*B部門入選作発表*

「兼題季語:虫」「兼題漢字:軽」*全53投句 入選40句


【特選】

一席
●沈思して交互にしなふ虫の鬚=葱男


○久、資、夏、雪、前、百△白、小、五、香、メ、ス=18点
(夏:よく観察されていますね。 前:虫を見ながら詠んだのですか? 百:沈思する虫。 白:虫の擬人化が無理なく素直に織り込まれている。しかし、ややあっけなさもある。自己の思惟をもっと虫に重ねる〈委ねる〉方法があったのでは、と思われる。 五:虫の鬚に目が行くとは感服。 雪:確かに交互にしなってますね!何を思って? ス:そんな感じですね?!よく見てる!)


二席
●インク滲む製図の椅子やちちろ虫=スライトリ・マッド


◎久、雪○夏、砂、メ、君△白、五、入=17点
(久:早死にした製図士を思い出しました。葬祭場ではその人は死んで蝶になっていましたね。 雪:モノクロの静寂な世界が見えてきます。 夏:使っていた人の思い出が滲む椅子、虫の声で切なさ増幅。 君:硬質な感じが面白くて 白:自分を過去でとらえる自分がいる。それが厭わしい、と同時に慕わしい。情景に情感を織り込むことで、句は単なる写生ではなくなる。  五:製図が生業の方?旦那がそうなんですかね?今は製図もコンピューターでやるみたいですね。もしかしたら廃業されてるのかも?)


三席
●箸渡しの骨の軽さよ鳳仙花=夏海


◎入、二、ス○メ△砂、香、雪、君=15点
(ス:骨は軽くても命は重い。)


【入選】

●軽軽に晩學ならず衣うつ=葱男
◎君○水、香△久、砂、入、メ=11点
(君:ズシンと実感。「學」が効果的です。 水:はい そうなんですね。 香:「衣うつ」という季語、初めて知りました。昔の女性の夜なべ仕事だったとか。)

●石人の口なき声や昼の虫=雪絵
◎水、砂○入△夏、香、二=11点
(水:調べれば石人というのは北部九州にしか無いようですね。 夏:石像の声なき声と虫の声が唱和する。 葱:「石人」という言葉をはじめて知りました。)

●虫の音に微かに月も揺れたよな=久郎兎
◎澄○葱、小、秋△資、喋=11点
(葱:やや甘い気はしますが。 秋:歩くと月も一緒について来る。大人になってもやっぱり不思議。)

●支へれば軽き父の手牛膝=雪絵
◎メ、前○水△二、ス=10点 
(水:牛膝との取り合わせがいいです。 ス:作者の優しい思いが伝わってきました。 葱:実感なのでしょうが、類句もありそう。 二:下五はひらがなでしょう。)

●虫しぐれ和文和訳をしてもらふ=水音
◎資、白○葱△夏=9点
(白:「それどういう意味?」「虫の声が時雨の音のように聞こえること」「分からないな〜。雨の音と虫の声は違うでしょ」「ひっきりなしに鳴いているでしょ」「連続している?」「その喩えよ」「連続の喩えが時雨なの? 他にもいっぱいあるんじゃない?」「それが日本人」。  葱:「和文和訳」で戴きました。 夏:「和文和訳」が面白い!)

●歌う虫楽器弾く虫賢治の忌=スライトリ・マッド
◎夏、香△資、君=8点
(夏:虫のお題には宮沢賢治がピッタリ嵌ります。)

●秋の蝶ただゆるやかに軽くおもく=君不去
◎百○澄△水、秋=7点
(百:この状景ものにしたかった。 水:はかない感じですね。 秋:アゲハでしょうか。秋型がどこか寂しげに見えるのは、彼らには心外? 葱:下六の表現がいい感じ。)

●家計簿に軽き冷凍秋刀魚焼く=メゴチ
◎小○五△久、前=7点
(五:台所俳句もなかなかいいもんですね。)

●軽トラに山盛り秋と孫一人=喋九厘
○砂、君△白、秋、前=7点
(白:山盛りの貨物がそのまま秋であった。だけでは面白くもない。そこに加えられた孫〈小さな子供〉の存在が、生活の様相を濃く彩っている。そしてそれを見ている作者の「他」としての位置も。 秋:荷台にはどんな幸が…。 )

●残る虫スイッチバックの終列車=資料官
○雪、秋△五、喋=6点
(雪:今もどこかにスイッチバックの線路があるんでしょうね。「残る虫」が効いてます。 秋:盛りを過ぎた虫の音と終列車の組合せが侘しさを演出して見事。 五:スイッチバックと来ると、豊肥本線の立野?いいですね。めったに鉄道ものは採りませんがこれは別格でした。 葱:絵ヅラとしては面白いですね。)

●きちきちやふるさとのにはまなかひに=入鈴
◎五○資=5点
(五:きちきちはルール上でセーフですよね?「まなかひ」がいいですね。 白:音として句のまとまりは感じるのだが、きちきちから〈の連想で〉故郷の庭を目の当たりにするという展開は平凡に感じる。そこに別のベクトルでの情感の飛躍があれば…。)

●太刀魚を軽くツ抜けてしなる竿=メゴチ
◎秋△入、百=5点
(秋:青空に向かって跳ね上がる銀色が小気味いい。軽くとあるので細めの太刀魚? 百:「ツ」抜けっていうんだ。)

●虫の音の重なる夜や閑かなり=前鰤
◎葱△久、秋=5点
(葱:シンプルでベストです。 秋:虫が賑やかな程際立つ静寂。こちらも思わず息を潜めて聞入っている。)

●主なき軽トラの錆草の絮=雪絵
○五△水、喋=4点
(五:田舎にお住まいですか?乗り捨てられた軽トラックの錆いいですね。 水:放置された車の悲哀。)

●涼しげに風を歌うや虫の秋=喋九厘
○小△澄、前=4点

●鈴虫の土鈴パリンと割かるる夜=五六二三斎
○久、白=4点
(白:ある強度が感じられる。割かるる夜に異常の停止。何かが変わった瞬間。それは想いか、まなざしか。)

●「粗茶ですが」畳摺る音昼の虫=水音
○白、喋=4点
(葱:発想は面白いです。 白:句に流れが生まれている。それは「自」と「他」を包み込んで流れていく。パロールがエクリチュールになる在り方は、もっと見据えてみたいテーマだ。 )

●りんだうや軽やかにまう一回り=五六二三斎
◎喋△ス=4点
(ス:明るい感じがいいですね。)

●軽羹の丸に十文字藤袴=スライトリ・マッド
○喋△砂=3点

●津軽富士夕陽に紅き林檎園=資料官
○ス△澄=3点
(ス:岩木山、りんごはフジか?!美味!!)

●ひとひらの小さき庭にも虫の声=秋波
○澄△小=3点

●プラモデル変身させて虫の夜=夏海
△雪、君、百=3点
(百:秋の夜長。)

●虫合せ生まれていれば兄妹=葱男
○入△雪=3点

●虫の声潜む刑事の二三人=五六二三斎
○百△水=3点
(百:面白い。 水:ドラマの世界!)

●くろがねの虫這出ずる堆肥かな=ひら百合
○ス=2点
(ス:いろいろ出てきますよね?! 葱:写生句としてはこれでいいのかもしれません。)

●沢の瀬を軽々越える鮭の意志=秋波
○香=2点
(葱:まだ元気なうちですね。)

●鈴虫の朝や子が来る金借りに=砂太
△葱、二=2点
(葱:きっと息子さん〈娘さん?〉は涼しい顔をしていたのでしょう。「親にたかり虫」の跋扈する時代です。)

●立ち寄りの鄙びた露天虫の声=香久夜
○前=2点

●菜虫捕り忘られし箸二、三本=君不去
○二=2点
(葱:「、」は不要か。)

●待ち合いの駅舎のお茶や荷の軽く=香久夜
△葱、百=2点
(葱:ありそうな句ですが、ま、「荷」が軽くなったので。 ん?、季語? これは句会でもよくあることですが、お題にばかり頭が行っていて、推敲するうちに季語がなくなる、というパターンです。『待宵の〜』ならどうかな? 百:どこに季語が?)

●雨上がり一歩一歩に虫の声=メゴチ
△澄=1点

●くみかはし酌み交しする虫時雨=入鈴
△夏=1点
(夏:虫のすだく夜は、気の合う人としみじみ飲みたい。)

●サッシ開け客にもてなす虫時雨=小夜女
△葱=1点
(葱:「サッシ」はあまり俳句的なモチーフとは言えませんが。 五:俳句に作為があるのはいかがなものだろうか?俳句は偶然の賜物みたいなもので作為からは生まれないというのが私の考えです。しかるに採れませんでした。勝手に推敲「客人の聞きたいと云ふ虫時雨」。)

●光も音も止まるがごとし虫の夜=白髪鴨
△小=1点

●山里の朝のせせらぎちちろ虫=砂太
△メ=1点

●よりかかるかたのかろきに秋蚊帳=入鈴
△資=1点

●路地を折れ迷い込むほど虫のリレー=秋波
△二=1点


【無選】

●カシオペア野外ステージのセロと虫
(葱:詰め込みすぎか。)


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