*B部門入選作発表*


兼題『季語:草餅』『漢字:甘』=全82投句(入選句)

【特選】

一席
●草餅の箱押し合ふる力かな=十志夫


◎ラ、葱、入 ○茶、水、久、五 △風=18点
(葱:箱にズッシリと隙間なく詰まった草餅が素朴で美味そう! ラ:草餅には、確かにそのような力があると思います。入:なんということはない日常に、ほんのちょっとのハレを演じてくれる草餅たちを句にしてくださってます。茶:箱に並んだ草餅のわさわさした緑色が、新緑の梢のように力強く見受けられます。水:柔らかなものが柔らかく押し合っている力に着目したのが良いです。久:「力」のほかに言葉があったらと思いますが見つからないのでやはり力かなと。五:たくさんの草餅。活気があり春にふさわしい。風:◎候補。「合ふ」は四段活用なので連体形も「合ふ」のままで字数合わせで二段活用ぽく「る」を付けたのなら論外ですが継続の助動詞「り」への接続ミスということでの選。ただ「箱を押し合う力」ってなんか変な感じもします。草餅より草団子っぽいですけどね。)


二席
●甘噛みのごとき思ひ出涅槃西風=紅椿


◎ま、雪、五 ○葱 △秀、裕=13点
(ま:甘噛み、と巧く表現されていて一番に頂きました。五:今回は、涅槃西風の句で◎。甘噛みの思い出とは?甘酸っぱい思い出?涅槃西風が慰めてくれる。葱:酒を酌みながら思い出を甘噛みする日々です。 秀:甘いような苦いような思い出?)


二席
●草餅を刻んで父の口に入れ=裕


◎淳、子、ぼ ○修 △ラ、五=13点
(ぼ: 重い句。しかし、温かい心配りに救いあり。修:淡々と冷厳な現実を述べておられる ラ:お父様に対する、深い愛情が伝わってきます。)


【入選】

●草餅や同じ話を老夫婦=ぼくる
◎清 ○雪、メ、裕 △淳、水、久=12点
(清:仲良しの老夫婦、草餅を食べ昭和の昔話に夢中。水:なごみます。久:「を」でも切れているような気がしますが惹き付けられる句です。)

●薄墨の貼り紙ひとつ草の餅=資料官
◎メ ○や、清、裕 △十、五=11点
(や:桜餅札きのう剥がされ。清:草餅屋自体が目立たない上に目立たない薄墨が奥ゆかしい。十:薄墨が効いている。一般的に「草の餅」とは書かないので「蓬餅」のほうが。五:草餅屋さんの貼り紙の墨書。擦り切れた薄墨で書かれている。老舗の店なのだろう。)

●草餅食ぶ土間ある家に嫁ぎ来て=雪絵
◎香 ○や、秀、砂 △ラ、葱=11点
(香:都会から田舎に来られて、いろんな不便や苦労があったんでしょうね。それらを草餅が癒してくれているんでしょう。や:古き家風にいつしか慣れて。秀:うらやましいです。ラ:「土間ある家」に、ノスタルジーが感じられます。 葱:上手いストーリーですね。)

●甘噛みの犬のまどろみ沈丁花=やんま
◎砂 ○茶、淳 △メ、入、資=10点
(茶: 沈丁花の香りと春眠犬とのアンニュイな感じがよく表現されていると思いました。入:ぴったりの取り合わせ )

●供さるる甘茶や軒に作務衣垂れ=十志夫
◎水 ○砂、ラ △秀、ぶ=9点
(水:春のお寺の風景。ラ:「作務衣」の存在感が際立っています。秀:上5がもうすこし柔らかく言えたらいいなと思いました。ぶ:釈迦誕生の日の祝いの甘茶。寺は参詣者にふるまうのに大忙しの様子が読み取れた。)

●草餅や日にさらしたる足の裏=紅椿
◎茶 ○秀、香 △風、資=9点
(茶:やわらかくてほんのり温かく、食べちゃいたいくらいの足の裏。草餅との取り合わせの妙を感じました。秀:草餅と中下のフレーズはぴったりです。「裏」まで必要なのかという疑問はややあるんですが。風:出来てる句ですね。 資:足の裏と草餅、この組み合わせがなぜか面白い。)

●木造の校舎の話蓬餅=ラスカル
◎十、修 △入、香、資=9点
(十:幼な馴染みとの邂逅。なんとも雰囲気が伝わってくる。修:昔を知る人と話も弾み、茶に蓬餅。いい句ですね!入:ガオカの木造には何も感じないが、自然がいっぱいの思い出の校舎ならばほのぼのとした草餅にぴったり。 資:どういう場面か想像するだけでも楽しくなる句。)

●草餅や駅前に立つ寅さん像=やんま
○ラ、ぼ △ま、雪、葱、子=8点
(ラ:寅さんの声が聞こえてくるような気がしました。ぼ: どちらも好きです。ま:目に浮かびます、草餅ぴったりですね。 葱:ほのぼのといいですね。)

●草餅を春の病といふ人に=るな
◎ぶ ○秀、水 △香=8点
(ぶ:春は希望にも満ちるが、様々な気分の変動を催す。精神の病を心配する人もいるだろう。そんな人には草餅だという作者の優しさに感動!秀: 草餅食べて、春愁を忘れてよ。水:なるほど春の病は治りそう。)

●ももいろの素甘をつまみ春の風邪=ラスカル
◎秀 ○紅 △雪、裕、る=8点
(秀:上手い!る:作者のわかる句ではあるのですが。(笑)紅:兼題から「素甘」を見つけたのが手柄ですね。季語とよく合っています。

●草餅にひそむ濃みどり薄みどり=十志夫
○る、資△や、紅、清=7点
(る:しっかりとした観察だと思います。 資:緑の濃淡に着目した類句ありそうだけど,好きな句。 や:微妙な色合い味は絶妙。紅:草餅をよく写生されていますね。清:確かに見た目にも濃淡がある。観察が細やか。)

●草餅や若草山に風通ふ=久郎兎
◎紅 △ラ、十、葱、清=7点
(紅:「草」繋がりで、お上手な作りですね〜!とても気持ちのいいお句です。ラ:即き過ぎかもしれませんが、気持ちのよい句です。清:若草山で転がりながら草餅を食べるとさぞ美味いだろう。 葱:若草山自体が草餅に見えなくはない。十:爽やかな一句。「草餅」と「若草」が即き過ぎか、合っているのかは微妙。)

●子の旅立ちへ不揃ひの草の餅=まさこ
◎久 ○淳 △る、裕=7点
(久:旅立ちへの不安が見える「不揃い」に表れててとてもいいです。る:たぶん、あまり作ったことのないお母さんなのでしょう。微笑ましいですね。)


●いかなごの甘辛の味姉の味=秋波
◎や ○ま △喋=6点
(や:各戸家伝の味は母から姉に引継がれた。ま:母の味ではなく、お姉さんの味というところに魅かれました。)

●甘塩の魚を焼いて春の暮=秀子
○ま △紅、修、風=5点
(ま:甘塩の魚が春にはぴったりと私も好んでいます。ゆったりとして、ほっとするお句です。紅:兼題をさらりと詠まれています。修:きっと新鮮なやわらかい魚でしょう 風:句意は好きなのですが中七を「て」で止める句形に意味を見いだせず△選。 )

●甘党は父の遺伝子黄水仙=雪絵
○清 △十、ま、久=5点
(清:詠者は男性だと思うが父親からの優性遺伝だろう。十:「母」でなく「父」という意外性。ま:遺伝子のなせる業からは逃れられませんね。季語が効いていると思います。久:「甘」のズバリですね。)

●草餅を食らふ乗船待ち時間=修一
○久 △や、十、風=5点
(久:のんびり気分、いいですね。や:土地の名物満喫の旅。十:さり気ない詠みぶりが魅力。風:好きな句で○選迷いましたが「発句は文学なり、連俳は文学に非ず。」の根本原則に従って平句はやはり△選)

●いかなごの甘辛母のさじ加減=裕
○香 △水、ぼ=4点
(香:さぞ美味しかったでしょうね。目分量で毎年同じ味に仕上がるんですよね。水:その家の味付けがあるのでしょう。慣れ親しんだ味が一番落ち着く。ぼ:いいね! おふくろの味。)

●異星より下り立つ耳朶や草の餅=茶輪子
○ぶ △葱、入=4点
(ぶ:一読して、不思議感の虜になったw 宇宙人の耳たぶと草餅だなんて余人には想像もできない!入:そう言われれば、小枝チョコは、異星人の指先とか楽しいお句です。 葱:発想が突飛で面白いですねえ。)

●漢字よりかな文字甘し朧なる=水音
○ぶ、喋=4点
(ぶ:たしかに仮名は漢字より甘い気もする。そこに朧の取り合わせとは!文字誕生の秘密を垣間見るような・・・)

●草餅におつむありけりかぶりつく=葱男
○入、喋=4点
(入:おやつを食べる楽しさが伝わってきます。)

●草餅や遺影の母の頬ゆるみ=清一
◎資△る=4点
(資:母の好物。草餅のほんわかとした雰囲気が好きです。 る:そんなふうに思われた、ということなのでしょう。善哉。)

●クレヨンを置いて草餅食べはじむ=ラスカル
○雪、ぼ=4点
(ぼ: 手は洗わないで? そこが子供か。) ●つぶあんもこしあんも好き草の餅=資料官
○修 △ぼ、清=4点
(修:話し言葉で率直な感じが草餅とピッタリ ぼ: はい、同じくです。清:草餅であれば中に入っている餡は何でも良いあの匂いが堪らない。)

●菜の花の頬に冷たし空に甘し=入鈴
◎る △ぶ=4点
(る:中七にも納得ですが、下五が面白いと思いました。そう言われてみればそうかも、と思わせる力があるような。ぶ:菜の花の咲くころは寒暖定まらぬ時期。頬に冷たいが空には甘いという。なんという優れた感覚だと感動した!黄色が鮮やか。)

●初桜甘味処の口説かな=白馬
◎裕 △香=4点

●不老長寿不老長寿と蓬餅=修一
△ま、雪、水、砂=4点
(ま:テンポが良くまたユーモアがあり好きです。水:蓬の薬効ですね。)

●甘木からさくら色したレールバス=資料官
○子 △茶=3点
(茶: 嬉しいハプニング!情景がすっと入ってきました。)

●甘夏や逆さに箒立てかけて=まさこ
○風 △久=3点
(風:下12音に既視感は感じますが出来てる句なので。久:逆さで動きが出ていていいです。)

●草餅や河童伝説語り継ぐ=雪絵
○十 △ぼ=3点
(十:季語の即かず離れずがいい。ぼ: 日本の田舎を守ろう!)

●草餅を手提げてぶらりお相撲さん=秋波
◎喋=3点

●麗かやデイツの甘さより甘し=水音
○入=2点

●陽炎や男の子に甘き女親=るな
○紅=2点
(紅:耳の痛い事ですが、確かに思い当たります。)

●草餅に土筆を添えて熱燗も=喋九厘
△淳、子=2点

●草餅を食べて祖母なきこの世かな=秀子
○る=2点
(る:28のような「見立て」よりは、やはりこういう「事実」の方が強いだろうと思います。)

●草餅を半分こする笑顔かな=裕
△淳、茶=2点
(茶:糖尿病で一つは食べられないのを半分こして味わう春。そんなほのぼのとした情景が思い浮かびました。)

●ため息のほのと甘しよ春夕焼=秀子
△紅、砂=2点
(紅:「よ」が効いていますね。)

●年ごとに記憶は甘く草の餅=ぼくる
○メ=2点

●フィリピンの混血の子へ桜餅=風牙
○子=2点

●米寿なる婦人部長や草の餅=紅椿
△や、修=2点
(や:ここまで来れば益々元気で。修:いずれの部長さまか知らねども、はい。はい。と私は言うでしょう)

●ものの芽をやさしく濡らす甘雨かな=清一
△喋、メ=2点

●寄り添ふてふたつ草餅桜餅=葱男
△修、入=2点
(修:「草」と「桜」の選択、しかもくっ付けるとは。巧い)

1●甘いキス朝日と交わすチューリップ=ぶせふ
△メ=1点

●草餅の薄甘仕立て歳憂ふ=メゴチ
△茶=1点
(茶:塩分や糖分を控え目にしないといけないのは辛いですが、その手間を惜しまないことが大切なのですね。)

●草餅や蜀山人の褒めし池=ぶせふ
△喋=1点

●草餅や遠き山河も産土も=ぼくる
△砂=1点

●草餅や優し甘しの稚き日=入鈴
△ぶ=1点
(ぶ:奈良若草山のなだらかな様子。草餅を食べ古都の歴史にも触れているのではないだろうか?旅人のお句か・・・)

●草餅を春めく空見?ばりぬ=淳一
△香=1点

●月桂樹植えて三日目甘露雨=子白
△子=1点

●花の下喉いつぱいの甘露飴=久郎兎
△五=1点 (五:喉いっぱいてどんだけ?欲張りなジャイアンみたいで笑える句。)

●若者は甘きものがら春は逝く=葱男
△紅=1点
(紅:♪青春時代の真ん中は、道に迷っているばかり でしょうか。)



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