孫さんの初宮参りの喜びが溢れています。 百:お孫さんですね。)

●来世にも光悦ありやこぼれ萩=葱男
◎男△久、メ=5点
(男:古刹巡りでしょうか。)

●静かなる峠の桔梗一里塚=久郎兎
○男、澄=4点
(男:静かさの中の桔梗がいいですね。)

●秋声や鉄道記念日の汽笛=資料官
◎雪△砂=4点
(資:10月114日は「鉄道記念日」。 雪:まさに「記念日」の句と思いました。清々しい感じ。)

●はなむけに京のかんざし女郎花=喋九厘
○五△澄、君=4点
(五:今度の同窓会のはなむけ的な句!タイムリーに○。)

●パール婚知るはずもなく栗を食む=雪絵
○百△葱、男=4点
(百:うちもそうでした。もう言わないんだよね。 葱:なんともシニカルな夫婦間の心情を詠んで、秀逸です。 男:知ってて言うのも照れくさい。)

●にこやかに迎へる指揮者文化の日=五六二三斎
○葱、ス=4点
(葱:いいなあ〜。指揮者にもいろんなタイプがああるでしょうが、あんまりすごい芸術家が紙を振り乱すより、市井の音楽家的な風情にほっとします。 ス:小澤征爾さんが文化勲章もらわれていてぴったし!!)

●をみなえし林真理子は多動症=水音
◎葱△久=4点
(葱:面白い! こういう断定が気持ちいい。しかし、本当の「多動症」の子どもは大変なんでしょうね。笑い事ではないですね。 久:障害や病名をさりげなく詠んでみたいですね。この句はをみなえしが下の句と関係があるのかわかりませんが。)

●金婚を祝えず久し里の秋=久郎兎
◎ス=3点
(ス:まだまだエメラルド(55)、ダイヤモンド(60)、プラチナ(75)もありますよ!)

●散歩するおじさんおばさん藤袴=資料官
○喋△葱=3点
(この、なんともすっとぼけた感じが面白い! 藤袴ってのが笑えますね!)

●しとど濡る足袋の重きや秋七草=水音
○メ△雪=3点
(葱:観察が効いています、写生句派なら採るところでしょう。)

●撫子やおかっぱあたまの女の子=雪絵
△喋、香、ス=3点
(香:素朴な感じが伝わります。 ス:昔はみいんなおかっぱでしたね?! 葱:可愛い!、ちびまるこちゃんか。)

●秋深く失恋記念日またひとつ=喋九厘
○久=2点
(久:「秋」「深」「失」が連動していていい感じ。)

●尾花立てきみ待つ背に闇の香=白髪鴨
○資=2点

●とりあえず買い物籠の蘿蔔菜=ひら百合
○白=2点
(白:いろいろと理屈ばかり考えているときもあれば、単に感性の流れだけに身を任せる心地よさってありますよね。俳句作りって、大根をどう炊くかって感じにも似ているような気がします。風呂吹きのようにあさく薄くとか、烏賊大根、ぶり大根のように対象の味とコラボするとか、おでんのような出汁味のしみ具合を感じたいとか…。でもとりあえず、籠に入れるべきは蘿蔔菜なのです。)

●棟上げの村社の空を去ぬ燕=砂太
○夏=2点
(夏:情景が見えるようです。 葱:熟練の作。「去ぬ」がいい措辞ですね、上手すぎてなんとやら。)

●青く鈍く金の屏風に月昇る=スライトリ・マッド
△砂=1点
(ス:N兄誕生日に。)

●秋耕の記念句集の嬉しさや=君不去
△ス=1点
(ス:私も嬉しかったです!)

●散り果てし萩の花踏み寺まいり=久郎兎
△メ=1点

●もういいの三十余年(さんじゅうよとせ)暮るる秋=ひら百合
△白=1点
(白:三十余年の起点はいつなんでしょうか。半ばは諦念に満たされていても、それでもまだジタバタしている自分と重なる共感のある句です。こんなものなんですかね〜人生って。でも、まだ違う…と焦りを感じながら何かを追いかけています。)


B部門入選作

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