*B部門入選作発表*

兼題『季:裸』『漢:地』=全53投句(入選39句)

【特選】

一席
●前だれの律儀な針目地蔵盆=紅椿


◎葱、二、喋○砂、十、香、資、ま△久、雪、秋=22点
(葱:上手いから選ばなくても良かったのですが、「律儀なおばあちゃん」の顔が浮かんできて、昨今、どんどんなくなっていく「地蔵盆」に「時の流れ」を感じてしまいました。 十:「律儀な針目」が秀逸。 資:律儀な針目への着眼点が良い。 久:地蔵さんの前だれ、近寄ってみたことはありませんでした。)


二席
●地球てふ大きな雫かたつむり=ラスカル


◎水、十、雪、入○砂、喋△二=17点
(水:地球がしずくであるというロマン。 十:大半が海の地球を「大きな雫」と称した妙。 入:かたつむりすら養生できない、地球となることへの怖れを感じました。)


三席
●貝風鈴かたき裸身の鳴るがごと=葱男


◎ラ、ス○紅、秋△水、雪=12点
(ラ:比喩に、作者独特の感性が伺えます。 秋:乾いた音が聞こえてきそう。)


【入選】

●兵帽の父の裸のセピア色=雪絵
◎香、夏、資△葱、砂=11点
(夏:懐かしい写真に共感。 資:終戦間近なころの写真でしょうか。裸とセピア色の組合わせが巧み。 葱:厳しい戦線にあって、よくそんな写真が残っていましたね。)

●意気地無き言葉飲み込み新生姜=まさこ
◎久○香、夏△五、秋=9点
(久:新生姜で一歩前に出てほしくなります。応援します。 夏:ちょっぴり辛いか? 五:新生姜の季語と響き合う題材。)

●地球儀に百合の花粉のこぼれけり=ラスカル
○二、久、入△水、ス=8点
(久:地球儀と花瓶がセットで置かれていたのでしょうか。黄色い花粉がきっと北半球に落ちたのでしょう。そこがきな臭い国だったりして。 入:広大さと微小なるもの。硬いものと柔らかさ。)

●茅の輪くぐる抱かれしややの丸裸=砂太
◎阿○雪△水、入、メ=8点
(入:こういう風習って新鮮に感じるのは私だけ?)

●撒き水へ裸ん坊の弾む足=夏海
◎ま○阿、紅△前=8点

●のら猫にのらの意地あり草いきれ=水音
○資、ス△砂、香、ま=7点
(資:季語の草いきれが野良猫の意地にうまく合っている。)

●裸子の黒さ増したる破顔かな=十志夫
◎前○久△五、香=7点
(久:昔の川とかの風景でしょうか。懐かしいです。 五:類句、類想句はありそう。でも、夏真っ盛りです。)

●裸子の腹這ふ手足空を打つ=雪絵
○喋、秋、ス△紅=7点
(秋:子どもの仕草はとにかく可愛い。)

●湯舟一つ残りし更地旱空=砂太
○ラ、十△二、入、ま=7点
(ラ:湯舟だけが残っているというのは、珍しい。 十:良く見かける無機質な景をうまく表現している。 二:三十代の夏に鹿教場温泉に出掛けた折、ダムの人造湖が旱りで干上がっていた。湖底が見えて真ん中にタイル貼りの浴場が半ば壊れている。夕食時に宿の人にそのことを言うと。あれは旅館の浴場で若い内藤やす子が仲居をしていたという。NHKの紅白で当時、その旅館で働いていた従業員がサプライズで登場し、内藤やす子と泣きながら抱き合ったのを、私は特別な感情で見ていた。内藤やす子の「弟よ」は、自分の姉との関係を含め、胸がジンとする。LPで「すきま風」という一枚があって、その中には、スローバラードやブルースっぽい曲が入っている。中でも「海を見ていたジョニー」が絶品だ。内藤やす子万歳!  入:湯水たっぷりであったころ、どんな家族を養っていたのか空は。 葱:2010年12月の「丘ふみ」に同じ砂太先生の句「湯舟一つ残して更地冬銀河」がありました。3年越しの推敲ということでしょうか、鷹羽狩行方式?)

●地ビールや餃子ほどよく焦げ付いて=ラスカル
○前、ま△十、紅=6点
(十:う〜ん、美味しそう。)

●ごきぶりや地声大なる家系にて=紅椿
○砂△夏、入、ス=5点
(夏:ゴキブリ見つけて叫んだ?!ユーモラスな句。 入:ユーモアととりたいが、ご本人達にとってはそれどころではないでしょ う?)

●地唄舞けいこ浴衣の胸の内=夏海
○阿、前△秋=5点
(葱:色っぽい!)

●地球儀の傾ぐ角度やサングラス=雪絵
◎メ○二=5点
(葱:今なら「ACミランの本田」だな。)

●いかづちや苛立つ天の地絡かな=前鰤
○水△資、メ=4点
(水:梅雨末期は雷がすごかった。天いらだっている?)

●異国語で天使ささやく裸かな=スライトリ・マッド
◎五△葱=4点
(五:裸の題材は難しい。掲句には、明るいエロティシズムがあります。葱:残念だけど、たしかに「日本人の天使」は見た事ないですね〜)

●熟れたての裸の肩に砂の粒=水音
○夏△阿、前=4点
(夏:若さへの羨望。)

●素つぴんの空の夏雲世界地図=十志夫
△阿、資、ま、メ=4点

●遠野より地ビール風を運び来る=葱男
△砂、五、雪、ス=4点
(五:冷たい風を運んで来てほしい。遠野が涼風を感じさせてくれます。)

●ハイダイブ裸身飛び立つ空の先=夏海
○水、五=4点
(水:飛び込みの選手の知人がいますが、先日バルセロナでは惜しくも決勝に進めず。彼女は空の先に何を見たのだろう。 五:ハイダイブの題材の第1号句、かつ最優秀句になりますように。)

●巴里祭や地下に眠れる骸たち=スライトリ・マッド
◎紅△夏=4点

●ぽんぽんと土地の言葉や夏祭=紅椿
○雪△久、夏=4点
(久:詠み手が地元だったら、腹から出ている言葉になにか和めるんでしょうね。)

●君といた裸足のにほひ四畳半=メゴチ
○葱△喋=3点
(葱:10代の女子の裸足、同じ畳を踏んでいると思うだけでもキュンとしましたね、若い頃が懐かしい。)

●地下鉄に炎天もあり御茶ノ水=資料官
○五△十=3点
(五:なるほど。お茶の水は地下鉄が地上に出て来る第1号ですよね? 十:「御茶ノ水駅」あたりで地上に出る地下鉄丸の内線の景。「炎天もあり」の「も」は、やや説明的。「炎天のあり」のほうがいいやうな。)

●地にありて空(くう)なき空(くう)を想ふ夏=メゴチ
◎秋=3点
(葱:同感です。)

●アブラゼミ裸電球に一人ぼち=喋九厘
○入=2点
(入:気の毒としか、、、)

●空蝉や地に落ちてなほ天仰ぐ=香久夜
△喋、前=2点
(二:地貌俳句の宮坂静生氏の「落蝉の仰向くは空深きゆゑ」に深い敬意を表すべきでしょう。)

●地ビールや少しこだわりある女子会=資料官
△葱、香=2点
(葱:どうやら、今や「女子会」に年齢的な縛りはないようです、「地ビールの会」はまあ、30代からかなあ〜、勿論60代からでも「女子会=女子力」はあり。)

●スコールに逃げまどひたる地平線=水音
△二、阿=2点

●地球発ななつ星経て夏の旅=喋九厘
△紅、メ=2点

●夏休み手描きの地図に星の印=葱男
○ラ=2点
(ラ:「星の印」が、印象鮮明です。)

●北原に入道雲の裸馬=久郎兎
○葱=2点
(葱:この句、意味からすると「北原の裸馬なり雲の峰」とかなんだろうけど、「入道雲の裸馬」としたところが面白さを出している。文法的にはどうなのか分らないけど、イメージとしては馬々の形をした雲が見えます。)

●夏期講習地図の記号のさすまた=まさこ
△久=1点
(久:消防署ですね。時代が変わっても何かに残されるものがある、というのが面白いです。)

●地中海風のカレーや夏の月=五六二三斎
△十=1点
(十:カレーの他には何も言っていないが「夏の月」が微妙に響き合っている。)

●ねぇねぇの視線は臍の緒丸裸=香久夜
△喋=1点

●火蛾の舞ふ裸電球無人駅=資料官
△メ=1点

●ブロンズの裸に触るる蝸牛忌=スライトリ・マッド
△資=1点
(資:蝸牛忌でも蝸牛でも面白いと思った。)


【入選】

●赤裸々な告白の午後プール裏
(葱:「丘ふみ」はもっとも自由な句会のひとつですのでルールにはこだわりませんが、「裸」は兼題漢字じゃなくて兼題季語ですのでお間違いないように、それでも句が好きならば私個人は「無季」でもなんでも「汎文学的」な内容のものなら採ると思いますが。)

●地に墜ちて羽搏く蝉や嬰のごと
(葱:写生の句、でもちょっと蝉のほうは哀しい。)


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