*B部門入選作発表*

B部門/『季:寒雀』『漢:還』=全44句(入選32句)


【特選】

一席
●春風にライトマゼンタ注入す=香久夜


◎二、五、ス、白○メ△水、夏、葱=17点
(五:B部門は低調でした。ライトマゼンタの色に惹かれて◎に。 水:視界がうっすらとピンク色を帯びて、、春爛漫。 白:まだ冷たさの残る風に、色や香りをつける。そして春を感じる。というよりも春を意識する。春は受け身ではなく、自ら求めなければ得られぬ感覚かもしれない。ライト マゼンタがいいですね。 葱:「春」と「ピンク」は相当部分で重なりあう二物の代表選手。)


二席
●入相の鐘を背負ふてつくしんぼ=夏海


◎香、秋○葱、前△久、砂、喋=13点
(葱:質の良い童画の風情です。)


三席
●啓蟄や湯殿に首の並びをり=葱男


◎雪○水、喋、白△君、秋=11点
(雪:頭だけ出している光景がおかしくて。これも啓蟄!? 水:ちょっとシュールな光景を想像してしまった。 白:ちょっと川柳に近いけど、これも俳かな。)


三席
●花三分入れ子の盃のほどきごろ=夏海


◎水、葱○秋△二、雪、ス=11点
(水:「花三分」「入れ子の盃」「ほどきごろ」すべて完璧。花の宴への期待が。 葱:舞台上のセリフになるぐらい決まってます。 )


【入選】

●女言葉をんなつかはず蟇出づる=水音
○久、砂、ス△香、雪、白=9点
(水:つかわず→つかはず に訂正します。マヌケなことに今頃気づきました。 白:蟇の無表情な顔が警句を語っている。その発想はいいがリズム感が損なわれているのが難かな。)

●啓蟄や校舎のはずれのビオトープ=秋波
◎君、資○水△夏=9点
(君:子供たちの春の動きも感じます。 資:校舎のはずれは生物部の生存空間を感じる。 水:冬の間子どもの姿が無かったところにひっそりと春が。)

●啓蟄やしまひ忘れの切手帳=夏海
◎メ○雪△砂、五、ス=8点
(五:切手収集家と言えば資料官さんかな?たまには、作者当てが正しいといいです。)

●ぽこんぽこん春の入江のクラムボン=スライトリ・マッド
◎喋○葱、資△白=8点
(葱:春の「いやおい」のpon.pon.bon。 資:賢治の世界をうまく詠んでいる。 白:上句は「ぽこぽこん」でもよかったのではないか。あるいは「カプカプと」でも…。クラムボンはアイヌ語で小人を意味するという説もあったが、ストレートな連想からはやはり蟹のような気がする。春のぬくもりを感じさせる句ですね。)

●菜の花や入日かすめていすみ線=資料官
○砂、雪△二、メ、君=7点
(雪:きれいな光景です。いすみ線ってどこかな?)

●啓蟄の海の入日とプリンかな=砂太
○二、夏、白=6点
(夏:因果律の無さが潔い。 白:単語の差延が句の緊張感を高めているようです。他愛ないアレンジメントですが、それを意識しているとしたらかなりのテクニシャン。)

●蛇穴を出でて木洩日斑なる=砂太
◎夏○前△メ=6点
(夏:木漏れ日のまだら模様が、おっ、良く見ると動くぞ!と。)

●盆栽に入れしハサミや水温む=メゴチ
◎砂○久△君=6点

●入鈴の休筆宣言半仙戯=葱男
◎久△喋、資=5点
(資:自作自演で仙人になったのでしょうか。)

●客船の霞くぐりて入港す=雪絵
○夏、君△葱=5点
(夏:動くビルのような大型客船なのだろうと思える。 葱:霞み立つその港に降り立つ主人公の姿を想像すると、そこから物語が始まる、映画のファーストシーンを観るようなワクワク感があります。)

●啓蟄や有象小僧も動き出す=秋波
◎前△久、白=5点
(白:この句にも「プリン」の句のような単語の遊びがあるようです。有象無象と有象小僧の境は単なるレトリックを越えているような気もします。)

●入陽さす花かげ妖し朧かな=白髪鴨
○メ△夏、前=4点

●啓蟄の先に見えるは見えぬ敵=メゴチ
○香、五=4点
(五:啓蟄のテーマには付きすぎないフレーズをという意味で選びました。春の始まりには見えない敵が沢山いるということか?例えば花粉もそうかな?)

●啓蟄や鍼灸院の水ベッド=葱男
○ス△二、五=4点
(五:啓蟄のテーマに付きすぎない句を選ぶという方針の本句です。強いてこじつけするなら、春が来て「腰の痛みよ飛んでいけ!」ということ?

●啓蟄や隅にまんまる綿ぼこり=水音
○五△砂、喋=4点
(五:春の綿ぼこり、しっかり掃除して下さい。)

●啓蟄やずらりと並ぶ入門書=雪絵
○君、資=4点

●蛇穴を出づ女三人旅支度=雪絵
○秋△水=4点

●穴出でし蛇踏まるるな箱根道=君不去
○香△前=3点
(白:最初「青麦」を「青春」と読んでしまって、この年で青春を読むのはすごいなと思ったんですが、よく見ると「青麦」でした(笑)。でも中句の素直な表現が下句の「涙」をあまり感傷的なものにしていない点に好感が持てます。

●亡き祖母の初恋聞きぬ彼岸入り=君不去
△葱、二、香=3点
(葱:「ルーツ」を探りたくなってくる年令になったようで、祖父母からそれ以前の家系譜を無性に知りたい。)

●不入道てふ遠き里山桜=五六二三斎
○二△水=3点
(水:つい先日不入道に桜のきれいなところがあると聞いたばかりです。  葱:「やまざくら不入道てふ遠き里」ではどうでしょう?)

●入船にロシアの国旗風光る=五六二三斎
△香、資=2点
(資:トリコロールの横向き,ロシアの船だけど春を感じます。)

●啓蟄やまずはいっぷくしませうよ=白髪鴨
○喋=2点

●入学の子の作る味噌汁の味=スライトリ・マッド
△前、五=2点
(五:句またがりですね。家の娘も1人暮らしを始めたものでついつい。家の娘は味噌汁作れません。)

●花の枝入り陽を掻きて寒き風=久郎兎
△メ、秋=2点

●入りりんの猫を蹴飛ばし桜咲く=喋九厘
△久=1点

●啓蟄や集合写真晴れ晴れと=五六二三斎
△ス=1点

●啓蟄や古き煉瓦の部隊趾=砂太 △秋=1点

●宝満のにぎはひ蛇も穴を出=資料官
△雪=1点

●磨かれしカーブミラーや新入生=水音
△資=1点
(資:車が通る山道の集団登校風景。誰が磨いたのだろうか?)

【無選】

●地虫出ずmaj7のコードにて
(葱:maj7コードのむずがゆい、それでいて心地よい響きが「地虫出づ」にピタリ、「地虫出づ」なら◎。「出ず」は間違い。 君:地虫出ず・・・”いでず”と読むのかな?”でず”と読むのかな?どちらにしても「出ない」だけど。「出る」のだったら”出づ”・・・?)

●蛇穴を出づこだまする一悲鳴
(白:残念ながら選外ですが…。女の子が蛇を見つけて悲鳴を上げただけの句かもしれないが、読み方によっては〈こだまする〉空間の響きに春が感じられる。うがちすぎかなあ…。)


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