*B部門入選作発表*


兼題『季:朝寒』『漢:鳥』=全76投句(入選56句)

【特選】

一席
●鳥渡るフォルテッシモの形して=白馬


◎雪、ラ、英○紅△葱=12点
(雪:そう言われれば確かに! ラ:「フォルテッシモの形」いいですね! 力強く渡る鳥が見えます。 紅:正確には「フォルティッシモ」だと思うのですが、この着想は秀逸ですね。 葱:そんなふうに見えなくなくもない。)


二席
●鳥取を過ぎて島根のしぐれけり=十志夫


◎海、紅△葱、信、資、ス、水=11点
(海:文句なしに◎です。小泉八雲の世界、この句の通り旅をしたいものです。 紅:「うまい!!!」。鈍行の山陰本線に乗って、窓の外を見ているような擬似体験ができました。 葱:なんだか気持ちがほころんできます。当たり前のようで、やっぱり当たり前なところがほぐれます。 資:山陰線のディーゼルカーの旅。鳥と島の漢字の並びが面白い。 水:「鳥」を使って面白い句になったと思います。時雨がいいです。)


三席
●朝寒の魚屋に銀あふれけり=葱男


◎ま○十、海、ワ△五=10点
(ま:活きの良い魚が光っていますね。美しい景です。 十:「朝寒」ですから市場の景。銀鱗を銀と短縮したことで句に勢いと広がりが出たやうな。 海:早朝の魚市場の景か、仕入れから帰って店に並べたばかりの魚屋の景か?どちらにしても今の季節、秋刀魚鰯など背が銀色している。魚大好きな作者でしょう。  五:銀は鱈のこと?まあ、鱗のことを言ってるのだろう。セーフ?)


三席
●宇宙船のやうな小児科小鳥くる=雪絵


◎砂○葱、ス△ま、修、紅=10点
(葱:ここの小児科医院の院長先生はきっとファンタジーのあふれる、子供にも優しい人柄なんだろうと思わせてくれます。「小鳥来る」がまたいい。ま:子どもが行くのを楽しみにするようなところなのでしょうね。 修:宇宙飛行士は注射なんかで泣かないよ。 紅:子供の数が減って、小児科は大変だと聞きます。少々奇抜な建物で、患者さんを呼ぶのでしょうね。)


三席
●不登校の子が渡り鳥仰ぎをり=ラスカル


◎久○白、雪△葱、砂、香=10点
(久:この子が自分の範囲外を見ている光景いいですね。必ずや不登校は直ります。 白:沢山の渡り鳥を見つめて何を思っているのだろう。 雪:何を思いながら見ているのでしょうか? 葱:「不登校の子」を題材にとったのもいい視点だが、最後のフレーズ、「wataridoriaogiori」のリフレインが効いている。)


【入選】

●アルバムに綴じたる午後や小鳥来る=入鈴
◎メ、水△五、砂、ま=9点
(水:「綴じたる午後」とは、きっと楽しい日だったのでしょうね。 五:小鳥来るの組み合わせには、こんな取り合わせが良い! ま:なんとも幸せな午後のひと時ですね。)

●キャンディーの渦巻模様小鳥来る=ラスカル
○白、ス、紅△五、雪、久=9点
(白:手元の渦巻模様と数羽の小鳥たちの取り合せが佳いですね。 紅:ささやかな幸せ。作者はたぶんあの方でしょう。 五:これも取り合わせとして成功例だ。 久:ファンタジーですね。)

●残る秋娘は鳥になりにけり=葱男
○弧、ぼ、英△ま、ス、ワ=9点
(弧:残る秋の温度感から見送る人の心情が伝わってきます。 ぼ:分からないけど惹かれた句。 ま:親としては、嬉しく寂しい娘の旅立ちを巧く表現されていますね。)

●風呂敷の掛かる鳥かご秋の星=紅椿
◎葱、ぼ△雪、メ、弧=9点
(葱:「籠の鳥」の哀しみと「秋の星」の小さな瞬きが相互に感応しています、とてもポエティックな作品。 ぼ:情景鮮明にして、詩情あり。 弧:主のない鳥かごが星明かりに浮かんで、寂しくも澄んだ情景が浮かびます。)

●朝寒や次第に退路なき心地=砂太
◎ワ○メ、資△五=8点
(五:定年迫る日々か?)

●鳥葬のあとのからつぽ秋気澄む=葱男
◎ス○弧△白、久、ワ=8点
(弧:世の営みの刹那刹那に待ち受ける「からつぽ」が強調されています。 白:何やら怖い風景。 久:秋は空っぽが似合いますね。)

●カプチーノに鳥描かれて蔦紅葉=水音
○ラ、海△葱、白、雪、香=8点
(ラ:オシャレな句。「蔦紅葉」という季語も利いています。 海:特選◎にしようかと思った一句です。ハートなんか素人でも出来る。色々な動物も登場するらしい。この句は蔦紅葉に掛けて鳥としたのでしょう。愉快な一句。 葱:今風でお洒落な句、ヘップバーン系? 白:粋な喫茶店の外には紅葉が。)

●朝寒や一杯の白湯ゆつくりと=まさこ
○信、淳△葱、香、英=7点
(淳:ゆつくりとが、本当にゆっくりと感じます。 葱:静かな朝、穏やかな日常。)

●天高しロゼッタ石の鳥の文字=スライトリ・マッド
◎十○ぼ△白、香=7点
(十:中7+下5で、ほぼ出来上がった句ですが、上5に「天高し」を措いたことで「鳥の文字」が飛んでいきそうな感じさえ。 ぼ:ロマンあり、エジプトの青い空が浮かぶ。 、白:象形文字の鳥が澄み渡った大空を飛んで行きそうな。)

●朝寒の雨戸を繰りて妣のこと=砂太
◎弧○久△修=6点
(弧:余韻がなんとも言えません。 久:いつも開けていたお母さんのことを思い出しての句なのでしょう。繰りて、もいいですね。 修:「繰り」がいいです。)

● 朝寒の一度にたぎる鍋やかん=紅椿
◎信△五、ラ、水=6点
(五:付き過ぎか?でも、嫁の気持ちが良く出ている。 ラ:すぐに、温かい料理が出来ることでしょう。 水:季感が出ていると思います。)

●朝寒のハザードランプ鼓動めく=雪絵
○ラ、ま△十、ス=6点
(ラ:これから始まる一日への期待感。 ま:規則的に光り、息づいているように感じますね。 十:どくどくどく・・と音が聞こえてくるやうな。)

●しんにようの遅・速・遠・近・鳥渡る=十志夫
○葱、水△砂、喋=6点
(葱:句のデザイン力に脱帽。 水:それぞれの字が、鳥が飛んでいる様を表すようです。)

●青い鳥やって来さうな月夜かな=ぼくる
◎白△弧、淳=5点
(白:メルヘンチックな感覚。綺麗な句ですね。 淳:そんなロマンチックな気持ちになりますね。)

●朝寒のショーウィンドーに胸を張る=まさこ
○修、喋△ぼ=5点
(修:「胸を張る」でこちらも元気になります。 ぼ:微笑を誘われる。)

●朝寒や腓返りとなる予感=十志夫 
○久、水△葱=5点
(久:歳をとるとありますね。起きるのに足を動かしたら、なるって。 水:朝寒が効いていると思います。 葱:あちこち、少々老朽化してきたみたい。) 

●朝寒やみゆきとなみきの交差点=資料官
△葱、五、信、香、喋=5点
(葱:都会的な情緒があり、リズム感がすごくいい。 五:上手い!十志夫さんの句?)

●鳥渡るずり落ちさうな屋根瓦=まさこ ◎喋△十、海=5点 (十:トリビュアルな景をうまく捉えています。見えさうで見えないもの。届きさうで届かないもの・・・私も探してみたい。 海:渡り鳥を見ていて、ずり落ちそうな屋根瓦を見つけてしまった。本当の素直な景だと思いました。)

●朝寒の顔の集まる補習棟=砂太
○雪△葱、資=4点
(雪:いよいよ受験シーズン!みんなの引き締まった顔。 葱:あのころを思い出します。 資:昔の暖房のない補習科の風景。朝寒の顔が良い。)

● いきいきと墓地の造花や鳥渡る=紅椿
○砂、修=4点
(修:嬉しくて造花さえ生き生きして見えるんだ。)

●梳き終えた畑に泳ぐ雀かな=英心
○メ△信、海=4点
(英:夏野菜が終わってフカフカになった畑に雀が砂浴びにやってきては、飛んでいきます。鳥のお題は雀でよかったのでしょうか? 海:梳き終えた田?と思いましたが畑でした。景が想像出来ませんがきっと可愛い景ですね。 葱:本来は漢字「鳥」の文字を使うのがルールですので、英心さん、つぎからはよろしくお願いします。)

●漱石の心の表紙小鳥来る=スライトリ・マッド
○五△葱、砂=4点
(五:小鳥来るには、希望が欲しい。 葱:岩波文庫でしょうか?)  

●朝寒やコーヒーミルを手で廻す=スライトリ・マッド
◎修△十=4点
(修:ーコーヒー豆の潰れてゆく手応えと季語がよく合っている。 十:寒い朝の中の日常のひとこま。香ってきます、いいですねぇ。)

●朝寒の褥に舟を沈めたり=弧七
○五△喋=3点
(五:上手いなあ!)

●朝寒の蛇口に翳す掌=久郎兎
○十△紅=3点
(十:心象風景なので読み手によって百人百様な鑑賞が可能。これも名句の条件の一つ。 紅:水の冷たさを語ってはいませんが、十分に伝わります。)

●朝寒や1番ティーで震へをり=メゴチ
△海、ぼ、淳=3点
(海:一番テイーって何だろう?と初め首を傾げましたがお茶の事かと思いました。寒い朝震える手で暖かいお茶を飲んでいる。違ったかな?一寸した景を捉えられたと感心したのですが。。。 ぼ:どこか、いじましい。安サラリーマンゴルフ。 淳:いやあ、分かりますよ!)

●朝寒や猫はぼやかずみゃうと鳴き=秋波
○信△ぼ=3点
(ぼ:このとぼけた味、いいね。)

●朝寒やバス待ちの列整わず=香久夜
◎淳=3点
(淳:寒いとじっとしておれません。)

●朝寒や日当たる席の混み合へり=秋波
○淳△メ=3点
(淳:言えていますね。)

●朝寒や目覚めの松葉箒音=五六二三斎
○海△弧=3点
(海:これまた都会のマンション暮らしでは詠めない句。目覚め方も風流な事。落葉を松葉箒で掃いたのは半世紀前の記憶です。)

●あの樫で冬籠りかな夫婦鳥=喋九厘
◎香=3点

●結界の鳥居連綿紅葉山=久郎兎
◎五=3点
(五:俳味ある句。紅葉山には、鬼が居そうだ。)

●小鳥来る三面鏡の今日の服=海苔子
◎資=3点
(資:お出かけ前の心の華やぎを感じる。)

●大学のヒマラヤ杉や鳥渡る=雪絵
△ラ、修、紅=3点
(ラ:ヒマラヤ杉の存在感が際立っています。 修:ーヒマラヤ杉がいい。大学に夢が感じられます。 紅:幾何学的な構成がいいですね。)

●朝寒やつひつひ過ぎし昨夜の酒=ぼくる
○ま=2点
(ま:さぞや、朝寒でしょう、実感がこもっています。)

●無花果の実に何鳥の嘴の跡=白馬
△久、ワ=2点
(久:何鳥としているところがユニーク。)

●色鳥や螺鈿細工の展示会=ラスカル
○資=2点
(資:螺鈿細工に続くラ音の響きが良い。)

●椋鳥の暫し留まる万歩計=海苔子
△五、水=2点
(五:上手い。詠み慣れた方の句だ。 水:散歩の途中で椋鳥の群れに見とれてしまった。) 

●龍のごと椋鳥(むく)の一群息詰まる=入鈴
○英=2点


●朝霧や金剛山の鳥のこゑ=修一
△ラ=1点
(ラ:地味ですが、基本をしっかり踏まえた句。)

●朝寒の母の頭皮に伝わらず=入鈴
△葱=1点
(葱:諧謔味があります。)

●朝寒や新聞受けでまるまりて=メゴチ
△喋=1点

●海風の刈田や遥か鳥海山=久郎兎
△資=1点
(資:ジョイフルトレインきらきらうえつに乗りたくなった。)

●風吹いて銀杏落ちて鳥笑う=スビキワァ
△葱=1点
(葱:このような「原因と結果」の詠みは本来俳句ではよろしくない、と言われていますが、それを逆手にとったようなテンポとリズムがあります、愉快で楽しい句。)

●兄妹の今日は何処へ朝寒し=弧七
△英=1点

●小鳥狩り右目に赤色背徳の=スビキワァ
△葱=1点
(葱:「右肩の林檎を少し囓りけり」と同じ作者だろうか? 「右」への偏愛が何か文学的に昇華しそう、俳句としては後半が消化しきれていないが、文学の匂いがします。) 

●サイレンの迫り蜩遠のけり=水音
△淳=1点
(水:この句は水音が丘ふみ8月のB部門に出した句です。なぜこの句がこんなところに? 葱:自分でも狐につままれた感じです。 淳:サイレンと蜩の鳴き声が交差しています。)

●薄野や声なき鳥と共にゐる=弧七
△ワ=1点 

●龍田姫くぐる鳥居の数しれず=水音
△海=1点
(海:鳥居が多いとつい数えたくなります。くぐる秋の御姫さん大変ですね。)

●鳥渡り干潟の賑い朝寒し=英心
△メ=1点
(英:和白干潟に渡り鳥がやって来る季節になりました。家から和白干潟が見えています。)

●匂ひ替え電信柱に今宵迷鳥=スビキワァ
△葱=1点
(葱:上五の修辞が魅力的! 字余りの「今宵迷鳥」にも少し崩れた色気を感じます。)

● 朝寒のあとまたとなき青空へ=五六二三斎
△英=1点


B部門入選作〈back number〉

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