*B部門入選作発表*


兼題『季:春の夢』『漢:前』=全59投句(入選44句)

【特選】

一席
●吾を海へ曳く強き糸白鴨忌=葱男


◎あ、秋◯修、淳△十、砂、香、五=14点
(あ:あの方の事なんですね、糸をうまく、縁の糸なんですね。 秋:海へ出ればきっと彼のことを思い出すのでしょうね。 修:哀惜の情が伝わってきます。強く曳く糸とどちらがいいか迷います。 十:早いもので、もう1年ですか? 哀悼の意を込めて。 香:もう、一年たつのですね。 五:白髪鴨さんは、命綱で引かれていた。白髪鴨さんは、海から俺を仲間に入れてと糸を送っている。)


二席
●朧夜や記憶の糸の糸車=秋波


◎阿、資、紅◯白△水=12点
(阿:春ですねえ。 資:記憶の糸の糸車って何か面白い。 紅:朧夜に記憶の糸をつむぐなんて、ロマンですね〜! すごく惹かれました。 白:気持ち良くすっと読めました。)


三席
●百千鳥冷ゆる音する登窯=水音


◎十、白◯秋△ぼ、雪、喋=11点
(十:徹夜で薪をくべ、火の番をした窯が徐々に冷えていく。 窯が縮む時に聞こえる微かな音。百千鳥との取り合わせも見事。 秋:火を落とした後の窯場の静けさと鳥の囀りのにぎやかさ。対比が素敵です。 白:深山にある窯が今冷えていく。小鳥たちの歌の中。 ぼ:実景はみたことないが、よさ納得。)


【入選】

●山ひとつ越える通学百千鳥=ぼくる
◯久、ラ、修、雪△あ、砂=10点
(久:そんな難路を通う小学生を昔テレビで見たことがあります。北海道の海の崖道でした。なぜかその夢を今も見てしまいます。 ラ:分校の子かもしれません。 修:そんな友がいました。細くてマラソンが得意だった。 雪:山の分校に通う子供たち。何か懐かしい昭和の風景のような・・。 あ:これは上手いですね、なんで◎では?と聞くと瑕瑾がないから、ほんのすこし瑕瑾めいたものがあった方がと天邪鬼でした。)

●ぶかぶかの制服の子ら百千鳥=スライトリ・マッド
◎久◯香△砂、資、ラ、ま=9点
(久:そんな服に着られている子らを百千鳥に例えているのがいいですね。集まるとそれなりのリズムが生まれてきて清々しいなあ。 香:中学生かな?嬉しいですね。 資:新入生の一団を並べて成功していると思う。 ラ:おそらく、中学一年生でしょう。 ま:新入生の若々しいにぎやかな様子が浮かんできます。)

●糸杉のぐわんぐわんと春疾風=スライトリ・マッド
◎淳、入△喋、香=8点

●糸底の渦巻き見つむさくらどき=スライトリ・マッド
◎ラ、五△十、阿=8点
(ラ:その渦巻に、落花が吸われてゆくような幻覚を覚えます。 五:さくらどきだが、内職に忙しい昭和の女を見る句だ。 十:轆轤の回転によって糸で底を切る時にできる渦巻きでしょうか。トリビュアルな視点に感心。「さくらどき」は動くかも。 阿:観察眼がいい。)

●お百度の石ある寺や百千鳥=雪絵
◎香○五△十、久、ぼ=8点
(香:何とも風情のある景色。 五:この寺には、ことのほか、小鳥が多い。 十:二つの「百」の文字が微妙に呼応している。 久:いろんな人がいろんな思いで訪れた、そんな感じがしました。 ぼ:仏が見ているような、いい雰囲気です。)

●糸遊やまっすぐ歩いているつもり=資料官
◎ま◯あ△雪、ス=7点
(ま:季語が効いていて良いですね。母もこういう感じです。 あ:そうなんです、全くこの陽炎のせいなんです、年齢のせいではないのです、酔っているのでもありません。)

●糸を引く牛の涎や花は葉に=あかね
◎ぼ、喋△香=7点
(ぼ:このリアリティ、葉桜にマッチ。 香:牛ものんびり。)

●春雷やあや取りの糸絡まりぬ=秋波
◯砂、メ△資、修、ス=7点
(修:春雷はやさしいんだな。)

●天蚕のかがやく糸を取りにけり=あかね
◎水◯香、ス=7点
(水:淡いけれどもしっかりとしたうす緑が季感と合っています。 香:きれいなんでしょうね。)

●葉擦れさえまだ柔らかし百千鳥=秋波
◯阿、葱、資△修=7点
(阿:葉擦れと鳥の声のハーモニーがいい。 葱:新しく瑞々しい若葉の感じがよく表現されているとおもいました。ただ、「さえ」は「さへ」かな。 資:葉擦れの音に百千鳥を対比させたところが妙。 修:初々しい感じが伝わってきます。)

●ほつれたるジーパン干され百千鳥=ラスカル
◎修、雪△あ=7点
(修:ほつれたるジーパンに日々の生活を実感。清潔感もあって好きです。 雪:取り合わせが斬新な感じがしました。「ほつれたる」がなんともいい。 あ:ジーパンかジーンズか迷うところ、でも季語としては動くよ。)

●待つ人を持たぬ朝の百千鳥=砂太
◯十、久、喋△ぼ=7点
(十:「待つ人」を持たないのは百千鳥ではなく、作者自身と思いたい。伴侶を失くし、子供たちも独立した今は、「帰りを待つ人」がいない寂しさを「百千鳥」が増幅する。 久:鳥の中には親のいない小鳥がいるかも。仲間に入れてあげてください。 ぼ:孤独ではなく、孤高の人だ。)

●糸通す掲げて通す暮れの春=白馬
◯秋、五△紅、入=6点
(秋:太公望の気分。 五:通すのリフレインが強い昭和の女を感じる。 紅:中七で、暮れの春の様子がよく伝わります。)

●お守りの金糸銀糸や百千鳥=ラスカル
◯雪△紅、修、ま、水=6点
(雪:両方の兼題が入って、お見事! 紅:山深い場所にある神社の様が想像できます。 修:百千鳥ってほんと幸福を感じさせてくれます。 ま:神社でしょうか、ご利益がありそうな幸せな気分になりますね。 水:ご利益の有りそうなお守りですね。)

●釣り糸に雑魚よくかかる目借時=紅椿
◯ラ、ま△葱、雪=6点
(ラ:「目借時」が、ぴたりと決まりました。 ま:目借時の雰囲気がとてもよく表現されています。 葱:ねむたい感じがよーく出ていますね。)

●楽屋口にタカラジェンヌや百千鳥=修治
◎葱◯ぼ=5点
(葱:華やかさに圧倒されました。 ぼ:すてきな取り合わせ、作者はたぶんこの人。)

●錦糸卵たつぷりと盛り春惜しむ=まさこ
◎砂△ラ、五=5点
(ラ:春がゆくのも惜しく、錦糸卵を食べるのも惜しく。 五:お寿司を作ったのか?春の終わりに、豪華なちらし寿司。)

●春日や婆とひ孫の糸電話=ぼくる
◯砂、淳△秋=5点
(秋:微笑ましい!)

●宙を巻く納豆の糸春惜む=十志夫
◎ス◯水=5点
(水:納豆の糸には想い至りませんでした。宙を巻くがいいです。 葱:面白い視点ですが、季語との相性がピンときませんでした。)

●縫い糸の絡まり解く目借時=雪絵
△あ、水、メ、ス、五=5点
(あ:これは絹糸ですよね、目借時なればこそ余計に・・。 水:解くにも時間がかかりそうな目借時ですね。 五:忙しさが伝わってくる。これも、昭和の女句だ。)

●百千鳥イーハトーヴの山の色=まさこ
◯阿、紅△ラ=5点
(阿:岩手の鳥はどんな声? 紅:あえて山が何色なのかを言わず、読者に委ねたところが巧みだと思います。 ラ:どんな色なのだろうかと、色々と想像してしまいました。)

●絹糸の折り癖なおす春の雨=水音
◯十△葱、秋=4点
(十:着物の絹帯についた折り癖でしょうか、花疲れの中で着替えてゐる様子が浮かぶ。 葱:本当にそんなことがあるのか、よく分りませんが、いかにも女らしい情感と色香の漂う句ですね。)

●絹糸のやうな雨降る藤の花=紅椿
◯メ、ス=4点

●四月馬鹿またもや切れし赤い糸=ぼくる
◯あ、喋=4点
(あ:縁の切れ目ではありません、だってこれは四月馬鹿なんですもの。)

●飛花落花錦糸卵の折ひらく=資料官
◯ぼ△白、秋=4点
(ぼ:色あざやかで、幸せ感溢れる。 白: 錦糸卵まで、飛花の如し。 秋:お弁当は散らし寿司?)

●鳳凰堂ひとすぢ蜘蛛の糸光る=あかね
△久、喋、ま、入=4点
(久:春の静寂ですね。 ま:鳳凰堂にふさわしい美しい景ですね。)

●百千鳥こはぜは銀の色放つ=雪絵
◯紅、水=4点
(紅:大の着物好きなので、「百千鳥」と「こはぜ」の取り合わせに感動致しました。 水:お茶事か何か?着物姿と百千鳥で、背筋すっと伸びる感じですね。 )

●昼酒の利きの早さや百千鳥=ラスカル
◯入△久、紅=4点
(久:酔いのまわりが早いようで、休日にはおすすめ。 紅:のどかでいいですね〜 眠くなりそうです。)

●百千鳥学校下の無人駅=資料官
◯葱△阿=3点
(葱:「筑紫丘高校」前の場バス停も「学校下」だったような記憶があります、やや個人的な嗜好になっているかもしれませんが。 阿:のどか、いつか訪ねてみたい。)

●百千鳥消えて原始の黙の中=十志夫
◎メ=3点

●今はなき君のおしゃべり百千鳥=修治
△淳、入=1点

●風わたる大和盆地や百千鳥=修治
△阿、メ=2点
(阿:のどかだねえ。ゆっくり過ごしたい。)

●香りたつアールグレイや百千鳥=紅椿
◯ま=2点
(ま:さわやかな気持ちの良い句です。紅茶も美味しそう。)

●新緑に蜘蛛も下界に糸を巻く=喋九厘
◯白=2点
(白: 寒い間は天界に居たらしい。)

●春深し結ばれし糸妻想ふ=淳
△白、メ=2点
(白: いつまでも-----。)

●百千鳥鳴いて暮れ初む能古島=砂太
◯資=2点
(資:やはり能古島の句は捨てがたい。 あ:百千鳥はむつかしかったみたいですね。百千鳥が鳴く・・という使い方は間違いです。)

●百千鳥鳴くや朝寝の雨戸繰る=砂太 ◯入=2点 (あ:百千鳥はむつかしかったみたいですね。百千鳥が鳴く・・という使い方は間違いです。)

●糸底を指でなぞりて春惜しむ=まさこ
△資=1点
(資:大徳利の底をなぞりながら一献かな。)

●糸はんの恋五月雨もいと軽し=久郎兎
△葱=1点
(葱:川柳すれすれの軽みに惹かれました。)

●亡母より夏忘るなと糸電話=十志夫
△白=1点
(白:ご母堂の命日は夏。)

●百千鳥暗き木陰で見張りせし=白馬
△淳=1点

●百千鳥さえずる森の風さやか=阿Q
△淳=1点 (あ:百千鳥はむつかしかったみたいですね。百千鳥が鳴く・・という使い方は間違いです。)


【無選】

●蚕さま若葉たらふく生糸かな
葱:皇后様の飼育なされている「蚕さま」なんでしょうか。


B部門入選作〈back number〉

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号 63号 64号 65号 66号 67号 68号 69号 70号 71号 72号 73号 74号 75号 76号 77号 78号 79号 80号 81号 82号 83号 84号 85号 86号 87号 88号 89号 90号 91号 92号 93号 94号 95号 96号 97号 98号 99号 100号 101号 102号 103号 104号 105号 106号 107号 108号 109号 110号 111号 112号 113号 114号 115号 116号