*B部門入選作発表*


兼題『季:金魚』『漢:海』=全57投句(入選40句)

【特選】

一席
●夏休みクレパス一本海になる=真弓


◎葱、ラ、ま、資○紅、雪、ス△十、久、砂=21点
(葱:作句のお手本のような句、青いクレパスで広い海を塗っているだけなんだけど、こんなふうに詠むと、そこに詩が生まれます。絵を描いているこどもを見ている作者の視線が暖かいからこそ生まれるポエジーです。 ラ:青いクレパス一本を、使い切ってしまったようですね。  ま:海が楽しかったのでしょうね。気持ちが伝わってきます。 資:画用紙いっぱい海の色で気持ちが良い。 紅:絵日記を書いているのでしょうが、「クレパス一本海になる」の感性がうらやましいです。 雪:さて、どんな絵に? 十:少々大袈裟な表現も、この句の味わいだ。必死に青色を塗りたくる子供の姿が浮かぶ。 久:塗り込むと一本全部使ってしまうくらい海が広がっているのでしょう。)


二席
●色褪せし力士の手形海の家=ラスカル


◎十、真、修○メ、雪、砂△久、資、紅、水、香=20点
(十:ここでいう「海の家」は、浜辺のそれではなく古い「民宿」のことだろう。色褪せた手形ばかりか、5年前の週刊誌などもある。とてもリアル。 真:「色褪せたなんとか」の句は沈みがちですが、この句は「力士」せいか、きらきらとした海の光のせいか、明るい印象です。ある夏の、当時活躍中の力士達の、豪快な泳ぎを想像しました。泳いだ後は、やはり砂浜で相撲をしたんでしょうか・・・  雪:飲食店では時々見かけますが、海の家とはおもしろい。 資:日本人横綱?何か時の流れを感じた。 久:老舗の海の家、大きそう。シーズンオフは何をやってるんでしょう。 紅:力士と海の家のミスマッチがさすがです。 香:お相撲さんも泳いだのかなぁ? 葱:リアリティあり。)


三席
●失恋の男金魚と眠りける=ぼくる


○葱、久、秋、真、修△白、五=12点
(葱:こういう句、好きだなあ〜。 久:金魚の気まぐれな動きが癒してくれるのでしょうね。 秋:取合せが面白い。 真:失恋をした男が、犬や猫と寝るのではなく、主人の機嫌などわからない金魚と眠ったのが(部屋に金魚鉢があっただけでしょうが)、面白いです。  白:僕の恋人は金魚だけで良いのだ。 五:面白い。金魚を飼ったりして、内向きだからもてないんだよ!)


三席
●夏の海万年筆に吸ひあぐる=水音


◎久、雪、ス○喋△ま=12点
(久:思い出を便箋にしたためたのでしょうか。発想が奇抜ですね。 雪:潮の香のする文字が書けるかも!?大胆な発想に脱帽です。 ま:青を吸い上げるのですね、好きなお句です。)


三席
●猫の目に時を知りたる金魚かな=水音


◎メ、秋○葱、白、五=12点
(秋:よく見る光景だけど緊迫感がある。猫さん、金魚を採らないで! 葱:実験的な句、「時間」の観念に少し迫ることができる。 白:そろそろ危ないか-----。 五:猫がお腹空かしてるのが、金魚が分かるのか?面白い句です。)


【入選】

02●あざやかに掬うてみせて金魚売=紅椿
◎淳○ま、水△雪、修、砂=10点
(淳:観衆の「お〜!」という歓声が聞こえます。 ま:粋な、ちょっと得意げなお兄さんが気持ち良いお句です。 水:見ている子供たちゃの眼差しまで見えてくる。)

●琉金のゆらりゆらりと更紗着て=資料官
◎砂○水△喋、ぼ、紅、秋、真=10点
(水:更紗と琉金の取り合わせが面白いと思いました。 ぼ:感じよく掴めています。 紅:下五に意表をつかれました。 秋:いかにも優雅で涼しげ。 真:水の中の更紗が美しく、魅かれましたが、更紗琉金よばれる金魚があるようなので・・・ )

●雲海をスイッチバックして汽笛=資料官
○ぼ、五、メ、砂=8点
(ぼ:何処だろう、旅心をそそられる。 五:小海線かな?日本で一番高い線だったような?スイッチバックは小海線にあるのでしょうか? 葱:高原列車は爽やかでしょうねえ〜!)

●天気図の白きうづまき海紅豆=紅椿
◎水○ま△資、雪、砂=8点
(水:南の海上にある台風。海紅豆の赤さが台風の大きさを連想させる。 ま:沖縄の様子がはっきり浮かんできます。)    

47●橋七つくぐりて展く夏の海=砂太
○修△葱、久、五、真、ス=7点
(葱:映画のズームアップしてくる迫力を言葉に置き換えて成功しています。 久:海は「七」が似合いますね。河港からの船か、多島海に架かる橋でしょうか。 五:橋が七つというのが、ラッキーセブンみたいで、縁起いいし、いいことがありそうな海です 真:七つとは!相当長く歩いて、やっと海が見えたのですね。7回の「くぐり」のあとの「展く」が爽快で気持がよかったです。句の自然な流れも好きでした。 。)

●自らの憂ひを呑んでゐる金魚=雪絵
◎白、香△水=7点
(白:ひらりと尾を振るたびに次の憂いが。 香:すごい発想です。)

●黒南風の海よりゴジラ上陸す=葱男
○久、ぼ、紅=6点
(久:放射能を帯びた見えない怪物がいつか現れるのでは。 ぼ:なるほど、いかにもありそう。 紅:折しもゴジラブーム!黒南風がぴったりです。)

●告白をされて呑み込む金魚かな=葱男
◎五△喋、白、雪=6点
(五:えーっ!僕を好きなの?1度言われてみたいセリフ!ビックリして出目金だ! 白:口の中に金魚を入れていたの?あぁびっくりした。)

●仕立船たぷんと揺れて夏の海=メゴチ
◎ぼ○ス△喋=6点
(ぼ:さあ釣るぞ!喜びと気合が伝わって来る。)

●ところてん鎌倉山に海の風=ぼくる
◎紅○資△ま=6点
(紅:さらっと詠んでおられるのに、景が大きくて、涼しげで、とても惹かれました。 資:湘南の夏だという句。ところてんが効いている。 ま:あ〜気持ちが良さそう、爽やかですね。)

●ぽこんぽこんきのこのやうな海月みる=スライトリ・マッド
○喋、香、秋=6点
(秋:ぽこんぽこんが効いています。)

●出目金や何処を窺ふ鉢の端=久郎兎
○白、資△ぼ=5点
(白:遠くを窺うのか近くなのか。 ぼ:ほんとに、おかしな生き物だ。)

●海の日や白き歯眩し網を曳く=秋波
○ラ△葱、淳=4点
(ラ:地引網でしょうか。「白き歯」がきらきら輝いています。 葱:日に焼けた肌の黒さと白い歯の対比が躍動感を増幅しています。)

●大海の鯨と成りし金魚かな=喋九厘
○十△白=3点
(十:この句の世界観は盆栽のそれと共通する。「成りし」としたことで「成金」と読める諧謔も。「鯨(冬の季語)」と「金魚」との季重ねは、鯨が比喩であること、明らかに2つの季語には強(金魚)弱(鯨)があることから問題なし。「優雅さも鉢に合わせる金魚かな」とは「対を為す」句である。 白:夏の夜の夢。)

●親指を立ててウインク海開き=ラスカル
○十△修=3点
(十:夏の海という開放感からか、そんな仕草も何故か自然に見えてしまう。)

●かき氷のたり昼寝も海の家=喋九厘
○淳△秋=3点
(淳:のんびり昼寝が気持ちよさそうですね。)

●気まぐれな淡海の風や夕立雲=十志夫
△ラ、資、メ=3点
(ラ:「淡海」という具体性がよいと思います。)   

●少年の秘密金魚と話すこと=スライトリ・マッド
○香△水=3点
(葱:惹かれます。)

●遠浅の海へ牛車が島の夏=まさこ
△ラ、五、香=3点
(ラ:牛車が、天の川まで行くような幻想を覚えます。 五:沖縄の島ですよね!由布島と竹富島でしたかね?)

●酔ふほどに海の滴る厄をんな=葱男
◎喋=3点

●海老反りの痩せ浪人や夏柳=紅椿
△十、香=2点
(十:経験を重ねるにしたがって人間はしなやかさを身につけるもの。この様子なら大丈夫だろう。 香:斬られ役専門の殺陣師ですね。)

●過密都市海より見えて夏の雲=砂太
△メ、ス=2点

●金魚すくひの露店の前を動かぬ子=雪絵
○ラ=2点
(ラ:可愛い〜♪)

●金魚鉢窓よりふはり海の風=真弓
△淳、修=2点

●子等が舞ふ金魚掬ひの水飛沫=久郎兎
○淳=2点
(淳:子供らのはしゃぐ姿が目に浮かびます。 葱:夏休みの子供たちの躍動感、懐かしいなあ〜、この歳になると暑いとへばるだけでちっとも躍動しません。)

●ふた夏の海を語らふ仏前で=五六二三斎
○真=2点
(真:とても魅かれたのですが、ちょっと、どんな場面か迷う句でした。故人と共に過ごした「ふた夏の海」の事を、他の友人と「仏前で」、語りあったと解釈しました。「ふた夏の海」が、一般的でない個人的な思い出として、心に響き、類想も遠ざけていると思います。)

●ペットボトル回し飲みして海開き=ラスカル
△葱、ま=2点
(葱:俳句にとっていかに具体性が大切かを証明してくれるような句。 ま:楽しそうな若者の姿がそこここに。)

●有明海の遠くまどろむ炎天下=雪絵
△紅=1点
(紅:「有明海」は絵じゃなくて、句になりますね。)

●金魚〜え〜金魚の声もなく=メゴチ
△ス=1点

●金魚死しかまぼこ板の墓標かな=水音
△秋=1点

●金魚玉切れそうな紐で吊るされて=白馬
△ぼ=1点
(ぼ:いいな、この生活感。)

●金魚玉水のかたちで揺れてをり=十志夫
  △メ=1点
(葱:比喩の巧みさ。)      

●美ら海や沖のヨットを追へば消ゆ=十志夫
△ラ=1点
(ラ:「追へば消ゆ」という表現が切ないです。) 

●夏の宿テレビ消しても海の鳴る=真弓
△淳=1点
(淳:海鳴りが聞こえるようです。)

●優雅さも鉢に合わせる金魚かな=秋波
△十=1点
(十:「大海の鯨と成りし金魚かな」とは正反対の謙虚な金魚である。葱:狭い水槽の中でもその優雅さは変わりません。)


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