*B部門入選作発表*


兼題『季語:春惜しむ』『漢字:形』=全77投句(入選句)

【特選】

一席
●一駅を歩く至福や春惜しむ=やんま


◎淳、修、久 ○ま、喋、入、砂 △香、葱=19点
(久:定期券があるのに気軽な運動不足解消でしょうか。身近なことなので共感を覚えます。 修:何があるのか分からないけど、満ち足りた心が伝わってきます。 ま:齢を重ねてくると、こういう幸せを大事にしたいと思います。素直なお気持ちに同感です。 香:花が散り、葉が出だした頃でしょうか、蕊がおおった道を歩くのもいいですね。 葱:その心の余裕が健康の秘訣ですね。)


二席
●汐干狩親子の尻の相似形=水音


◎紅 ◯ぼ、白 △修、ま、喋、資、メ、十、砂、葱=15点
(紅:笑ってしまいました。潮の香、親子関係とかいろいろ感じとれます。 ぼ:ユーモラスで、微笑ましい。 修:なんかくすりと笑ってしまう。 白: 遺伝とは言えよく似たものだ。ま:いろいろなところが似ますが、お尻の形もそうですね!資:面白い発見であるが,じっとそれを見ている作者の姿は怪しげでもある  十:親子は「尻の形」まで似ているのか、という可笑しさ。 葱:腰を落として砂を掘っているところを後ろから見るととお尻の形が強調されて面白いですね、相似形とは母と娘でしょうか。)


二席
●惜春の鳥語こぼれてきたりけり=紅椿


◎清、雪、水、砂 ○や△ス=15点
(清:詠者は大江光君のように鳥語が分かる人だ。鳥たちの様子が具に知れて愉快だ。 水:鳥たちも春を惜しんでおしゃべりしてる。)


【入選】

●父こきと首を鳴らして春惜しむ=ぶせふ
◎十 ◯ぼ、ス、淳、や △紅、秀=13点
(十:さり気ない行為をしっかり秀句に仕上げている。骨法のしっかりした熟達の句。 ぼ:じっと立ち尽くしている姿が見えます。紅:日常の事なんでしょうが、季語と合いますね。秀:なぜ「父」と思いましたが、女性でも、若い人でもないから、いい味が出ているような。)

●人形の瞬かぬ目や春のなゐ=雪絵
◎ぶ、香 ○水、葱 △入、修=12点
(ぶ:震災句の中で、人形の目を描いて恐怖と不安を描き切っている。沈静と復興を祈る。  香:悲しみ、ショックを受けた表情が人形を通して感じられます。 水:とても悲しい、とてもつらい、瞬かぬ目が語っています。 修:目に映り続けてゐる時間。都合の悪いことは忘れるんです。 葱:地震の恐怖を人形の目が代弁している気がします。)

●惜春やワインはポルト歌はフアド=ぼくる
◎ラ、子 ○葱、修△ス=11点
(ラ:惜春やワインはポルト歌はフアド春を惜しみつつ、意気投合した人との別れも惜しんでいるのでしょう。作者の拘りが感じられて、面白いです。 葱:ポルトガルはこれまで訪ねた国中でも一番好きな国です。ファドはポルトガルのサウダージの心そのものですね。 修:フアドはまさに惜春、格好よくて、なんかドラマチック。)

●ほろ苦きオランジェットや春惜しむ=まさこ
◎秀 ○裕、ラ、雪 △水、五=11点
(秀:「ほろ苦い」と、晩春はとてもいい相性だと思います。私もオランジェットが大好き。 裕:「オランジェット」食べたことないけど、興味を引きました ラ:無駄な言葉が一つも無く、ぴたりと決まっています。水:オランジェットを作るのは結構手間がかかるので、五:オランジェットという言葉に魅かれました。そんな人はオランジェット(笑))

●こけしの眼は一本の線春惜しむ=ラスカル
○資、ぶ △喋、清、秀、ぼ、砂、や=10点
(秀:そう言われると、そんな気がしてきました。 (資:線で描かれたこけしの目は一見寂しげでもある。良く見ている。ぶ:こけしの眼は一本の線な のだ。春は過ぎていく・・・言い切って成功した 清:こけしの目のように一直線に春が終わって夏に入る爽快感。ぼ:確かにこけしの眼はそういう感じあり。)

●菱形の剣山麦の穂を立てり=久郎兎
〇十、雪、子 △前、五、茶、ぶ=10点
(十:生け花のことは良く分かりませんが景が浮かびます。 まずは「麦の穂」としたことで、これから活ける中央の花を想像してしまいます。 ぶ:鋭い剣山が菱形だという。麦の穂の色と垂直。見事に決まっている。 茶:思わず背筋がピンとなるようで。五:ユーモアに△!)

●逆上がり出来て転校春惜しむ=やんま
◎ス 〇喋 △秀、雪、淳、裕=9点
(秀:一つやり遂げて、また新しいスタート。 裕:あるある…です ね)

●竹の秋母の形見の恋のこと=葱男
〇紅、清、入 △ま、白、久=9点
(紅:季語の斡旋がお見事です。ま:季語がぴったりですね。お母様の恋に心がざわつきますね。清:母への想い出が竹の節に形見として残っているようだ。白:遺品整理の中に。 久:「の」が4つもありますが、それよりも「なにごとかな」と思わせてくれます。遺された恋文? )

●形よき頭まるめて糸桜=ぶせふ
◎入 ○五、ス △十、白=7点
(五:糸桜との取り合わせの妙! 十: 頭の丸さと糸桜の直線の取り合せ。部活用の丸刈りかな? 丸刈りの主体がハッキリしないので様々な解釈が成り立つ。 白: お坊さんの剃り頭の清々しさ。枝垂桜の下。)

●ふるさとの路地の昏さよ春惜しむ=秀子
◎や、五△久=7点
(五:ふるさとを思う気持ちが出ている。 久:ふるさとは遠くにありて思うもの、最近実感です。)

●触れてみる産毛に春を惜しみけり=砂太
◎ま ◯清、裕=7点
(ま:赤ちゃんの産毛ととらえました。愛おしさ、生命の不思議を感じていらっしゃるのでしょうか。 裕:犬か猫の赤ちゃんかな? 清:すくすくと成長する赤子の産毛もうこの時は二度と来ない春でもある。)

●江ノ電の形の最中春惜しむ=ラスカル
〇秀△資、メ、十、茶=6点
(秀:江ノ電の形の最中って?どの電車だって、あまり変わらないような。そのおもしろさで頂きました。 資:江ノ電そのものではなく電車の形の最中に焦点を当てたところが面白い。 十:明るさ、のどけさの一句。 茶:何方かから挨拶句は取るのがマナーと教えられましたので(笑))

●人形の傾きしまま春の逝く=紅椿
〇秀、茶、久=6点
(秀:人形がちょっと傾いているという気だるさ。 茶:震災で立ち入り禁止となってしまった家への思いに傾きました。 久:どこか壊れてしまったのかな?青春、失恋?)

●人形を抱へて眠る仮の春=十志夫
〇メ、香 △子、ま=6点
(香:地震のあった山にも春の息吹、という句がいくつかありましたが、「仮の春」という表現が心に響きました。 ま:切ない情景ですね。本当の春が早く訪れますように。)

●猫とゐて春を惜しめる白寿かな=清一
◎ぼ △ラ、砂=5点
(ぼ:仙人の境地、かくありたいものだ。 ラ:白寿の方へのお祝いに、一票を投じます。)

●春惜しむ時計は前へ進むだけ=五六二三斎
◎メ○白=5点
(白:一日は確実に去ってゆく。)

●春惜しむ蜂蜜店のパンケーキ=水音
◎裕○ラ=5点
(裕:いろんな蜂蜜を付けて、おいしそう ラ:蜂蜜店に、「パンケーキ」が売られているのは珍しい!)

●春惜しむ雲の如くに稚魚流れ=砂太
〇紅 △ラ、葱、入=5点
(紅:清流が浮かんできました。 ラ:「雲の如くに稚魚流れ」というフレーズが魅力的です。 葱:比喩が巧みです。)

●飛行雲追いかけ春を惜しみけり=ぶせふ
○砂 △裕、雪、淳=5点
(裕:「飛行機雲」の方が良かった。)

●良形の笑顔が釣れし桜鯛=メゴチ
○前、久△茶=5点
(茶:「 笑顔が釣れし」の中七でいただきました。 久:「笑顔」の入る位置がポイントでしょうか。)

●したたかに酔うて祗園の春惜しむ=ぼくる
○前 △紅、資=4点
(紅:憧れます。京都ならではでしょう。 資:どれだけ飲んだことやら。祇園の春としたところが良いですね)

●つばくろめ方形を組むエンブレム=まさこ
○香 △ぶ、ス=4点
(香:何と話題のエンブレムで詠めるとは。そういえば、ツバメが飛び出しそうな形ですね。 ぶ:エンブレムが決まったらしい。その方形と燕の自由さの対照が面白い。 ス:『つばくろめ』ら?が気になりましたが題材がユニーク。)

●拭ひても曇る車窓や春惜しむ=雪絵
◎資 △前=4点
(資:車ではなく列車の車窓と思う。何が見えたのか,色々なことが想像できる。)

●斑雪野に形相厳し一羅漢=やんま
◎白 △ぶ=4点
(白: ひとりポツンと立っている羅漢様のお顔。 ぶ:雪が解けて土がのぞく地に、いかめしい羅漢が、冬と世の厳しさ物語る。)

●勾玉は犬歯の形風光る=清一
◎葱△ぼ=4点
(葱:しばし古代人の野生的な感覚、自然への官能の時間を思いました。 ぼ:とても気持のいい句です。)

●形佳きぼうたん咲いたと亡き父に=入鈴
◎茶=3点
(茶:生前丹精込めてお育てなさっていたのでしょう。そんなご尊父の教えが句にも生きているように。)

●形佳き都をどりのをんな達=白馬
○五 △子=3点
(五:粋な仕上がりである。)

●隅田川越えて行くバス春惜しむ=資料官
○修=2点

●惜春や時効の悪事肴とす=十志夫
◎前=3点

●啄木の直筆の歌碑春惜しむ=資料官
△や、子、修=3点
(修:そうだった夭折の天才歌人。)

●人形の家離れては春惜しむ=茶輪子
◎喋=3点

●春惜しむ木橋を渡る人力車=水音
○資△雪=3点
(資:レトロな風景が目に浮かぶようで。)

●春惜しむ母の形見の一張羅=紅椿
○淳△久=3点 (久:自分が着てみたのでしょうね。)

●フレームの形歪みぬ朧月=十志夫
〇メ△五=3点
(五:それじゃ、尚更朧月だ!)

●円形のハンカチ落とし風光る=メゴチ
△水、葱=2点
(水:はるか昔の青春と言われたころの光る風を想います。葱:幼稚園のころ、よく遊びました。懐かしい。)

●草笛や風は嘶く形して=秀子
△紅、葱=2点
(紅:気持ちのよいお句です。葱:草笛の音を「風」の形として捉えた句かと感じました。)

●碁譜に追ふ黒白の目(もく)春惜しむ=葱男
○水=2点
(水:春惜しむの取り合わせとしては、くっきりと際立つ色で、それがいいかもと。)

●さくらさくら整形外科へかよふ道=資料官
○ま=2点
(ま:さくらさくらと平仮名で重ねることで、ちょっと不具合な日常が明るく、少しうきうきするように感じられます。)

●篠笛の中を形代流れけり=修一
△ぼ、入=2点
(ぼ:おお、優雅なこと!)

●隅田川越えて行くバス春惜しむ=資料官
○修=2点

●禅寺の晒し者の図春惜む=修一
△香、茶=2点
(茶:禅寺と晒し者のミスマッチが効いていると思いました。)

●蕪村の墓に椎の老木春惜む=修一
○子=2点

●プラトンの形而上学春の酔い=子白
○ぶ=2点
(ぶ:プラトンの形而上学がどのようなものかわからないけど、ついつられて春に酔ってしまった。)

●惜春や線香一つ消えかへる=茶輪子
〇十=2点
(十:「消えかへる」という言葉の深みで、句が際立ってきました。)

●叡山を借景にして春惜しむ=清一
△前=1点

●お灸して青春惜しむ古希となり=子白
△裕=1点
(裕:こういう「春惜しむ」もあるんですね)

●形なきかの人の思ひ春に知る=淳一
△白=1点
(白: そうだったのか。知っていれば-----。)

●自画像は形代なるや眠蚕の夢=葱男
△清=1点
(清:蚕が四回の脱皮を行う期間を眠蚕(いこ)と言う。その期間にどのような蛹になるか夢見ているのだ。)

●地震後の山山淡し春惜しむ=砂太
△葱=1点
(葱:いつ地震が起きるのか、心もとない時間がいつもは堂々と鎮座している山々を淡淡しく感じさせるのでしょう。)

●静かなる淵のボートや春惜しむ=白馬
△水=1点
(水:春惜しむにはもってこいの場所ですね。)

●初対面の意気投合や春惜しむ=裕
△ラ=1点
(ラ:春を惜しみつつ、意気投合した人との別れも惜しんでいるのでしょう。)

●惜春や五百マイルへ軋む汽車=茶輪子
△喋=1点

●ツバメ来ぬ巣は空のまま春惜しむ=子白
△淳=1点

●春惜しむ京人形を仕舞ひつつ=ぼくる
△や=1点

●春惜しむごときに降れり夜の雨=淳一
△香=1点

●春惜しむ小箱に詰めし記憶の束=まさこ
△清=1点
(清:小箱一杯詰め込んだ一春の記憶まだ蓋をせずにそれを辿る。)

●春惜しむ幼馴染の山と顔=白馬
△メ=1点


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