*B部門入選作発表*


兼題『季語:山茶花』『漢字:野』=全68投句(入選44句)

【特選】

一席
●山茶花や昔この家に三姉妹=やんま


◎雪、秋○る、美、ま△葱、十、喋、ぼ=16点
(雪:私の思う山茶花のイメージが、この句に一番近いと思いました。 秋:山茶花は何故か古家に似合う。絵になります。 る:この季語だと淋しい感じになってしまいがちですが、その塩梅がちょうど良いかと。 ま:季語がよく合っています。にぎやかで楽しかった日々が想像されます。 葱:哀愁と美しい思い出があります。 十:今は朽ちた空き家か。山茶花が頬紅を彷彿させる。 ぼ:さぞかし美人揃いだったろうなあ。)


二席
●からつぽのペットボトルに枯野透く=ラスカル


◎ま、水○十、メ△五、葱、る=13点
(ま: 荒涼とした景がさらに寒々と感じられます。 水:視点が面白い。「からっぽ」のペットボトルは秋の象徴している。 十:空<くう>から空くう>を見ている。 五:上手い。からっぽなペットボトルと枯野の取り合わせ。 枯野行、でしょうか、ペットボトルの水を持参したのでしょうか。 る:現代的で面白いと思うのですが、ちょっと淋しすぎるかも。)


二席
●野の花のやがて野に散る時雨かな=十志夫


◎紅、弧○資、ぼ△五、メ、秋=13点
(紅:今回は迷わずこのお句が◎です。下五で決まりました! 資:リズム感が良く、なぜか明るさも感じる。 ぼ:それでいい、それがいい。 五:厳密に言うと季重なりかも?リズム感の良い句。)


【入選】

●山茶花や旧街道の美容室=雪絵
◎や○資、久△水、香、弧=10点
(や:なじみの客がなじみの曜日にやってくる。 資:ドラマに出てきそうな,昔美人のマダムが一人でやっている美容室。 久:田舎の風景を思い浮かべました。 水:昔ながらの美容室なんでしょうね。)

●山茶花や廊下の奥の狐面=るな
◎風○や、弧△葱、ま、資=10点
(風:リアリティが極まった時に立ち上る詩の世界、俳句ならではの表現ですよね。 や:この世の中に別の世の幽玄を置く。 葱:廊下の奥の暗闇に妖かしの世界が。 資:何処かにこういう風景があったのでしょうか。面白い組み合わせ。)

●雨止みて山茶花の道光りけり=雪絵
◎メ○風、淳△る、美=9点
(風:上五「て」が原因結果を作り出してしまっているのが残念。切れ字「けり」は的確ですね。 る:素直で良い感じなのですが、やや因果を感じてしまうので、表現を工夫されてはいかがでしょうか。)

●山茶花や島に住みたき思ひあり=水音
◎十、美○や△香=9点
(十:誰しもが一度は思うこと。 や:漂浪の漢の本音だが、現実の生活が待っている。)

●鳥影のよぎる山茶花日和かな=紅椿
○ま、雪、弧△五、る、久=9点
(ま:冬の青空と山茶花の対比が鮮やかです。 雪:「山茶花日和」という言葉が好きです。 五:大きい島影と山茶花の花が呼応する名句。 る:明るくて気持ちの良い句ですね。 久:静かな光景ですね。)

●野良猫をひざに座らせ冬日向=修一
○ラ、久、秋△風、淳、子=9点
(ラ:作者の心の優しさが伝わってきます。 久:元飼い猫なんでしょう。飼ってあげてください。 風:類想句は相当あると思いますが冬日向ならではのリアリティで既視感はさほど気になりませんでした。)

●雪の野にデッサンモデル舞い降りる=葱男
◎ラ、久○子△砂=9点
(ラ:おそらく、鶴でしょう。それを「デッサンモデル」と表現したところが面白いです。 久:発想が奇抜、何が舞い降りたのかな?)

●絹鳴りをさせて山茶花掃きにけり=水音
○る、秋△葱、ラ、紅、弧=8点
(る:「絹鳴り」が良いですね!季語とも合っているように思います。 秋:凛とした朝の風情。 葱:花びらのシルクのような感触が伝わりました。 ラ:この山茶花の色は、きっと真っ白ですね。 紅:「絹鳴り」って素敵な言葉ですね。)

●山茶花の真白にこぼれ海平ら=まさこ
○砂、水、紅△ぼ=7点
(水:穏やかな風景。 紅:白と青の対比。穏やかな景ですね。 ぼ:おお、色彩豊か。)

●野良猫の鳴いて寄り来る寒暮かな=雪絵
◎資○ラ△十、子=7点
(資:野良猫と寒暮の組み合わせが妙。そろそろ漱石忌。 ラ:その野良猫を、抱きしめてあげたい。 十:季語が効いている。)

●冬銀河マタギがあたる野宿の火=ぼくる
○紅、雪△や、葱、水=7点
(紅:映像が浮かびます。季語がいいですね。 雪:まるで映画のワンシーンのような・・。 や:白神山地の銀河を見ていると何故か恐れを感じてしまう。 葱:厳しい冬の山の生活があざやかに目に浮かびます。)

●極月の上野は北へ下りけり=十志夫
◎香○喋△雪=6点
(雪:十二月は帰省の時期。言葉の妙ですね。)

●山茶花やはらりはらりと喪の葉書=資料官
◎子○水△紅=6点
(水:まさにその季節ですね。「はらりはらり」が良い。 紅:山茶花の咲くころになると届く欠礼の葉書、確かに「はらりはらり」ときますね。)

●野と呼べるものなくなりて冬の蝶=弧七
○ぼ、香△美、紅=6点
(ぼ:共感しきりです。 紅:冬の蝶のはかなさが出ています。)

●イフタフヤーシムシム枯野にて叫ぶ=風牙
○葱、美△喋=5点
(葱:「開け!ゴマ!」のアラビヤ語のカタカナ表記だそうですが、なにが「ゴマ」なのか?知りたいなあ〜、「胡麻」の「胡」の字はペルシャ由来のものだ、とは聞いたことあります。「胡瓜」「胡弓」など。)

●冬晴やぐるりとまはる武蔵野線=資料官
◎る○十=5点
(る:実際はどうなのか知りませんが、中七と「武蔵野」とで、季語に相応しい広い感じが出ていると思います。 十:長閑な冬のひとときを楽しんでいる。鉄道ファンか?)

●山茶花の気ままな紅や曇り空=久郎兎
◎五△資=4点
(五:気ままな紅が曇り空を引き立たせる。 資:山茶花は曇り空が良く似合うと思う。)

●山茶花は音無く闇に散ると言ふ=白馬
◎ぼ△淳=4点
(ぼ:さもありなむ。詩情あり、哲学あり。)

●父独り枯野にあらば山頭火=やんま
○砂△ま、久=4点
(久:気分はそうなりますね。)

●野を駆くる狐の影のかろさかな=るな
◎葱△ぼ=4点
(葱:狐が獲物を捕らえるときに高くジャンプしている様子が見えました。 ぼ:うーむ、見たいなあ。)

●はんなりと今宵の鍋の京野菜=水音
○五△や、資=4点
(五:はんなりが良い。京の雰囲気の枕詞みたい。 や:美味しそう! 資:色彩が豊かな句。)  

●頬擦りはまた来年と言ふ枯野=五六二三斎
○喋△砂、美=4点

●水音のするから枯野超えられる=風牙
○葱△砂、弧=4点
(葱:もし山で遭難したとしたら、川の水音は救済と希望の音になるでしょうね。)

●大枯野既読スルーの風が吹く=葱男
△五、ラ、香=3点
(五:既読スルーの風?ユニークな現代俳句だろう。 ラ:「既読スルー」を俳句に詠んだのは、初めて見ました。)

●山茶花に待つ身の女問ひ掛くる=久郎兎
◎砂=3点

●山茶花のはらりと落ちて苔の上=子白
◎淳=3点
(淳:落ちたのが苔の上というのが風情がありますね。)

●山茶花や地球は急に止まれない=十志夫
◎喋=3点

●山茶花や屋台の親父は無口なり=秋波
○淳△ま=3点

●白山茶花坂の途中のカフェテラス=まさこ
○風△雪=3点
(風:既視感のある下十二音ですが上五「白山茶花」が効果的リアリティを作り出していると思います。 雪:白山茶花がおしゃれなカフェテラスを想像させます。)

●はらはらと夢は枯れ野を駆け巡る=喋九厘
○メ△淳=3点

●膝笑ふ石段長しひめつばき=砂太
○子△秋=3点

●枯野には枯野の役あり子等の声=秋波
○香=2点

●山茶花の道福岡を完走す=五六二三斎
△葱、水=2点
(葱:福岡マラソンのことでしょう。沿道に山茶花が咲き乱れているのでしょう、「完走す」に喜びがある。 水:今年は金沢マラソンもありまして、初冬の街を走り抜ける爽快感を感じます。)

●山茶花や静かに時の巡りゆく=やんま
△メ、子=2点

●霜の夜の高野豆腐のクリーム煮=まさこ
△や、十=2点
(や:温かそう! 十:何だかおいしそう。)

●山茶花の声がよおくきこえるよ=弧七
△喋=1点

●山茶花や緋袴通る砂利の庭=砂太
△秋=1点

●散り敷くやさざんか影の形して=紅椿
△メ=1点

●野晒しにされたる鵙の贄枯れて=白馬
△久=1点
(久:冬に入る寸前の光景、いいですね。)

●野放図な漢も祖父に七五三=紅椿
△雪=1点
(雪:祖父を詠んだ七五三の句。おもしろいです。)

●冬晴れの野菜たつぷりチャンポン麺=修一
△風=1点
(風:内外を嫌って上五「や」ではなく「の」にされたのでしょうか?「の」で切れている(の以下省略)とも読めますが個人的には「や」の詠嘆が欲しかったです。)


※勘違いして「談話室」に投句されていた美遥さんの作品鑑賞です。

●山茶花の垣根染めたる山湯宿
葱:実景でしょうか。
●山茶花の色をおきたる宿茜
葱:「宿/茜」、と切れているのかな?
●山茶花の宿好色のかすかなる
△葱:色っぽくて、いいですね。好きな句です。




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