*B部門入選作発表*

「兼題季語:ビール」「兼題漢字:生、文」*全42投句(35 入選句)


【特選】

一席
● 夜の秋文語にはかにいろめける=葱男


◎五、白○砂、資、ス△二、夏=14点
(五:今回のB部門は低調でした。その中で俳句らしいのが掲句。小説家みたいな作者ですね。 白:夜のある瞬間に、情念は燃え立つ。勢いは止まるところを知らず、すべてが可能に思える時がある。いろめきたつのは文語だけではなさそう。 )


二席
●文机の幽かな手摩れ遠花火=夏海


◎水、百○二、メ△砂、白=12点
(水:薄暗い電灯の書斎、古い机、開け放たれた窓・・・遠い記憶を探りつつ見るともなく見ている花火。。。 百:文机と遠花火がありきたりじゃないけどぴったり。 白:過去と現在の重なりがきれいにまとまっている。きれい過ぎて選外、とも思ったのだが、手摩れという過去の抽象化が効いたよう。)


三席
●十粒のビイル酵母や龍之介忌=スライトリ・マッド


◎資○葱、二△夏、喋、君=10点
(葱:「ビイル」という表記にはやや疑問が残りますが・・・。)


三席
●文京区本郷界隈夏休=資料官


◎砂、ス△二、水、久、喋=10点
(ス:出た〜漢字ばっかりの句! 水:東大生も夏休みですね。「文京区」を使いたくて詠んだのではないかしらん。 久:修学旅行で泊まったのは秋でしたね。 葱:文京区の「文」と本郷の「本」がマッチして「夏休み」句の魅力がグンと増しました。つまり、夏休みは本を読んで勉強しろ!っちゅうことです。)


三席
●病経てやや控えめに飲む麦酒=資料官


◎秋○前△砂、小、水、雪、ス=10点
(秋:実感のこもった句です。 前:自分の句かと思いました。 水:アルコールは一滴でも毒だと今は言われているそうです。「やや」を削除しましょう。 雪:「やや」が難しいところではありますよね。 ス:飲んだらいかんのやないですか?)


三席
●夏休みの生きもの係大人びて=夏海


◎葱、二○小△秋、白=10点
(葱:今流行りのグループの名前から「生き物係」という言葉が世間に定着したのがこの句の骨頂でしょう。ただ「夏休みの」の「の」は要らないかも。 小:確かに! 白:子供が大人びて見えるとき、それにはいろいろな場面があるが、夏休みの生き物係りにそれを見た筆者の視点が気に入った。)


【入選】

●裏生地を染めし浴衣や江戸の粋=久郎兎
○水、百、メ、喋△秋=9点
(水:「美の壷」見ました。裏も染めるなんて本当に粋ですよね。 百:粋です。)

●生ジョッキ顰めっ面の笑顔かな=前鰤
◎喋○葱、雪、久=9点
(葱:その「苦さ」が「美味しい」んですよねえ〜〜、我々大人は。 雪:日頃の顔とギャップが大きい? 久:乾杯のとき顰めっ面のガラスのジョッキを透かして見る笑顔?)

●亡き友と銀河高原ビールかな=葱男
◎前○五、澄△百、メ=9点
(前:京都の自販機前で飲まなかった? 五:銀河高原ビールも出やすい題材だか、涼しさを買いました。亡き友でなく、亡き父ならどうか?上五は故人に拘らずによい言葉がありそうだ。 百:亡き友が好きだったビールなのか? )

●梅雨明けや生きとし生けるもの光り=砂太
◎澄○夏△水、資=7点
(夏:梅雨が明けるのは待ち遠しい・・・〈本音は、そのあとの猛暑が辛いですが〉。 水:梅雨明けの頃はそんな感じだったのかもしれない。今は暑さのせいで記憶もおぼろ。 葱:真正面からの句ですが、やや平凡。)

●生返事したつもりなく青胡桃=雪絵
○五、資、秋△ス=7点
(五:生返事は題材としては当然考えられた。しかし、青胡桃は新鮮な季語です。 ス:日常をよく切り取ってある。 小:14番の句「ステテコや妻の小言に生返事」に続くみたいですね。)

●文庫本開いて芭蕉の夏を行く=秋波
○久△葱、五、澄、君、ス=7点
(久:女子学生が読んでるのかな?爽やかな感じを受けます。 葱:素直さがよい。 五:字余りが気になる。「開いて」は「開き」でよくないか?題材は平凡ながら芭蕉ファンの奥の細道ミニ吟行と思った。 ス:バーチャル吟行かな?!)

●誕生日二人で分けるビールかな=香久夜
○澄、前△小、百=6点
(百:やってます。 葱:この仲の良いふたりは「誰と誰」のことを示しているのでしょう?)

●とりあえず生生生と夏の夕=メゴチ
◎小、久=6点
(小:目に浮かびます。 久:この3連呼が効いています。)

●盲目の詩人の生みし花氷=水音
◎夏、メ=6点
(夏:盲目の詩人と、花氷の組み合わせが予想外で心ひかれました。 葱:「盲目の詩人」が誰だか分かりませんでした。そういうことじゃないか。)

●子に着せし文庫の帯の藍浴衣=雪絵
○砂、喋△メ=5点

●ステテコや妻の小言に生返事=資料官
◎雪△小、久=5点
(雪:こういうことが、すっと句になる御仁はきっと・・・? 久:「口げんか負けし振りして飲むビール」と同じような光景ですね。)

●待宵の花の文来る産土よ=砂太
◎君△百、澄=5点
(君:「よ」で句全体が柔らかくなって効果的。 百:「産土」なんて,私の辞書にはなかった。)

●曇の峰誘はれ汲む文殊水=五六二三斎
○夏△二、喋=4点
(夏:知恵を授かるお水なのでしょうか?)

●天国も地獄も泡のビールかな=葱男
○白△砂、前=4点
(白:私自身、ビールの句はいくら考えても川柳的なものになって俳趣を得られなかったのだが、この句はうまく人生を語っているような気がする。)

●ビール飲むとは息を吐くところまで=水音
○君△夏、雪=4点
(雪:なるほど!)

●ビール飲むごとに泡への一家言=夏海
○百△葱、五=4点
(百:言いたくなるんでしょう。 葱:酒席での蘊蓄はいいような、わるいような、微妙〜〜。 五:かなり拘り派の御仁と見受けられる。男は黙ってサッポロビールだよ。)

●アラベスク文様纏ひぬうすごろも=君不去
○白△資=3点
(白:文様が文様を纏う。記号もまた記号化される。エッシャー的な視線がおもしろい。)

●口げんか負けし振りして飲むビール=雪絵
○小△久=3点
(久:振り→ビールになるのか、映画にもありそうな光景ですが。)

●常連は隅にひつそりビール置く=五六二三斎
○雪△メ=3点
(雪:「ビール置く」がいいですね〜。)

●知恵の輪を浪人生へ夏の月=五六二三斎
○水△君=3点
(水:ナンというか、可愛げがあるのか、おちょくっているのか??)

●夕顔を描きし絵文や笑顔満つ=メゴチ
○秋△前=3点

●生一本シングルモルトと月見草=君不去
○ス=2点
(ス:お酒あまり飲まないのでよくわかりませんが月見草と合う感じがします。)

●生ビール文明開花の星の夢=喋九厘
△資、澄=2点

●筆文字に汗ばむ手首気遣ひぬ=久郎兎
○君=2点

●水なすを生でがぶりと食べてみる=スライトリ・マッド
△葱、雪=2点
(葱:トマトや西瓜じゃないから美味しいかどうかの確信が持てないところが面白い。 雪:さて、そのお味は?)

●恋の文来て女郎花男郎花=砂太
△白=1点
(白:最初は選外だった句だが、何かおかしみがある。それが何なのかよく分からないのだが、捨てきれぬおかしみ。 葱:「女郎花男郎花」は類句がありそう。)

●瓶ビール音に結露に癒されり=久郎兎
△前=1点
(葱:深く濃く共感します。)

●まずビールこの一瞬の苦さかな=前鰤
△秋=1点

●文殊さま今日もウマイぜ生ビール=喋九厘
△五=1点
(五:こりゃ、完全なお遊びです。でも、憎めない茶目っ気たっぷり。夏は明るく生ビール。 小:「ご先祖さん」のほうがピンときますが、深い意味があるのでしょうね。)


【無選】

●炎昼や熊猫も笹より生ビール
(葱:楽しそうだけど、俳句的にこの「断定」はいかがなものか?)

●CMのビールの泡や有り得ない
(葱:下五の詠嘆が可笑しい! 笑えました。)

●夏休ラヂオ体操文科省
(葱:漢字とカタカナだけの角張った感じが「体操」に呼応していると思います。)

●生足に団扇にビールは浴衣の君
(葱:これだけ季語を列ねたら逆にその暑苦しさが爽快です。)


B部門入選作〈back number〉

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号 63号 64号 65号 66号 67号 68号 69号 70号 71号