*B部門入選作発表*

兼題『季:鰯雲』『漢:虫』=全53投句(入選42句)

【特選】

一席
●捨てあぐむ手帳の束やちちろ虫=まさこ


◎水、香○メ△葱、馬、五、十、ラ、雪、ス=15点
(水:全く同感。葱:これは「俳句手帳」のことでしょう。 五:俳句手帳の束か?俳句を止めないでとちちろ虫が鳴いている。 十:「そういうことってあるよね」という典型句。 ラ:作者の感慨が伝わってきます。)


二席
●いわし雲持つ手に余る画板かな=雪絵


◎葱○久、ラ、資△水、入=11点
(葱:宮崎駿、悠々引退、それでも子供の頃のファンタジーを忘れない姿に感動です! 久:幼児だと鰯雲の長さを紙に収められないのだと思います。 ラ:大作に取り組んでいるのですね。)


二席
●休業のままの古書店いわし雲=ラスカル


◎馬、ま○十、阿△雪=11点
(十:古書店そのものが「古本」のやうだというアイロニカルな視点に魅かれて。)


【入選】

●鰯雲背伸びしてゐる背振山=五六二三斎
◎雪、阿○葱=8点
(雪:中七の表現が面白い!鰯雲と張り合ってる? 葱:「背伸びの背振山」、これもやや地元的だけど、それがプラスに働いていると思います、あまちゃんの「地元に帰ろう」、なんだかおじさん、じんわり泣けてきます。)

●吉報が虫の音色で着信す=メゴチ
○十、ま、喋△砂、紅=8点
(十:絵に描かれた虫と同じように、着信音の虫の声が果たして季語として機能しているかどうかは昔から議論のあるところですが、私は容認派です。 紅:雰囲気のあるお句。着信音を聴いてみたいです。)

●碁を打てば和尚もむきに鰯雲=秋波
◎紅、入△馬、喋=8点
(紅:和尚さんの人間性が出ていて、好きなお句でした。)

●鰯雲またねといつてそれつきり=雪絵
◎十○ラ△馬、ま=7点
(十:一読して小学生俳句のようですが、そこに含まれた内容はとても深い。 ラ:切ない心情が、ひしひしと伝わってきました。)

●残る虫白湯をゆつくり飲み干して=まさこ
◎ス、二△資=7点
(二:「秋天を歩みて白湯を所望せり」(中村雅樹)と比較するとやはり散文的であることが気になります。座五の止めの問題は仁平勝さんの「終止感の演出」に成熟した論があります。新興俳句の切れを抒情性への羨望として切り捨てた山本健吉を別にすれば、現代の中原道夫のように、古典的な切字を使わない着地のレトリックはもう一度深く考える必要がありそうだ。)

●朴訥の過去帳の文字虫の声=秋波
○雪、資、ス△ま=7点
(雪:季語が効いてます。)

●鰯雲あわいより見る宙の果て=白馬
◎メ○ま△秋=6点

●月光をかぶせていますわが虫歯=水音
◎喋○ス△十=6点
(十:「かぶせています」との言い切りが愉快。)

●冷まじや手塚治虫の丸き鼻 =十志夫
○紅、入△水、喋=6点
(紅:「虫」の兼題で、手塚治虫を出してくる所がすごいです。)

●長き夜や起き出してくる腹の虫=十志夫
◎ラ○紅△久=6点
(ラ:なるほど! 面白いです。 紅:俳諧味のある楽しいお句です。 久:なんとか押さえて肥満防止ですね。)

●飛行機を端に銜えて鰯雲=メゴチ
○馬、砂△十、紅=6点
(十:広大な鰯雲からすれば機影などは、ちっぽけな点みたいなものそれを鰯の餌のごとくに「銜えて」とした妙。 紅:空いっぱいの鰯雲が見えてきます。)

●火の島の噴かぬ日の無し鰯雲=スライトリ・マッド
○五、水△紅、香=6点
(五:火の島には鰯雲の癒しなし。早い終息を祈りたいが、火の島、桜島の歴史は長い。すまさん、火の島の恵みに感謝するしかないですね。 水:空に空の情景を重ねて。ギャートルズの世界みたい。 紅:桜島の事だと思うのですが、天候に関係なしなんですね。そこに住んでいなくては詠めないお句です。 二:これは報告ではないか。何を詠うか。「鰯雲個々一切事地上にあり」の草田男の句には祈りがあります。俳句はことばの五体投地であってほしいのです!それ以外に俳句を作る理由が私には見あたりません。)

●案件はしばらく保留いわし雲=ラスカル
○水、香△久=5点
(水:ふだん忙しい方なのでしょう。ほっとする気持ちが伝わる。 久:ホント、両者タイムをとって見上げている感じ。)

●石段を落ちたる記憶鰯雲=まさこ
○葱△五、秋、資=5点
(葱:ちょっと「時をかける少女」っぽい? 角川春樹も若い時は魅力あったなあ〜! 五:山寺の頂上からの鰯雲。石段を降りる時に雲に見とれたのだろう。 秋:忘れっぽくなったことを自嘲している?だけならよいのですけど。本当に転げたのだったら大変。)

●鈴虫の鳴く音のリズム五七五=白馬
◎五○阿=5点
(五:俳句をする者の鏡のような句。鈴虫も喜んで天位を贈呈です。)

●すり抜けて虫籠窓の月あかり=紅椿
○久、二△入=5点
(久:なかなか、情景すっきり、まとまっていますね。 二:語順の入れ替えによって句が一変しています。「月あかり虫籠窓をすり抜けし」ではないのです。よくぞ、という一句。でも完成型ではない。)

●露けしや泣き虫に手の仕事あり=葱男
◎久○喋=5点
(久:達人の句ですね。情景が浮かびます。)

●竈門山その東西に鰯雲=喋九厘
○砂、香=4点

●受話器おき人の世のこと昼の虫=入鈴
○秋△水、雪=4点

●高千穂の鉄路途絶へていわし雲=資料官
△葱、ラ、香、阿=4点
(葱:線路の先に未来がある、「あまちゃん」のラストシーンは「小さな恋のメロディ」のそれをダブりました、”teach your children")  ラ:「高千穂」という固有名詞が利いています。)

●別腹といふ腑のありき鰯雲 =十志夫
◎砂△秋=4点
(秋:う〜ん…共感。)

●うろこ雲いのちの遠くなりゆけり=葱男
○メ△阿=3点

●蜘蛛の囲に七色秋の日矢の中=砂太
◎秋=3点
(秋:日矢という表現が素敵です。)

●公園のタイヤの花壇いわし雲=紅椿
○雪△砂=3点
(雪:向かいの小学校には、遊具仕立てのカラフルなタイヤがあります。 時々見ますが、詠めませんでした。)

●歳時記を替へて吟行鰯雲=砂太
◎資=3点

●ホームランボールぱっくんいわし雲=五六二三斎
○秋△ラ=3点
(秋:ボールを見失った一瞬をとらえて妙。 ラ:「ぱっくん」という表現、俳句では初めて見ました〈笑〉 二:例えば「待宵にゆつくりあがる捕邪飛かな」(端月)あるいは「陽炎へ飛び込んでゆくボールかな」(中田尚子)。どう詠うのか、への深耕が必要です。ボールが雲へ消えるだけでもいいのでは。「とほくまで来て秋空が青いだけ」(坂本宮尾)、「天高しさびしき人は手を挙げよ」(鳴戸奈菜)、「青空を欺くために雨は降る」(冨田拓也)、「指かけしボールの縫目若葉風」(佐藤文香)の有情。昭和15年の「鰯雲人に告ぐべきことならず」(楸邨)を深く味わうよろこびへ向けて。)

●鰯雲筑高体操一直線=資料官
△葱、砂=2点
(葱:究極の地元ネタ、筑紫丘高校卒業生にしか分らないが、「分るやつだけ分ればいい!」的な潔さがかっけー!!)

●カラコロと下駄の響か鰯雲=阿Q
△入、香=2点

●児等描く真白く太き鰯雲=久郎兎
○馬=2点

●何を見る守宮一匹鰯雲=秋波
○入=2点

●入院の支度こまごま虫時雨=紅椿
△ま、資=2点

●本の虫百一行の夜学かな=葱男
△五、久=2点
(五:定年後にはこんな生活をしてみたいもの。 久:軽い感じがします。百一行、は何か意味があるのでしょうか。)

●虫籠の忘れ物あり能古の島=砂太
○五=2点
(五:今年の丘ふみ同窓会は能古島で11月16日に行われる。昔、能古島にはメスグロヒョウモンがたくさん居た。少年時代の思い出がたくさん詰まった能古島。)

●虫の声求めストドラパンパンパ=五六二三斎
△喋、ス=2点

●いわし雲うろこは幾つあるだらう=ラスカル
△ス=1点

●主役なく群れるがごとき鰯雲=久郎兎
△メ=1点

●長き夜を灯り肴に本の虫=久郎兎
△阿=1点

●虫のこゑ卒業写真のかほとかほ=資料官
△メ=1点

●路地裏に三味の音漏れて鰯雲=阿Q
△メ=1点
(葱:「粋」を感じます。)


【無選】

●古里は遠くなりぬや鰯雲
(二:「名月や故郷遠き影法師」(漱石)。「そら豆の空の彼方に故郷死す」(小檜山繁子)の有情。)


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