*B部門入選作発表*


兼題『季語:寒鴉』『漢字:光』=全77投句(入選句)

【特選】

一席
●包帯の留金光る冬木の芽=ラスカル


◎十、葱、茶○杉、砂、風△る、秀、ま、水、雪=20点
(十:トリビュアルな視点がいい。回復に向けて冬木の芽とも合っている。 葱:裸木は傷病兵のようにも見えます。留金が辛い、けど、ピッタリ! 茶:春の到来を止め、病気の治癒を止めてしまっている、木の芽に似た「留金」が鈍く光っている。春と治癒の待ち遠しさを見事に間接的にお詠みになっていると思いました。 杉:細やかな光を捉えて、冬木の芽の派手ではないが内に込められた光も感じさせる。 風:「光」を言わず「光」を表現することに慣れているせいか全体的に不調な中、冬場の一瞬の輝きとして「包帯の留金」への注目で○選。但し、「冬木の芽」の俳句的、伝統的な本意に依りすぎでしょうか。 る:きっと、傷ももうすぐ癒えることでしょう。 秀:目が利いた人だなあと感心しました。 ま:日常の中の光を見つけ、作者の温かい眼差しが感じられます。 水:冬木には芽ができている。早く治りますように。 雪:昔の包帯はこうでした。左手で不器用に巻いた思い出があります。)


二席
●冬たんぽぽ野面は光蓄へて=秀子


◎る、歌、喋、水○香、入△ラ、杉=18点
(る:そう、いつの間にか少しずつ蓄えられているのでしょう。 水:「野面は光蓄へて」でいただきました。 香:光を蓄へる、という表現が素敵です。 入: たんぽぽのポポのあたりから、捻てんさん、光はさしてくるのでしょ? ラ:「蓄へて」がいいですね! 元気を貰える句です。 杉:「蓄えて」に土の豊かさが感じられ、その土から生えている冬たんぽぽにも光が溢れる。)


三席
●骸骨の如き水車や寒鴉=砂太


◎淳、裕○白、喋、資△葱、雪=14点
(白:水車を骸骨と見て、そこに留まる寒鴉は何者。 資:水車を骸骨と言ったことから,寒鴉がうまく浮かび上がった。 葱:壊れかかった古い水車に鴉の景は日本画のモチーフになりそう。)


【入選】

●絵硝子の猫の目光る寒の月=雪絵
○る、ラ、ぼ、メ△葱、裕、資、茶、久=13点
(る:どんなステンドグラスなのか、想像するのも楽しいですね。 ラ:「猫」と「月」は常套的かもしれませんが、やはり、ぴったりと合います! ぼ:上手いなあ。巧さもっと抑えれば◎。 葱:とても美しい景ですが、類句がありそうなので△。 茶:冷たく冴えた月と目と硝子の取り合わせでいただきました。無機的なものの表情がうかがえました。 久:神秘なる光に満ちし猫と月。)

●前世は革命戦士寒鴉=水音
◎葱、白○紅、ぼ△五、裕、メ=13点
(葱:この発想の飛躍が面白い。革命戦士ねえー、それはないと思うけど。 白: 寒鴉と自分を重ね合わせて、やや消沈。 紅:なるほど!きっとそうでしょうね。 ぼ:いいね、この発想。 五:鴉はいつの時代も戦士なのだろう。)

●寒明や光の玉の塩むすび=久子
◎秀、ま、香○久△入=12点
(秀:これ、大好きでした。塩むすびを光の玉と言った人がいたでしょうか! ま:お結びが光と結びついた意外性に感嘆! 季語が決まっていますね。 香:塩の結晶が、光の玉となったんですね。 久:塩むすび光るは魚卵母の愛。)

●虹色に光る油膜や冬木立=ラスカル
◎修、雪○子、メ△十、杉=12点
(修:巧い取り合せ。鑑賞が難かしい、しかし魅力的な世界です。俳人の立ち位置は?と考えさせられます。 雪:水たまりに光る油膜って、ほんと虹色ですね!鋭い観察。 十:上5、中7はリアル。季語が動きそう。 杉: 荒涼とした風景の中の濁りのある美しさ。)


●寒鴉啼きてのんどの力瘤=美遥
◎五○や、ラ、杉、紅=11点
(五:観察句の良さが迸る! や:絞り出す声にド迫力。 ラ:細かい観察眼に、脱帽です。 杉:ないものがあるように見える「力瘤」という言葉の力強さ。 紅:鴉の鳴くところを間近で見た事はないのですが、力強いですね。)

●まだ硬き光の中の蕗の薹=十志夫
◎杉○五、水△葱、秀、紅、ぼ=11点
(杉:蕗の薹の持つ輝くばかりの生命力。語順の妙。 五:季節の先取りだが、出来がいいので選んだ。蕗の薹句の傑作と思う。 水:光がまだ「硬い」ととらえたところが素敵です。 葱:硬き光で一票。 秀:光が硬いという把握がおもしろかった。 紅: 蕗の薹の感じがうまく詠まれていると思います。 ぼ:早春の息吹。)

●灯台のやはき光や寒夕焼=紅椿
◎や、メ○る、茶=10点
(や:この一点へ収束して行く、せめて優しく。 る:寒中に、そういう優しい光景を目にすると和みますね。 茶:航海の平穏を導く灯台の柔らかな光と冬の寒さを和らげてくれる夕焼け。ほんわかしました。)

●警備員の腕章光る霜夜かな=ラスカル
○茶△る、杉、修、ま、ぼ、入、水=9点
(茶:寒い中、夜警に目を光らせている警備員さん、お疲れさまです。そんなあなたのお仕事も光り輝いて見えますよ。 る:季節感は真夏というのもアリかなと思いますが、寒いのも共感できます。 杉:「ガードマンの棒」同様、腕章の光も霜夜には映えるように思う。 修:自分の数年先のよう。 ま:季語により警備員の人生をも感じることのできる句になっています。 ぼ:霜夜が動かない。 入:霜夜に厳しさが伝わり過ぎるくらいです。 水:蛍光反射の腕章でしょうか。)

●結界の鉄条網や寒鴉=紅椿
◯葱、秀、裕、水=8点
(葱:此方と彼方を分け隔てるところに鴉はゐそうです。 秀:おどろおどろしいお話の始まりみたい。 水:鉄条網の先はどんな世界なのか。寒鴉が不気味です。)


●遠き野に詩群となるや寒鴉=茶輪子
◎久○資△葱、秀、砂=8点
(久:傍観の冬の原野に人思う。 葱:詩群、という言葉を教えていただきました。 秀:「詩群」だなんて、私好きです。)

●耳たぶの真珠の光寒明くる=まさこ
◎紅○雪△五、香、資=8点
(紅:耳元のアップ、秀逸ですね〜!お洋服はフォーマルでしょうか? 雪:真珠の光、寒明けの感覚に似ています。 五:イヤリングの真珠がキラリ!春は近い! 香:フェルメールの耳飾りの少女ですね。)

●逆光のうしろ姿や風花す=紅椿
○十△ラ、杉、歌、砂、ま=7点
(十:映像として綺麗です。「風花す」という動詞用法がどうか?と言われる恐れあり。私は容認派ですが。 ラ:モノクロ映画の一場面のような感じがします。 杉:ドラマチックな映像。 ま:とても美しい景、魅かれました。)

●寒鴉ぴくぴく動く右まぶた=まさこ
○淳、喋、雪=6点
(雪:寒鴉と取り合わせて何ともいえないおもしろさ。)

●汽罐車の嗄れた汽笛や寒鴉=資料官
△白、香、喋、水、雪、メ=6点
(白:遠くに聞こえる汽笛。鴉がカァ。 水:寒々とした風景を思います。)

●夕映へ点となりゆく寒鴉=ぼくる
○久△葱、紅、風、資=6点
(久:後尾窓去り行く線路群れ鴉。 葱:景としては「遠き野に詩群となるや寒鴉」と同じですね。 紅:景がはっきり見えます。色もきれい。 風:美しい寒夕焼け。 資:黄昏時に良く見る風景だけど,うまく描写している。)

●雪晴や善光寺まで歩みたり=資料官
◎子○風△葱=6点
(風:◎候補でしたが。上五の「や」の詠嘆と句末の継続、完了の助動詞「たり」の終止形とでどうしてもぶつ切り感が気になって特選に推せず。余計なことを何も言わない景そのものは好きです。 葱:善光寺までの、広い参道を歩いたことがあります。その歩みは他とは違った趣がありました。)

●おにぎりの茶めし白めし寒鴉=美遥
◎砂○ま=5点
(ま:リズムが良く気持ちよく弾み、下五で景がくっきり表れています。)

●寒鴉おまえが悪いわけでない=十志夫
◎ぼ△葱、入=5点
(ぼ:共感!みんな生きるためなのですよねえ。 葱:おまえが悪いわけぢやない、なら採ったかどうか?わけでない、になんともユーモアがあります。 入:ほーんとそうなんよ!)

●草萌ゆる五重塔の微光かな=修一
○や、子△葱=5点
(や:動かない物にも時の巡りは拒めない。 葱:おとなしい句ですが、塔に内包するオーラをよく捉えていると思います。)

●泥酔のホストの嘔吐寒烏=風牙
○秀、淳△十=5点
(秀:歌舞伎町あたりの夜明け?「天使の涎」を読んだばかりなので。 十:歌舞伎町あたりの現代的な景。少し作りすぎかな<笑>。)

●病窓に躍る光や冬すみれ=るな
  ◎資△杉、裕=5点
(資:可憐な姿が何らかの希望を与えてくれているようである。 杉:病状がよくなっていることを思わせる光。「冬すみれ」にほっとする。)

●冬鳥やフルートを音光り出づ=久子
◎ラ○修=5点
(ラ:「音」を「光」と捉えた鋭敏な感覚が魅力的です。 修:冬鳥の斡旋が効いています。冬鳥の「ふ」とフルートの「ふ」と。生き物の温もりもあり、リアリティもあり、音が光ることが自然に入ってきました。)

●雪はげし日光駅は行き止まり=資料官
○十、砂△葱=5点
(十:雪が走行を止めているとも取れるが、日光駅は終着駅でもあることの面白さ。 葱:地霊もあります。日光駅が終点だということが何故かいい。)

●お年玉と筆書きにして光る爺=砂太
○香△や、修=4点
(香:お爺ちゃんさすがですね。 や: 孫は爺の希望の光、これホント。 修:そうそう、この時だけは期待されてる。)

●風花や光る吸気と青き呼気=水音
○歌、五=4点
(五:対照的な仕上がり!)

●寒鴉どこで会つても一人だね=秀子
○歌△喋=3点

●寒鴉バランスの良き食事会=五六二三斎
◎入=3点
(入:この取り合わせになぜか惹かれます。)

●寒鴉ローソン前にたむろする=五六二三斎
△秀、杉、ぼ=3点
(秀:たむろしている若い人たちが、寒鴉に見えてきます。 杉:固有名詞のゆるっとした効き具合がいい。 ぼ:畢竟今の若者達と同じか?)

●樹間より光の束や寒鴉=るな
  ○ま△紅=3点
(ま:確かに束となって光が射しますね。その冬の景が鮮やかに浮かんできます。 お題が二つ入ってお見事です。 紅:寒鴉と光の取り合わせは新鮮です。)

●桃源へ道案内の寒鴉=葱男
○裕△子=3点

●雨の鳩眺めてゐたる寒鴉=久子
○修=2点
(修:「雨の鳩」という省略勉強になります。物思いにふけっている?)

●大初日光に埋まる相模湾=ぼくる
△十、茶=2点
(十:大景。「光りに埋まる」のレトリックが新鮮。 茶:相模湾の展望がよく捉えられていると思います。擬人も効いてます。)

●ガードマンの光の棒や寒の入=秀子
△杉、紅=2点
(杉: 寒い時期、いっそう光の棒が目に染みるような。 紅:「警備員の腕章光る霜夜かな」とどちらにしようか迷いましたが、こちらの方が動きを感じました。)

●寒鴉伝い歩きの屋根光る=メゴチ
△風、久=2点
(風:素人が屋根に上がっての「伝い歩き」のユーモラス感が楽しいですね。寒烏を歳時記の指定するような烏と読むとつまらない見立て句になってしまいますがここは現実的な寒烏として読みたい。 久:小幅なる伝い跳びかな何狙う。)

●寒稽古熱き思ひの汗光る=メゴチ
△や、子=2点
(や:ああ青春、もふ戻れない。)

●斜に跳んで雪に鴉の足の跡=葱男
△淳、砂=2点


●他の国の点描のまま寒鴉=茶輪子
△ラ、五=2点
(ラ:「他の国」がちょっと曖昧ですが、「点描のまま」という把握が魅力的です。 五:他の国は、中国のことか?)

●放たれし鷹囲みゐる寒烏=風牙
○入=2点
(入:鷹というよりサシバに縄張り争いを挑む烏を見たことから。)

●雪解けや手中に光るホットドッグ=茶輪子
△歌、修=2点
(修:元気な少年少女が傍にいるよう、好きな世界です。以上です。お世話になります。)

●ああ嗚呼と声こぼしけり寒鴉=るな
  △メ=1点

●奥山に電柱の主寒鴉=久郎兎
△香=1点

●寒中の散歩太陽光親し=香久夜
△や=1点
(や:日々の日課も小雨決行だと厳しい。)

●着膨れの満員電車光る窓=久郎兎
△る=1点
(る:下五は「窓光る」かなと思いますが、中七までの素材が面白いと思いました。)

●セピア色の茶房や冬の光射る=十志夫
△修=1点
(修:老いてもしみじみとしてられまへん。)

●全身で光受けをる寒苦鳥=風牙
△修=1点
(修:「全身で」が秀逸です。)

●初釜やゆらと光るも欲深し=喋九厘
△歌=1点

●春雨の池面を跳ねて光りけり=美遥
△淳=1点

●平然と雨に打たれて寒鴉=子白
△淳=1点

●母子像へやわらぐ寒の光かな=ぼくる
△葱=1点
(葱:いかにもありそうですねえー、母子像にはめっぽう弱い。)

●山積みの八朔光り香り立つ=修一
△茶=1点
(茶:一番好きなフルーツが八朔という変わり者の自分には、山積みというだけでもう!集団となってはじめて光り輝くチーム八朔!バンザイ!!)

●雪晴の光わたれる雫かな=水音
△喋=1点

●夢覚めて雨戸開ければ光る雪=白馬
△子=1点

綿虫や笑えば光り糸切歯=やんま
  △久=1点
(久:綿虫の光る糸見て笑む我が子。)


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