*B部門入選作発表*
「兼題季語:薄氷」「兼題漢字:鳥」*全43投句(入選32句)
【特選】
一席
● 杖で突く薄氷にある空の青=砂太
◎葱、小、君○資、メ、喋△久=16点
(葱:杖で老人を匂わせるあたりがうまい。空の青が余計にかけがえのない色に映ります。 君:”杖で ”で決まりました。 久:いろんな角度で空が見えたんだろうか。)
二席
●つちふるや鳥葬の塔あるところ=夏海
◎白、香○水、雪△葱、資、澄、喋、ス=15点
(白:壮大な距離感がいいですね。「日本の春」をはるかに飛躍している想像力が感じられる。想像力は光速よりもはやく走るのだ。 雪:鳥葬、初めて知りました。ちょっと怖いけど・・・。 水:なんだか怖い風景、チベットあたり? 葱:チベットあたりの荒地をイメージします。その辺りでは黄砂も本格的。 資:広大な大陸の風景。 ス:黄砂の中には骨の欠片も入ってるかもですね。)
三席
●姫駕籠のかくも小さく鳥曇り=夏海
◎水○二、砂、五、君△久=12点
(水:以前姫駕籠の小ささに驚いた記憶あり。どこで見たんだろう? 五:姫駕籠はひな祭りの備え付けのものか?小さいものと、大きい鳥雲との対比がいいですね。 久:可愛らしい句です。姫自体、小さい意味がありますが、もうひとつ全体イメージを捉えきれませんでした。)
【入選】
●薄氷の中にもがきし泡ひとつ=君不去
◎五○久、澄、ス△メ=10点
(五:観察が鋭い句です。現代人を揶揄しているようにも思える。 久:割れて出てしまえば何でもない。もがいているうちが花かも。 ス:泡が「もがきし」がおもしろい。 葱:「泡ひとつ」に一考の余地ありか。)
●うすらひはおもかげ母の洗面器=葱男
◎砂、雪、喋△香=10点
(雪:「洗面器」が何とも言えません。入院中に使われたものでしょうか。)
●薄氷や指の力をもてあます=水音
◎二、資、久○夏=10点
(久:小さなイタズラ心が目覚めた瞬間かな?薄氷をこの視点から捉えるとはニクイね。 夏:薄氷をそーっと持ち上げるけどすぐ崩れる・・・。 葱:分からないではありません。)
●鳥つるむ音楽堂の半円に=葱男
◎夏○二△香、久、澄、ス=9点
(夏:野外音楽堂の半円の中は光が集まって暖かそう。 久:「つるむ」は関西ではちょい悪の友達関係でよく使いますが国語辞典では交尾と書いてあります。 ス:鳥たちと音楽堂と合っていますね。)
●「カステーラ」右書きの文字鳥雲に=雪絵
○葱、白、喋△水、君=8点
(葱:老舗のお菓子屋さんのカステラは木箱の匂いがします。カステーラと伸ばすところがエキゾチック。 白:視線の妙で選句。右書き文字には日常との違和感とノスタルジーを同時に感じさせる。つまりノスタルジーとは現実との違和感による不安定さなのだろう。 水:なぜか春の物悲しさを感じるんですけど。)
●薄氷や下駄通学の少年期=砂太
○葱、夏、雪△資=7点
(葱:作者の年代が分かりますね。ノスタルジーがあります。 夏:早春の皮膚感覚が伝わります。 雪:古き良き時代!)
●句を正す宰府の今日の薄氷に=砂太
○水、五△夏、雪、喋=7点
(水:句に対する姿勢の厳しさを感じます。 五:太宰府吟行の句か?推敲出来ましたか? 雪:身の引き締まる思いです。)
●水温む鵞鳥の羽で書く手紙=葱男
○資、香△雪、五=6点
(五:二月の季語には、やや早い水温むですが、頂きました。取り合わせの妙ですかね?)
●リゾームの薄氷破る風の声=白髪鴨
◎ス△二、五、メ=6点
(ス:リゾーム=rhizome フランス語なんだ! 五:今回は、フランス語由来の句が二句ありました。新し物好きで頂きました。 葱:これもネットからの解説です。『リゾームとはフランスの哲学者ジル・ドゥルーズと精神科医フェリックス・ガタリの共著『千のプラトー』の基本用語。西洋の伝統的形而上学が一から出発して分岐してゆくトゥリー(樹木)状の存在モデルとそれに対応する思考形態をとってきたのに詑して、ドゥルーズ/ガタリはリゾーム(根茎)状の存在モデルと思考形態を提唱する。それは特定の中心をもたず、それぞれ異質なものが異質なものと接合されながら、始まりもなく終わりもなく、多方向にまた重層的に錯綜しながら延びてゆく。当然リゾーム的思考は、パラノよいもスキゾ、定住性よりは遊牧性を志向する。彼らは、垂直にそびえ立つ樹木のイメージに従って大体系を構築し、そこに組みこまれないすべてのものを排除してきた西洋の哲学的思考を疑問に付し、そうした樹木を支えている地下のリゾームをモデルに、発想の根本的転換をはかろいと企てているのである。』)
●暁の相転移して薄氷ゆらぐ=白髪鴨
◎澄○君=5点
●知らぬ鳥さえずりだけの春隣=ひら百合
○澄、メ△小=5点
●書き癖の龍馬の手紙鳥帰る=雪絵
○砂△葱、水=4点
(葱:龍馬の書いた字を見てみたい衝動にかられました。 水:どんなかき癖なんですか?)
●薄氷蒸気機関車来て融ける=資料官
△葱、砂、水=3点
(葱:当り前、その通り、だからどうした、という情景なのに何故か詩情を感じます。汽車が止まる時の蒸気音まで聞こえてきそうです。 水:黒い鉄の塊の熱気を。)
●串刺しの憂さや余寒の焼き鳥屋=水音
○久△ス=3点
(久:何か人生が詰まっているような、ちょっと怖い句ですね。 ス:サラリーマンの方でしょうか?)
●紅梅や目白姉妹の緑かな=喋九厘
◎メ=3点
(メ:紅白緑の取り合わせが妙。 葱:切れ字がふたつ、ベテランでも時々やってしまうミステイクです。 小:ベランダにあるブルーデージーの細い茎に、目白が二羽遊びにきました。感動して句にしたかったのですが難しかったです。)
●手水舎の薄氷焦がす朝日取る=久郎兎
○香△君=3点
(葱:モチーフはしっかりとあります。やや欲張りなのかな?「取る」を取ったらどうなるでしょう。)
●薄氷の麗鳥舞いて銀メダル=喋九厘
○小△ 香=3点
●薄氷を踏み残せし朝の道=メゴチ
○小△資=3点
●春一番鳥居くぐれば背中より=水音
△二、白、澄=3点
(白:この句の意図とはまったく異なっているだろうが、背中から広がり次第に巨大にふくらんでいく夜を連想してしまった。春一番は夜の方が似合うと感じるのは変だろうか?)
●まなうらに幼きひと日薄氷=雪絵
△夏、小、喋=3点
(小:ホント!ほんと!なかなか見れなくなりましたね。)
●朝なさな鳥小屋詣で寒雀=久郎兎
△白、君=2点
(白:どことなくひなびた感じのするパロールによる出だしに好感を持ったのだが、最後の寒雀はいまひとつ連想の断絶を感じてしまう。 葱:餌を横取りに来るんですね。)
●凍て返る月不死鳥の鐘の鳴る=君不去
○白=2点
(白:情景はたくみながら、不死鳥がやや月並みに聞こえる。凍て返る月にはどんな鐘が鳴るだろう。〈まさかラフマニノフじゃないだろうな〉)
●薄氷や深夜電話の訃報来し=資料官
△夏、雪=2点
●パリリンと薄氷を割りさぁ学校=君不去
○ス=2点
(ス:元気な子どもたちの姿が浮かびました。)
●春時雨インコの欠伸うつりをり=スライトリ・マッド
△二、砂=2点
(葱:「春時雨」が「春霖や」なら点盛りでした。)
●モノクロに緋色一点紅冠鳥=ひら百合
△小、メ=2点
●薄氷の池に語れず佇みぬ=香久夜
△白=1点
(白:薄氷を「とざすもの」と「こわれるもの」どちらにとるかが作者の温度差になるだろう。佇まずに別の行動があったらもっと光っていたかもしれない。 葱:池の前で何を作者が語りたかったのか、残念ながらもうひとつ見えてきませんでした。)
●歳時記にパロール探る薄氷は=白髪鴨
△五=1点
(五:哲学的なかつ現代的な感じの句ですね。)
●薄氷をひづめ踏みゆく草千里=夏海
△砂=1点
【無選】
●バレンタインエミューの羽根をお守りに
(葱:ネットで調べたらこんな記事がありました。『2008年02月12日 鹿児島市立平川動物公園が、ダチョウの仲間エミューの羽根で「愛のお守り」をつくり、10日からカップルに配っている。「ここでデートをしたら別れる」。そんなうわさに頭を悩ましており、14日のバレンタインデーに向けてジンクスを破りたいという。デートスポットにしたい動物園の切なる願いはかなうのか。あるインターネットのサイトに、こんな書き込みがあった。
〈鹿児島市の若者の間では「デートで平川動物公園に行くと別れる」というジンクスがあると言われている〉 うわさの根拠について、園職員の永栄(えい・えい)大樹さん(30)は推測する。 「入園料が200円と安いから、女の子から〈お手軽デート〉と幻滅されちゃうのかな」 市中心部からバスで約45分。付き合い始めたカップルだと話題がもたない、との説もある。「このままだとカップルに敬遠されてしまう。ここに来れば愛が深まるという評判を立てられないか」。園職員らはそんな思いを募らせていたが、エミューを担当する飼育係が、2本の羽根が1本の軸でつながっていることに着目。ビーズを結びつけ、お守りに仕立てた。「愛し合う2人がいつまでも離れずにいられるように」というわけだ。 お守りは14日まで毎日先着10組に2個ずつプレゼントする。動物公園の担当者は「平川動物公園の新たな伝説を一緒につくってみませんか?」と呼びかけることにしている。』)
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