*B部門入選作発表*


兼題『季語:桃』『漢:反』=全69投句(入選48句)

【特選】

一席
●まどろみの母に桃の香置いてきし=紅椿


◎十、水、ま○砂、る、ぼ、葱△メ=22点
(十:老いた母へのそこはかとなき情愛。「桃の香を置く」が上手い。 水:病院のお母様でしょうか。桃の「香」を置いてくるという表現に惹かれました。 ま:お母様へのやさしい眼差しがとても好きです。桃の香が良いですね。 る:意味がややわかり難かったのですが、作者の優しい気持ちが伝わります。 ぼ:情あり。相当お年の母上と思われる。 葱:お母様は入院されているのか、それとも介護施設に入っているのでしょうか?)


二席
●立つてゐるだけの案山子や反抗期=十志夫


◎葱、雪○修、水、香、喋△砂、ま=16点
(葱:返事もしないで突っ立って、にらみを利かせている感じが面白い。 雪:物言わず突っ立ってる様子は、まさに反抗している姿のように見えます。 水:「立ってゐるだけ」と「反抗期」。面白いですね。 修:そうだ歩けないんだ。強い眼差しを感じます。)


ニ席
●反物を巻く手さばきや涼新た=雪絵


◎美○子、ラ、風、ま△る、や、淳、五、紅=16点
(ラ:手さばきの鮮やかさ。熟練の店員かもしれません。 風:これも「句集読むひとりの時間水蜜桃」同様に新しさや独自性は見いだせませんが完成度の高い句だと思います。 ま:季語が生きていますね。 る:季語が効いていると思います。 や:手さばきの鮮やかさが初秋を実感させた瞬間。 五:着物の季節になってきた。 紅:プロの方は、本当に鮮やかに巻かれますね。季語が効いています。)


【入選】

●金婚や桃剥く妻の少し痩せ=砂太
◎淳、紅○十、や、ラ、メ△雪=15点
(紅:長年連れ添った奥様へのやさしい眼差しを感じました。いつまでもお元気で。 十:ベテラン夫婦の微妙な沈黙の空間。小津安二郎の世界のような。 や:50年も経てばそれそれに居場所が定まっている。 ラ:奥様に対する、深い愛情が伝わってきます。 雪:変わらぬ奥さまへの愛情!)

●青蜜柑臨月の背を反らしをり=まさこ
○十、や、久△五、資、水、香=10点
(十:如何にも、という感じが出ていてユーモラス。 や:下を向けないくらい膨らんでいる身体。 久:ありそうだけどご自愛ください。 五:臨月の背を反らすお母さんが夏蜜柑取り? 水:青蜜柑が熟す前に生まれそうですね。 香:この酸っぱい青蜜柑を食べたくなるんですね。無事のご出産を祈ります。)

●墓のなき詩人の忌日桃を食ふ=葱男
◎子○修、雪△ラ、久=9点
(修:水気たっぷりの甘い桃との取り合わせがうまい。 酒だと詩人のイメージも暗い感じになる。 雪:墓参りしなくても、その人を思い出すことが一番の供養、と聞いたことがあります。 ラ:その詩人は、一体誰なのだろうかと想像する楽しみがあります。 久:偲べば墓無くとも供養になるでしょうね。)

●白桃の色を置きたる白磁かな=十志夫
◎香○資、ま△水=8点
(香:白磁を持ってくることで、桃の淡いもも色が引き立ちます。 資:白桃とて白磁の上では何らかの色合いを発する。この組み合わせが良い。 ま:微妙な色合いが繊細に表現されています。 水:柔らかく暖かい色なのでしょうね。)

●白桃のひとところまだ空の色=ラスカル
◎葱○紅、弧△修=8点
(葱:くだものに「空の色」がなんともいいですね。 紅:実際にはこんな白桃を見た事はないのですが、「空の色」を残している桃なんて素敵です。 修:やなせたかしの「詩と絵」?の世界を思い出しました。)

●白桃を浮かせてみたき宇宙船=水音
◎資、弧△ぼ、メ=8点
(資:発想が面白いですね。「宙がえり何度もできる無重力水蜜桃を浮かせたし」なんちゃって」。 ぼ:発想がユニーク。)

●反対の反対が好き赤まんま=葱男
◎久○る、水△や=8点
(久:なんという発想。兼題の「反」はむずかしいですね。 る:子どもの言葉のような素朴さが、季語に合っているのでは。 水:反抗期の幼児でしょうか。 や:反対の反対は賛成に非ず、螺旋かな?)

●薄紙に水蜜桃や奥の院=美遥
◎風○久△る、五=7点
(風:「桃」の句はエロチックな句になりがちでこれもご多分に洩れずエロチックなのですが「薄紙」「水蜜桃」「奥の院」の単語の選択で禁断のエロス感たっぷりですね。俳句って単語と単語がぶつかるだけで句意と別の詩を立ち上げるのが魅力だと思います。 久:お供えでしょうか。 る:類句があるかもしれませんが、高野山などで見た景が蘇ります。 五:奥の院という言葉がいい。)

●思ひ出を反芻したる盆の月=紅椿
◎五、メ△香=7点
(五:何を反芻しておられるのか?興味ある句。)

● 盆唄に乗るや手の反り背ナの反り=紅椿
◎る○ぼ△砂、淳=7点
(る:踊りが見えてくるようですね。「反り」のリフレインが上手い! ぼ:読んでて踊りたくなるようなリズム感あり。)

●桃一つ五人のフォーク待ち構え=香久夜
○淳、紅△修、ぼ、メ=7点
(紅:光景が目に浮かぶようです。早いもの勝ちですね。 修:なんか詩の一節のよう、すっきりした絵。 ぼ:子沢山?これもまた、一つの幸せな風景。)

●反骨の花火線香まだ消ゑず=メゴチ
◎砂、ぼ=6点
(ぼ:好きですねえ、こういう反骨精神。)

●桃売りの今年も来たる曲がり角=弧七
◎や○美△風=6点
(や:季節の訪れが現実に姿を現す。 風:「桃売り」である必然性が弱いかと思いますが季語としての「桃」の手垢を落とそうとうする姿勢に△選。 )

●発車ベル今が旬です桃娘=資料官
◎喋△子、風=5点
(風:三段切れと中七を挟んだ観音開きの句形もそれほどは気にならないのですが上五もう一工夫できそうな気がします。)

●聞き役に回ってをりぬ桃をむく=雪絵
○砂△や、ラ=4点
(や:話し上手は聞き上手、ましてや気心知れたる仲。 ラ:類句があるかもしれませんが、手堅い句。)

●水中の銀の反射の水蜜桃=水音
◎ラ△ま=4点
(ラ:「反」と「桃」の二文字を使いつつ、少しも不自然なところがありません。お見事!)

●どの坂も浜へつづくや星月夜=美遥
△葱、十、水、弧=4点
(葱:尾道あたりの坂の町を思い起こします。 十:港町でよく見かける景。句の作りとしては、やや類型的だが季語が効いている。 水:友人が函館に行った話をしていたので、函館を想像してしまいました。)

●びわの葉の反りたるままに秋の慈雨=子白
○メ△久、弧=4点
(久:しっとり感があります。)

●句集読むひとりの時間水蜜桃=雪絵
○風△ラ=3点
(風:正直、全く同じ上12音他にもあるとは思いますがそれでも「水蜜桃」が効果的で完成度の高い句だと思います。 ラ:「ひとりの時間」が、とても優雅な時間のように思えます。)

●試験管反応待つ手風涼し=久郎兎
◎修=3点
(修:無機的な感じ、試験管と手のクローズアップ最高です。)

●少女の忌たつぷり桃のスムージー=まさこ
○五△ぼ=3点
(五:類句はありそうだが、いいフレーズである。 ぼ:何かドラマがありそう。)

●すこし首反らしかりがね水に落つ=るな
△葱、十、ぼ=3点
(葱:観察力、ですね。 十:写生の効いた句ですが「水に落つ」はやや乱暴。「着水す」がいいのでは。 ぼ:うまい写生、一幅の日本画。)

●猫じやらし反り返り泣く赤ん坊=まさこ
△紅、資、水=3点
(紅:赤ちゃんは身体全体で泣きますね。 資:向きの異なる二つの曲線の組み合わせが面白い。 水:何が気に入らないのか、赤ちゃんも大変ですねぇ。)

●反帝も反スタも死語ちちろ鳴く=ぼくる
○雪△美=3点
(雪:反帝も反スタも言葉すら知りませんでした。平和な日本に生まれたからでしょうか。それとも単なる無知!?)

●桃の香や姿勢を正し合掌す=メゴチ
○子△喋=3点

●吾輩は秋に斬り込む桃太郎=五六二三斎
○喋△香=3点

●秋の空駆ける反り跳び挟み跳び=五六二三斎
△砂、美=2点

●アダムなら林檎ではなく桃だろう=ぼくる
△葱、喋=2点
(葱:俳句の範疇か、ぎりぎりの「綱渡り」が面白い!そのチャレンジ精神が若い!)

●消え失せし桃売りを待つ広場かな=るな
○淳=2点

●くちづけのごと白桃を啜りけり=ラスカル
△子、雪=2点
(雪:色っぽ〜い!)

●黒ばみてあまた出でたる桃の核=修一
○弧=2点

●水蜜桃少女のやうな色を愛で=美遥
○香=2点

●水蜜桃種の髄まで吸うており=白馬
△る、ま=2点 (る:人間の欲望って、やはりエロティックなんですね。)

●反りかへる和風御膳の鯊フライ=十志夫
△風、紅=2点
(風:反りかへる鯊フライでの選。中七にもう一工夫あれば◎選も。 紅:ちょっぴり贅沢をなさったのでしょうか、美味しそうです。)

●触れさせじ目利きをせよと桃の列=久郎兎
△資、弧=2点
(資:桃の主張が面白い。)

●桃吸ふて口中に織る絹の糸=葱男
○五=2点
(五:例えの絹の糸が絶妙。)

●神棚に供えし桃の熟れを待ち=子白
△淳=1点

●傷心を滴らせつつ桃を剥く=ラスカル
△修=1点
(修:感傷に溺れていても、おいしそ!)

●白桃の触れし指より熟れにける=風牙
△美=1点

●反核と反戦唱ふ昼花火=水音
△久=1点
(久:「反」が効果的。昼の花火は行灯と同じということ?でも訴えは必要。)

●振り返る反町隆史笑顔なり=風牙
△十=1点
(十:賛否あると思うが、個人的にはこういう句も好き。 葱:確信犯だとは思いますが、やっぱり季語が欲しくなるー!)

●桃届くちょびっと傷がついており=白馬
△喋=1点

●桃の実や思い出のみな片想ひ=やんま
△雪=1点
(雪:甘い思い出も、すっぱい思い出も絡ませて・・。)

●日光浴させて冷やして桃食らふ=資料官
△子=1点


B部門入選作〈back number〉

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