*B部門入選作発表*

「兼題季語:春の夜」「兼題漢字:甘」*全45投句(入選37句)


【特選】

一席
●春の夜に妊る豚の貯金箱=葱男


◎砂、二、水、喋○雪=14点
(水:春の夜ならありそう。)


二席
● 甘党の手酌にふふと桜餅=入鈴


◎香、前○小、資△砂、喋、久=13点
(香:桜餅大好きなんで。手酌には?だけど。 葱:「ふふと」、使いたい修辞です。 白:かわいらしいので入れたかったのだが、50代のオバハンを連想して選外。)


三席
●春の夜や大正の星ひとつずつ=五六二三斎


◎入○葱、喋、澄△水、白、ス=12点
(葱:「大正の星」がぼんやりしていて想像力がかきたてられます。下五の「ひとつづつ」という措辞もうまく選んだと思います。 白:最後に「消えて行く」という言葉を続けてしまうとこの句は面白くもなんともない。ひとつずつどうなるのか想像させてくれるから選。 ス:大正の世代の方の訃報を最近私もよく聞きます。)


【入選】

●歴史からふとはみ出しぬ春の夜=白髪鴨
◎小○百、水、メ△葱、久=11点
(百:何のことか説明求む。歴史には書かれなかった色っぽい出来事って事? 水:はみ出しても不思議ではないと思わせるものが春の夜にはありますね。 葱:昔、埴谷雄高という思索家は「歴史とは逸脱の歴史である。」と言いました。 久:歴史とは、大きく出ましたね。ちょっとお休みしたいです、春の夜は。)

●春の夜の待ち切れず負ふランドセル=夏海
◎メ○五、香、久△前=10点
(五:入学式はそろそろかな?微笑ましい風景。 香:はしゃぐお孫さん?の顔が思い浮かびます。 久:背負ふとせず負ふ、としたところに味があるのかな?)

●甘食は富士の山なり春の雲=雪絵
◎葱○砂△入、水、資、ス=9点
(葱:面白〜い、楽し〜い、そしてちょっと懐かしい。 入:凄い力ごなしの句にマイリマシタ。 水:甘食を富士に見立てるところが面白い。 資:昔食べた記憶がある。 ス:パクッと食べたんですか!)

●亀鳴くやロールキャベツを甘く巻く=水音
◎ス○葱、喋△入、百=9点
(ス:お料理好きの方か?! 葱:「甘く巻く」がいいですね!亀がキャベツにかぶりつく絵が見えました。 入:亀鳴くって、難しいのに何故かぴったり。 百:亀がキャベツ食べてる図が・・・ 。)

●点滴のなまぬるき音春の夜=雪絵
◎百、白、久=9点
(百:なまぬるき”音”が季節感。 白:点滴の音が聞こえるほど静寂な春夜。命のか細い音が重なる。そこには執着があり、諦念があり、悟道がある。 久:液の落ち具合が、春の夜が、ということなのでしょうが、音があると思わせるところが、ニクイなぁ!)

●春の夜の貝のボタンのかけ違ふ=入鈴
◎夏○白△砂、二、五、メ=9点
(夏:かけ違いは互いの気持ちの方だったりしますが、春の夜なら深刻ではなさそう。 白:何かがずれていく。そんな感覚は若いときと違う相でわれわれに現れる。差異は連続反復の中に必然的に存在している。 五:ボタンの掛け違いは、良い句材ですね。)

●春の夜の玉依姫の恋みくじ=喋九厘
◎雪、澄△五、メ=8点
(喋:たまよりひめ=竈門神社の縁結び祭神。 五:先日、喋九厘さんの写真展にて、竈門神社の神主さんにお会いしたので、選に加えました。縁結びの神様なんですか?何故、春の夜に神社に行くのか?ちょっと分かりませんが、夜にお祭りがあるのかもしれませんね。 入:竃門神社に行ってみたいです。)

●春の夜や疎にも密にも鍼のつぼ=水音
○五△葱、二、資、夏、雪=7点
(五:春の夜に疼きますか? 葱:とぼけた味は俳諧味です。)

●水浸す気配や春の夜の畑=砂太
◎五○ス△夏、白=7点
(五:田んぼにそろそろ水を浸す気配がするとのこと。これは、年配の砂太先生でないとわからない気がします。今回のAB部門の中で一番佳い句だと思いました。作者が、砂太先生でなかったら、坊主になるかな? ス:水田以外のときは畑なんですね?! 白:句としてのシンパシーがあったのではないが、水を入れる畑を気配として感じ取った作者の感性に脱帽。)

●春の夜の知ったかぶりの猫のゐて=入鈴
○雪、白△水、香=6点
(白:必然性もなく、気になるところもない。俳句として合格なのか?だが、なんとなく語感がいいので選。 香:何となく詠んだ句〈失礼!〉?何となく選んじゃいました。)

●甘党の笑い上戸よ春の宵=夏海
○入△砂、喋、澄=5点
(入:春の宵には笑い上戸です。 葱:「よ」しかないか・・う〜む。)

●春の夜の妖怪みんな出ておいで=葱男
○砂△香、喋、ス=5点
(香:おもしろい! ス:GEノ三乗の女房?!)

●甘雨きて桜前線動きだす=資料官
○夏△百、雪=4点
(夏:「甘雨」が良い。日本中がそわそわする季節ですね。 百:甘雨っていうのがあったんだ。)

●使へない指の爪伸ぶ春の夜=砂太
○入、水△久=4点
(入:再生の春の夜ということがよく感じられます。私は再生の春の朝を詠みました。 水:季節を問わず使わない指の爪は伸びるのですが、春の夜は特に伸びそう。 久:確かに夜に伸びますね。麻痺などの障害なのかな?延びたことももういとわなくなったという切なさも。 葱:諧謔も俳句。)

●花あれば甘木鉄道るるるんるん=資料官
○ス、久=4点
(ス:わっはっは! 久:甘のお題ならやっぱり甘木が出ないと、寂しいですよね。平地の桜が長閑な旅情を醸し出します。)

●春の夜のビリーホリデーとめどなし=葱男
○澄△入、小=4点
(入:付きすぎかもしれない。ビリーアリデイーに、一票。)

●春の夜や隧道抜けて闇に落つ=スライトリ・マッド
○資△前、白=4点
(白:闇に続く闇、闇の重なり、その中を歩む人間か。春の夜なのでそこにまだ救いがあるようだ。)

●雨にほふ沈丁甘く切なくて=香久夜
○前△メ=3点

●延滞のCD返す春の夜=雪絵
○百△小=3点
(百:春の夜だから返しに行こうかという気にもなる 。)

●甘露煮を供ふ土雛白き箸=久郎兎
○前△二=3点

●春の夜にひそやかなりし月明かり=香久夜
○メ△澄=3点

●春の夜の亡母の根付の小鈴鳴る=夏海
○二△雪=3点

●春の夜やローズマリーの鉢寄せて=香久夜
◎資=3点

●冷え冷えと早床につく春の夜や=ひら百合
○二△前=3点

●甘噛みのシェパード犬や母子草=スライトリ・マッド
△五、香=2点
(五:甘噛みを思いついたことに一票というところ。母子草との兼ね合いがやや疑問。 葱:いいんだけど季語の斡旋ですかねえ〜。)

●生来の甘い性格涅槃西風=五六二三斎
△葱、小=2点
(葱:甘い性格と涅槃西風の対比が面白い!)

●猫鳴いてそこここ春の夜となり=砂太
○小=2点
(葱:「そこここ」を「そこそこ」と読んでいました。)

●春の夜の夢いつぱいに咲くドレス=五六二三斎
○香=2点
(香:ウエディングドレス姿、綺麗でしょうね、おめでとうございます。)

●春の夜のローズヒップのビタミンP=スライトリ・マッド
○夏=2点
(夏:巧いなあ!ビタミンCではつまらない。「ビタミンP」に拍手!)

●アスパラやゆがけば甘く太々し=ひら百合
△澄=1点

●甘柑の一箱の春届きけり=前鰤
△夏=1点

●コロコロに袴と証書春の夜=前鰤
△二=1点
(前:最近の女子大生、卒業式のあと、袴姿からラフスタイルに変身し、借りた袴と卒業証書をコロコロスーツケースに詰めて、朝まで宴会しています。)

●はるのよの夜行列車でたびだちぬ=喋九厘
△百=1点
(百:こんな話を聞いたような 。)

●春の夜や隣は何もしない人=水音
△資=1点


B部門入選作〈back number〉

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