*B部門入選作発表*

B部門/『季:日向ぼこ』『漢:湯』=全48句 入選38句


【特選】

一席
●解かれゆく家を見てゐる日向ぼこ=砂太


◎五、二、小○ス△葱、メ、喋=14点
(五:日向ぼこしながら解体される家を見ていたという。悲哀が伝わってくる。砂太先生句か?日向ぼこの季語の裏には迫り来る死が潜んでいるのかもしれない。砂太先生は長生きでお願いしますよ〈笑〉。 小:私もきっとその場面にいましたらそうしたいものです。 ス:日向ぼこの温かさと反対のものを取り合わせた点が良いと思いました。 葱:「日向ぼこ」には喜びと哀しみの二面性がありますね。)


二席
●抱瓶の魚笑ひて日向ぼこ=スライトリ・マッド


◎白○久、五、雪△二、君=11点
(白:抱瓶に描かれたユーモラスな魚の絵が、そのままに感じられる。ピカソの「丸くふくらんだ花瓶」に描かれた4匹の魚を想起させる。あたたかさに包まれた安らぎだ。 五:沖縄の風景のようですね。日向ぼこしながら泡盛?長閑でいいですね。 雪:あの図柄の魚が笑い出すほどのぽかぽか陽気!?)


二席
●湯舟一つ残して更地冬銀河=砂太


◎ス○二、夏、君△五、入=11点
(ス:無さそうで有り得る不思議な景色だなあと。こんなの見たら絶対句にしたい。 夏:生活感溢れる物=湯舟 がむき出しで取り残された寂寥感と冬銀河の無限が呼応。 五:今回は、家解体句多かった。風呂だけ残って解体された家の情景をちゃんと観察してますね。)


【入選】

●口開くことの億劫日向ぼこ=夏海
◎君○五、喋△雪、小=9点
(君:う〜ん、いい日向ぼこ! 五:この句は雪絵さん句?前に同じような句があったように思う。どんな句だったか忘れたが・・。もし、当たりならパターンを読まれていますよ。 雪:何もかもが億劫になります。)

●捨てられぬ欠け湯呑みあり寒の朝=君不去
◎百○メ、白△久、入=9点
(百:年の暮れ,片づけの季節。 メ:思い入れのあるものはなかなかね。 白:ただの「湯呑み」の語る言葉と「欠け湯呑み」の語る言葉には大きな差がある。老い(人生)の重さ、疲れ、やすらぎ…多くを語っているように感じる。この湯呑みはすでにコギトを持っているかのよう。抱瓶の句と最後まで天位を迷ったが、おおらかさで負けたよう。)

●別れまで海を見てゐる日向ぼこ=雪絵
◎夏○喋、二△五、資=9点
(夏:「長閑」とか「ノンビリ」でない“日向ぼこ”句で、切り口が巧み。 五:寂しい別れのようですが、この別れは旅の別れかもしれません。沖縄の海かもしれません。)

●赤き実の火照るやうなり日向ぼこ=水音
◎喋○前△葱、白、資=8点
(白:どうということのない句だが、無碍に捨てられない印象が残った。よくよく見ていくと、「赤」と「火照る」と「日向ぼこ」のイメージ連鎖が効いているのかもしれない。 葱:南天でしょうか?)

●薬湯に侘びたる手足年暮るる=葱男
◎久○前、君△メ=8点

●公園の主は上席日向ぼこ=香久夜
◎前、入○夏=8点
(前:主は猫でしょうか、最近は”アウトドア生活者”が主になっているのでは? 夏:一見長閑そうで、しかし「公園の主」とは野良猫か?それともホームレスの小父さんか?厳しい世相もちゃんと見ている句。 葱:たまにホームレスのおじさんを羨ましく思うことがあります。 鴨川の橋の下に優雅なサロンがあるんですよねえ〜。)

●怒るのはお母さんだけ柚子湯かな=五六二三斎
○水、香、砂△百=7点
(水:些細なことで叱られた小さな女の子がちょっと反省してる様かなと「柚子湯」から想像します。妻に叱られていじけてる夫と読んでも面白いかも。 百:そのお母さんがいるのかいないのか。 香:イライラ、どうか柚子湯で鎮めてください。)

●白湯を取る四十七士の息白し=五六二三斎
◎葱、香△資=7点
(葱:「白湯」の湯気と寒気と決意。絵になりますねえ〜! 香:「白湯を取る」で、句も引き締まった感じがします。 雪:始めこの句を読んだ時、上手く詠んでるなぁ、と思ったのですが、これは明らかにテレビか舞台かのお芝居の一場面ですよね。となると、こういう俳句はありなのかな?と。映像からヒントを得ることを否定しているのではなく、すでにこの世にいない人の息が白い、とは言えないのではないのかな?と、ちょっと疑問を持ちました。私の考えすぎでしょうか?すみません、未だに駆け出しなもので(^_^;))

●はかた人形に似て母日向ぼこ=入鈴
○葱△水、喋、香、小=6点
(葱:「母」の喩えの「はかた人形」、確かにひらがながいい。 水:土の素朴さ、ふっくらとした造形の人形。「はかた」を平仮名にしたことで、より強く伝わってきます。お母様の平穏な姿がみえます。 香:きっと色白のお肌がピンクに染まったことでしょう。 小:私の母も良く博多人形とよく言われました。認知症となりましたが何を思い出しているのでしょう。)

●極楽は雪降る山のお猿の湯=香久夜
○水△雪、砂、夏=5点
(水:温泉に入ってるお猿さんのとろけそうな顔。あれが極楽だったんですね。 )

●乗換の駅の待合日向ぼこ=資料官
○葱、雪△砂=5点
(葱:駅舎での「日向ぼこ」にはひとつ「旅情」が加わります。 雪:都会では味わえないのんびり感がいいですね。)

●日向ぼこ眼閉ぢれば青二才=五六二三斎
○百、資△君=5点
(百:誰しも気持は若い.”「まなこ」閉じれば”ってのはちょっと語感が気になる。 資:なぜ青二才なのか良くわからないが,何か自戒しているのでしょうか。)

●湯のたぎる音も忙しき年の暮=雪絵
○ス、小△五=5点
(ス:師走の光景にふさわしい感じ。視覚と聴覚を刺激する。 五:よくある発想か?予定調和の句ですね。「も」に予定調和して下さいの気持ちが出ている。「も」なしで句を考えてみては?「や」にしたら予定調和が薄れませんか?)

●湯畑の煙を浚ふ空っ風=久郎兎
○資△水、ス、君=5点
(資:草津温泉の風景をうまく切り取った。 水:草津ですか?「浚ふ」で空っ風の強さが分かります。 ス:温泉でしか見れない光景ですね。湯畑って言葉がいいです。)

●我慢のみ肌破り入る湯の刃=香久夜
○久△前、夏=4点
(葱:野沢温泉の外湯がそうでした。素人の肌ではとても太刀打ちできませんでした。)

●車椅子より見ゆる高さの日向ぼこ=雪絵
◎砂△百=4点
(百:違う目線というのは 大事。 葱:神戸異人館前の北野広場を思い起こします。)

●頼りなきも優しすぎるも日向ぼこ=水音
△百、入、砂、ス=4点
(百:多様性,diversity。 ス:思わず苦笑してしまうような句です。人間とも、ペットともとれるところが面白い。)

●日向ぼこ猫の寝顔に悪戯す=メゴチ
◎資△前=4点
(資:暖かさと滑稽さが入り混じって面白い。)

●冬山路湯の神祀る祠あり=スライトリ・マッド
◎水△夏=4点 (水:温泉をつかさどる神が支配する山。冬の山中のわびしさと不思議なぬくもり。)

●文学も恋も終ふて日向ぼこ=葱男
◎雪△久=4点
(雪:日向ぼこにはそんな力もあるわけですね。ちょっと大げさ?なところがおもしろい!)

●湯の滝や風花消へて天城山=久郎兎
△メ、前、白、二=4点
(白:「湯畑」の句と似た構想だが、こちらの方がスケールの大きさ、ふくらみを感じる。天城山と結んだことで、ただの写生句から脱したように思う。)

●雨あがりつたなき人生日向ぼこ=白髪鴨
◎メ=3点

●一年に悔を沈めて湯舟かな=砂太
○入△喋=3点

●クリスマスイブ産まれの子湯あみせり=スライトリ・マッド
△水、香、二=3点
(水:キリストの降誕に先立って生まれた孫?への限りない愛がある。 香:何だかみんなに祝ってもらえそう。)

●風花や客誘なひし美人の湯=君不去
○メ=2点
(メ:露天風呂にはいりたくなりました。)

●冬至湯や三十三年前の父=資料官
○小=2点
(小:三十三回忌をなさったのでしょうか?蘇る映像にでも話しかけたい!)

●日向ぼこ互ひの想ひ異なれど=君不去
△香、小=2点
(香:二人の微妙な関係と距離を感じますね。どこか接点を探るのですね。)

●虫めがね取り出す遊び日向ぼこ=夏海
○砂=2点

●ゆく年に贈る餞(はなむけ)日向ぼこ=喋九厘
○入=2点

●湯豆腐に言葉少なき座敷かな=夏海
○百=2点
(百:何かありげなところが余韻 。)

●寒雀湯気のむこうでハッスルハッスル=入鈴
△葱=1点
(葱:誰のギャグだっけ?「ハッスルハッスル 」)

●日向ぼこモビールゆうくり時たたむ=白髪鴨
△雪=1点

●ブランショに少し疲れて日向ぼこ=白髪鴨
△ス=1点
(ス:ブランショを知らなくても解釈が出来た点で拍手。 葱:ブランショに頼り過ぎの感あり。)

●窓際の気ままな勤め日向ぼこ=資料官
△久=1点

●湯薬や悴む指も癒しける=水音
△香=1点
(前:湯薬〈煎じ薬〉より薬湯〈温泉〉の方が、ぴったり来るように思うのですが・・・。)


B部門入選作〈back number〉

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号 63号 64号 65号 66号 67号 68号 69号 70号 71号 72号 73号 74号 75号 76号