*B部門入選作発表*


兼題『季語:漱石忌』『漢字:友』=全69投句(入選52句)

【特選】

一席
●友達になろう炬燵を買ったから=風牙


◎十、る、砂、紅○杉、水、入、メ△や、喋、弧、秋=24点
(十:俵万智調。こうしたさり気ない句って、好きですね。 る:若い男性が女性に言ったセリフならば、下心丸見えなのですが<笑>。 紅:面白い発想ですね!脱力系でたまりません。季語が動かないと思います。 入:炬燵を立てるだけでも、前期老女子会したくなります。 や:ここから新展開する未来茫々。)


二席
●漱石忌この一病を友として=るな


◎久、弧○ラ、香△資、風、紅、メ=14点
(久:一病息災でしょうか。兼題が2個入っているのが気にはなりますが。 ラ:「漱石忌」と「友」と2つのお題を入れている点がお見事。 風:ほぼフレーズ化している下12音かとも思いますが「季語とそれ以外の関係」も俳句の魅力の一つ。 紅: 兼題を2つ入れて、無理なく詠んでおられます。)


三席
●冬林檎記憶の友の少女なる=るな


◎ぼ、メ○修、弧△葱、ま、入=13点
(ぼ:屈折した抒情あり。いいね。 葱:やや甘さを感じる句ではあるものの、季語の力でその内容を止揚している。 ま:そういう友人がいます。どうしているのでしょうか。 入:冬 リンゴ 記憶 少女と、もうエッセーになっていてお見事。)


【入選】

●海沿いを移動図書館漱石忌=風牙
◎入、雪○杉、久、紅△喋、香=12点
(入:新しい漱石論を生み出して下さい。有島武郎の生れ出づる悩みを読み直したくなります。 雪:「移動図書館」で決めました。 久:隅々まで行き渡る知識、のんびりとした余裕を感じます。 紅:「漱石忌」は選句に困りましたが、付き過ぎず、離れ過ぎない所が巧みだと思います。)

●顔見世や友禅の帯ポンと打ち=十志夫
◎五、淳○る△子、ま、水=11点
(五:艶っぽい歌舞伎の演目?上手い! 淳:帯をポンと打つ響きがいいですね。 る:京都の街の賑やかさが伝わります。 ま:すっきりと気持ちが良い作品ね。 水:すっきりと気持ちが良い作品ね。)

●名を呼べば振り向く猫や漱石忌=修一
○や、子、雪、メ△ラ、る=10点
(や:尻尾を立てただけでも挨拶。 雪:一番自然体な猫句でした。 ラ:ほのぼのとした気持ちになります。 る:この季語に猫、という句は多かったのですが、その中ではいちばん好きな句です。)

●親友に親友の居りふぐと汁=紅椿
◎杉○る、水、修=9点
(る:あ、そうだったんだという、ちょっと複雑な気持ちになる発見に、この季語は合うと思います。)

●亡き友の詠みし裸像や冬かもめ=雪絵
◎ラ、喋△久、葱、紅=9点
(ラ:海に近い所にある彫像でしょう。泣いているような波音が聞こえます。 久:しみじみします。実際のことかな。裸像の句が思い浮かびました。 葱:大濠公園にあるブロンズ像のことです。3年前、今は亡き白髪鴨さんが吟行句会でこんな句を詠みました。「冬の天胸乳(むなぢ)凛々しく彫られけり」。 紅:折につけ思い出されるのでしょうね、季語で景が立ち上がりました。)

●猫もゐる小さき句会や漱石忌=ぼくる
◎修、香○資△砂=9点

●漱石忌雨の雫の一途なる=入鈴
◎や○五、紅△香=8点
(や:一途なる、そういう人に私はなりたい。 五:漱石と雨はなかなかお似合いだ。 紅:忌日と自然を組み合わせて、素敵なお句になりました。)

●漱石忌ロンドンの焼き芋の味=白馬
○ラ、資、ぼ△子、葱=8点
(ラ:日本の焼藷とは、違う味なのかもしれません。 ぼ:すっとぼけた面白さ。葱:イギリス留学のことを思います。彼は初めて東洋人に対する白人の差別を実感したそうです。それが彼にどのような影響を与えたのかは分かりませんが、「焼き芋」の味は、近代化が遅れている日本への強い嫌悪と郷愁がふたつながらにない交ぜになっていたのではないか。)

●友にだけ辞めたしと云ふ冬の夜=淳一
◎葱○弧△ラ、秋=7点
(葱:俳句の形としてはやや完成度が低いのかもしれませんが、「友情」という不確かなものの「根源」をよく言い当てていると思いました。 ラ:俳句としてはやや言い過ぎかもしれませんが、作者の心情はよく分かります。)

●覗き見る鍵穴の奥漱石忌=雪絵
◎水○久△十、風=7点
(久:昔の鍵穴ですね。懐かしいです。鍵穴の向こうが大変気になります。物語風でいいです。十:面白い切り口。漱石というより谷崎潤一郎のイメージかも。 風:ベテランの手堅い俳句という感じ。若干、手練れ感を感じ○選以上では取れず。)

●パソコンの焦げる匂ひや漱石忌=十志夫
◎風○五△ま、水=7点
(風:深読みしようと思えばいくらでも可能ですが、韻文としてそのまま受け取るのが一番かと思います。 五:壊れかけのパソコン?取り合わせが絶妙だ。 ま: 大変!ユーモアがあり良いですね。)

●薬草の浮かぶスープや漱石忌=ラスカル
○秋△子、杉、る、資、雪=7点
(秋:薬草スープからふと子規を連想しました。 る:病弱だった人の忌日はたくさんありますが、「スープ」も季節感も良いと思います。 雪:潰瘍持ちには優しいスープです。)

●青年の名に力あり漱石忌=五六二三斎
○風、葱△十、弧=6点
(風:「12月8日」の翌日というのを生かした句作かと思いますがその分やや理屈が気になるかな。 葱:どんな名前のことをいうのだろう? 時代や流行がありそう。今なら「結弦」とか、親もすごい名前を付けたものだと感心します。十:どんな名前だろう、と考えるだけで面白い。)

●磨り減りし引戸の軋み漱石忌=美遥
○ま△杉、水、ぼ=5点
(ま:年代物の引き戸と漱石忌が響き合っていると思います。 ぼ:そういう時代だった。確かに。)

●ソファへ正座する友冬林檎=まさこ
○や△久、喋 、秋=5点
(や:普段はごろ寝の場所に母からの贈物を噛締める。 久:何かあったのでしょうか。不安定な光景。林檎も転げ落ちそう。)

●寝仏の螺髪の雀漱石忌=砂太
◎秋○香=5点
(秋:雀とは。面白い景です。)

●ありし日の友のマフラー胸に抱く=メゴチ
◎子△淳=4点

●畏友てふむかし悪友夜鳴蕎麦=資料官
○砂、喋=4点

●血族はみな美形なる漱石忌=美遥
○葱△五、雪=4点
(葱:美形の系譜は、どちらかというと悲劇的な匂いがしますね。 五:イケメン好きは誰だ?)

●古書街に並ぶ全集漱石忌=資料官
○砂△修、メ=4点

●ジッパーに食ひ込む布や漱石忌=紅椿
○十、ぼ=4点
(十:季語との関係性が今ひとつ?だが、不思議な魅力。 ぼ::妙に漱石のイメージと合う。)

●日めくりの猫と目配せ漱石忌=秋波
◎資△砂=4点

●冬の夜や電話の友は癌に病み=子白
○淳、秋=4点

●お屋敷の井戸閉ざされし漱石忌=美遥
○淳△る=3点
(る:雰囲気は良いのですが、どんなお屋敷なのか、もう少し知りたかったです。)

●北風や対馬沖より友の声=五六二三斎
△紅、雪、香=3点
(紅:海が荒れるたびに亡き友人の事を思い出されるのでしょうね。 雪:海に立つと、いつでも声が聞こえそうです。)

●漱石忌シンクに誕生日の花=十志夫
◎ま=3点
(ま:誕生日は、また毎年漱石に想いを馳せる日でもあるのですね。)

●ぜんざいの甘さ控えめ漱石忌=まさこ
△十、風、水=3点
(十:最期は食事制限されるほど健啖家だったようですね。 風:忌日俳句って食べ物と取り合わせると成功し易いですよね。)

●水をのむのどの動きや漱石忌=修一
○ま△や=3点
(ま:作者はのどをじっとみつめているのですね。そして、微妙なのどの動きと漱石忌とが結びついたところがすごいと思います。 や:男の色気か喉仏あり。)

●我が友とまた逢ひたしと降る雪ぞ=淳一
○入△弧=3点
(入:雪合戦したものなあ。)


●旧友の訃報舞い込む漱石忌=子白
○雪=2点
(雪:私もぼちぼちそういう年齢になりつつあります。)

●在日の友と絶縁マスクして=風牙
○十=2点
(十:象徴としての「マスク」って何だろう?と考えさせられる。)

●たはむれに餡パンを買ふ漱石忌=ラスカル
△五、久=2点
(五:餡パンに明治、大正の匂いがする。 久:銀座木村家の餡パンかな。余裕ですね。)

●野良猫の逃げる速さや漱石忌=ラスカル
○子=2点

●濠めぐる友と私の冬帽子=入鈴
○修=2点

●友禅に四季の草木冬の川=紅椿
△資、ぼ=2点
(ぼ:優雅でいいね。)

●熱燗や酒佳し友善し女将良し=やんま
△五=1点
(五:佳酒、善友、良女将!上手い。)

●ウイッグを付け別人の友師走=まさこ
△入=1点
(入:ウイッグの句は人間味あふれてて楽しい。)

●風花や友と手袋分け合ひぬ=秋波
△入=1点
(入:そのまま片割れをプレゼントしました。)

●寒梅や一升瓶提げ友来たる=ぼくる
△ラ=1点
(ラ:「一升瓶」の存在感がありありと。)

●クリスマスサンタの友になる夕べ=香久夜
△砂=1点

●クリスマス友と相和し歌いけり=子白
△修=1点

●漱石忌ヒゲ族の過去けぶたけれ=葱男
△入=1点
(入: か行音が多く、本当にけぶたくなります。)

●地球儀の上の旅なり漱石忌=砂太
△杉=1点

●友がいて愛妻がいる年の暮=メゴチ
△ぼ=1点
(ぼ:こう素直だとまいります。)

●友逝きて賀状書けぬ切なさよ=メゴチ
△淳=1点

●猫を呼ぶ鈴音ひびく漱石忌=修一
△メ=1点

●冬坂を友と歩いてブラタモリ=喋九厘
△や=1点
(や:きょろきょろとして話題を探す。)

●モノクロの年賀欠礼友想ふ=久郎兎
△淳=1点

●友情を認めてよりの初日記=砂太
△入=1点
(入:こういう日記の始め方って素敵です。)


B部門入選作〈back number〉

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