*B部門入選作発表*


兼題『季語:夕焼け』『漢:磨』=全67投句(入選46句)

【特選】

一席
●惜敗の子に夕焼けの空があり=砂太


◎る、前○葱、五、紅、水、香△白、淳、風、ま、弧=21点
(る:本人よりも親の方の印象に残るのかもしれませんが、でもよくわかります。 葱:親からの視点でしょうか? よく頑張ったね! と言ってあげたいのでしょう。 五:試合に負けた子に夕焼けは沁みる。 紅:この日の夕焼けは決して忘れないでしょうね。 水:夕焼空は明日への希望です。また頑張ろう。 白:幼き頃の思い出が蘇ってきました。 風:句意の景は好きなんですが、「に」と「が」の助詞の使い方にもう一工夫欲しい感じがします。「惜敗の子」で切るとか。 ま:夕焼けていて良かったです。)


二席
●追伸に一と二とあり夕焼雲=十志夫


◎砂、資、ま○水△や、雪、喋、風、香=16点
(資:手紙の余韻を夕焼け雲に例えたところが面白い。 ま:言いたいことがまだ、あったのですね、なんでしょうか気になります。 水:ええーみたいなことか、大事なことか、、、。 や:一にひとを労わり、二についでに君を労わる。 風:貰った手紙なのか書いている手紙なのかわかりませんがこの句にはさしたる問題ではないと思います。夕焼けと追伸、良いですね。 香:忘れっぽくなるんですよね。書く方も夕焼けが消えないうちに。)


三席
●夕焼けやじゃんけんぽんの荷物持ち=秋波


◎メ、雪○葱、前△る、風、久、香=14点
(雪:前後にランドセルをしょった子どもが目に見えるようです。表現力に参りました。 葱:淡い郷愁。 る:今の子も、こんなことをするのでしょうか。 風:中七「じゃんけんぽん」が効果的で荷物持ちにイジメのような陰湿さは感じず可愛いらしい句だと思います。上五「夕焼や」のや切れで良いのかな?と少し思います。 久:小中学生かな。早く帰らない様子が見えますね。)


三席
●蝉しぐれ達磨禅師の大目玉=白馬


◎喋○砂、ラ、前、ぼ△る、子、ま=14点
(ラ:「大目玉」に、迫力があります。 る:確かに、こういう季語が似合う感じですね。 ま:季語がぴったりです。)


【入選】

●草原を戻る騎馬二騎大夕焼=ぼくる
◎白、風○や△葱、ラ、メ=11点
(白:雄大な景ですね。なかなか詠めない句だと思います。 風:季語に大中小を付けるのは好きではありませんがケースバイケース。この「大夕焼」は上12音と相まって実に効果的に雄大さを表現しているかと思います。 や:内モンゴルの砂漠を行く偽物のジンギスカン達。 葱:これは西部劇というよりは、モンゴルの馬のお祭りの雰囲気ですね。 ラ:モンゴルの草原を思い浮かべました。)

●谷川の水で磨く歯月涼し=ぼくる
◎紅○や、風、ス△葱、子=11点
(紅:キャンプの一こまでしょうか。なんとも涼しげです。 や:出来る事は出来る内にせよ。若い時は二度とない。 風:魅力的な上12音ですが季語が動くかと思います。 葱:キャンプのすがすがしい朝を思います、これは「朝の月」かな?)

●磨かるるカバの歯並び梅雨晴間=雪絵
◎葱○資、ま△砂、ラ、風、ス=11点
(葱:稔典さん以後、「カバ」は俳句によく似合いますね。 資:坪内先生風の軽い面白さがある。 ま:明るくて楽しくなります。 ラ:大口を開けたカバが見えます。とても気持ちよさそうです。 風:カバの歯磨きに新鮮さは感じませんが、梅雨晴間が効果的だと思う。)

●キリシタンの島鎮もれり夕焼空=雪絵
◎や、ス、ぼ△葱、紅=11点
(や:祈りは万人にあり。ましてや信者ともなれば。 ぼ:静謐で、大いなる時空を感じます。 葱:類句はありそう。 紅:天草あたりでしょうか。きれいな絵が浮かびます。)

●腰窓にとり残したき夕焼かな=弧七
◎五、香○メ△十、久=10点
(五:腰窓に夕焼けがあるということは、マンションの窓ですかね?上手い句ですね。 香:名残惜しさが、よく表現されてます。 十:「腰窓」が効いている。「とり残したき」という主観より、「「とり残されし」と嘱目句したほうがいいような。 久:砂漠の地平線、日没が線香花火のように落ちる様を思い浮かべました。)

●人の名を久しく呼ばず夕焼空=るな
◎久○白△五、水、久、ぼ=9点
(久:これって意味深いなと思いました。老境なのかとも思いました。 白:大きな声であのひとの名を呼びたい。 五:引きこもり?夕焼けは寂しい。 水:なんだか寂しい景ではないですか? ぼ:呼び覚まされた孤独感、急に人恋しくなった。)

●海夕焼嬰の手首の深くびれ=まさこ
◎弧△十、砂、雪、ス=7点
(十:観察のきいたトリビアな視点。やや季語が動くかも。 雪:丸々と太った赤ん坊ですね。)

●太陽光パネルに烏大夕焼=水音
○砂、風△十、資、弧=7点
(十:黒とオレンジという大胆な色彩による意外な取り合わせ。 風:特選句の「大夕焼」とは逆に「大」が僕にはあまり効果的とは感じられず。)

●ふところにコロッケ抱へ夕焼道=葱男
○ラ、雪、久△ス=7点
(ラ:類句があるかもしれませんが、この昭和の雰囲気は大好きです。 雪:一人暮らしの我が家へ、急いで持ち帰る様子が見えます。 久:コロッケのアツアツを考えると冬のイメージもありますが頂きました。)

●手鏡をきゆつと磨いてそれつきり=るな
◎淳○十△ス=6点
(十:なんともシニカルな不思議な句。「それつきり」の答は読み手の数だけある。)

●窓夕焼膝の子猫の息遣い=まさこ
○紅、雪、ぼ=6点
(紅:「窓」が技ありです!子猫を起こさないようにと動けない作者。 雪:きっと安心しきって眠ってるんでしょうね。 ぼ:夕焼も人も仔猫も、みんなやさしい。)

●夕焼や研磨機うなる町工場=ぼくる
○五△ラ、雪、淳、ま=6点
  (五:兼題2つ盛込み、内容もある。日活映画を思い出す。 ラ:「夕焼」と「磨」のお題を2つ使い、さりげなくこなしています。 雪:まさに昭和な下町の町工場、三丁目ですかね。 風:20、35、61と同想でベタ付きかとは思いますが懐かしさを伴う景で好きです。 ま:あまり見かけなくなりましたが、日本の工場はすごいのですね。ここから世界へ!)

●憂き夜には鍋と心を磨きけり=子白
○淳、久△葱=5点
(久:鍋磨きで心も、なのでしょう。主婦か主夫どちらかな。 葱:無季なれど、梅雨の季節にふさわしい心情表現。)

●手仕事を終へて残れり夕茜=秋波
○子、弧△風=5点
(風:20、35、61と同想でベタ付きかとは思いますが懐かしさを伴う景で好きです。)

●夕焼けて火の香の残る古窯跡=砂太
◎子○資=5点
(資:夕焼けにより古い窯跡にも熱がこもる発送は面白い。)

●夕焼や遺骨喰らひて泣く漢=五六ニ三斎
○る、ま△紅=5点
(る:高倉健さんですね!誰も何も語らない、映画のようなシーンが浮びます。 ま:表現がちょっと強いかと思いますが、私にも覚えがありとても惹かれました。 紅:伝わるものがありました。)

●夕焼や瓦礫の山の上に犬=風牙
○白、淳△久=5点
(白:未だ癒されない地。犬の遠吠えが。 久:地震津波ですね。)

●荒梅雨に煙る国東磨崖仏=五六ニ三斎
○る△資、メ=4点
(る:ワイルドな感じが、季語とよく合っていると思います。 資:あらづゆ,けぶる,まがいぶつの濁音が続く音感が良いですね。)

●梅仕事壁にぎょろりと達磨の目=秋波
○香△水、前=4点
(香:真ん丸の梅が達磨の目を連想させておもしろい。その目で梅の番をしてもらいましょう。 水:「梅仕事」は季語として使えるのでしょうか。)

●工場のサイレンはるか夕焼くる=紅椿
        △や、メ、風、ぼ=4点
(や:誰でもが持つ日常の響き。 風:20、35、61と同想でベタ付きかとは思いますが懐かしさを伴う景で好きです。)

●雲染みて影まで朱く夕焼けに=香久夜
○喋△前=3点

●夏の空磨きあげたるシーグラス=まさこ
◎水=3点
(水:空と海と色とりどりのシーグラス すてきな夏の景ですね。)

●磨き粉のらせんの泡や渋団扇=紅椿
        ◎ラ=3点
(ラ:「らせんの泡」に、確かな写実の眼が感じられます。 )

●夕焼に石蹴の輪の浮かびけり=ラスカル
○メ△葱=3点
(葱:これも懐かしい。)

●夕焼雲父母吾を探しをり=白馬
○十△五=3点
(十:「父母が吾をさがしている」のか「作者が父母と自分自身を探している」のかが分かりにくい。作者の意図は前者だと思うが、後者で戴いた。 五:夕焼雲の中には、天国の父母が!)

●隣室の出勤の音夕焼くる=紅椿 
       ◎十=3点
(十:隣室の人間は夜勤の人なのか、水商売なのか。音の気配と色の気配を組み合わせたドラマチックな句。)

●大夕焼小さきサドルに尻ゆれて=十志夫
△白、喋=2点
(白:全体の流れがとても心地よくユーモラスですね。)

●草笛や磨耗激しきスニーカー=やんま
△水、風=2点
(水:アウトドア好きの人なのですね。)

●涼しさや球磨の流れの水しぶき=資料官
○子=2点

●達磨さん泣かず笑はず水芭蕉=やんま
○喋=2点

●播磨路の白光る夏鷺の城=久郎兎
△前、香=2点 (香:本当に真っ白でした。)

●ひっそりと雨が来るらし夕焼空=メゴチ
○弧=2点

●磨崖仏凹凸弛む薄暮かな=久郎兎
△葱、五=2点
(葱:陰が淡く、輪郭がぼやけ、岩そのものに同化していく薄暮ですね、これ、「薄暮」は季語? 五:磨崖仏は私を含め3つあった。観察ある句。)

●磨きたる戀の仕草や初浴衣=風牙
△紅、白=2点
(紅:初浴衣だとなおさらでしょうね。 白: 誰も思いつかない愉快な句ですね。)

●夕焼に紙飛行機の吸はれゆく=ラスカル
△砂、喋=2点

●或る日あの夕焼け染めし宝満山=喋九厘
△る=1点
(る:こういう山は知りませんが、作者にとってはまさに宝物のような思い出だったのでしょう。)

●音のなきイヤホンをして夕焼ける=弧七
△久=1点
(久:意味が分からないけど、格好つけかな。)

●静けさや田んぼに映える夕焼雲=メゴチ
△子=1点

●父の日や歯磨き終えて正座する=メゴチ
△資=1点
(資:なんてことないことだけどなぜか納得感がある。)

●父逝きて火葬場からの夕焼かな=喋九厘
△淳=1点

●突堤にもう人はなし大夕焼=弧七 △ぼ=1点 (ぼ:大海原も見えてくる。)

●夕焼けにカラス鳴き鳴き赤子泣く=子白
△る=1点
(る:そう、赤ん坊というのは、なぜか夕方になると泣くんですよね。)

●夕焼の中や自転車二人乗り=風牙
△や=1点
(や:童謡のようなシーン、カラスと一緒に帰りましょう。)


*る:今回、「夕焼け」のお題で気になったのですが。。 終止形は「焼く」なので、「夕焼くる」とすると連体形になってしまい、下五には使えません。 なので、五音にしたければ、「夕焼けぬ」くらいなのではないでしょうか。 (大夕焼、夕焼空、夕焼かな、などの方が自然な感じですが)


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