*B部門入選作発表*


兼題『季語:黴』『漢:合』=全67投句(入選57句)

【特選】

一席
●黴ともども大歳時記を相続す=水音


◎る○十、砂、ラ、雪、紅△久、葱=15点
(る:拙宅の大歳時記も黴びております。で、No26<この世には吾子と黴の書遺すらむ>のようなことに。。 十:下五の「相続す」が効いている。 ラ:「相続す」という表現が、大仰で面白いです。 雪:年代物の立派な歳時記なんでしょうね。 紅:大仰なところが俳句らしいですね。 久:黴のお題を貰わなければ、こんな発想はなかったのに。 葱:俳句遺伝子も伝わっていることでしょう)


二席
●居酒屋の巨乳ポスター黴の壁=風牙


◎白○五、ぼ、葱、喋△十、紅=13点
(白:古い居酒屋。分かる分かる。 五:ユーモア溢れる句。居酒屋のグラドルポスターは古いモノが多い。アグネスラムが貼ってあったりして!ぼ:クダ巻いている男どもの姿も。  葱:楽しいぞ! さあ、呑むぞおー! 十:巨乳ポスターが豪快&リアル。「黴」が兼題だが、「黴の壁」はやや説明的で付き過ぎかも。 紅:居酒屋の様子が手にとるようです。)


三席
●合宿の荷のどさどさと青嵐=ラスカル


◎十、久○風△ま、雪=10点
(十:洗濯物やら何やら子供が合宿から帰ってきた様子だろう。季語とも合っている。 久:学生の合宿、青嵐の情景にぴったりです。 風:新緑の頃の強い風青嵐の感じが良くでていると思います。 雪:合宿という言葉自体、懐かしいものになりました。阿蘇の合宿で根子岳に登ったこと、思い出しました。若かったー。)


三席
●軍服の父のアルバム黴にほふ=雪絵


◎砂、修○ラ、淳=10点
(修:「にほふ」としたところが秀逸、よく伝わってくる。 ラ:「黴にほふ」に、反戦の意がこめられているように思います。)


三席
●合歓咲くや村長は元全共闘=十志夫


○ま、雪、水△子、白、ラ、紅=10点
(ま:懐かしくまた微笑ましいですね。 雪:今は合歓咲く里での暮らし。ギャップがおもしろい。 水:全共闘という言葉を聞いたのは久しぶりです。 白:むしろ楽しい句ですね。 ラ:ユニークな句ですが、やや作り過ぎのような感じがします。 紅:思いがけない季語が成功していると思います。)


【入選】

●合ひづちの音なきこゑや蛍の夜=葱男
◎ま○る、秋△久、水=9点
(ま:音を繊細に表現されていて、季語が生きていますね。 る:暗い中、声を出すわけにもいかない緊迫感が伝わってきます。 久:二つ蛍火が落ち合う様子でしょうか。 水:声を出しても蛍は逃げて行かないような気がするけど、声を出してはいけないような気になってしまうんですね。)

●落書きの相合傘も黴びにけり=ぼくる
○紅、弧、ス△秋、風、メ=9点
(紅:時間の経過と恋の行方がよく見えます。 風:中七の「も」が惜しまれます。「の」ならば◎でした。必ずしも「も」が悪いわけではないのですが往々にして焦点がぼやけてしまいます。)

●黴の香を箱に納むる古銭商=十志夫
◎水○弧△五、葱、雪=8点
(水:古銭に黴が生えるのか、包み紙が黴臭いのか、、何にしろ古さは伝わってきます。 五:上手い句。 葱:手の込んだ細工の古めかしい木の小箱が目に浮かびました。)     

●兄妹の原色揺れる雨合羽=久郎兎
◎子○喋△る、修、ス=8点
(る:こういうものは確かに原色なのかなと。 修:こどもは原色なんだ。)

●合憲と云ひ郭公の托卵す=水音
◎紅○五△十、秋、ス=8点
(紅:発想が素晴らしいです!文句なく◎です。 五:シニカルかつタイムリーな句。 十:「托卵」は、昨今の日米の「安全保障」を指しているのだろう。)

●梅雨寒や一合の米炊き始む=十志夫
◎秋○ス△ま、香、弧=8点
(ま:梅雨寒がいろいろ想像させえてくれます。)

●ベネチアングラスに百合の香の溜まる=ラスカル
○る、修△子、ま、葱、資=8点
(る:こういう綺麗な句を見ると、やはりホッとします。 修:なんとも言えない美的な世界に魅かれました。 葱:下五がいい!)

●黒板の相合傘や風青し=葱男
○子、砂、資△ぼ=7点
(ぼ:青春時代の一コマ。)

●辻褄の合はぬ言い訳花茨=まさこ
◎資○香△水、喋=7点
(資:鋭い棘が目に見えるようで実感がこもっている。 水:花茨ですか。二人の雰囲気は良くはなさそうですね。)

●床下の高橋和巳かびの中=修一
○久、葱、風△る=7点
(久:過去のことになってしまったのでしょうか。眠っているのでしょう。 葱:埴谷のブームはあってももう「高橋和巳」のブームはもうないのかなあ〜? 風:人名俳句は感覚の問題なのですが、リアリティあると感じました。実景かどうかは問題ではなく文芸上のリアリティです。惜しまれるのは下五「かびの中」がやや説明的と思います。 る:う〜ん、床下はちょっと。。でもなぜか「高橋和巳」が良い塩梅なんですよね。 )

●読み耽るブラックジャック黴の宿=ぼくる
◎雪○白△修、ス=7点
(雪:ブラックジャックは良く知りませんが、黴の宿で読むには何となくぴったりのような。 白:ブラックジャックには黴の宿が似合う。 修:季語は青葉風でも新樹光でもない、ぴったりです。)

●息合はすシンクロのデュオ雲の峰=雪絵
◎ぼ、ラ=6点
(ぼ:いい絵です、雲の峰もバッチリ決まっている。 ラ:健康的な明るさが感じられます。「雲の峰」という季語が、ぴたりと決まっています。)

●五月雨や合羽で駆ける女の子=白馬
◎喋△子、雪、英=6点

●スライドの黒黴祖父の白い髭=資料官
○水、秋△紅、メ=6点
(水:スライドにも黴は生えるのですね。白い髭は無事なのか。 紅:威厳のあるおじい様の姿が見えてきます。)

●梅雨入りの合図なる雨静かなり=久郎兎
◎風、英=6点
(風:長く鬱陶しい梅雨の始まりを冷静に感じ取っている作者に共感。)

●父の忌やレコード盤の黴ぬぐふ=まさこ
○白、淳△葱=5点
(白:父の遺した懐かしのメロディー。年に一度聞く。 葱:私の父の好みはもっぱら洋画のサントラ盤でした。)

●労働の合間の祈り薔薇の門=紅椿
◎ス△風、弧=5点
(風:イスラム圏の方も増えて比較的良く見るようになった上12音。ただどうしても下五の季語が動くような気がします。)

●青嵐吹き合鍵のもう要らぬ=るな
◎弧△砂=4点

●黴の香や錆びた窓開け風通す=資料官
◎五△淳=4点
(五:黴句はこうして作れりという巧みさに感心しました。)

●熊楠の黴ナウシカの黴合体す=るな
◎葱△五=4点
(葱:宮崎駿とナウシカは熊楠のあの難解な黴菌の世界をどれぐらい理解できたのだろうか? 五:2つのお題を閉じ込めた。熊楠という天才奇人がそのヒーロー!)

●厨には土間ひとかどの黴育つ=風牙
◎香△久=4点
(久:黴や虫も、悪さをしないように御札を貼っておきますかね。)

●先輩は裸で眠る合宿所=五六二三斎
△砂、葱、水、風=4点
(葱:先輩から後輩に受け継がれるものすべて。 水:それは先輩の特権なのでしょうか。 風:リアリティがあって「裸」も夏の季語として効果的に働いてると思います。)

●花合歓や挿絵はすべてパステル画=ラスカル
○子、資=4点

●真暗なへや真白のものに黴=弧七
△白、ラ、香、メ=4点
(白:見える筈がないけれど、見えそうな。 ラ:真暗な部屋だからこそ、「真白」が際だって見えます。)

●黴菌のやうな言葉は日干しせよ=スライトリ・マッド
○メ△資=3点

●黴臭き頭ひねってパズル解く=秋波
○英△香=3点

●黴の香に驚いてをりひとり者=白馬
◎メ=3点

●旅支度迷ってまた出す雨合羽=秋波
○久△淳=3点
(久:嵩張るから、よほどの旅?自転車かな?)

●別々の場所で待ちゐる合歓の花=修一
○ま△弧=3点
(ま:素敵な関係の方との待ち合わせなのでしょう。)

●マリアさま愛は合鍵バラと月=子白
○ぼ△白=3点
(ぼ:何と欲張りな、でもいいね! 白:含意不明なれど面白い。)

●見て見ぬを見透かされたる黴退治=香久夜
◎淳=3点

●海と合ふ色の服なり南風吹く=スライトリ・マッド
△ぼ、葱=2点
(ぼ:いい気持ち。 葱:ビーナスの存在は我らの生命力の源ですね!)

●変わらない合否判定夏始=風牙
○十=2点
(十:この時期、試験後に出る「〇〇大学合格率〇〇%」を気にしている様子を上手く表現。)

●下駄箱の靴にうつすら白き黴=修一
△淳、風=2点
(風:リアリティがあって良い雰囲気なのですが景がもう一つ広がらず△選。気づき、発見が不足しているせいかもしれません。)

●更衣へて駅の待合い声高し=資料官
△砂、喋=2点

●この世には吾子と黴の書遺すらむ=るな
○香=2点

●頭痛治らず黴少しずつ侵蝕す=弧七
△十、風=2点
(十:頭痛を黴が原因としている点がユニーク。 風:○選で採りたかった一句。迷っただけに「治らず」「少しずつ」にほんの僅かですが説明の匂いを感じます。)

●真青なる風に晒さん黴の花=紅椿
○英=2点

●待ち合はすライオンの像聖五月=雪絵
△る、葱=2点
(る:季語が効いていると思います。 葱:格調の高い建物の正面玄関を想起します。 外資系のホテルかな?)

●円くして黴よお前もここにいるか=弧七
○メ=2点

60●屋根の上布団と黴の香ひろげをり=秋波
○修=2点
(修:ほっとする生活の実感があります。健康について考えさせられます。)

●黴といふ生き物育つ風呂の部屋=白馬
△英=1点

●競い合ふ兄と弟破竹の子=まさこ
△修=1点
(修:季語がぴったり。)

●新緑の野辺行くトラップ合唱団=ぼくる
△ラ=1点
(ラ:「トラップ」の一語によって、生き生きとした句になったように感じます。)

●スポンジを束子に替へて黴の花=紅椿
△る=1点
(る:頑張っておられるわけですね。)

●船員の合図響けり夏の海=五六二三斎
△風=1点
(風:夏の海の一場面で三夏の季語ですが初夏の感じがします。)

●大正のいのちみぢかし黴の宿=葱男
△資=1点
(資:ゴンドラの唄チックなリズム感が良いですね。)

●夏日こそ川辺と球磨川合流す=喋九厘
△五=1点
(五:ふるさとの川。ダム建設はどうなった?)

●父子の乗るミニトレインや合歓の花=水音
△喋=1点

●待合ひの自慢と期待烏賊釣りへ=メゴチ
△秋=1点

●山女釣り静と動のせめぎ合ひ=メゴチ
△英=1点


B部門入選作〈back number〉

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