*B部門入選作発表*


兼題『季:湯豆腐』『漢:木』=全57投句(入選42句)

【特選】

一席
●棟梁の嫁入り唄や冬木の芽=砂太


◎や、十、水、ぼ◯修△前、ス=16点
(十: 長持歌だろうか。若きカップルには春を待つ冬木の芽がピタリ。 ぼ:春には娘が嫁にゆくのだ。 いいなあ、この情感。 葱:嫁入り唄というものをよく知りませんが、雰囲気ありますね。)


二席
●木箱から最後のひとつ冬林檎=資料官


◎五、ス◯十△久、紅、淳、砂、香=13点
(五:木箱がいいですね。昔の貧しかった昭和を思い出させる。 十:冬林檎の象徴するものは何か。その捉え方で鑑賞が100通りにも。 久:籾殻の中の林檎かな。昔を思いだしました。 紅:「最後のひとつ」からぎっしり詰まった真っ赤な林檎が見えてきます。)


二席
●流木に生国のあり寒スバル=十志夫


◎葱◯紅、ぼ、ス△や、久、修、ま=13点
(葱:浪漫がありますね。 紅:スケールの大きさに惹かれました。 ぼ:流浪の人か、詩情あり。 久:流れても故郷あり、人生は流れますね。)


【入選】

●師系図のごとく枯木の混み合へり=十志夫
◎香◯五、ラ、水△紅、資、雪=12点
(五:何処の結社のことでしょうね。船頭ばかり居て、、、。これからの俳句には、自由な発想が望まれる。 ラ:とても複雑そうな枝ぶりです〈笑〉。 紅:家系図ではなく、師系図というところが一ひねりあって面白いです。 葱:なんでも俳句に関連させて見てしまうところが勉強熱心な方だと。)

●湯豆腐の箸先おどる重さかな=十志夫
◎修、メ、秋△淳=10点
(秋:湯の中でおどる豆腐のつかみ難さ、あやうさを捉えて妙。)

●風花や赤い木の実の一つ落つ=秋波
◎ま◯ラ△阿、前、水、香=9点
(ま:色彩の鮮やかさが、雪の冷たさに相まって美しいです。 ラ:「赤い木の実」が、印象鮮明です。 阿:小さいところに冬の足音が感じられました。)

●冬木の芽そろばん塾を洩るる声=ラスカル
◎雪◯五、ぼ、ス=9点
(雪:この頃そろばん塾も少なくなりました。懐かしい光景です。 五:昔、家の傍にそろぱん塾があった。子供たちの「願いましては」の声が響いていた。 ぼ:どちらにも、明るい明日がある。)

●湯豆腐で酌みたき人に笠智衆=ぼくる
◎久、ラ◯や△紅=9点
(久:この役者さんにピッタシです。もう現れないでしょうね。 ラ:僕も、その酒宴に加わりたいです。 紅:誰もが納得されるでしょう、お上手すぎです。)

●湯豆腐やほろと崩るる思い込み=葱男
◎資◯ま△メ、砂、雪、ぼ=9点
(資:人の思い込みなんてそんなもの。 ま:こういうことありますね。湯豆腐がぴったりです。)

●木漏れ日に濃淡のあり焼芋屋=紅椿
◯阿、葱、秋△資、雪=8点
(阿:焼き芋はやっぱり晩秋から歳の瀬にかけて手に取りたくなる。 葱:木漏れ日の濃淡が発見です、焼き芋屋とも取り合わせも見事。 秋:屋台に木漏れ日が落ちている。濃淡の表現がいい。 雪:光景がはっきりと目に浮かびます。)

●壁泉の水は豊かに枯木立=砂太
◯紅、ま、水△久、秋=8点
(紅:人工の物と自然との対比が見事です。 ま:静けさの中に響く水の音が聞こえてきます。 久:水が豊か、は夏場を思い出しますが、ミスマッチがなんともいいです。)

●数え日や木目浮きでる塗の椀=水音
◎砂◯前△五、修=7点
(五:私の家に代々伝わる塗り物も剥げて木目が出て来ている。しかし、昔のものは長持ちする。大事に後世に伝えたい。)

●湯豆腐のゆふらゆらものは言いやう=まさこ
◎紅◯久△葱、ス=7点
(紅:5.5.7の句にチャレンジされた作者に◎です。「ものは言いやう」の着地に驚かされました。 久:へそまがりなところがいいです。 葱:五五七のリズムですが、その頼りない音調も湯豆腐と「ものは言いやう」によく合っています。)

●数へ日や木彫りの熊のうす埃=紅椿
◯雪△葱、メ、ラ、資=6点
(雪:年末の急かされている気持ちが表れています。 葱:着目がいい、大掃除しているときに気がついたのでしょう。 ラ:「木彫りの熊」は、昭和を象徴しているような気がします。 資:そのまま年を越す物もたんとあるのですね。)

●神官の赤き木沓や年の空=雪絵
◯喋、秋△前、水=6点
(秋:新年らしい句。)

●木喰の仏の笑や年忘れ=前鰤
◯喋△阿、葱、砂、ス=6点
(阿:だんだん仏に近づいてきたか…この頃です。 葱:素直に詠んでいるところに好感を持ちました。)

●湯豆腐や土鍋の罅も笑い皺=資料官
◎喋◯香△ラ=6点
(ラ:僕も、この冬に「どの落葉にも笑ひ皺ありにけり」という句を詠みましたので、つくづく共感です。 葱:楽しい夕餉の雰囲気がよく出ています。)

●ありがたう小さき声の青木の実=まさこ
◯修、砂△喋=5点
(葱:かわいい。)

●冬木立透けて眩しき茜富士=資料官
◯メ、香△秋=5点
(秋:初春はやっぱり富士。)

●湯豆腐や即かづ離れぬ人なりし=雪絵
◯資△十、五、ま=5点
(資:湯気の向こうはそういう人がいいと思う。 五:「即かず離れず」はこの字なんですね。故人になられた方は、きっと 良い人間関係を持って人生を過ごされたのでしょう。)

●剥落のベンチの木目さえざえし=雪絵
◎淳△ま=4点
(葱:ベンキが剥げて寒そう。)

●湯豆腐や力士の手形並ぶ店=ラスカル
◯や、雪=4点
(雪:人気店なんですね。さて、お相撲さんはどのくらいの豆腐が胃袋に収まるのでしょうか?)

●木枯らしも暖きかな碗すする=喋九厘
◎阿=3点
(阿:やっぱりこの季節、鍋だよね。)

●昆布敷きに豆腐滑りて鍋の息=久郎兎
◯資△十=3点

●自主トレに爺と一列冬枯れ木=久郎兎
△や、ラ、喋=3点
(ラ:おじいちゃん、頑張っていますね!)

●遠き山近くに見えし冬木立=メゴチ
◯淳△修=3点

●湯豆腐の湯気の向こうのうまし顔=秋波
△淳、喋、ぼ=3点

●湯豆腐は絹ごしが好き柚添えて=前鰤
◯阿△秋=3点
(阿:この頃は、鍋には木綿を多く用いていますので、今度は絹にしてみます。 秋:飾らないストレートな表現。勢いがある。)

●湯豆腐や喉元の憂さ一呑みに=五六二三斎
◎前=3点

●湯豆腐をそぞろ訪ねて先斗町=阿Q
◯久△五=3点
(久:嵐山でないところが、色々考えさせてくれます。 五:湯豆腐と言えば、京都。先斗町は、色気もありよろしいですね。)

●枯れ木立遠くにかすむ地平線=白馬
◯淳=2点

●金色のモールをまとふ冬木かな=ラスカル
◯メ=2点

●木漏れ日の中一枚の冬桜=砂太
△や、十=2点

●冬木の芽アラ還暦の誕生日=まさこ
◯砂=2点

●湯豆腐の角凛として浮き立ちぬ=白馬
◯前=2点
(葱:食べる前に豆腐の角が崩れてしまったら少し残念な気がするのは勿体無い精神か?)

●湯豆腐やB級映画の結末=スライトリ・マッド
◯十=2点
(十:湯豆腐をつつきながら安酒場で交わす映画談義。どちらもA級ではないが、それなりに。)

●湯豆腐を箸で食すや文化遺産=香久夜
◯葱=2点
(葱:箸を使うこと自体が外国の人にとっては難しく不思議なことなのでしようけど、それこそが文化とも。)

●影寒し月と木立と酔ひどれと=ぼくる
△香=1点

●キャンパスの掃除懇ろ枯木立=五六二三斎
△阿=1点
(阿:記憶の中の風景がよみがえりました。 葱:懇ろ=ねんごろ、という表現がいい。)

●木漏れ日のちっちゃな幸せみーつけた=喋九厘
△ぼ=1点

●すがもりの木造暮し小晦日=葱男
△メ=1点

●湯豆腐や床に一輪の寒椿=秋波
△水=1点


【無選】

●県木の蕾ぼちぼち初詣
(葱:福岡の県の花って太宰府の梅なんですね。)

木枯しに銀杏(ぎなん)すっくと櫛田森
(葱:銀杏を〈ぎなん〉と読ませることができるんですね、凛とした真冬の景色です。)

●子ら言ふに湯豆腐は質素他無きや
(葱:そうでもあるか、ある意味的を得た発言かも。)

●ファーブルの眼差し祖父に冬木立
(葱:学者タイプのお爺さんですね。)


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