*B部門入選作発表*


兼題『季語:十月』『漢字:夜』=全66投句(入選46句)

【特選】

一席
●こはいほど晴れ十月の曲がり角=葱男


◎紅、五、風○ま、ぼ、美△る、修=17点
(紅:本当に今年の10月はよく晴れましたね。「こはいほど」に共感致しました。 五:今年の秋を上手く表現したと感服。でも、曲がり角はいつか訪れる。良いことばかりではないことへの予感、不安感も覗く。 風:意味内容を取らせようとしていない最も韻文らしい俳句かと思います。秋思や秋寂しといった晩秋の本意が響いているかと思います。 ま:十月の空をぴったりと言い当てておられ、魅かれました。 ぼ:思いの深い句。 る:「曲がり角」というのがちょっとよくわからないのですが、そんな日ってありますよね。 修:たしかにそんな感じがする。雲のない深く青い空が冬へと曲がる。曲がり角で鬼と擦れ違うかも?)


二席
●湯上りの匂ひ行き交ふ星月夜=紅椿


◎子、修○白、メ、ぼ、淳△雪=15点
(修:「行き交ふ」賑やかさが「星月夜」とよく呼応している。健康万歳、人間万歳。 白:良いですねぇ。温泉地の男女の風景。 ぼ:粋で情感あり。)


三席
●十月や乾いた音のページ繰る=秋波


◎ま○紅、入、ラ、久△メ、雪、美=14点
(ま:十月の季節感がとても巧く表現されていてお見事です。 紅:付きすぎかもしれませんが、今年の十月にぴったりです。 ラ:「乾いた音」に、確かな季節感が感じられます。 久:無我夢中の読書なのか速読か、傍目では動作が印象的なのでしょう。)


三席
●てにをはの行きつ戻りつ夜這星=十志夫


◎喋、メ○資、五△砂、白、久、秋=14点
(白:意味不明ながら面白いです。 資:句作の逡巡と流れ星を対比させたところが面白い。 五:上手い表現。恋句とも取れる。 久:夜空での出来事かそれとも言い訳とか何かの比喩なのかわからないが面白いですね。)


【入選】

●異人来て神籤買ひけり神無月=砂太
◎白、水、秋△喋、久、弧、風=13点
(白:この異人は西洋人ですね。アンバランスが佳いです。 水:着眼点がおもしろいですね。 秋:こんな外人も増えました。 久:世の中のいろんな事情ありで皮肉でもありますが、面白いです。 風:神籤は買うものではないので迷いましたがそこはオマケして△選、「神籤受く」で「神籤受きけり」でしょうか。上十二音に既視感はありますが神無月というのがなんか面白かったです。旧暦十月なので本当は初冬の季語ですがこれもオマケ。)

●十月や馬は密かに喋りをる=水音
◎雪○葱、白、十、喋、秋=13点
(雪:おもしろい!しかも納得です。 葱:口元をみると、喋ったり、笑ったりしてそう。 白:ガリバー旅行記 フーイヌムの国か? 十:俳諧味あり。「密かに」ではやや当たり前なので「大いに語りをる」としたら面白いと思うが。 秋:レース前、まさか馬が談合?)

●十月の更地に眠るスクーター=るな
◎葱、美○五△淳=9点
(葱:意外性に驚かされました、見えていないものを見る力がある。 五:物語性のある句。何故、スクーターは埋められなければならなかったのか?)

●長き夜や活字の小さきドストエフスキー=資料官
○子、久、雪△入、ぼ、雪=9点
(久:ページを惜しむように文字の詰まった本、昔を思い出させてくれます。 ぼ:老眼鏡で古い文庫本を。 風:付きすぎと言えば付きすぎですが奇をてらったところもなく好感が持てます。)

●こりこりと鶏の軟骨噛む夜長=まさこ
◎砂△十、る、資、水、五=8点
(十:オノマトペが効いているが、やや既視感あり。 る:男の夜長、という感じですね。 資:こりこりと軟骨が面白い。 水:夜長ならではの感じがよく出ていますね。 五:擬音句を珍しくも2つも採った。)

●タンバリンにあまたの鈴や星月夜=ラスカル
○入、水、雪△葱、弧=8点
(水:鈴の音が散らばる星に昇華していくような感じ。 葱:カラオケでしょう!)

●虫すだく一夜一夜の看取りかな=ぼくる
◎る、資△白、入=8点
(る:「一夜一夜の」というところにとても共感しました。 資:看取りの時間軸に虫の音を対比させているところが妙。 白:長く付き添われたことでしょう。お察し致します。)

●十月やポニーテールのごむ解く=雪絵
○修、水△葱、紅、資=7点
(修:「ゴム」が効いている。日常的でリアルな感じ.十月は心のままに。 水:気温も湿度も心地良くなる季節。長い髪をサラッと広げてみたい。 葱:その仕種がにい〜〜、弱い。 紅:季語の斡旋が絶妙です。)

●なにごとも何ごともなく十三夜=十志夫
◎弧○ま、淳=7点
(ま:ひらがなと漢字で畳み込み効果的だと思います。とっても良い感じです。)

●まだ咲いているわ十月の花です=白馬
○秋、弧△砂、葱、美=7点
(秋:一人称で読むといいのでしょうか。 葱:面白い口語体。)

●句と酒と人を集めて十三夜=砂太
◎ラ○ぼ△葱、美=7点
(ラ:「句と人」だけではなく、「酒」を入れたところに作者の拘りが伺えます。 ぼ:仲間に加えて下さいな。楽しい十三夜。 葱:句と人と二回もってきたところが憎い。好きなんですねえ〜、人が!)

●ラーメンのなるとののの字十三夜=風牙
○砂、資△白、ま=6点
(白:こんな良夜でもラーメン好きは。 資:のの字はまん丸ではなく月に似ている。着眼点に脱帽。 ま:ようく考えると響き合いますね、なるとと。)

●十六夜や体温計は銀の橋=ラスカル
◎十○砂△秋=6点
(十:人間界の産物「鉛でできた銀の橋」が十六夜という自然界の明るさの中で輝いている。神秘的。)

●里山の夜恋しけれ虫すだく=白馬
○メ、美△子=5点

●十月のどの竹となく声を吐き=美遥
◎ぼ○喋=5点
(ぼ:作者の吐息も聞こえるような。十月が利いている。)

●モーターの音の漏れくる月夜かな=紅椿
○ラ、風△十=5点
(ラ:夜遅くまで残業でしょうか。お疲れさまと声をかけてあげたいです。風:モーター音を描写することで逆に静かな月夜が際だっていると思います。 十:下町の景として、聴覚と視覚の合わせ技。)

●腕時計の重くなりたる霧の夜=ラスカル
○る△十、ま、修=5点
(る:霧の夜には、そんなこともあろうかと。 十:感覚句として納得。時計<時間>が重くなるという表現は、ややパターン句ではある。 ま:霧の夜はとかく心が重くなりがちですね。 修:昔の頑丈な重い時計を想い出した。「物」を出しているが、具体的?でない感じ。)

●秋の夜の更けしちりきのアヴェマリア=まさこ
△ラ、五、ぼ、雪=4点
(ラ:「しちりき」の「アヴェマリア」は珍しいですね。季語次第で、もっといい句になりそう。 五:しちりきのアヴェマリア?面白い。 ぼ:いいねえ、聴きたいなあ。 雪:しちりきが意外でした。)

●十月の空一点の機影かな=十志夫
○風△葱、資=4点
(風:秋晴れ、天高し、秋の空といった別題と相まって気持ちのよい句だと思います。 葱:秋晴れの象徴的な一景。 資:澄んだ空,飛行機雲もなく一点の飛行機。)

●十月の弁財天の素足かな=美遥
◎入△修=4点
(修:澄んだ日差しに素足が見えたかも。神無月なので素足になられたのかな?)

●モカマタリ飲みたき夜なり木の実降る=風牙
○る△ま、水=4点
(る:眠れなくなるかもしれませんが、作者はそれで良いと思っているのかも。 ま:季語がぴったりだと思います。想像していたら飲んでみたくなりました。 水:木の実が降るような夜はネルドリップで飲みたい感じです。)

●斜に構へ十三夜月待つをんな=五六ニ三斎
○紅△淳=3点
(紅:夢二の絵に出てきそうですね。)

●十月の電気メーター歩むほど=水音
△紅、喋、久=3点
(紅:九月と十月では、電気の使用量がすごく違いますね。こんな事も句になるのだと感心しました。 久:いい季節、エネルギーを余り使わなくていいですからね。)

●そそくさと靴音響く夜寒かな=メゴチ
◎久=3点
(久:何か頼みごとを断られての帰り道か、余寒が効いていて余韻があります。)

●残す世を如何にと思ふ十三夜=砂太
△メ、五、弧=3点
(五:哲学的な句で良いと思う。)

●虫の音も遠くになりて深き夜=久郎兎
◎淳=3点

●夜半の秋無言で過ぐる赤色灯=秋波
△子、る、入=3点
(る:この季感は良いと思います。)

●泡あまた琉球硝子星月夜=雪絵
△葱、ラ=2点
(葱:沖縄、ニライカナイが見つかりそう。 ラ:着眼点はとても良いと思います。三段切れになってしまったのが惜しいです。)

●十月の明けつ広げの会話かな=紅椿
△砂、風=2点
(風:秋らしい気持ちよい句。)

●十月のマリアは確とイェスを抱き=ぼくる
○葱=2点
(葱:十字架が隠れています。)

●真夜の鴉長鳴きしたる暮の秋=るな
○修=2点
(修:季語がさりげなくて、「長鳴き」が意味ありげでないのが、すっと入ってきます。)

●退院を知らせるメール十三夜=まさこ
○十=2点
(十:難しいことを何一つ言っていない句だが、「満月」を一緒に見られる喜びにあふれた佳句。) 

●窓越しに日に日に夜が早まりぬ=淳一
○子=2点

●めでたくもなく十月に年重ねむ=資料官
○弧=2点

●可惜夜(あたらよ)や肩触れ合ひし回り道=ぼくる
△水=1点
(水:どうしてもどうしても別れがたい二人なのでしょうね。)

●十月の天を駆けるや十三夜=喋九厘
△メ=1点

●十月の日射し鮮やか煉瓦塀=久郎兎
△淳=1点

●つづれさせビリーホリディ夜を擦る=葱男
△喋=1点

●長き夜の小鉢こんもり盛られたる=水音
△ラ=1点
(ラ:日常生活の中の、ささやかな幸せを掬い取っています。)

●Yシャツを二枚重ね着長き夜=久郎兎
△秋=1点
(秋:セータを引っ張り出すにはまだ早い。)

●十三夜渚に寄する銀の波=るな
△子=1点

●別々の施設に入りぬ十三夜=修一
△紅=1点
(紅:せつないですが、この頃はよくある事のようですね。月は平等に照らしています。)


■風牙さんより
気になったこと
「夜」を「よる」と読ませる句が目立ちましたが、文語では「よる」は日没から日の出までの事で夕→宵→夜(よ)→ 暁→明け方→朝とここまでが夜(よる)となります。夕飯、晩御飯、夜食で「よるごはん」とは言いませんよね。特に「長き夜」「秋の夜」など「夜」を連体修飾する場合は「よ」と読むのが鉄則です。

■後日談
葱:拙句(繰越の「生まれて死ぬる」虫の夜)で座五を終えたのですが、一晩中という感覚なら、「よる」の読みでもいいのでしょうか?

風:「××の夜」とか夜を連帯修飾した場合は「よ」が原則なんですよね。せめて室町期に誤用が容認されていれば譲れるのですが江戸期においてもこの原則は守られてるんですよね。明治以降の擬似文語扱いになってしまうかなと思います。僕も一晩中の意味で「長き夜」を「よる」で使った事あるのですが指摘されたことあったので。確か一晩中は「夜もすがら」でしょと言われたような。まぁ口語にすれば何ら問題ないことなのですが。


B部門入選作〈back number〉

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