*B部門入選作発表*


兼題『季語:菜の花』『漢字:赤』=全80投句(入選62句)

【特選】

一席
●キャラメルの箱にエンゼル花菜風=ラスカル


◎砂、雪○水、紅△秀、入、喋、ぼ、資=15点
(雪:確か箱の色も菜の花色!食すだけの私とは大違いです。 紅:季語が「エンゼル」とよく響きあっています。たぶん〇さんのお句だと思うのですが、句材を探す名人ですね。 ぼ:懐かしや、森永キャラメル水:森永のエンゼルも菜の花も、私にとっての青春そのものなのです。感傷的になっちゃいました。 秀:・キャラメルの箱の天使は、ずいぶん、よまれているけれど、いい感じですよね。 入:エンゼルキャラメルの箱は菜の花色してましちょね? 資:黄色と黄色のイメージ)


二席
●靴底の赤土重き初音かな=紅椿


◎る、ぶ○十、修△五、喋、風、茶=14点
(ぶ:赤土の畑にでも靴のまま入り込んだのだろうか・・春泥に近い地を踏みしめる人の耳に鶯の初音は天上の贈り物のよう〜。 十:探梅行でしょうか。春告鳥の声もしっかり聞こえてくるような。 る:確かにその頃は、歩いているといつの間にかそんなふうになりますね。 修:これは手だれの句 五:初音との取り合わせの妙。初音の観察に来られたと読み取れる。登山靴を履かれているのか?風:感じは伝わるのですが「重き」の連体形が気になって△選。 茶:テニスまたは山歩きでしょうか。久々の屋外アンツーカまたは山の土が初音のおかげで喜ばしい重さとなるのですね。)


三席
●抱へたる風呂敷包み花菜風=水音


◎ラ、裕○や、風、資△清=13点
(裕:両手いっぱいの春を感じます。 ラ:風呂敷包みの中に、何が入っているのか想像すると、とても楽しい気分になります。 資:風呂敷の復権。意外と便利。 や:風呂敷には喜びがいっぱい包まれている。 風:素直で心地良い句で好きです。◎選でも良いのですが「花菜風」の本意に依ってしまってるような気がしました。 清:まるで風呂敷包みの中に花菜風が入っているようで共感した。)


【入選】

●家系図の姫の名赤き雛まつり=雪絵
◎葱○秀、紅、秋△白、香=11点
(葱:何家の家系図かは分かりませんが、おそらくご自分の家のものではなく、テレビか何かで見た「徳川家」とかそんな名家の家系図のことでしょう。「雛まつり」との取り合わせが見事。我が家の姫が一番かわいい、というところでしょうか。 秀:姫というからには、立派な家の家系図なんでしょうね。赤い字で書いてあるのは、気づきですね。 紅:豪華な雛壇が見えてきます。中七がリアルですね。 白:姫達のために 飾る雛。)

●菜の花へ一直線の轍かな=雪絵
◎十、ま、香△風、ぶ=11点
(十:この轍は「猫車」の跡でしょうね。景鮮明です。 香:春への勢いがあります。 水:陰鬱な北陸で選句してると、このような風景にとても惹かれてしまうのです。 ま:黄色の原と、そこへ向かう一本の線がくっきりと美しい景に魅かれました。 ぶ:広い草原に邪魔するものとてない。あまり人の来ない菜の花畑を見つけた喜びを感じる。 風:景は好きなのですが句末の切れ字「かな」の詠嘆が響いて来ず△選。「かな」は難しい切れ字ですよね、それまでの十五音に十分な詠嘆がないと使わないほうが良いような気がします。)

●豆単の赤き傍線卒業す=十志夫
◎水、喋○風、雪△砂=11点
(水:年を取ったせいか、あの頃を思い出すものに反応してしまいました。 雪:「豆単」久々に聞く言葉です。懐かしい! 風:中七で切れての下五の終止形は「ぶつ切り感」が出て句末の「す」の働きが鈍く字数合わせ感が出てしまったのが残念。内容的には好きです。)

●青々と池に浮く空花菜風=秀子
◎メ○砂△十、水、ラ、修=9点
(十:水面に映る青空に沿うように渡っていく花菜風。爽やかな景。 ラ:池に空が浮くという発想がユニークです。 修:池に浮く空がいいです)

●鶴橋の赤き迷路のかぎろへる=葱男
◎秋、修○る△清=9点
(修:迷路とまで言っていいかどうか。直截さが響きました。  秋:鶴橋のごちゃごちゃした景と臭いに眩暈しそう。 清:鶴橋と云えば焼き肉の聖地、詠者はその多くの店が乱立し迷路のようになった場所を彷徨う。その光景が陽炎のように見えたのだ。)

●ポケットに青春切符花菜風=清一
◎資○ぼ、ぶ△雪、メ=9点 (ぶ:青春きっぷを使って旅をするのは千年と決まったわけではないが、折から吹く春風に人は皆若返るw 入:付き過ぎとも思いましたが、風が一気に吹いたようで佳いと思います。 資:青春18きっぷ春Ver。花菜風のような旅。 ぼ:さわやかで、いいね!雪:青春真っ盛り!私には随分前のことですが。)

●遠き富士ぐつと引き寄せ花菜畑=資料官
◎ぼ○砂、ぶ△や=8点
(ぶ:一面の菜の花畑が、遠い富士山を引き寄せたという作者の想像力に驚いた。 や:広大な花菜畑には富士が一望のうちに、さわやかな風を感じる。 ぼ:中七の措辞おみごとです。)

●菜の花や最南端の無人駅=資料官
◎秀○五△水、ぼ、香=8点
(水:類句多々ありそうですが、菜の花にふさわしい景色だと思います。 秀:しっかり景が目に浮かびます。ちょっと寂しくて、読者の心を。 五:指宿の近くの無人駅だろうか?旅に出たい。 ぼ:野生の菜の花でしょう、旅心そそる。香:西山駅?菜の花が似合いますね。)

●初蝶や舞妓の赤きおちよぼ口=まさこ
◎白○修△十、五、資=8点
(白:蝶と舞子はんの可愛い取り合わせ。 修:絶妙の取り合わせ。 十:半玉のおちょぼ口と初蝶がピタリと合っています。 五:舞妓さんも春が来て稼ぎ時だ。まさか、この舞妓はん、お客はんにベーしてるつもりのおちょぼ口?それは、考え過ぎだ!<笑>)

●ぺんぺん草真っ赤な嘘と知りながら=白馬
◎茶○雪、清△紅=8点
(茶:雑草も雑な嘘も好きだとしゃ〜ないんですよね。諦めではなく愛おしく。 雪:季語がしっかりはまってますね。 紅:これも〇候補でした。季語がお見事!今はやりのゲスな男性なんでしょうね。 清:道端のどこにもあるぺんぺん草、しょうもない奴と思いながらも聞き流している光景が浮かぶ。)

●菜の花や木樽の箍の外れさう=ラスカル
○葱、る△ぶ、ま、修=7点
(葱:感覚的な句。水も風も緩むこの時期、古い木樽の箍も緩みそうな気がします。 る:畑の中に放置してある樽でしょうか。こういう、一見関係ないようなモノの組み合わせは好きです。 ま:懐かしいような風景ですね。何を入れた樽でしょう。 ぶ:黄色い菜の花と古い木樽、取り合わせが面白い〜。生き生きとした命の喜びと朽ちかけたものへの哀れみの対比。 修:そんな気がします。)

●菜の花や夕べに人のもどる家=るな 
◎入○白、秀=7点
(秀:懐かしくて、暖かい。 入:台所の白熱灯とか懐かしい。郷愁の句です。 白:これが静かな生活。)

●菜の花を過ぎて各駅停車なり=十志夫
◎子○資△る、ぶ=7点<BR> (資:菜の花を過ぎての言い回しが良い。 る:ローカル線なのでしょう。長閑な雰囲気が伝わります。 ぶ:美しい菜の花畑から先は、鄙びてゆく町、、、電車は人を運び,そして降ろしてゆく。菜の花の印象が目に焼き付く。)

●菜の花のほとめきの音筑後川=五六二三斎
○葱、裕△入、喋=6点 (裕:菜の花のほとめきの音ってどんな音でしょうか。 葱:「ほとめき」という美しい言葉を初めて知りました。「ほとほとと音を立てる」という意味だそうです。本当は川音なのですが、その流れに洗われた菜の花がそんな音を立てているように感じます。 入:筑後川は本当に菜の花がにおうてましたもんね。)

●菜の花やそろりそろりと丸木橋=紅椿
○喋、淳△雪、修=6点
(雪:人もあまり通らない少し朽ちかけた橋でしょうか。バランス感覚、大丈夫でした? 修:菜の花が情景に現実味をあたえているよう.。)

●菜畑にオカリナを吹く旅の空=ぼくる
○五△子、ラ、淳、茶=6点
(ラ:決まり過ぎのような感じもしますが、やはり心惹かれます。 五:寂しい孤独な旅人。ここに女性が話しかけて来る。そんな夢があったらいいなあ。 茶:吹けないけど吹いてみたくなる。行けないけど旅をしている気分になる。)

●空振りの赤きバットや春浅し=雪絵
△葱、秀、五、資、秋=5点
(葱:赤バットといえば読売巨人軍の元監督「川上哲治」さんしか思い浮かびませんが、今でもあるのかな?野球は季語ではないけれど、「春」が似合いますね。 秀:昔、赤バット青バットと呼ばれた選手がいたような。 五:懐かしい赤バットの選手のことが思い出された。昔の野球選手には自己主張というか、アイデンティティがあった。 資:短命に終わった川上哲治の赤バット。)

●立つ春に笑ひかけたる赤子かな=メゴチ
○子△白、清、淳=5点
(白:身体で感じる春。)

●ぽつかりと空きし一日や花菜雨=秀子
○ま△葱、や、修=5点
(や:外に飛び出したい春の一日もこの雨ではね。 葱:何もしない、何もしなくていい一日が一番のリラクゼーションになるかもしれませんね。季語が効いていますね。時がやわらかくゆったり流れていきますね。 修:花菜雨で豊かな一日と感じられます。)

●余寒なほ袋小路の赤提灯=清一
○白△砂、雪、久=5点
(白:突き当りの居酒屋。 雪:行き場のなくなった所に小さく灯る赤提灯。お酒飲みにはたまらないでしょうね。吉田類さんがいるかも<笑>)

●赤点の答案用紙春の雷=風牙
○清、久=4点
(清:返却された答案が赤点、何か雷に打たれたようにショッキングだが、春の雷だからすぐにそのことも忘れて仕舞うのだ。)

●如月や荒ぶる吾子の赤き髪=るな 
○久△風、紅=4点<BR> (紅:〇候補でした。思春期の手に負えない子供の様がよく見えてきます。 風:面白いのですが中七「荒ぶる」が説明的で余計かなと感じ△選。)

●スタンドは赤の一色風光る=秀子
○ラ△ぼ、ま=4点
(ぼ:私、カープファンです。 ラ:応援の熱気が伝わってきます。ま:赤が効いて明るいですね。)

●トーマスの電車に揺られ花菜中=修一
○ラ△秀、秋=4点
(ラ:可愛い〜♪ ほのぼのとした気分になります。池:機関車トーマス!今でも子供には人気だそうです。秋:メルヘンですね。)

●菜の花やおおきな赤いランドセル=まさこ
○香△子、修=4点
(香:カラフルな景が見えます。修:ものを二つ繋いだだけだけど力、エネルギーを感じる。)

●菜の花や下地は薄くカンヴアスへ=茶輪子
◎淳△裕=4点
(裕:ルノアールが描くとよさそうです。)

●菜の花や古着のままに小市民=茶輪子
◎清△メ=4点<BR> (清:菜の花は昭和の昔から庶民の花、懐かしいふる里の花でもある。詠者はそこに昭和から同じスタンスで菜の花畑を見ている。ここでの小市民とはプチ・ブルではなく一般市民と訳した。)

●魔除けには赤い下着と春の水=水音
○風、メ=4点<BR> (風:◎候補「下着」と「春の水」を「と」で繋いでしまったために散文的で「春の水」の働きが鈍くなってしまった気がします。「切れ」が欲しかったです。)

●赤貝や爪の間の泥落とす刷毛=風牙
◎や=3点
(や:爪の泥は労働の勲章でもある。)

●梅真白屋根の真赤な地蔵堂=まさこ
○メ△や=3点
(や:お地蔵の赤いベレー帽は土地の婆様の手作り。)

●大原の赤き椿や楚々と咲く=香久夜
○子△淳=3点

●如月や赤い鳥居は雨の中=子白
◎五=3点
(五:赤い鳥居はお稲荷さんだろう。赤い鳥居は目立つが、雨に濡れてツヤツヤしている。)

●鉄橋の下の菜の花明りかな=ラスカル
○ま△葱=3点
(ま:こんな景に出会えたら、幸せな気分になります。葱:川に架る鉄橋の下の河原に、今を咲き誇る菜の花の群生が見えるようです。)

●菜の花のサポートありて河津映え=メゴチ
◎久=3点

●菜の花やスケッチ置いてジャムサンド=葱男
○茶△秋=3点
(茶:朝からスケッチに集中しつつジャムサンドを頬張り、また描く。軽食でも豊かな時間なんですね。秋:ジャムサンドが効いてます。)

●菜の花を抜け来し蝶でありにけり=風牙
△葱、白、ま=3点
(葱:その蝶を見ていた、という自分自身を詠んだ句。だからどうなんだ、と言わずに作者の読みに情景を委ねるのも俳句。ま:季語が二つで、どちらにも重みがあるのですが、好きな句です。馬:紋黄蝶ですね。)

●八掛のほのかな赤や春一番=秋波
△水、紅、香=3点
(紅:強風にあおられる裳裾、「ほのかな赤」が春らしいです。 水:ちらりと見える八掛の色に春のワクワク感がありますね。)

●花菜漬たべて夕日の町にとけ=ぶせふ ○入△茶=3点 (茶:「月は東に日は西に」菜の花には黄昏時がなぜかよく似合うんですね。 入:色彩豊かに想像しました。)

●春雨の舗道母子の赤い靴=久郎兎
○十△メ=3点
(十:波多野爽波の「金魚玉とり落しなば舗道の花」と共通する色彩感覚が見事。)

●山起きぬ椿の赤く咲きし日に=ぼくる
◎紅=3点
(紅:とても好みです。一輪の椿から大きな景へと膨らんでいきます。)

●我を見る赤子の瞳空の如=子白
○淳△修=3点
(修:非常に大胆な比喩。我が瞳に何が見えるやら!)

●あっ!あああ!あぁ菜の花や、あぁ?あ〜あ。=喋九厘
△葱、十=2点
(十:実験的な句ですね。こういう句も時に「あり」だと思います。 葱:これは面白いチャレンジです。「A音」だけで情景を描写しています。まず最初の「あっ!」は発見。つぎの「あああ!」が感動。そして「あぁ菜の花や」と認識して今度は「あぁ?」と、一瞬にして過ぎ去ろうとする風景に気づき、戸惑う作者。たぶん作者はすごいスピードでその花菜畑を通り過ぎようとしているのでしょう。列車の車窓からの風景かもしれまん。そして最後の「あ〜あ」。美しい景色は一瞬のうちに遠ざかってしまいました。)

●赤ん坊抱く母親に舞ふ小雪=淳一
○裕=2点 (裕:思いがけない雪に赤子を庇う母親が浮かびます。)

●赤ん坊の受け身や春の土弾む=葱男
○ぼ=2点
(ぼ:健やかな生命讃歌。)

●川堤菜の花散歩白髪連=白馬
○茶=2点
(茶:「白髪連」の皆さんにエールを送りたくなりました。)

●工場のけむり三本花菜風=紅椿
△ラ、裕=2点
(裕:こちかめの昭和レトロのようです。 ラ:角度によって、二本に見えるのかもしれません。 )

●菜の花は黄色で十字に写生の子=秋波
○や=2点<BR> (や:単純つまりは純粋な観察眼。入:私は違いましたが、そういう子供たちの絵をとても見たいです。)

●菜の花や好き塩梅の繭ごもり=入鈴
○喋=2点

●菜の花や菜の花いろの猫は逝き=入鈴
○水=2点

●箸すすむ菜の花漬や母の味=裕
○香=2点
(香:お母様の思い出句が増えてきましたね。みんなそんな歳になったんですね。)

●紐解きぬ赤いチャーシュー二月尽=十志夫
○入=2点
(入:この取り合わせ、素敵。)

●満ち足りにけり菜の花を箸にして=るな 
○秋=2点
(秋:ほろ苦さは春の味です。)

●油断せし赤き枝先別れ雪=ぶせふ 
△入、久=2点
(入:雪国にはよくあることを、句にされたことが新鮮でした。)

●雨しとど切通抜け梅の赤=入鈴
△裕=1点
(裕:雨上がりの鮮やかな梅の赤を感じます。)

●生きていてよかった菜の花畑をゆく=ぼくる
△砂=1点

●お口より赤き苺の汁溢る=香久夜
△久=1点

●カクテルに花菜明りとリキュールと=水音
△る=1点
(る:良いですね〜。)

●寒林に入る郵便の赤バイク=修一
△る=1点
(る:静と動、モノクロと原色の対比ですね。)

●菜の花に包まれ夢見る乙女かな=白馬
△子=1点


B部門入選作〈back number〉

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号 63号 64号 65号 66号 67号 68号 69号 70号 71号 72号 73号 74号 75号 76号 77号 78号 79号 80号 81号 82号 83号 84号 85号 86号 87号 88号 89号 90号 91号 92号 93号 94号 95号 96号 97号 98号 99号 100号 101号 102号 103号 104号 105号 106号 107号 108号 109号 110号 111号 112号 113号 114号 115号 116号 117号 118号 119号 120号 121号 122号 123号 124号 125号 126号 127号 128号 129号 130号 131号 132号 133号 134号 135号 136号 137号 138号