*B部門入選作発表*

兼題「雪遊び」「音」*全66投句(入選56 句)


【特選】

一席
●確かなるものに水音山眠る=紅椿


◎二、香、白○君、砂△水、ま、秋=16点
(香:忍び寄る春の気配の表現がいいです。 ま:本当にそうですね。 秋:谷川の水音でしょうか。眠るような山の静と川の動の対比がいい。 葱:☆山尾三省さんの大好きな詩に似ています。「山があって その山のもとを水が流れている そのみずはうたがいもなくわたくしである 水が流れている みずが真実に流れている 月の夜には月を眺める 月の下で黒い山々が深い呼吸をしているのを眺める 水が流れている音を聴く 月の夜には月が本願である 月の夜には月をナガメル 月の下で黒い山々がふかい呼吸をしているのをながめる」。)


二席
●春隣卒寿の膝の伸びる音=まさこ


◎君、入○喋、資△十、五、メ=13点
(君:季語が句にぴったりですね。大らかな句。 資:春を待つ年寄りの鼓動が聞こえてくる。 十:トリビュアルな視点、優しさあふれる観察の目と耳。 五:最初は傘寿で砂太先生のことかと。卒寿は、90歳ですね。どなたかのご両親のことみたいですね。長命何よりです。砂太先生も益々お元気で。また、賞を取って下さい。)


三席
●水仙や暮らしの音のつつましく=紅椿


◎五、水○十、ま△夏=11点
(五:年寄りの暮らしのことではない。日本人すべてに要求されることのような感じが伝わってくる。U音のリフレインが良い。 水:平凡な生活の景なのに詩。 十:生活の慎ましさを「音」に語らせた妙。水仙とも合っている。 ま:水仙は静かにでも明るく咲き、人を和ませてくれます。その水仙と同じように、静かにすがすがしく生活しておられる方の姿が浮かんできます。 夏:人家の裏口あたりに咲いている野水仙か。日常の一コマも季節を感じるセンサーが働くと活き活きしてくる。)


三席
●地下鉄の揺れて破魔矢の鈴の音=資料官


◎百○五、入△久、雪、満、砂=11点
(百:聞こえそうで聞こえない音。 五:地下鉄で行く初詣。福岡なら、筥崎宮か?「の」の3連発が許容範囲か?皆さんのご意見はいかに? 久:音がするには人か車内設備かに当たらないと鳴らないと思います。多分可愛い人に当たったのだと思います。 雪:三社参りの帰りでしょうか。私も挑戦したけど詠めませんでした。)


三席
●黎明に雪積む吉事(よごと)あるごとく=砂太


◎秋○水、百、白△葱、喋=11点
(秋:朝日に輝く新雪の美しさと清潔感。白銀はいつも心躍る感動を与えてくれます。 水:私は逆にカーテン開けるのが怖い。除雪の必要があるかどうか、、、。 百:あってほしい。 葱:朝起きて、庭や窓の外を眺めたとき、雪が積もっているとなんだかうれしいような、哀しいような、しっとりとした心持ちになります。)


【入選】

●春隣貝のかたちの音楽堂=葱男
◎夏○紅、雪△二、水、ま=10点
(夏:春を待つ気持ちが伝わってきます。 紅:こんな音楽堂には是非行ってみたいですね。癒し系の音楽が聞こえてきそうです。 雪:貝も音楽堂も、春を連想させる言葉のように思えました。 水:貝がまた春を思わせる。 ま:見たことはありませんが、行くだけで明るい気分になれそうです。春隣がぴったりです。)

●SLの出発ちの音淑気満つ=君不去
○葱、久△二、阿、ラ、資、ス、入=10点
(葱:煙を放出すときに発する音、というのがなんとも原始的でデジタル音にはない「淑気」があります。 久:蒸気機関車のシュッと淑の音が韻をふんでいるようで、いいですね。 阿:いろいろなドラマを乗せての出発という感じがして世界が広がる。 ラ:どんな音がするのか、一度聞いてみたいです。 ス:光景が見え聞こえてきます。)

●かまくらの蝋燭に手翳し狐=久郎兎
◎ラ○夏、秋、ス=9点
(ラ:人ではなく、狐だったとは! 夏:キツネの指影絵が見えるようです。 秋:かまくらの壁にほのかに揺らぐ影。幻想と郷愁を誘われます。ス:影絵がいいなあ。昔よくやりましたよね。)

●内子座の招き稲荷も雪化粧=阿Q
◎葱○ラ△二、香、満=8点
(葱:「内子座」は愛媛県にある「歌舞伎劇場」のようです。「中西和久のエノケン」は今年、四国を廻ったようですが、松山では「ひめぎんホール」公演となっていますから「内子座」は見学してきたのでしょうか。きっと、阿Qさんもその地霊に惹かれたのでしょう。 ラ:「内子座」という固有名詞が利いています。)

●酒ほがい終へて鎮守の初太鼓=砂太
◎満○二、秋=7点
(秋:凛とした寒気の中での太鼓の音色が響いて来そう。)

●白神の近付ひて来る雪まろげ=五六二三斎
◎ス○葱△二、白=7点
(ス:白神山の地霊を感じます。 葱:「白神」では世界遺産の山地を思い浮かべますが、「雪だるま」自体をそう見立てたところがいいですね。)

●かまくらに膝抱いてゐる迷子かな=葱男
○十、水、入=6点
(十:観光地の迷子預り所と読むべきでしょうが、この迷子はただの迷子ではないと読むと面白い。幼き日の自分を思い浮かべるようなデジャービュ?として。 水:迷子は現実の子ではないような、幻想的な景。)

●雪まろげあちらこちらにランドセル=水音
◎雪△久、阿、百=6点
(雪:このランドセル句、はっきり景が見えて、色んなことが想像されました。敬服。 久:小学生のころは雪を地べたより綺麗と思ってランドセルを放り出したけど、雪が中に入って濡れることを考えなかったなあ。 阿:おもしろい光景。 百:ランドセルほったらかしで雪だるま作り?)

●浮き玉を運河に浮かべ雪あかり=スライトリ・マッド
○ま、君△阿=5点
(ま:実際の大きな運河がなかなか思い浮かばないのですが、雪あかりに照らし出された浮き玉は美しいでしょうね。 君:幻想的な情景が目に浮かびます。 阿:情景がきれい。)

●寒晴や無人電車のブザー音=十志夫
○ラ△夏、資、メ=5点
(ラ:寒々しい空気が伝わってきます。夏:聞きなれた日常の音が、寒晴れには特によく響くことを上手く捉えている。 資:無機質なブザー音も寒晴の元では気高く聞こえる。)

●笙の音のすみわたる空梅咲きぬ=白髪鴨
○阿、香△紅=5点
(阿:情景がきれい。 紅:神社の梅祭の風景でしょう。青空と白梅がみえてきます。)

●セロの音のかすめゆく夜はるとなり=白髪鴨
○阿、メ△ス=5点
(阿:そういう場にいたい。 ス:春を待つ希望をチェロに乗せ、いい感じ。)

●下手くそが頭でつかち雪だるま=満癒姫
○久、喋△葱=5点
(久:「が」が印象的、「がぁ〜」なのかも、と思いをめぐらせてしまいます。 葱:「雪だるま」に造形美を求めるところが愉快!)

●万両の音の鳴りそな赤揺らす=メゴチ
◎紅△百、白=5点
(紅:万両が動かないですね。家にもあるので、とても共感致しました。 百:鈴生りっていうし 。)

●雪の花音なき和音かさねけり=葱男
◎メ△ラ、秋=5点
(ラ:幻想の世界に迷い込みそうな感じがします。 秋:きれいです。)

●薄き日に水仙の音鳴り初める=五六二三斎
◎喋△入=4点

●音が消え本を置きたり夜半の雪=秋波
◎資△君=4点
(資:静かな時間の経過を感じます。)

●寒稽古顔に弱音のなかりけり=雪絵
◎砂△メ=4点

●雪合戦始める前のあみだくじ=ラスカル
△十、紅、久、雪=4点
(十:何を決めているのでしょうか、徐々に高まってくる楽しさ、期待感。 紅:じゃんけんでなく、あみだくじで決める所がいいですね。始まる前から楽しそうです。 久:大きく雪の上に書いたのか、小さく藁か、そもそも何故アミダくじなのか、なぞです。 雪:雪合戦をする前に、すでに盛り上がってる様子が見えます。楽しそう!)

●雪しずり音なき音を眺めたる=十志夫
○満、白=4点

●雪だるま茶色のブチの泣き笑ひ=秋波
◎久△五=4点
(久:南国の雪だるまは土がこびりつきますね。昔を思い出しました。「ブチ」と「泣き笑ひ」の表現とその発想に感服しました。 五:昔をよく思い出したものだ。土付きの雪だるま。九州の雪だるまらしい。)

●凍滝の裏に流れる音やさし=メゴチ
○紅△五=3点
(紅:省略の効いたお上手な句で、これも◎に迷いました。下五の表現が好きです。 五:凍滝の裏に回り込むとは驚き。想像だろうか?それとも、実景?)

●薄氷の音のかすかに朝日影=まさこ
○夏△君=3点
(夏:薄氷の張ったところへ陽が差して・・微かな音が素敵。)

●かぜの音なみの音きくはるとなり=白髪鴨
◎阿=3点
(阿:シンプルですっきりしている。)

●かまくらや灯の揺らぎつつ子ら迎へ=入鈴
○香△紅=3点
(紅:灯が迎えているような感覚が面白いです。 久:「つつ」だと蝋燭か何かの灯がかまくらで留守番をしているようで、どうなのでしょうか。すみません。7番目になってしまいました。)

●歓声は校舎裏より雪遊び=水音
○雪△砂=3点
(雪:まだまだ雪の残る校舎裏。視点がいいですね。)

●姫君の初音調度に角たらひ=夏海
○二△喋=3点

●虎落笛無音の街を通り過ぐ=君不去
◎ま=3点
(ま:冬の街の荒涼とした感じがとてもよく出ています。)

●雪だるま天に背伸びの大志かな=喋九厘
○砂△水=3点

●雪つぶて作つて急ぐランドセル=雪絵
○資△香=3点
(資:「雪まろげあちらこちらにランドセル」と比べて動きのあるこの句を採りました。)

●臘梅や宿りし心音の確か=香久夜
◎十=3点
(十:聴こえてくるお腹の子の微かで確かな心音に生命を感じホッとする気持ち。下5の危ういリズムの言い切り方も成功している。)

●熱燗や靴音高きガード下=紅椿
△十、砂=2点
(十:嗅覚、聴覚、触覚の混在する世界。酒場の喧騒と外の静寂の取り合わせに成功。)

●成人の日の雨音の華やげり=雪絵
○ス=2点
(ス:同じ雨でも雪でもプラス思考で行くといいですね。)

●図書館に頁繰る音雪しまき=水音
△雪、ま=2点
(雪:「雪遊び」から少し外れますが、いい句ですね。 ま:外の吹雪と対照的な図書館の中静まり返った様子が目に浮かびます。)

●名残雪投げて八つに弾け飛ぶ=香久夜
○五=2点
(五:観察がある句。勿論、思い出の世界だろうが・・。)

●悩むるも身を任せよと水の音=満癒姫
○百=2点
(百:これって季語は? 葱:「無季」でしたね、気が付かなかった、姫、すみません、指導不足でした。)

●春の月倍音声明細く伸び=まさこ
△百、ス=2点
(百:「倍音声明」初めて知りました。 ス:お経みたいなものですかね?)

●冬ぼたん風と光と靴の音=資料官
○メ=2点

●雪だるま痩せて崩れて還りけり=十志夫
○満=2点

●アラーム音布団の世界に鳴り終わる=香久夜
△秋=1点
(秋:わかります、その気持ち。)

●大声の神詞かしこし初神籤=砂太
△二=1点

●音もなく降り積む雪に声もなく=メゴチ
△満=1点

●覚ゆ数音階に換へ老ひし春=久郎兎
△喋=1点

●教室の雪だるま犯女学生=五六二三斎
△入=1点

●紅梅の蕾すくすく音がする=喋九厘
△君=1点

●ドーランを落としてふと見る雪化粧=阿Q
△資=1点
(資:ドーランの句が3句ありましたが,雪化粧のこの句が一番良い。)

●枇杷咲けり鳥の集音そうちのごと=入鈴
△白=1点

●雪合戦ぷほとふくれる姉のあり=入鈴
△香=1点 (香:「ぷほと」が面白い。負けず嫌いのお姉さんなんでしょう。)

●雪合戦雪玉係買って出る=夏海
△ラ=1点
(ラ:雪玉を作るのは得意だけれど、投げるのは下手なのかもしれません〈笑〉。)

●雪玉と雪玉のぶつかりし音=スライトリ・マッド
△夏=1点
(夏:スポーツ雪合戦などはかなり激しいバトルですから、凄い音もすることでしょう。)

●雪だるま頭の外れかけてをり=ラスカル
△葱=1点
(葱:それもまた、楽しい「遊びの結末」。)


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