*B部門入選作発表*

「兼題季語:プール」「兼題漢字:水、時」*全50投句(入選38句)


【特選】

一席
● 物干にくたと干さるるプールかな=水音


◎葱、久、白○メ、ス△夏、香、喋、百=17点
(葱:文句なく特選! 子供用のビニールプールに眼をつけたところがすばらしい。 久:「くた」というのがいいですね。子供用ビニールプールも洗うんですね。 白:水着やタオルの干されている情景なのだろうが、ダリ風のプールが干されている情景すら感じさせる。「くた」という形容も簡潔でいい。プールそのものの抽象化に成功しているように思う。 ス:ははん、ビニールプールだとこうなりますね。 夏:空気を抜かれちょっと情けない姿のビニールプールに着目した視点が良い。 百:「くた」というのがいかにも。)


二席
●打水の書のたまさかを游びけり=葱男


◎前○五、水、君△資、香、雪、秋=13点
(五:涼しさがありよい。遊びと涼を兼ねてるのか?「たまさか」はけっこう句に使われていますね。 水:初め偶然だったのに だんだんそれが目的になったりして。)


二席
●見学の少女プールの水を撫ぜ=砂太


◎水、百○葱、夏、前△久=13点
(水:その少女の気持ち、、入りたいんだろうなぁ。 百:昔の少女は共感します 。 葱:コマーシャルだと、そのあとに「かぜ薬」でしょうか? 綺麗! 夏:参加できない少女の残念な気持ちが見えてきます。 久:少女であるがゆえ、思いが広がります。)


【入選】

●潜水のプールの底にカフカかな=入鈴
◎君○五、夏△葱、砂、白、ス=11点
(君:プールに潜った時の、いきなり現実と隔絶する不思議感を思い出しました。 五:これは、白髪鴨さんかも?過負荷でないことを祈る。 夏:カフカとは驚き!面白い!! 葱:そんな馬鹿な!と思わせてくれる句です。「カフカ」は「ザムザ=変身=変な格好」と転調しました。 白:プールの底は次元さえも反転させる。そこにいるカフカはどのようなカフカなのか。事象の地平でぐーっと引き伸ばされたカフカを想像してしまう。 ス:不思議な光景! 百:何かぴったりの感じなんですよね。)

●手足長きプールの少女化学式=砂太
◎五、ス○白△葱、君=10点
(五:化学をやる者にとってついつい化学式は気になる。何の化学式だろう?オリジナリティーに拍手。 ス:そうそうそんな感じに見えそう! 白:ベンゼン基に見立てた少女の躯体なのだろうか。ギクシャクとした動きが伝わると同時にプールの脱領土化が始まる予感がする。 葱:これも視覚的に面白い句。水の中では視覚、聴覚に変調が起こるから面白い。)

●赤煉瓦緑雨に時を巻きもどす=水音
◎メ○資、秋△前、君=9点
(秋:濡れて赤さを取り戻した煉瓦。そこにどんな記憶が呼び戻されたのでしょう。葱:やや技巧的な句ですが、うまく「色」を使っています。)

●天の川はるか時空の使者となり=喋九厘
◎小、澄△夏、前、メ=9点
(夏:「はやぶさ」の旅は、この先も記憶に残ることでしょう。サンプル採取も成功であって欲しい。 前:大阪市立科学館のプラネタリウムで「はやぶさ」を観てきました。宇宙の天の川が美しかった。)

●プール洗う子の背に余る長ブラシ=夏海
○砂、小、久、雪△香=9点
(久:一所懸命さがよく表されています。 雪:小学校時代を思い出しました。随分古い話・・。 葱:確かな監察の上に立ったユーモラスな句。)

●べらんめえ口調止まない水馬=五六二三斎
◎夏○ス△水、白=7点
(夏:一瞬「べらんめえ口調の水馬」と錯覚させられて楽しくなりました。 ス:おもしろい! 水:水馬との取り合わせがイマイチ分からないけど、、。 白:水馬の動きを口調にとらえた作者の視線のおもしろい差延が感じられる。)

●悲しみよ浮いて来るなと夏の水=水音
◎香○百△澄=6点
(百:誰にも悲しい夏の思い出があるものです。)

●竹筒の青さを競ふ水羊羹=夏海
◎資△小、喋、百=6点
(百:涼しげ。 葱:なるほど、そういうもんですねえ〜、商才とは。)

●一時の静寂にふとああ蛙=秋波
○澄、白△葱、喋=6点
(白:一瞬とはどれくらいの時間か。よく言われる冗談に「信号が青に変わって、後ろの車にクラクションを鳴らされるまで」というのがある。しかし「ああ、蛙」と嘆じられる一瞬、そこにためられた静寂が実感を持って伝わってくる。 葱:なんか、芭蕉が浮かんできて面白い。「ひととき」と読むより「いっとき」と読んだほうが良かったかな、すみません。)

●丸刈りのプール泥棒あばら骨=五六二三斎
◎喋○久△ス=6点
(久:こういう子供になりたかったですね。泥棒とまで言われれば立派なもの。 ス:ノスタルジックな感じがします。)

●あまがえる幼き時よりぬらりひょん=秋波
○葱、喋△メ=5点
(葱:思わず納得の句。ひらがな遣いが上手い。)

●水郷へ臨時特急花あやめ=資料官
○雪△砂、久、澄=5点
(雪:福岡で水郷と聞けば柳川ですが、ここはどこかな? 久:臨時でないと優等列車が運行されなくなってしまった寂しさがあります。 葱:「JR九州?」のコマーシャルみたい。)

●時喰ふ閑談の果て蔓一寸=久郎兎
○前、君△小=5点

●目の前の時をかすめし燕かな=秋波
○香、喋△夏=5点
(百:「時をかすめし」という表現が新しい感じがしました。)

●山間の集落(むら)に人無し時鳥=君不去
○水、小=4点
(水:村人たちは何をしてるのでしょうか。)

●水つかむ両のこぶしや太宰の忌=葱男
○香△五、雪=4点
(五:太宰のこぶしか?生々しい。付きすぎかな?でも、このリアリティーに拍手。)

●水の音や螢嬉しや里の夜=喋九厘
◎秋△澄=4点
(秋:なつかしい風景です。今や珍しくなってしまった蛍。その乱舞が楽しげだというだけでなく、幸運にも蛍狩りができたらきっと嬉しくなります。)

●竜頭巻時計をつけて六月尽=スライトリ・マッド
◎雪△水=4点
(雪:時の記念日の6月にぴたりの句! 水:そのような時計がまだあるなんて。)

●桜貝拾ひし時の波の音=雪絵
○澄△メ=3点

●山頂のプールに来る風いくつ=スライトリ・マッド
△水、前、白=3点
(水:山頂のプールって、どこにあるんでしょうか。 白:風の数は大体世界共通して4の倍数だ。ところでここに、その山頂へ5の風があったとしたら、このプールはとても貴重な存在になる。)

●懐かしき耳より出ずるプール水=ひら百合
◎砂=3点
(葱:ほのぼのしました。)

●灯明かりのとぢてプールに波ひとつ=白髪鴨
○メ△資=3点
(葱:「波ひとつ」はちょっとナルシスティック。)

●あめんぼうプールに描く雨模様=メゴチ
○百=2点
(百:だからあめんぼうなのか。)

●時を越え行つてみません合歓の花=五六二三斎
△砂、百=2点
(百:「時をかける少女」 というのは考えましたが・・「みません」のあとに「?」が入ってますよね?)

●鼻の奥夏蘇るカルキ臭=ひら百合
○砂=2点

●プールサイドやせつぽちもふとつちよも=雪絵
○秋=2点

●水草の花揺るる揺るる人知れず=君不去
△小、秋=2点
(秋:揺れているのは花か人か…。 白:「揺るる揺るる」というリフレインは新鮮だが、結び句のインパクトが足りず残念ながら選外。)

●空き店はただ時計草咲くばかり=夏海
△五=1点
(五:寂しい感じだが、昼を終えた店かも?)

●居直りて飛び込むプール山の水=前鰤
△五=1点
(五:山の水のプール?冷たそう!アイデア賞。)

●河骨のぬつと立ちたる水面かな=雪絵
△君=1点

●こひびとのプールのなかの重さかな=葱男
△ス=1点
(ス:軽さでなく重さとしてるとこが言い当ててて妙!)

●子らの喚声(こえ)なきプールの間奏曲=白髪鴨
△秋=1点
(葱:リズム感がもうひとつ。)

●水兵帽被る海士や風薫る=スライトリ・マッド
△雪=1点

●筑高のプールに沈むや水球部=喋九厘
△久=1点
(久:水球部はなくなったそうですが、当時水泳部というのはあったのでしょうか。)

●時遥か抹茶に集う夏家族=香久夜
△資=1点


【無選】

●プール洗ふ子らの帽子や見え隠る
(秋:ユーモラスでほほえましい風景です。あるある!ってかんじ。)


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