*B部門入選作発表*


兼題『季語:秋刀魚』『漢字:分』=全76投句(入選61句)

【特選】

一席
●秋分の背筋を伸ばす地球かな=清一


◎喋、十○茶、ス、香△メ=13点
(十:秋麗というわけにはいかない今年の「秋」ですが、そろそろ「秋晴れ」を期待したい。 茶:「秋高し」ではつき過ぎでしぼれない。「秋分」がぴったりときますね。 香:グダグダの夏からキリッとした秋へ。)


一席
●成分はメレンゲならむ月の舟=ラスカル


◎茶、ス〇ま、ぶ、雪△玻=13点
(茶: 朧月をこんな風にメルヘンチックに詠めるとは!「成分」としたところで現実味が加わり、句として成立しているのだと思います。 ま:こういう発想大好きです。 ぶ:夢のあるファンタジックな俳句だ。言い切りの爽快さ。そう言われたらこれからそうとしか思えなくなるよう。 雪:メレンゲの月ですか〜。一度成分分析しなくては(笑)) 玻:ふんわりと脆くて硬いペーパームーン。)


三席
●晩学の人の涙目秋刀魚焼く=やんま


○ぼ、砂△ぶ、葱、子、五、淳、久=12点
(ぼ:ここにも人生の哀感が。 ぶ:学ぶことの喜びを知っている人の句だと思う。秋刀魚焼くという季語との取り合わせも面白い。 葱:晩学に励むだけでも尊敬です。 五:秋刀魚の目と晩学の人の涙目の対比。 久:安い、貧しいが思い浮かぶのは秋刀魚に失礼かな。)


【入選】

●男一人秋刀魚一匹酒二合=ぼくる
◎白○茶、子、玻、ラ=11点
(白: 状況も佳い。語呂も佳い。 茶:一合ではなく酒だけニ合がいいです! 玻:わかるよなぁ酒よ。語りかける吉幾三の悲哀。 ラ:酒だけが、「二」になっているところが面白いです。)

●秋刀魚焼くインテリジェントビルの影=秀子
◎水、紅、修△玻、久=11点
(水:庶民の代表のような秋刀魚と超近代的なビルの対比。その影の中に庶民の暮らしがあるという。 紅:時代の先端をいく「インテリジェントビル」を 持ってきたところが手柄です。 修:対照的の模範のような句。 :玻:ジェラルミンケースを片手に秋刀魚をつつく日本なり。 久:隣に古アパートがあるような。)

●マイセンの青き角皿秋刀魚食ふ=資料官
◎子、久〇風△ラ、修、砂=11点
(久:秋刀魚と器のことを作句の時ずっと考えていました。皿の青と青魚がかかっていていいですが青々して食欲が。 風:「ずつしりと箱入りさんま届きたり」と同様にステレオタイプから脱却しています。下五の「秋刀魚食ふ」が気になりというか引っ掛かりが無く◎選では取れず。卸値で初値一尾二万円とかは異常としても出始めの千円以上する秋刀魚を思い浮かべられる「初秋刀魚」ならば文句無しの◎選でした。 ラ:「マイセン」と「秋刀魚」のミスマッチが面白いです。 修:異国でのさんまはどんな味?)

●秋刀魚焼く猫語の解る人とゐて=清一
◎裕○ま△茶、ス、葱、雪、や=10点
(裕:秋刀魚はだれにとってもこの時期ごちそうって感じです。 ま:そういう人と一緒に居られたら心穏やかですね。秋刀魚が一層おいしそうです。 茶:猫は秋刀魚を焼くことはできませんが、猫語を解する人は焼けます。横で見つめる猫はさて、にゃんとしゃべっているのでしょう。 葱:いいかんじですね。やはり、ビールも二人で飲むのでしょうね、横に猫も居て。 や:そして何故か幼児語。)

●どんぐりを半分こして別れ道=紅椿
◎ま、メ○香、裕=10点
(ま:とにかく可愛いですね。 香:仲良くドングリ拾いした後が、名残惜しいね。 裕:幼馴染の彼女かな?小さいころなぜかわからないけど一生懸命どんぐりを集めましたね。)

●分家には分家の主張彼岸花=ぶせふ
○風、清△葱、玻、紅、ぼ、十=9点
(風:広い敷地内に本家とは別に家だけを建てて貰った分家を思いました。で分筆されず土地は本家所有のままなのですが境として「彼岸花」が植えてあると。一読して実に面白い句なのですが全く同じ上十二音を見たことがあるので○選です。 清:何代か続くと分家の数の方が圧倒的に多くなるので、それなりの主張も出来る。墓の傍に咲く彼岸花との相性が良い。 葱:嫁さんの実家が徳島の随分と田舎なので、実感しますね。 玻:分家だと言い放っても彼岸花は本家の畦道に。 紅:お気持ち、なんとなく分かります。 ぼ:ご先祖様はどう思っておられることやら。 十:遺産相続なのか、土地の処分の仕方なのか・・・弱きもの汝の名は分家なり。)

●ラジオより古典落語や秋刀魚焼く=ラスカル
◎や○資△雪、紅、ぼ、修=9点
(や:可笑しくし迫る黄昏の哀愁。 資:面白い組み合わせ。 紅:落ち着いた良い雰囲気です。 ぼ:言わずと知れた目黒のさんま。 修:巧いけど、あまりにも決まりすぎ?)

●分度器にコンパスの戀うす紅葉=ぶせふ
○雪、紅、修△白、メ=8点
(雪:分度器とコンパスはいつもセットで使っていたような?遠い昔の話です。 紅:いつも同じ筆箱に入っていましたね。分度器は男性?女性? 修:鉛筆と消しゴムだったら?と遊んでしまう。  白:小学校時代のほんのりとした想い。)

●あゝ秋刀魚しかして老いて二人住む=砂太
◎ぼ○白、秀=7点
(ぼ:共感しきり。ありそうな句ですが、採らされた。 白:そんな境地の秋となる。 秀:中下の畳みかけるリズムが好きです。この取り合わせは、ユーモアを感じさせます。余裕の1句。)

●月光の分水嶺や天守閣=水音
◎ぶ○喋、裕=7点
(ぶ:見事なまでの正調俳句だと思う。しかし、詩もある。絵も見える。時空を超える感もある。 裕:月光の分水嶺の表現が面白いです。)

●野分去り留守電のこゑ溢れだす=十志夫
◎ラ○紅△水、久=7点
(ラ:「被害は無かったでしょうか?」という声が聞こえてきます。 紅:お見舞いの電話がたくさん吹き込まれているのでしょうね。水:相当大変な台風だったのでしょう。 久:避難してたのかな。)

●彼岸花連なり人と分かれ住む=砂太
◎葱△ま、白、メ、裕=7点
(葱:「人」と第三者のように表現していますが、それだけにどれほど大切にしている「人」なのか、心に沁みます。 ま:どのような事情があるのでしょう。彼岸花が印象的です。 白:彼岸花一杯の道が左右に分かれて。 裕:何かの理由で一人でお住まいの達観した感じがします。)

●柚味噌をなめて分別盛りかな=秀子
○十、砂△ま、水、香=7点
(十:海鼠腸(このわた)なんかもこの類でしょう。 ま: 分別盛りが巧く表現されていますね。 水:大人の味なんですね。 香:柚味噌が好きになる歳になった。)

●食卓は大海原や秋刀魚食ふ=修一
◎清△雪、喋、ラ=6点
(清:秋刀魚を食べて大海原を思い浮かべるのは余程海の好きな人だ。景の広がりに共感を覚えた秀句。 ラ:おおらかな発想が魅力的。)

●能古島へ十分間の秋の航=雪絵
○葱、水、や=6点
(葱:実際、何回か体験してますからね、極私的にとても大切な風景の記憶です。 水:本当に爽やかな爽やかな景です。 や: 目前にある世界だが心の距離が遠い。)

●分数の時間時々昼の虫=秀子
◎雪○や△水=6点
(雪:ある日の授業風景。眠たくなる時間帯ではありますが、、。 や:割り切れぬもの五線譜はみ出す。 水:分数はなかなか厄介ですから集中しているのでしょう。)

●家族とは秋刀魚の苦さ塩加減=茶輪子
○玻、清△五=5点
(玻:どうしようもなくなんとなくわかってしまうニューファミリー。 清:家族論を秋刀魚で語れる家族、それは苦さの中に幸せがある。 五:なるほどという句。)

●かつては潮をひゆんと渡りし秋刀魚かな=葱男
◎砂○ぶ=5点
(ぶ:ひゅんというオノマトペがいいと思う。生きた秋刀魚がよみがえる。しかしかつてとある悲しさも。)

●秋刀魚焼くにほい流れてまたあした=メゴチ
◎資△ぶ=4点
(資:(秋刀魚のにおいが帰りの合図だろう。軽くまた明日というところが良いですね。 ぶ:シンプルだが、深い内容を感じる。昭和時代に戻ったような懐かしさ。漢字と平かなの配分も勉強になった。)

●秋刀魚焼く右肺少し萎みをり=まさこ
○水△茶、喋=4点
(水:病気なのかよくわかりませんが、秋刀魚を焼ける平穏がありがたい。 茶:煙が目に染みるは常套ですが、肺が縮むとは言い得て妙です。)

●深海の夫婦秋刀魚で生く来世=五六二三斎
○ス、喋=4点

●ずつしりと箱入りさんま届きたり=資料官
○淳△風、修=4点
(風: 秋刀魚=庶民的などのステレオタイプから脱却していて好感が持てますが、「ずつしりと」が頭で良いのでしょうか?僕の感覚では「届きたる箱入りさんまずつしりと」なんですよね。 修:重量感と生命の迫力。)

●妖刀のギラリと初の大秋刀魚=葱男
○五△白、砂=4点
(五:大漁の秋刀魚!その中には、妖刀もあり! 白イキのいいでかい奴。:)

●美しく背骨を残し焼秋刀魚=まさこ
△香、喋、資=3点
(香:きれいに取れると気持ちいい。 資:(本当に魚の好きな人の食べ方は綺麗ですね。)

●遠来の秋刀魚でありぬ煙濃し=水音
○五△裕=3点
(五:遠来の秋刀魚の主張か? 裕:今年は水揚げも少ないようで、貴重さをいつになく感じます。)

●尾を持てばぴんと立ちゐる秋刀魚かな=風牙
○淳、ラ=3点
(ラ:とても新鮮な秋刀魚ですね!)

●秋刀魚焼く革命のエチュードを聴き=清一
○ぼ△秀=3点
(ぼ:そう、かつては労働者の魚だった。 秀:「練習曲」なんですね。)

●秋分の日やふさわしき新世界=五六二三斎
◎玻=3点
(玻:ドボルザークは秋分の日のファンファーレ。)

●深秋や六等分にピザ分ける=裕
○久△ま=3点
(久:七等分なら更に趣があると思います。 ま:何気ない風景に幸せが満ちていますね。)

●背のリュック腹に回して初秋刀魚=十志夫
○資△茶=3点
(資:混雑したところではリュックは前に。初秋刀魚の売り場の雑踏に飛び込む決意。 茶: リュックを下さず、財布を出して早く手に入れたい!早く食べたい!という心持ちが伝わってきました。)

●軒下の動かぬ影や夕野分=修一
○メ△紅=3点
(紅:動かない影の正体は? 気になります。)

●野分去り辛く悲しき農家かな=白馬
◎香=3点
(香:東北、北海道は、まだ立ち直れない方が多いのでは。)

●火で炙り骨まで喰らふ秋刀魚かな=ぶせふ
◎淳=3点
(淳:火で炙ると骨まで食べられるんですね。)

●昼と夜ひと夜で分けし曼珠沙華=メゴチ
◎五=3点
(五:彼岸が終わって曼珠沙華が枯れた様を見事に句にされた!)

●留守番の猫と夜食を分かちあふ=ラスカル
○修△清=3点
(修:あらためてひとについて思います。 清:微笑ましい風景だが、うちの猫はこの夜食の頃には寝ている。詠者の猫は恐らく夜型であろう。)

●腸(わた)抜けば秋刀魚の貌の歪みをり=十志夫
○久△裕=3点
(久この句を一選にしようかと迷いました。幼子に食べさせようとしているのだと勝手に思いました。 裕:秋刀魚は腸を抜いてほしくないとの思いが出ています。)

●秋の陣小池百合子は分水嶺=子白
△ス、十=2点
(十:思想的にも、手法的にも、時代的にも彼女は「分水嶺」。)

●意外にも酒は富山や秋刀魚焼く=水音
○子=2点

●海岸への近道草の花を分け=まさこ
○十=2点
(十:句意鮮明です。)

●繰り言や秋刀魚の煙目に沁むる=やんま
△五、清=2点
(五:いろいろな繰り言があるのだ。人生には! 清:愚痴を吐いてもそれは自分に跳ね返る、秋刀魚の煙が余計に身に沁みる。)

●秋刀魚食う二人の会話止りけり=裕
△淳、ぼ=2点
(ぼ:美味そう!)

●天と地と分離収束稲雀=やんま
△メ、十=2点
(十:稲雀の「一斉にバラけて集まる」様子がうまく出ている。)

●とうふよう分け合ふ仲を秋驟雨=風牙
○葱=2点
(葱:挨拶句ですが、礼儀以上にとても気持よく共感できました。)

●美女と来て秋刀魚一匹分かち合ふ=ぼくる
△子、ラ=2点
(ラ:ごちそうさまです〜♪(笑))

●百円となりて秋刀魚と思ふなり=風牙
○白=2点
(白:其の頃の秋刀魚が一番美味しい。)

●草の花わが分身の長々と=紅椿
△砂=1点

●秋刀魚焼く市井の詩人路地暮るる=ぼくる
△や=1点
(や:貧乏長屋に夕暮れが迫る。)

●秋刀魚焼く路地も火鉢も無かりけり=白馬
△資=1点
(資:秋刀魚を焼く風景が変わってしまった。)

●秋分の真西の落陽仏陀なり=久郎兎
△子=1点

●新秋刀魚こんがり焼かれ荒川線=資料官
△や=1点
(や:都電にはたっぷりと青春の思い出が。)

●談笑に愚痴も秋刀魚のたたき食む=五六二三斎
△清=1点
(清:秋刀魚のたたきの中にも愚痴を入れて喰う愉快な句である。)

●野分あと草むらを鳩つひばめり=雪絵
△風=1点
(風:なんともない景ですが、野分の激しさと過ぎた後の安心感が伝わる時間軸のある句。但し、「草むらをつひばむ」という表現は適切なのでしょうか?僕の感覚では「草むらに、或いは草むらで」なんですよ。)

●分校の跡地の石碑秋ついり=修一
△秀=1点
(秀:景としては読みつくされた感があるんですけどね。)

●丸秋刀魚苦みに当たり渋き面=久郎兎
△淳=1点

●群れ秋刀魚沖を迂回し南下せよ=久郎兎
△ス=1点

●山肌を十色に分けて秋の色=メゴチ
△ぶ=1点
(ぶ:美しい秋の情景を幾何学模様にように描いて成功していると思う。)

●隣国のニュースほろりと新秋刀魚=茶輪子
△香=1点
(香:ほろ苦いニュースばっかりです。)

●留守の子に言葉残して買ふ秋刀魚=砂太
△資=1点
(資:なんと言い残したのか想像が広がる。)


B部門入選作〈back number〉

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