*B部門入選作発表*


兼題『季:袋角』『漢:傘』=全67投句(入選48句)

【特選】

一席
●木漏れ日を日傘に乗せて石畳=雪絵


◎砂、久、淳、メ、ぼ◯紅、水、阿、喋△葱、資=25点
(淳:木漏れ日が日傘に乗るっていう表現っていいですね。ぼ:中七秀逸です。 紅:中七の措辞がすてきです。 水:きれいで整った印象。 久:人物は和服女性でしょうね。それしか似合わないと思います。 葱:素直な詠みで好感を持ちました。 資:日傘に乗せてが旨いと思いました。)


二席
●ふり向けば振り向いてゐる白日傘 =十志夫


◯砂、久、雪、秋△ラ、紅、ぼ、淳、資、メ=14点
(久:お別れは切ないけど、自分だけ振り向いてよかった、という気持ちでしょうか。雪:おもしろい偶然。 秋:単純なのに雰囲気がある。 ラ:ドラマチック! 紅:ほほえましい。 ぼ:いい雰囲気、いい女が浮かぶ。 淳:情景が浮かびますね。)


三席
●少年の小さき拳袋角=雪絵


◎十、ス◯砂、メ△水、修、香=13点
(十:拳といえども少年のそれはそれほど硬くない。袋角と同様に、未來を包み込ん だ程よい感触。 修:やわらかい傷つきやすい拳なんだ。)


【入選】

●ふくろづの誰もがアダルトチルドレン=葱男
◎紅◯メ、秋△ま、入=9点
(水:「誰もが」に少しひっかかるけど頷ける。ふくろづのとひらがなにしたことも 効いている。 五:ユニークな句。アダルトチルドレンという造語。面白い。 紅: 季語の斡旋が巧みですね。こういう句は私には作れないので、憧れます。 ま:アダ ルトチルドレンがうかぶなんて、発想がとても素敵です。)

●やはらかき山のなだりや袋角=水音
◎紅◯メ、秋△ま、入=9点
(紅:正統派ですね。景の見える、気持ちのよいお句だと思います。 秋:鹿になだらかとくれば若草山ですよね。 ま:すべてやわらかい感じがよく出ています。)

●黒板の相合傘や若葉雨=スライトリ・マッド
◎喋◯ぼ、修△メ=8点
(ぼ:若葉雨で微笑ましくなった。 修:みずみずしい。季語がぴったりです。)

●仲麻呂の月が顔出す袋角=甲斐よしあき
◎ま◯白△砂、雪、喋=8点
(ま:悠久の昔から同じ月、袋角との取り合わせが魅力的です。 白:春日なる-----。)

●傘ひょいとメリー・ポピンズ夏空へ=ぼくる
◎葱△砂、水、阿、入=7点
(葱:「メリー・ポピンズ」の夢とファンタジーでもう◎。)

●絵日傘をたたみて城の影に入る=砂太
◯ぼ、資△香、甲=6点
(ぼ:こういう日本情緒いいねえ。)

●ご機嫌やうと日傘傾げて別れけり=十志夫
◯白、香△淳、喋=6点
(白: 良家育ちの奥様の所作が愛らしい。 香:日傘、便利な小道具ですね。 淳:「日傘傾げて」って表現がいいですね。)

●小道具の部屋の番傘麦の秋=雪絵
◎ラ◯水△修=6点
(ラ:演劇部でしょうか。想像が膨らみます。 水:全体の乾いた感じが麦の秋とよく合っている。 修:麦の秋という季語で番傘が生き返るよう。)

●吊橋を渡りきつたる袋角=ラスカル
◯甲△ぼ、雪、秋、ス=6点
(ぼ:野生の雄雄しさ。 秋:きっと目を離せなかった。渡るのを見届けて感心、安堵。)

●麦秋を傘さして来る母と猫=入鈴
◯ラ、ま△久、阿=6点
(ラ:脇役である「猫」の存在感が際立っています。 ま:どんな状況か、いろいろ考えました。一見何気ないようで、不思議な状況ですから。母と猫が良いですね。 久:母が猫を抱いて雨の麦畑の畦道、なのでしょうか。)

●カフェテラスまで寄り来たる袋角=ラスカル
△五、葱、資、甲、ス=5点
(五:おしゃれな奈良ホテルのカフェテラス? 葱:「物俳句」にしても「カフェテラス」が上手い! 好奇心旺盛のバンビちゃん、というところか。)

●「数学はキライ!」と君は傘をさす=阿Q
◎秋△十、砂=5点
(秋:キッパリ感に脱帽。 十:無季だが、こんな句があってもいいかな。)

●鉄線花傘をかざして去りがたし=香久夜
◎甲◯十=5点
(甲:なかなか手だれの句だと思います。しかし、決して鼻につくような句ではなく、率直に上手い。中7下5の「傘をかざして去りがたし」と、否定形で表現したところがいいなと思います。それでは、何から「去りがたし」なのかといえば、「鉄線花」という比較的地味な花なのです。それが意外で、おもしろい。「鉄線花」に深い思い出のある作者なのかも知れません。十:久しぶりの邂逅で、別れ難く何度も振り返る二人の様子に共感。)

●袋角セーラー服の胸なめる=資料官
◯五、喋△白=5点
(五:袋角の柔らかさとセーラー服の胸の遭遇。いいですね。 白:キャーっと一声 。)

●面頬の奥の光る眼袋角=修治
◎雪△白、メ=5点
(雪:剣道のことはよく解りませんが、お見事!という感じです。 白: 鹿は奥目?)

●森からの風のゆたかに袋角=紅椿
◎香◯ま=5点
(香:長い年月に育まれた森、いろんなものが再生されているのでしょう。 ま:風 のゆたかに、が効いていて、気持ち良いだけでなく鹿を見る目に温かみを感じます。)

●紫陽花やでんでん虫も蛇目傘=喋九厘
◎阿△秋=4点
(秋:絵本の挿絵のよう。)

●燈籠のかげからぬうつと袋角=秋波
△十、五、ラ、久=4点
(十: 奈良公園あたりだろうか、景が浮かぶ。 五:春日神社の灯籠か? ラ:「ぬうつと」に、臨場感があります。 久:足音立てず近寄る鹿、食べ物を持ってたら取られます。 葱:臨場感あり!)

●春日野をわたる朝風袋角=ぼくる
◎白△香=4点
(白:とても綺麗な句ですね。)

●子供の日齢八十傘開く=メゴチ
◯ス△五、入=4点
(五:砂太先生がステッキ傘を開かれたようだ。)

●それぞれの袋角つけ寄り来たる=修治
◎入△ラ=4点
(ラ:なるほど。確かに「それぞれの袋角」ですね。)

●ビニル傘ずらり卯の花腐しかな=資料官
◯修△紅、雪=4点
(修:ずらり、で、雨が見えてきます。 紅:難しい季語に挑戦されています。 雪:季語の用い方、勉強になりました。)

●丸刈りの潔さかな袋角=香久夜
◯十、ス=4点
(十:角の生え変わる時期の鹿を「丸刈り」と称したおかしみ、大胆さ。)

●傘の花廻る七色交差点=久郎兎
◎五=3点
(五:ビルの窓からの観察か?実景と思います。東京の風景でしょう。 葱:高いビルの上階のカフェとかからの情景でしょうか? 絵になります。)

●傘寿にはもう少しあり竜の髭=白馬
◯入△甲=3点

●飛火野に三三五五や袋角=甲斐よしあき
◎資=3点
(資:鹿の動きを三々五々と評したところが実に良い。)

●薔薇園やかをり満ちたる傘の内=水音
◯甲△修=3点
(修:まさに至福のひとときですね。)

●番傘のころがる路地や吊忍=紅椿
◯資△阿=3点
(資:釣られたものと転がるものがある光景が絵画的。)

●ビロードの袋角着け若返る=香久夜
◎修=3点
(修:そうか、若さの象徴なんだ。硬い心よりも軟らかい心。)

●相合傘白靴に泥跳ねてをり=葱男
◯香=2点
(香:泥?それどころではないんですね。)

●帰り来よ思い遣り傘走り梅雨=秋波
◯久=2点
(久:駅前の風景でしょうか。ボックスが空だとちょっと悲しいけどね。)

●傘ささず濡れるもよし春ならば=淳一
◯阿=2点

●白日傘背筋伸ばして会いにゆく=白馬
△ぼ、ま=2点
(ぼ:恋ではなさそうだがドラマあり。 ま:あ〜とてもよく分かります!)

●窓外に待ち人来たり傘揺るる=久郎兎
◯淳=2点

●提灯の形の灯台浜日傘=まさこ
◯ラ=2点
(ラ:そんな形の灯台があるのですね。見てみたいです。)

●舞台待つ三尺玉や袋角=秋波
◯入=2点

●目印はパンのオブジェよ白日傘=まさこ
△秋、ス=2点
(秋:どんなオブジェ?気になる。)

●傘立てに花柄の杖若葉雨=水音
△十=1点
(十:「傘立に杖」はままあるが、「花柄」と「若葉雨」の明るい季節感がよい。)

●五月晴れ傘屋の主人負けにけり=五六二三斎
△淳=1点

●伸びる手に触れさせぬやう袋角=修治
△淳=1点

●ハグしたき心見透かす白日傘=葱男
△白=1点
(白:で、どうなった?)

●袋角バッグの紙をとられけり=白馬
△久=1点
(久:よくあることですが、食べ物が入ってなくても取られるのが納得いきませんね 。)

●宝物殿裏より出づる袋角=ラスカル
△紅=1点
(紅:上五の斡旋がおじょうずです。)

●眩しさや赤子の指と袋角=メゴチ
△喋=1点

●夕虹やデパート前の傘袋=紅椿
△水=1点


B部門入選作〈back number〉

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