*B部門入選作発表*

兼題『季:金魚玉』『漢:折』=全48投句(入選32句)

【特選】

一席
●夕暮を折つて日傘を仕舞ひけり=十志夫


◎夏、水、喋、ス、メ、葱○ラ、紅△久、香=24点
(夏:「夕暮れを折つて」の措辞が素晴らしい。 「夕暮れを折る」とも、折りたたみの日傘を仕舞うように夕暮れを仕舞うとも取れますよね。おもしろいです。 ラ:「夕暮を折つて」というレトリックが巧い。 ス:ひょっとして「空蝉の沖ゆくときを深ねむり」の作者の句か? 葱:「夕日を折る」というレトリックの面白さに惹かれました。 紅:「折つて」が「夕暮」と「日傘」両方にかかっているように読めるところが巧みです。 久:折は時の代わりだと考えました。雨の止み加減にも似てますね。)


二席
●金魚玉さかさにとほる貨物船=資料官


◎雪○砂、香、喋△秋 ス、メ=12点
(ス:山手のドルフィンを思い浮かべます。)


二席
●その部屋の秘密知りたる金魚かな=水音


◎紅○秋、葱△十、ラ、香、ス、メ=12点
(紅:ミステリアスでいいですね!たいした秘密ではないのでしょが、思わせぶりがとても楽しいお句です。 葱:「金魚」というよりどちらかと言えば、得体の知れぬおおきな熱帯魚かアマゾンの怪魚のような絵面が浮かびました。でも「金魚」なら、まだ幼い女の子の可愛い秘密かも。 十:サスペンスドラマの一場面のような面白さ。 ラ:どんな秘密なのでしょうか。ドキドキ。 ス:金魚のミタみたい。私は見てなかったですが。)


【入選】

●幾歳を夭折と呼ぶ沙羅の花=夏海
○ま、紅、喋、雪、メ=10点
(ま:季語がぴったりですね。幾つでしょう。 紅:「折」から「夭折」を導き出した事も素晴しいし、また季語が一日花の沙羅の花でよく合っています。)

●金魚玉三回はたく化粧水=まさこ
◎十、五○ス、葱=10点
(十:風呂上りの涼しさ、爽快さが、目と耳から感じられる。 五:鏡の側の金魚鉢。金魚に化粧落としを見られているのか? ス:滑稽味があってよいです。 葱:夏の汗ばんで少し火照った女の化粧に江戸風の粋な色香を感じました、あしらいとしての「金魚玉」がその女性の優しさ、可愛らしさを上手く喚起させてくれます。)

●折り合ひを付けて今日まで立葵=五六二三斎
○十、水、ス△香、ま、秋=9点
(十:夫婦間の事とも、定年を迎えた会社の人間関係とも取れる。いずれにしても実感。 水:立葵のすっくとした、あでやかな姿。立葵の句にこういう取り合わせができるのかと。 ス:いろんな想像が出来る句ですね。 ま:実感がこもっていますね。立葵が効いています。)

●学校へ行けぬ子のをり金魚玉=水音
◎ラ○砂、雪△ま、紅=9点
(ラ:金魚玉を眺めて、その子の心が癒されることを祈りつつ。 ま:切ないですね。 紅:我が家もこんな事がありましたが、今は懐かしく語れるようになりました。行きたくない時は行かなくていいのですよ。)

●泡と泡どうぼやくとも金魚玉=喋九厘
◎ま○秋△久=6点
(ま:表現がお上手。金魚の気持ち、私もそう思います。 久:泡泡をぼやく、としたところがいいです。)

●時折は亡き人のこと金魚玉=雪絵
○夏△砂、ま、水、紅=6点
(夏:この歳になると大切な人を見送った経験が重なってきます。 ま:私もよく想います。金魚に話しかけたりしながら。 紅:金魚玉ももう空っぽなのでしょうか?思い出す事がご供養になりますね。)

●図書館の本に折り目や半夏生=まさこ
○香△砂、十、ラ、水=6点
(十:古本屋で買った本に挟まっていた押し花などと同様に、自分以外の読者を発見した瞬間の驚き。 ラ:「半夏生」という季語が利いています。)

●波柄の刺し子の布巾金魚玉=まさこ
○水、資△五、ラ=6点
(水:青海波でしょうか。ちょっと近いような気もするけど〈実は近いってよく分からない〉。 資:波柄の布巾と金魚玉の組み合わせの妙。 五:布巾は金魚鉢を拭くためのもの?なかなか粋な取り合わせですね。 ラ:「波」と「金魚」が共鳴しています。)

●折尾てふ駅の立ち売り夏つばめ=資料官
◎砂△紅、喋=5点
(紅:懐かしい地名を思い出させていただきました。博多からの帰省の折はいつも折尾の「かしわ飯弁当」を買っていました。)

●キャラメルの沈んでゐたる金魚鉢=ラスカル
○十、久△五=5点
(十:おそらく幼子の悪戯か。自分の好きなものを金魚にも・・・発想が可愛い。 久:考えたら綺麗な内容じゃないんだけど、背景が浮かびますね。 五:微笑ましいファミリー句。)

●破してなを金魚掬ふと駄々まかる=久郎兎
◎香△夏、メ=5点
(夏:縁日でたまに見かける光景。これ、近隣国との外交関係にも見えたりして。)

●炎天の石炭列車無き折尾=久郎兎
◎秋△資=4点
(資:「折尾から昭和の彼方に夏至の夕」と同じ作者?だろうかとぬ思いつつこちらを。夏の折尾駅は暑かった。)

●折尾から昭和の彼方に夏至の夕=喋九厘
○久、メ=4点
(久:今回の漢字:折は、折尾からの発想。駅舎が建て変わるそうで筑豊の玄関の名残がなくなるとのこと。初めは折尾の尾にしようかとも思ったのですが。)

●金魚玉透かせば十万憶土かな=砂太
○資△夏、葱=4点
(夏:美しいものを透かして見えてくるのは十万億土、なるほど。 葱:水鏡を一枚隔てた向う側にはあの世の光景が隠されていそうな、そんな錯覚にに陥るのは金魚の有り様の不可思議さによるものでしょう。)

●ジューンドロップ挫折を知らぬ少年に=水音
○五、夏=4点
(五:ジューンドロップとは何?五月病の続きか?6月に果実が落ちやすいことも言うらしい。少年よ!5月を乗り越え6月も! 夏:「ジューンドロップ」の響きが美しい。生理的落果の切なさと少年とが重なる。)

●正統派たまに異端派金魚玉=葱男
◎資△ス=4点
(資:金魚を正統派や異端派と言い表す面白さがある。 ス:おもしろい。異端でたまに正統もありそう。)

●水を差す白き腕や金魚玉=砂太
○ま△雪=4点
(ま:その白い腕を、金魚も待っているのでしょう。)

●東証の折れ線グラフ梅雨深し=紅椿
○ラ△水、資=4点
(ラ:「東証の」という具体性がよいと思います。 資:折れ線グラフの果てが梅雨深しというのが怖い。)

●ひとまづは洗面器へと屑金魚=紅椿
◎久=3点
(久:安くて変哲のないどうでもいい金魚を屑と表現したところに惚れました。決して屑ではないんだけど、長生きもするし。屑はマイナスイメージなんだけど、俳句に仕立てあげれるんだ、と感心しました。)

●へぎ折の京の銘菓や夏祓=紅椿
△夏、資、雪=3点
(夏:いかにも涼しげ。 資:さぞかし品の良いお菓子なんだろうなんて考えた。)

●折紙の四隅きつちり油蝉=葱男
△砂、喋=2点

●オリーブの折り枝銜え梅雨晴れ間=スライトリ・マッド
○五=2点
(五:梅雨晴れ間はオリーブと相性が良い。

●ビー玉に金魚の尾びれ触れてをり=ラスカル
△喋、葱=2点
(葱:透明な水と透明なビー玉の重なりがいかにも涼しげです。)

●折り入つて相談したきアマリリス=五六二三斎
△雪=1点

●崖の百合折り取りて女に会いに=スライトリ・マッド
△久=1点
(久:なんだか妖しい雰囲気なんだけど、死後に出てくるかも。)

●傘折れて紫陽花愛でる雨宿り=秋波
△五=1点
(五:公園での雨宿り。付きすぎだが、綺麗。)

●子ども等の団扇に描くポニョ?金魚?=秋波
△葱=1点
(葱:「ポニョ」と「金魚」が一緒に泳いでいる金魚玉が本当にあったらいいのにね。)

●したたかに縁日金魚永らふる=夏海
△十=1点
(十:屑金魚の頑張りに自らを重ねて。)

●忘られしおもちゃプールの金魚かな=メゴチ
△秋=1点


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