*B部門入選作発表*


兼題『季:蜩』『漢:頭』=全64投句(入選51句)

【特選】

一席
●花煙草はじめましての膝頭=スビキワアッ


◎二、ま、喋○秋、白=13点
(ま:どういう状況なのか、いろいろ想像が膨らみました。膝頭が初々しく、好きな 句です。 白:とてもお行儀の良いお嬢さんです。 煙草とはちょっと-----。)


二席
●一堂に禿頭そろふ墓参かな=十志夫


◎淳、ラ○水△砂、紅、白、雪=12点
(淳:いやあ、実に言えてます。  ラ:面白いです〜!<笑> 確かに、そういう場面もあるかもしれません。  水:何やらおかしい光景。  紅:久しぶりにご兄弟との話も弾んだ事でしょう。こんな情景が少なくなりましたね。  白:そんな風景が多いでしょうね。 雪:DNAをしっかり受け継いだ人たちの墓参。 思わず笑ってしまって、ごめんなさい


三席
●教頭の腰のタオルや涼新た=雪絵


◎砂、ぼ○五、白△メ=11点
(葱:この句については次のようないきさつがありました。「雪:投句の件早速ですが、この句、取り下げていただけないでしょうか?俳句界の多分8月号の付録、<俳句ダイアリー(秋)>を読んでいたら、ほとんど同じ句がありました。誤解を受けたくないので、宜しくお願いします。<教頭の腰手拭ひや運動会 三ツ木宗一> 葱:取り下げなくても大丈夫です。意図したものでないことは分かります、吟行ではこのぐらい近いのはよくありますよ。でももしどうしてもというなら事情を説明して取り下げてもいいです、それもまた潔いかな? 雪:わかりました、そのままにしておきます。類句だと思ってくれれば採らないでしょうからね。すみませんでした。」 ぼ:写実が確りしていて、情あり。 五:教頭先生は何かと忙しい。腰のタオルが働き者を示している。 白:赤シャツの腰に。ユーモラスですね。 メ:なんか似合うんだよね。)


三席
●蜩や鉄の門扉の閉まる音=雪絵


◎ス、修○香、紅△水=11点
(修:ふたつの音が響きあう。人も巣にこもる。単純で印象の濃い句。 紅:蝉の鳴き声と硬質な音との対比が良かったです。 水:東京の公園を想像してしまいました。蜩も困惑しているかな。)


【入選】

●頭突きして伝へたきこと花梨の実=葱男
◎ワ○十、ス、修△メ=10点
(葱:「ホットロード」観てください。十:頭突きという措辞の迫力に圧倒された。 修:なかなかうまく伝えられない。かりんの歪んだ形とよく合っている。 メ:何を?気になる。)

●頭数揃ひメロンの切られけり=紅椿
◎雪○淳△十、葱、五、ぼ=9点
(雪:みんなの目線がメロンに向けられている様子が浮かびます。 十:7等分だったら難しいだろうなぁ、と思いつつ。 葱:八等分がちょうどいいですね。 五:メロンは、家族みんなが帰って来てから食べよう。今でも高級メロンだ。 ぼ:儀式めいて面白い、メロンなればこそ。

●いつか来し道蜩を残しけり=弧七
◎秋○砂、ま△二=8点
(ま:蜩は変わらず鳴いていて欲しいですね。)

●かなかなかな阿蘇の夕空波打てり=雪絵
○紅、ぼ、ま△葱、修=8点
(紅:景が浮かんでくる、とても好きなお句でした。ぼ:おお雄大なるかなかなかな。 ま:穏やかな、心情的に明るい夕暮れが想像されます。 葱:夕焼けなのでしょう。 修:カナカナで広大な風景が見えてきます。半世紀前に見たつきり。)

●ひぐらしに耳を澄ませば少し老ゆ=ラスカル
◎葱○十、ぼ△メ=8点
(葱:かすかな「諦念」を還暦以降の私たち世代は用意するべきです。 十:感覚の句ですが、秋の訪れに一年の速さを思うということ。 ぼ:年年歳歳、より心に滲みるようになる。 メ:自然に対する自分の老いを感じる今日このごろ)

●蜩や命証しの血を抜かれ=砂太
◎白○遼△秋、ワ、資=8点
(白:大きな手術でもされたのでしょうか? 資:ひぐらしが聞こえる病院でしょうか。さびしさの中にほのかな希望を感ずる。)

11●かなかなのカナでかなでるひぐれかな=十志夫
◎メ、資△喋=7点
(メ:かなの連打に参りました。 資:かなのリフレインが効いている。しかも異なる意味のかなをちりばめていて上手い。)

●かなかなや宿題はまだ五分の二=ぼくる
○水、メ、雪△紅=7点
(水:具体的なのがいいです。急がなくちゃ。 メ:いつもこんな感じだった。  紅:夏休みもあと少し・・。蝉の声にせかされている感じが伝わってきました。  資:雰囲気としては法師蝉の方が合っていると思います。 雪:蜩の声は何故か哀しげです。残りの方が多い宿題を前に後悔している自分。) )

●赤いまゝあんたあたいの前頭葉=スビキワアッ
○葱、喋△二、久=6点
(葱:宗匠は「赤まんま」が良いといい、私は「赤いまゝ」が良いと言う。宗匠曰く「俳句は60%ぐらいがちょうどいい」のだそうです。私は「100%」なら、そのほうがいいと思います。 久:敬老の日を思わせます。赤いまゝは最初は赤飯のことと思いましたが赤のまんまのことかも知れませんね。前頭葉が普通に詠まれているのが驚きです。)

●かなかなに一日ドック終へて出る=砂太
◎水○秋△ラ=6点
(水:ホットとした瞬間ですね。「かなかなに出る」がいいです。 ラ:どうぞ、くれぐれもお大事に・・・。)

●小鳥来る前頭葉のいちまいに=葱男
◎紅○久△ワ=6点
(紅:この断定がたまらなく魅力です。納得させられました。 久:前頭葉を数えると言う発想が面白いです。)

●サイレンの迫り蜩遠のけり=水音
○五△十、メ、久、淳=6点
(五:サイレンの音とともに、蜩の声がしなくなった。蜩の存在が必要なくなったと蜩も判断?面白い句。 十:音の相対性。蜩のこえが遠のいたわけではなく、サイレンの高まりでそう感じた。 メ:がんばれ蜩と応援したくなる。 久:サイレンに掻き消されはするが、蜩はお構い無しでしょうね。)

●写真には写らないもの夕蜩=水音
◎十○遼△秋=6点
(十:写真に写らないものとは何か。 心の中? 喜怒哀楽? 秋の風? 生命? いろいろなモノが浮かんでくる。 夕蜩の鳴き声もまた、その一つ。)

●ファンキーな叔母にも似たり葉鶏頭=久郎兎
△砂、秋、ス、五、ぼ、ラ=6点
(五:たまには、ファンキーな句も良くないか? ぼ:いるいる、こういう人、人は好いんですよね ラ:どんな叔母様なのか、色々と想像してしまいました<笑> 。)

●よるべなき人ひぐらしとねむりたり =弧七
○資、久△ス、白=6点
(資:昼寝siestaでしょうか?ひぐらしと眠る幸福感があふれている。ひらがなの中で人という漢字が浮かび上がっている。 久:身寄りのないのは年を取るごとに寂しいものです。蜩の下、いいですね。そのままずっと眠りたい。  白:でも淋しくないよと。)

●担任の頭(つむり)あをあを盆用意=紅椿
○砂、葱△喋、雪=6点
(葱:新学期にむけて、先生も気合入ってます。)

●ひぐらしやパンを抱へた修道女=まさこ
○ワ、資△ス=5点

●蜩や村はまるごと壊死したる=十志夫
△二、遼、ぼ、ま、喋=5点
(ぼ:過疎化か、原発被害か、後者ととります。 ま:壊死とは寂しい景ですね、 ひときわ蜩の声が高く響きます。)

●あちこちを向いてもよさげ鶏頭花=秋波
◎五○ワ=4点
(五:鶏頭はどこから見ても鶏頭だ。鶏がせわしなく顔を向ける姿と重なる。動きのある俳句。)

●石頭ぐにやぐにやとなる残暑かな=ぼくる
○ス△香、久=4点
(久:中の句が面白いです。思考がぐにゃぐにゃ、頭からも湯気が出ていそう。)

●秋霖の病院頭骨がらんどう=砂太
◎遼△資=4点
(資:長雨が続くうんざり感を上手く表現している。)

●蜩の前頭葉に哭くゆふべ=水音
◎香△紅=4点
(紅:二つの兼題をクルアして、巧みな句に仕上げています。)

●蜩や雨の上がるを待ちかねて=秋波
○淳、ラ=4点
(淳:待ちかねて一斉に鳴き出す様が浮かびます。 ラ:何が飛び立ったのだろうかと、読者に想像させている点が巧みです。)

●ひぐらしは昭和の声を鳴きとほす=ラスカル
○メ、雪=4点
(メ:確かに懐かしい風景を思い出す。  雪:蜩の声はほんとに昭和な感じがします。初めて聞いた時は驚きました。)

●日暮らしや襤褸並べて糸を刺す=スライトリ・マッド
◎二△久=4点
(二:「日暮し」は「ひぐらし」とひらがな表記に。 久:昔の縁側を思い出します。ぼろも今は表に出ることがないですね。なぜだか良き心を感じます。)

●頭より飛びたつものよ水を撒く=修治
○ラ△資=3点
(ラ:何が飛び立ったのだろうかと、読者に想像させている点が巧みです。 資:頭から飛び立つものは怒り?自ら打ち水して頭を冷す。面白い。)

●かなかなや隼人の盾の渦ふたつ=スライトリ・マッド
○修△資=3点
(修:いまだにその名がかなかなのごとく響き伝わる。隣の市に保存会?があると聞いている。二つの渦は色々想像させてくれる。 資:素朴なモチーフですね。この素朴さがひぐらし的。)

●ひぐらしのなく頃に解ミステリー=メゴチ
◎久=3点
(久:蜩=クライマックス=お仕舞い、ですかね。)

●ひぐらしや細胞少しづつ減つて=まさこ
○香△葱=3点
(葱:、、、でもいつも何かに恋してる。)

●一湾を見下ろしてゐる夕かなかな=紅椿
  △水、ま=2点
(水:なぜか長崎を思い浮かべます。 ま:一緒に見下ろしている自分は何を想っているのでしょう。)

●解説を加へし頭脳求む秋=五六二三斎
○喋=2点

●かなかなや鞍馬へ向かふケーブルカー=資料官
△香、水=2点
(水:朝? 夕方? 夕方鞍馬へ行くと何か良いことがあるんですか?)

●頭垂れ実る葡萄は巨乳かな=喋九厘
△五、白=2点
(五:三鬼句を思い出し、ついつい。おそるべき君等の乳房夏来る。 白:凄い連想だ♪)

●さはやかやくるくる回す膝頭=まさこ
△十、二=2点
(十:くるくる膝を回すというだけの句が、こうした名句になり得るという驚き。正に「呟けば俳句」の見本。)

●イナダ釣り船べり熱く竿頭=メゴチ
△砂、香=2点

●かなかなや夕かなかなや風しづか=葱男
△ま=1点
(ま:秋の訪れを、じっと聞き入ってしまいますね。)

●熊蝉の死に体に逢ふ夕べかな=五六二三斎
△淳=1点
(淳:熊蝉の死に体が目に浮かびます。)

●次はいつ逢えるカナカナカナカナカナ=スビキワアッ
△葱=1点
(葱:最初の「かな」は疑問符、最後の「かなかな」は蜩の声、その途中のメタモルフォーゼが素敵。)

●頭蓋骨中はからっぽ秋愁い=白馬
△修=1点
(修:そうなんです。どんどん消えていき、何が何やら?)

●頭に落つる水のひんやり星月夜=スライトリ・マッド
△遼=1点

●彼岸にも夕蜩の鳴きをるや=修治
△遼=1点

●蜩と新世界の音の重なりて=白馬
△ワ=1点

●蜩とツクツクボウシ仕切り出し=淳一
△ぼ=1点
(ぼ:聞き応えのある競演ですね。 )

●蜩の後追ひの声空に消ゆ=久郎兎
△二=1点
(二:「後追ひの声」が切ない。)

●蜩の声つぎつぎと湖渡る=ぼくる
△ラ=1点
(ラ:湖とはいっても、小さな湖なのかもしれません。)

●蜩や東の空にかかる虹=秋波
△淳=1点
(淳:蜩の声と虹がマッチしていますね。)

●ひぐらしや英彦山神社の神のこゑ=資料官
△修=1点
(修:六根清浄とカナカナとぴったり合っている。音ってふしぎだ。つくつくぼうしだとこうはいかない。)


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