*B部門入選作発表*


兼題『季語:章魚』『漢:産』=全71投句(入選56句)

【特選】

一席
●今生は章魚に生まれて干されけり=やんま


◎資、ぼ、弧○水、喋△紅、久=15点
(資:来世の我が身?章魚の句の中では一番面白い。 ぼ:輪廻転生のうちにはこういう事もあろう。いとおかし。 水:諦観のようにも見えますが滑稽さも。 紅:来世は何に生まれたいのでしょうか? 久:ってなこともありかと思いました。)


二席
●ぐつぐつと章魚溺れゐる明石焼=十志夫


◎五、久○る、砂、雪△風=13点
(五:上手い!やはり章魚は明石だ! 久:鱆、最小の場景に脱帽。おぼれると言う発想もいいです。 る:そう言われれば、明石焼ってそういうものですよね。 雪:確かに!おもしろい。 風:そのままと言えばそのままですが一読で景の見える俳句はやはり強いと思います。)


ニ席
●ぐつしよりと産毛ぬらして昼寝の子=雪絵


◎ま、秋○メ△白、葱、子、風、香=13点
(秋:赤ちゃんは本当に汗っかき。愛おしい情景です。白:子供はそんな汗には無頓着。母親が拭いてあげる。 葱:「熱中症」には気をつけて! 風:一読即景で好きなのですが「〜て〜」はどうなんでしょう?僕はあまり好きではないので△選以上ではとれず。)


【入選】

●蛸壺や島と島とを結ぶ橋=紅椿
◎修○葱、資、弧△雪、ぼ、喋=12点
(葱:「蛸壺」が地場産業と地元民の交流の場と、いろんなもののシンボルとして見えてきます。「蛸壺」と蛸で「ゆるキャラ」を作っても面白いかも。「溽暑にも負けずゆるキャラぬいぐるみ」。 資:縄と縄でつながれた蛸壺と橋で結ばれた島が重なり面白い。 雪:天草の島々でしょうか。また行ってみたくなりました。 ぼ:小さな景と大きな景を詠みこんだ。)

●産休の教師と出遇ふ蛍の夜=ラスカル
◎砂、紅○十、修△五=11点
(紅:ドラマ性があります。主人公は思春期の男の子?微妙な心の揺れと季語がぴったりだと思います。 十:一見して意外性のある句だけれど、ありそうなことと思わせる不思議さ。 五:何か不倫の匂い漂うストーリーある句。)

●地の底に産業遺産旱雲=水音
  ◎十○ま、久△葱、資、雪、喋=11点
(十:明治産業遺産のひとつ「三池炭鉱」。旱<ひでり>雲の表すものはそこで従事していた人達の渇きの声。 久:炭坑で筑豊がなかったなあ、と思いました。 葱:「山本作兵衛」さんの「炭鉱の絵」は、世界記憶遺産になりましたね。 資:三池炭鉱 地の底のヤマ。旱雲が効いている。)

●星形にひろげて章魚の干されをり=秋波
◎ラ○水、香、弧△白、メ=11点
(ラ:その章魚には、メルヘンの匂いがしますね♪ 水:星型という感性がきれいです。 白:八本の脚を、全部正しく広げて。何十匹もいたら壮観でしょうね。)

●銀漢は星の産卵場所である=水音
  ○白、葱、雪、メ△十、ぼ=10点
(白:確かにそう思えますね。 葱:。「銀漢=天の川」は「宇宙的、神話的」な語感を秘めていますね。「星」は万物を生み出した「神の卵」なのか。 雪:妙に納得しています。星が卵であることも。 十:「である」の決めつけがいいのか、「かもしれぬ」くらいがいいのか?  ぼ:その通り。詩は科学に優るかも。)

●早朝のうつせみひとつ土産とす=弧七
◎入△る、葱、十、水、香、メ=9点
(る:誰のためにというのがわかれば、もっと良かったかも。 葱:持って帰りたくなる気持ち、分ります。 十:朝の散歩帰りでしょうか、都会の子供へは土産になるのかも。 水:早朝の散歩でしょうか。)

●上四方固めを蛸に決められて=修一
◎喋○白△砂、ぼ、弧=8点
(白:一瞬笑っちゃいました。有りそうな光景ですね。 ぼ:面白い見立て。)

●土産屋に和紙の便箋花山葵=ラスカル
◎香○十、資△風=8点
(十:和紙<紙漉き>と山葵田とに、この地の澄んだ水を連想させる。 風:リアリティと季語「花山葵」が効果的だと思います。)

●産院へ入るや日焼の子を連れて=ラスカル
◎雪○砂△ま、秋=7点
(雪:幸せな気分になる光景ですね。)

●ぶつ切りの蛸山盛りに男酒=ぼくる
○淳△る、葱、砂、ま、修=7点 (る:そのまんまの、素直な句ですね。 葱:「酒」の句にはほぼ共感します、「ぶつ切り」が美味そう。)

●青時雨一つ命を産み落す=やんま
◎白、メ=6点
(白:青時雨の一滴そのものが、ひとつの命か。それとも青時雨の中でひとつの命が生まれたのか。)

●産土や奇麗な風の梅雨の明=砂太
◎や、葱=6点
(や:故郷の青い山河澄んだ空気、梅雨明けとあらば猶更に。 葱:「産土」の句がいくつかありましたが、その中でこの句に一番共鳴しました。日本の四季、自然が自然に詠み込まれているからでしょうか。)

●大章魚を茹づるも喰ふも箸二本=るな
◎水△ラ、紅、風=6点
(水:「箸二本」がおもしろい。何しろ大章魚ですからね。 ラ:確かに!<笑> 俳諧味のある句ですね。 紅:言われてみればその通りですね。 風:若干理屈の匂いを感じますが上五「大章魚」が良いですね。)

●大阪弁とび交ふ市やええ蛸や=ぼくる
○る、風△弧=5点
(る:下五で臨場感が出ましたね。 風:◎選迷いましたが上五「大阪弁」が説明的なので○選。 弧:(「大阪弁」が少し説明的に思われますが、おもわず笑ってしまいました。)

●事なかれ主義の男や章魚釣りぬ=風牙
○や、ぼ△葱=5点
(や:出世とか恋とか面倒な事はしない、釣りが一番ハイご同輩。 葱:取り合わせの妙。 ぼ:いいね、この取り合わせ。)

●泥酔の父に起こされ土産鮓=風牙
○紅、入△秋=5点
(紅:昭和のお父さんたちがよくやっていましたね。景が浮かびます。 秋:何だか子供の頃の記憶にあるなあ。)

●法案の強行採決章魚踊る=白馬
◎る△水、久=5点
(る:こういう付き方は好きです。庶民の側からの皮肉が利いているような。。 水:あまりのことに章魚も踊っちゃいますよね。 久:タコおどるがいいです。)

●海に立つ水産高校夏の雲=雪絵
○ぼ、風=4点
(ぼ:気持ちのよい句です。 風:見たままありのままで何も言っていない句はその分季語と景が雄弁に語ってくれますね。)


●お通しの飯蛸の肢反りかへる=十志夫
○淳△五、ラ=4点
(五:観察の妙! ラ:活きのいい飯蛸なのでしょう。美味しそうです♪)

●氷菓子シチリア産の塩の味=秋波
◎子△ま=4点

●静かなるヨットの産みし波の音=メゴチ
○子、修=4点

●蛸の足あらくれ顔の並びをり=風牙
○喋△白、入=4点 (白:海の猟場か?それともカウンターだけの居酒屋か?)

●章魚のマリネ硝子に盛りて誕生日=まさこ
○子、ラ=4点
(ラ:硝子器がきらきら輝いて、誕生日を祝福してくれています。)

●手土産はいつも八ツ橋帰省の子=紅椿
△や、淳、雪、風=4点
(や:国を出て京都へお勤め、何時ものお土産と何時もの笑顔が嬉しい。 風:京都駅構内で適当に買っての帰省。共感します。)

●蓮池に仏産まるる朝涼し=英心
○紅△子、入=4点
(紅:涼しさが伝わってきます。別天地みたいですね。)

●茹でられてきりりとしたる蛸の足=紅椿
◎風△香=4点
(風:活け蛸と茹で蛸の違いがはっきりと見えます。)

●産土の宮に立ちたる生身魂=修一
○ラ△五=3点
(ラ:「産」と「魂」の対比が、決まっています。 五:お盆だなというタイムリーなる設定。)

●ギリシアの壷絵の章魚の脚絡む=るな
○五△子=3点
(五:ギリシアの経済もがんじがらめ?)

●高地産レタスに想ふ蒼き空=久郎兎
○ま△修=3点

●章魚と貝そばに胡瓜の添えてあり=子白
◎淳=3点

●道の駅地産地消の夏料理=砂太
○秋△資=3点
(資:道の駅には地元の産物が並んでいますが,地元の人も良く買いに来ます。夏料理とはなんだろう?)

●浴衣着て撫子産まるる夏祭り=英心
○入△弧=3点

●銀閣寺打ち水涼し土産店=子白
○五=2点
(五:京都の夏は暑い!)

●金魚鉢ここ産土の魚たち=やんま
○秋=2点

●助産婦が駆けつけて来る夏木立=ぼくる
△水、入=2点 (水:汗をたらたら流しながら、、)

●大阿蘇の入道雲と産交バス=喋九厘
○久=2点
(久:産の兼題で最初に思ったのが産交バスでした。)

●章魚突きの親父の背中まぶしけれ=メゴチ
○や=2点
(や:それが何であれ人には自分だけの一つがある、父の章魚突きも。)

●夏宿で名物煮章魚踊る皿=淳一
○香=2点

●にわか漁師章魚に噛まれし話など=水音 
△や、風=2点
(や:やってみたい気持ちはわかるが、落とし穴が待っている。 風:上五「にわか漁師」にもう一工夫欲しい気がしますが釣り果自慢の宴の景ははっきりと見えます。)

●産土に散らばつてゐる夏休=十志夫
△砂=1点

●海亀の産卵あつき砂の恩=久郎兎
△秋=1点
(秋:あつきが産卵にかかるのか砂か恩か、取り方で色んな楽しみ方が出 来そう。)

●価格より産地気になる土用の日=メゴチ
△久=1点
(久:神経使いますね。)

●産直の章魚に吸はれし青磁かな=葱男
△ラ=1点
(ラ:「青磁」の一語によって、成立した一句だと思います。)

●鈴鳴らし駆ける産婆やパリー祭=葱男
△紅=1点
(紅:下五への飛び方が大胆で、驚かされました。)

●蝉しぐれ道産子ラーメン啜りをり=秋波
△喋=1点

●章魚刺しを食めば盲腸手術痕=五六ニ三斎
△十=1点
(十:触感と視覚とを力技で結びつけている。)

●章魚の眼が一瞬睨む水族館=白馬
△淳=1点

●たぶんひと味違ふシチリア産の章魚=るな
△修=1点

●生章魚のパックの形に売られをり=雪絵
△や=1点
(や:透明のビニールパックには哀れにしてどこか可笑しい生章魚が。)

●ふすま絵の蓮の押し花幸を産み=子白
△メ=1点

●文月に産まれて昭和と同い年=香久夜
△資=1点
(資:平成も27年までやって来ました。当然63歳になりますね。)

●細切れの湯蛸となりて売られけり=修一
△る=1点
(る:タコの末路ですね。ちと大袈裟ですが、「いのちのあはれ」のようなものを感じます。)

●真ん前に友居てなごむ章魚づくし=葱男
△淳=1点


B部門入選作〈back number〉

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