*B部門入選作発表*

兼題『季:啄木忌』『漢:残』=全56投句(入選44句・非選1句)
《むずかしい選です 啄木の生を少しでも解している人にとってはこの選はむずかしい(砂)》

【特選】

一席
●ふるさとの山は揺りかご啄木忌=久郎兎


◎砂、ラ、雪○資、阿△メ、紅=15点
(ラ:おおらかな発想が素晴らしい! 雪:一番すんなり心に入ってきた句でした。こうあって欲しいですね。 阿:東京の風景には山がないので、いつも不安。心が抱かれない。紅:中七の措辞にしびれました。このお句も大好きです。)


二席
●二頁を残し本閉づ春の昼=雪絵


◎百○メ、水、ま、入、君△十=14点
(百:じっとしていられなくなったのか,眠くなったのか 。 水:春昼の散漫な感じ。たったの二頁というところが絶妙。 ま:余韻がありますね。  入:わかるわかる。 十:春昼の睡魔、まったり感が伝わってくる。)


三席
●クレヨンの青の短き啄木忌=ラスカル


◎資、五、二○メ△喋=12点
(資:青は便所から見える青空,短きに啄木の短い生涯を言い含めているようで妙。 五:今回の啄木忌には良い句が多かった。付きすぎでないものを◎に。)


三席
●白木蓮書き残したる尊厳死=まさこ


◎葱○雪、夏、秋△十、水、ス=12点
(葱:白=蓮=死=尊厳、のイメージ連鎖に引かれたようです。 雪:白木蓮と尊厳死の取り合わせがいいですね。 十:「生きてゐるうちに死にたし」の思いだろうか? ス:最近終活という言葉をよく聞きますねえ。はくもくれんが白い紙を連想。)


【入選】

●レコードの針の残響おぼろ月=スライトリ・マッド
◎阿○ラ、紅、夏△メ、百=11点
(阿:歌舞伎座の裏に、昔の電蓄屋があって先日そこに寄ったら、竹の針でオールドジャズを聴かせてくれた。懐かしい音がした。ラ:レコードも、今では懐かしい物となってしまいました。 紅:こちらもお上手なお句ですね〜!レコードの残響が聞こえてくるようです。 夏:針の擦れる音を昔は除くべき雑音と思っていましたが、今はむしろ鑑賞の大切な要素かもと。 百:針には独特の響きがあるとか 。)

●残照に壊されてゆく蝶の翅 =十志夫
◎香○砂、五、百△久=10点
(香:「壊されてゆく」ほどの蝶の翅の繊細さ、美しさ、脆さがわかります。 五:蝶採集する者から見ると、蝶の翅が壊されてゆく設定はユニークに感じた。 百:壊されるという発想が新鮮。 久:季節的に良いのかは分かりませんが、時間がそうさせているのを残照に置き換えてあるのがいいです。)

●残り火の時に激しき牡丹かな=紅椿
◎水○砂、前△十、五、雪、夏、秋=10点
(水:私もそんな牡丹になれるかな。 十:火と牡丹の取り合わせがいい。楸邨の「火の奧に牡丹崩るるさまを見つ 」を髣髴とさせる。 五:老いたる者にも恋する気持ちがあって良い。大輪の恋にはならないかも。)

●ペン胼胝のいつしかとれて啄木忌=雪絵
◎メ、前△久、水、ま、香=10点
(久:書くことから遠ざかったのかなあ。最近パソコンを使うのが多くなっていつしか消えていますね。)

●鉛筆のやうな灯台啄木忌=ラスカル
○雪、二、ス△阿、喋=8点
(雪:やはり啄木は海のイメージですかね。啄木を熟知していないので、詠むことも選句することもはばかられました。 ス:啄木忌と岬の突端の灯台、それも鉛筆型という取り合わせがいい。 阿:啄木も鉛筆で書いたのかな。)

●少年院に朝の号令啄木忌=砂太
◎ま○十、入△二=8点
(ま:少年院と啄木が響き合い好きな句です。 十:意外な「少年院」との取り合わせ。啄木の顔に垣間見える幼児性と狡猾性か。)

●汝がたばこ吾に煙れよ啄木忌=葱男
○喋、二、君△砂=7点

●居残りのトラック一周苜蓿=雪絵
○葱△夏、百、ス、君=6点
(葱:これは季語の「苜蓿」が抜群に効いている! 百:「苜蓿」何回見ても覚えません 。 ス:青春の一コマですね。がんばれ。)

●上野駅の様のうつろひ啄木忌=夏海
◎秋○久△君=6点
(秋:時代も随分変わりました。今の東京を見たら啄木はどう思うで しょう。 久:上句が6字ですが、「の」を入れないと物足りないし。「様うつろいの」でもないのでしょう。発想がいいですね。)

●産土の草かぐはしき啄木忌=水音
◎紅○前△砂=6点
(紅:今回「啄木忌」で、多くの佳句を楽しませていただきました。上五に「ふるさと」を使わなかった事が手柄でしょうか。中七も素晴しいです。)

●薫風に言伝てのよな残の島(ノコノシマ)=久郎兎
◎入○葱△二=6点
(入:玄界灘には言づてのような佇まいの島々がありますが、博多湾には能古島やもん。 葱:「残の島」に風土と言霊を感じます。)

●啄木忌潮の匂ひの途中下車=紅椿
◎十△資、ラ、香=6点
(十:そこは「一握の砂」の舞台だろうか? 資:啄木の1年間の北海道暮らしのことでしょうか。 ラ:「途中下車」という一語が利いています。)

●撥ねられて誤字欄外に啄木忌 =十志夫
◎ス○香△資=6点
(ス:早逝、貧困、孤独がキーワードの歌人と誤字の訂正表が符合する。 香:校正との攻防ですね。)

●海峡を渡る浮雲啄木忌=資料官
○紅△阿、水、入=5点
(紅:こちらも大好きで、出来れば◎にしたかったです。 阿:情景がよくわかります。 入:二葉亭四迷に思いが行くのはどうしてかな?)

●啄木忌今傘寿なる怠惰の日=砂太
◎君△五、入=5点
(君:今還暦も想いは同じ。 五:砂太先生の独白か? 入:還暦なる怠惰の日とかなら、啄木の早世に対して失礼かな?)

●春名残り宇治十帖はまだ半ば=夏海
○水、ま△砂=5点
(水:私にとっては、いつもの春って感じがする。)

●招き猫売れ残りたる復活祭=水音
○資△夏、二、ス=5点
(ス:イースターと日本的なる商売繁盛祈願のミスマッチがおもしろい。)

●行き止まり里山の道啄木忌=五六二三斎
◎久△入、秋=5点
(久:趣があります。ふるさとの山、を僕も表現したかったです。上句と中句をもっと繋げたいのですが、どうでしょう。 入:里山の袴道というのは、余所者には先の見えなくなるものです。)

●残像の白き歯並び春の蝉=葱男
○十△メ、五=4点
(十:残像はつねにモノクロ。青春の思い出というより「春の蝉」から感じるのは夭逝の悲しみ。 五:この句もちょっと怖い感じのするところが良い。)

●啄木忌真白き花の暮れ残り=まさこ
○ラ△資、前=4点
(ラ:真白き花の気高さを感じます。)

●若葉縫ふ名残の花びら盥船=秋波
◎喋△前=4点

●幻灯はピストル型ぞ啄木忌=葱男
◎夏=3点
(夏:「ピストル型」という視点が面白い。)

●背負ひたき母もう居らず啄木忌=ラスカル
○喋△紅=3点
(紅:付きすぎかもしれませんが、実感のこもったお句です。)

●啄木忌たまご焼き売る鶏卵屋=水音
○百△雪=3点
(百:鶏卵屋というのがまだ存在するというのがいかにも啄木らしい 。)

●巣立ちの日残る一羽は痩せっぽち=メゴチ
○香=2点
(香:コミカルな表現で、やがてその一羽も巣立っていくだろうと、希望がもてます。)

●退職の年月遠く啄木忌=砂太
△ラ、葱=2点
(ラ:しみじみとした感慨が伝わってきます。 葱:夭折の歌人と我が身との皮肉な対峙でしょうか。)

●啄木忌切られし欅磨かれて=入鈴
○五=2点
(五:磨いているのは啄木鳥?)

●啄木忌授業さぼりて見し映画=スライトリ・マッド
△ラ、香=2点
(ラ:「いちご白書をもう一度」でしょうか・・・。)

●啄木忌植物園の空青し=資料官
○ス=2点
(ス:動物園でなく植物園の静かな感じがいいですね。)

●残り香にもっと酔ひたし春の夜=メゴチ
○阿=2点
(阿:その気持ち、とてもよくわかります。)

●残り香の影失せにけり街薄暑=十志夫
△紅、喋=2点
(紅:ずっと見送っておられるのでしょうね。寂しさといとおしさがよく出ています。)

●花の早き年過ぎ行きて啄木忌=スライトリ・マッド
○秋=2点
(秋:花の短さが夭逝した啄木と重なります。)

●本残す最期の仕事花供養=五六二三斎
△葱、二=2点
(葱:宗匠の、図書館への「寄贈文庫」のことが頭を過りました。)

●ゆきずりに問ふ花の名や啄木忌=紅椿
△百、前=2点
(百:知らない人にも声をかけたくなる春。)

●良き御世に生まれ来しかな残る花=五六二三斎
○久=2点
(久:60年生きてきて、今思うに本当にラッキーだったなあ、と。親の時代の戦争の恐怖もなかったし餓えもなかったし、当たり前に仕事があって、自分のやりたいことがやれたし。スペシャルなこの平和が続くよう。再び戦争の道を選ばぬよう。)

●若き世辞残念付けて否む春=久郎兎
△秋、君=2点
(秋:穏やかだけど毅然とした感じがいい。)

●啄木忌じっと見るしわ老いた爪=メゴチ
△久=1点

●啄木忌まどろむ母を離れきて=入鈴
△雪=1点

●流れゆくラジオのラップ啄木忌=秋波
△阿=1点
(阿:啄木もラッパーだったのかな。)

●ひとにぎりのサプリメントや啄木忌=まさこ
△葱=1点
(葱:サプリメントと夭折の取り合わせには「諧謔」の味が潜んでいます。)


【非選】

●満場が残響の中四月尽=君不去
(葱:ノミネートに漏れていました、君ちゃん、ごめんなさい。)

【無選】

●残照や二季草からの独り言
(資:良い句だけど中七の8文字が惜しい。)


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