*B部門入選作発表*

兼題「映画・ドラマ・演劇」*全40投句(入選32句)


【特選】

一席
●臘月や内に鬼飼ふ姫の顔=夏海


◎水、雪、砂○久、白、香、資、前、君△百、二=23点
(夏:文楽人形。 水:臘月」をもってきたことで、姫の内面がより確かに見えるような気がする。 雪:「鬼飼ふ」の表現がいいですね! 久:姫が鬼に変貌するのには誰もがびっくりだなあ。 白:和の詩形には、和の素材がやっぱりしっくりきますね。 百:ロウバイは私にとって特別な花で、文楽の鬼になる顔も印象深いので・・。 葱:早変わりの技ですね! )

二席
●街の灯や指に感じる冬の薔薇=葱男


◎資、君○メ、夏、白、ス△男、百、喋=17点
(夏:盲目の少女に恋するお話ですよね? 白:最初はあまりぴんと来ない句だったんですが、馴染みがよかったんですね。冬のバラを感じる手は凍えていませんよね。 ス:チャップリンは偉大だ! 百:はまってた時期がありました。)

三席
●バラライカゆかし悲しき狐の目=白髪鴨


◎葱、百、澄○五、秋△砂、ス、入=16点
(白:セルゲイ・ボンダルチュク/戦争と平和 狐狩りのシーン。 葱:「バラライカ」と「狐の目」の取り合わせは、映画と関係させなくても、句として独立していると思いました。 百:これは冬のシーンが印象的ですよね。 澄:なんかグッときます。 五:ゆかし悲しきとは、よい表現です。 ス:バラライカの音色が聞こえてきそう。 入:セルゲイ・ボンダルチュクは監督もしていました。ピョートル役でこのシーンに出ていたかなあ?)


【入選】

●冬満月カクテルの名はXYZ=葱男
◎夏、二○雪△五、水、香、喋=12点
(葱:松田優作「野獣死すべし」。 夏:実はこの映画見てないんですが、句として面白いと思いました。 雪:何かミステリアスな感じ・・。 五:洒落た感じに仕上がってます。一シーンを想像するような感じ。 水:どんなカクテルだろう??)

●ポインセチア父の記憶のデートリッヒ=雪絵
◎秋○葱、砂、喋△白、ス、君=12点
(葱:先に詠まれた感じでくやしいです。私の父の「ディートリッヒの一本」は「間諜X27号」でした。 白:ディートリッヒならむしろ自身の記憶ではないでしょうか。ただ、そんな色あせた画像を髣髴とさせる捉え方はできるかも…そしてそこに色鮮やかなポインセチアが…対比がよかったので選んでいました。 ス:デートリッヒはたしかに私たちの前の世代。)

●埋火や獄に流れしモーツァルト=スライトリ・マッド
◎五、香△秋、水、雪、喋、入=11点
(ス:『ショーシャンクの空に』1994。 五:埋火との取り合わせが素晴らしい!獄との相性が抜群です。モーツァルトのアマデウスが思い出されます。 入:あの結末はちょっとね、だがこの場面だけはいい。 葱:なんとなく想像はできるんですが、なんせ観てないもんで。 兼題を出す方が悪い!)

●玄冬のその眼笑はぬチャップリン=夏海
○葱、メ、水、雪、砂△白=11点
(葱:上手い! いいところを衝いていますね。チャップリンの他にチャップリンなし!です。 水:演技は春うららのようでも、その目は確かに厳しい。 雪:私もチャップリンを詠もうと思いましたが、この句のようにうまく詠めませんでした。 白:たしかにチャプリンの目はいつも冷めているんです。それが良さでもあるんですが…。)

●アウトローから和音へと虎落笛=五六二三斎
  ◎前○ス、資△砂、君=9点
(五:中西和久「アウトロー・WE 望郷編」。 ス:原作の句集だけは読ませて頂きました。私も中西くんの舞台を見てみたいです。)

●過去問わぬ砂の器に雪の痕=久郎兎
○男、香、君△五、資、前=9点
(男:砂の器自体が素晴らしかった。 五:上五を工夫すれば、もっとよくなる。もう一捻り。)

●皮切りは「モスラ」見しこと古日記=雪絵
○男、水△葱、メ、夏、入、君=9点
(男:古日記とモスラの組み合わせが良かった。 水:幼い頃の記憶が一生を左右する。 葱:中学ぐらいかな? ゴジラと若大将の二本立てでしたね、懐かしい。 夏:「モスラ」とは懐かしい。 入:作者に聞きたい、私は姉と中洲の映画館で、どこだったか知りたいです。)

●老いてなおアポロンに奉ぐ冬苺=白髪鴨 
◎ス○秋、入△葱=8点
(白:ルキノ・ヴィスコンティ/ヴェニスに死す。 ス:ダーク・ボガードのマーラーでしたね?!あの美少年も今はおじさんでしょね!! 入:廃園のアポロン像にちょっと絡む冬苺などを想像。 葱:「奉ぐ」は「ささぐ」と読みたい。冬苺の甘き頽廃が匂います。)

●氷塊の知らぬ舳先の熱き恋=久郎兎
◎メ○百△男、香=7点
(男:風の冷たさに勝る恋の熱さですね。 百:誰にでも分かる謎かけみたいなのが面白い。)

●ゆきぼたる富良野離れてゆきをんな=葱男
  ◎喋○五△ス=6点
(五:ほたるさんは、篤姫の侍女してましたね。彼女のことを思い出しました。 ス:広大な雪の原野が浮かびました。)

●海の底眠る貝にも冬の波=男剣士
◎久△秋、澄=5点
(久:フランキー堺に軍配。緊張感が違うけんね。)

●おにぎりに微笑むもたい返り花=香久夜
○澄、喋△資=5点
(香:映画「かもめ食堂」。 葱:「もたい」と実名を持って来るのが面白い! 「モアイ」みたい。)

●屋根裏に墨壺置かる霜の声=スライトリ・マッド
◎入○二=5点
(ス:『みんなのいえ』2001。)

●年の瀬の街の灯寂し千鳥足=前鰤
◎男△秋=4点
(男:街の灯掛かりでしょう、千鳥足も今年は…。)

●日暮れ待つ野外映画や冬銀河=雪絵
○入△男、資=4点
(入:素敵! 男:待つ間の時間がまた最高でしょう。)

●冬灯袋小路のヴィスコンティ=入鈴
○百△雪、白=4点
(百:マーラーが聞こえる。 白:ヴィスコンティ派として一票、といってもこれがヴェニスに死すを詠んでいるとしたら、あの散策を袋小路と捉えた感性に一票なんです。 葱:ヴィスコンティは袋小路に入っていたのか? 「袋小路のヴィスコンティ」か「ヴィスコンティの《描く》袋小路」なのか少し迷いました。)

●冬の月止まることなき二楽章=五六二三斎 
◎白△水=4点
(五:中西和久「ピアノの話」。 白:話そのものは知らないのでなんとも言えないんですが、スクリャービンのソナタを連想させたので選んでいました。 葱:観たいなあ〜。)

●犬の名もエンドロールに義士会かな=スライトリ・マッド
○二△夏=3点
(ス:『花よりもなほ』2005。 夏:こういうウフフな句、良いですね。) (葱:犬のタレントですね、名演技にも骨一本かな?)

●篤姫の白髪増えけり十二月=資料官
△五、澄、砂=3点
(五:篤姫句は一つ採りたいと思ってました。我篤姫句とどちらが点盛りありか競争です。)

●雪を追うただ美しいと信ずる雪を追う=白髪鴨
○澄△葱=3点
(白:クロード・ルルーシュ/グルノーブルの十三日 邦題・白い恋人たち。 澄:なつかしい! 葱:わかりました。確かに雪も音楽も美しい! 入:ルルーシュ?監督の執念に共感。)

●お守りの再会ならず枇杷の花=五六二三斎
△香、前=2点
(五:「篤姫」最終回。 夏:枇杷が大好物だった篤姫でしたね。)

●ゴジラ来襲師走騒がせ派遣切り=喋九厘
○久=2点
(久:「ゴジラ来て」と5字ではなく来襲を使ったのはそのインパクトか。 葱:起こるべくして起こった悲劇、ゴジラというよりはキングギドラみたいな怪獣ですね、「金融」は!)

●聖夜より本が綾なす恋に落つ=久郎兎
○前=2点
(葱:すてきなラブ・ストーリーを想起させてくれます。)

●涙脆くなりてドラマに冬の音=砂太
○夏=2点
(夏:上五に共感。 葱:「風のガーデン」は泣けました!)

●老医師の最後のせりふ雪が舞う=資料官
△メ、澄=2点 
(資:「風のガーデン」。 葱:「緒形拳」の最後の台詞でもあった訳ですよね? う〜ん、思い出せない。もし覚えていたら教えて下さい。「カンパニュラの恋」の最後の歌詞は「降るはずのない雪が舞う」でした。)

●相棒やカシオペアにて冬の旅=資料官
△久=1点
(久:相棒、好調ですね。カシオペアがリッチな列車であることをこのテレビドラマで再確認しました。構成もしっかりしていて再放送があるやも知れません。)

●死神が手を差しのべる冬の雨=水音
△メ=1点
(水:「死神の精度」。)

●遠山の時雨るる京のロマンかな=砂太
△前=1点

●ドラマかな少年院の寒の声=砂太
△雪=1点

●冬ソナを幾たり見たり冬の虫=入鈴
△久=1点
(久:虫=マニア? 葱:ストレートな心情が吐露されていて好ましい句でした。)

●ベンハーのスペクタクルや冬の海=メゴチ
△久=1点
(久:ここはどうしても冬なのか?)

●雪の無いタルコフスキーだけど雪=入鈴
△百=1点
(入:ムソルグスキー・オペラの演出。 百:みてみたい。)


【無選】

●オペラ座の地底の湖は凍らざる
(葱:地下の貯水池でしょうか? 「凍らざる」の意味は観ないと分からないのか? どうか?)


B部門入選作

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