*B部門入選作発表*

「兼題季語:行く春」「兼題漢字:風」*全44投句(入選38句)


【特選】

一席
● 入籍といふ子離れの春行けり=雪絵


◎夏、砂、久○百、香、小△入=16点
(夏:一安心、でもやはり寂しい親の想い! 久:これは再婚ですよね。なかなか趣深いです。 百:同世代の共感。)


一席
●行く春にBB弾を投げてみる=メゴチ


◎君、喋、白○葱、水△夏、ス、久=16点
(君:滑稽なやけくそ感が面白くて。アルファベットがはまってます。 白:何故にBB弾なのか。「うさ」ではない、何か「はらしたい」ものを感じる。心が弾けていく感覚がストレートに出ていると思えて選。 葱:発想が面白い!「BB弾」はちょっと古いけど感性はすごく若くて新しい! 水:投げるとどうなるのでしょうね。 夏:BB弾が懐かしい。 ス:ばかやろーって感じでしょうか? 久:なぜだか春にやってみたくなりますよね。2B弾とも言うやつですかね。)


三席
●行く春や昭和の色の長い貨車=資料官


◎五○葱、砂、喋、メ、入△ス=14点
(五:昭和の色とはどんな色なんだろう?灰色?カーキ色?いずれにせよくすんだ色だろうか?長い長い貨車を昔は頻繁に見かけた。高速道路のない頃は唯一の輸送手段だったはずだ。 葱:名画のラストシーンですね、長く続く貨車のセピア色が夕焼けにいつまでも美しい。 ス:昭和の色ってあるんですかね。黒や地味な色ばっかりと思ってました。)


【入選】

●花の風文殊菩薩の扉開く=雪絵
◎二○夏、前、入△葱、五、君、澄=13点
(夏:花の風と文殊さまがぴったり。 葱:おそらく「写生句」ではないと思いますが、決まるときがあるんよねえ〜。 五:静かな佇まいの中に、不思議な動きがある。怖くも感じる。)

●腕に抱く風どこからも啄木忌=入鈴
◎雪、ス○白、資△水、君=12点
(雪:このセンスに参りました! ス:風が四方八方から吹いて来るのかしら?なんかすごい! 白:啄木の歌に風を感じたことはないが、風の持つ感性をうまくつかんでいるように感じられる。風にも感性があるんです。)

●行く春やバンドネオンの風の音=入鈴
◎百、前○君、ス△雪、資=12点
(百:タンゴを奏でる風の音。 君:バンドネオンの音・・ではないんですね。 ス:ピアソラかな♪)

●風紋は恋文に似て春の蝉=夏海
◎水○五、雪△砂、喋、メ、入=11点
(水:松林を抜けて砂浜、潮騒、・・・そして恋文を思わせる風紋・・・。 五:春の蝉と転じたのが成功か?要するに儚いことを言いたいのだろう。 雪:風紋、恋文、春の蝉、なんか儚さが心に沁みます。)

●風紋に光絡める日永かな=水音
◎澄、入○砂△メ、資=10点

●行く春や川面弾けて街惑ふ=白髪鴨
◎メ、資△百、前=8点
(百:水面が光る時期です。ふらふらしたくなる時期です。)

●油屋の朽ちたる水車春逝けり=水音
◎香○夏△二=6点
(夏:かつては水車で油を絞ったのだろうか。)

●診察の子にゴム風船手渡さる=雪絵
◎小△百、君、香=6点
(小:無理のない、ほっとする句ですね。 百:風船が春の季語だなんて,誰が決めたんでしょう。 葱:お医者さんもピンキリですが、天命の医者というのは本当に素晴らしい存在ですね。)

●行く春のまつ毛で芝居する役者=夏海
○白△五、雪、小、資=6点
(白:BB弾の句とこの句のどちらを◎にしようかと迷ったが、BB弾の句のストレートさに軍配を上げていた。この句も視点はとても面白いのだが、逆に役者のような技巧が感じられてしまったからだ。 五:役者と言うより、最近の若い女学生を思い出した。付け睫が凄い。掲句には諧ぎゃくがある。)

●逝く春や父に別れの博多弁=資料官
○小△葱、五、雪、久=6点
(小:何と暖かいお別れの言葉でしょう!グッグッグときましたよ。 葱:「博多弁」にはめっぽう弱い。 五:A部門にも同じような句があった。詠み人は多分Sさんだろう。 久:心から出てくる言葉はやっぱり地の言葉でないと、ウソですたい。)

●ぬばたまの髪とかすらむ春の風=水音
○五、メ△澄=5点
(五:枕詞が効いてます。技巧的だが、選に残した。俳句は発句からどう変わりゆくのだろう?)

●行く春や正門裏門南門=葱男
○雪、喋△夏=5点
(雪:おもしろい!どこからも春は行ってしまう感じ。)

●行く春や電車ことこと川わたる=資料官
○百△葱、水、香=5点
(百:「ことこと」が春らしい。 葱:貨車もいいけど電車もね! 4月号の喋九厘さんの鉄道写真、俳句文學にぴッたんこでしたね。 水:「ことこと」が効いていますね。)

●行春のコンビニでするプロポーズ=夏海 
○水△二、白=4点
(水:行春だからコンビニでしても許される?面白い場面です。 白:非日常のようで、いまやけっこう日常のことのような気もする。何かのドラマで使われそうなシチュエーションで、おそらく2010年以降陳腐なものになるかもしれない。 葱:「俳句界への招待」で紹介された涼野海音さんの句に「ローソン」と「初雪」を取り合わせた句があり、それを「俳句界」の若手編集長の林誠司が絶讃していたのを思い出しました。林さんが文学として志向している「現代俳句」のイメージがちっくと想像できたコメント〈彼のブログ「俳句オデッセイ」の中の一文。〉でした。)

●菜の花や便りの風と君を訊く=久郎兎
○ス△前、メ=4点
(ス:よくわかんなかったのですが・・・。 前:「風に」の間違いだと思いました。)

●行く春に調教の馬嘶けり=砂太
◎葱△水=4点
(葱:「嘶けり」で春が行くなんて、なんて格好良い!!)

●大きいな新ランドセルにつむじ風=喋九厘
○久△香=3点
(久:「な」がきいていますね。

●風信子黒幕を張るB教室=葱男
○資△二=3点

●夕桜ふぶきて山へ戻りけり=砂太
○二△前=3点
(葱:兼題漢字の「風」がないのでルール違反ですが、句としては情景に力があります。)

●行く春もミツバツツジの尾根の道=喋九厘
○澄△ス=3点
(ス:どこの山の岩ツツジ?)

●行く春や濡らして赤く蕊残す=香久夜
○君△澄=3点

●リコーダー春のかたみの夜来香=葱男
○久△白=3点
(久:意味がもうひとつ分かりませんが夜来香は唄でしょうか。テープでも残っていたのでしょうか。 白:「かたみ」ではなく「かたち」としていれば○にしたのに…。イェライシャンの香りはかいだことがないが、きっとリコーダーの音に近しいものがあるのだろう。  葱:「春のかたみ」は「行く春」の傍題です。ほかにも、「春の名残」「春の行方」「春の別れ」「「春の限り」「春の果」「春の湊」「春の泊」「「春ぞ隔たる」「春行く」「春尽く」「春尽」「徂春」「「春を送る」などがあります。)

●新しいシャツに着替えて春行けり=白髪鴨
△百、砂=2点
(百:衣更えがなかなかうまくいきませんでした。)

●古伊万里の歴史辿れば欧の風=君不去
○香=2点

●筑紫より各駅停車行く春は=五六二三斎
△喋、久=2点
(久:昔、筑豊本線の高架下にはすかいに道があって踏切番が白旗を振っていたのが思い浮かびました。各停となる小郡行き急行、上り天神行きは津古では一部の扉が開きませんね。)

●中空の吹き流し越ゆ風の鯉=久郎兎
○前=2点

●プリーツのひだを揃へて春の果=スライトリ・マッド
○二=2点

●行く春を惜しむは夜風花の影=久郎兎
○澄=2点

●ヨット出て忽ち孕む春疾風=砂太
△入、白=2点
(白:疾風とは風力5(風速8〜10.7m)のこと。たしかに忽ち風をはらむが、まともに走るにはややしんどい風。ヨットの句なので選。)

●開幕戦決めのパットに風光る=メゴチ
△小=1点

●風車捨てられてゐる夜の街=五六二三斎
△砂=1点
08●風吹きてちぎり絵の花群れをなし=前鰤 (小:桜花のことでしょうがこのように表現してもよいのですね。)

●見えぬ風柳とたわむれ現るる=君不去
△二=1点

●行く春にZephyrusの囁き死は定め=白髪鴨
△夏=1点
(葱:「Zephyrus」を「ゼピュロス」または「西風」と記せば伝える意味が変わるのは分かりますが、俳句というよりは「現代詩」のような「アフォリズム」のような形式に映りました。)

●行く春のハネムーンロード鶏歩く=スライトリ・マッド
△喋=1点


B部門入選作〈back number〉

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