*B部門入選作発表*


兼題『季語:雷』『漢字:引』=全83投句(入選54句)

【特選】

一席
●引かれゆくものに影あり蟻の列=十志夫


◎紅、雪、淳、メ○秀、入、ぶ△清、ラ、砂、ス、香、五=22点
(紅:小さなものまでよく見ておられますね。哀感もあって、惹かれました。 雪:観察力に参りました。 淳:小さな蟻が引いていくものの大きさに驚きます。 秀:上手すぎ! 清:蟻の群が大きな獲物を引っ張ってゆく。その獲物の影が写る動的写生句。 ぶ:観察の行き届いた作品だと思う。生と死・光と影を夏の時間の 中に表現している。 ラ:「蟻の列」が、まるで「葬列」のように感じられました。 五:小さな蟻の影!微細観察!)


二席
●引出しに魔法の棒や夏休み=ぶせふ


◎ラ、ま、水、五○清、子、紅△久、香、葱=21点
(ラ:「当たり」と刻印された、アイスキャンデーの棒を想像しました。 水:夏休みの魔力で何でもできるとおもうワクワク感。 ま: 楽しい空想がいろいろ膨らんできます。 五:引き出しに魔女?面白い! 清:ドラえもんの漫画に出て来そうな棒、これで夏休みの宿題もスラスラ出来るであろう 紅:子供の机の引き出しでしょうね。魔法の棒を使って、楽しい夏休みを過ごすのでしょう。 久:さて何の棒だろう。 葱:あの頃に戻りたいなあー!)


三席
●籤引きの紙の三角夏つばめ=ラスカル


◎砂、香○や、秀、十、ま、雪、メ△白、水=20点
(や:商店街のお祭りセール日。 秀: お祭でしょうか、「三角」とつばめはなんだかいい関係。 十:籤が△とは一つの発見。その△が燕を想起するということ。 ま:なにげない三角の紙に、季語がぴったりです。 雪:そう言えば籤引きの紙って三角ですね。子供の頃を思い出しました。 白: お御籤ですね。吉凶に拘らずつばめの如く軽やかに。 水:紙の鋭角の角と夏燕の素早さ。)


【入選】

●空蝉のわが引き出しに棲み付きぬ=秀子
◎清、入、久○ラ、水、葱△淳、ス=17点
(清:いつまでも引き出しに残っている空蝉、それは詠者の心のふる里の原風景かも知れない。 久:窓辺にあったのを納骨みたいに。 ラ:「棲み付きぬ」という措辞が巧み。練達の技ですね。 水:そこはかとない虚しさを感じさせる。 葱:期せずして完璧な標本のようで、棄てられない。)

●浜木綿や三線引きの爪真つ赤=雪絵
○十、ラ、ま、ス、香△紅、五、葱=13点
(十:真つ赤な爪とはマニュキアなのか出血なのか。鮮烈なライブショーが思い浮かぶ。 ラ:真っ赤な爪が印象鮮明で、三味線の音色がはっきりと聴こえてきます。 ま:赤と白と鮮やな色彩に、さらに三線の音も加わり豊かな景が見えてきます。 紅:沖縄の景でしょうか?独特の風土を感じます。 五:爪の色が鮮やか! 葱:実景でしょうか?きっと、いい感じのおばあなんでしょうね。)

●遠雷や幕引きだけの旅に発つ=裕
◎十、白△ラ、ま、資、玻、五=11点
(十:人生の幕引き? いろいろな「幕引き」を想像する。難解だが、そのきっぱりさに惹かれる句。 白: 遠雷の方向目指して、何処で命を全うしようか。 ラ:「幕引きだけの旅」が、とても切ないです。 ま:どんな旅なのでしょう、いろいろな場面を想像しています。 玻:美学を感じた一句。遠雷のような連絡でもあったのだろう。これからもうどうなるというのでもないが 「別れの儀式」は大切なのだろう。故郷なのか それとも 学生時代にでもなにか 忘れ物をしたのだろうか。きっちりとして潔い作者の心の美しさが感じ取れる佳句です。 五:両方のお題を盛り込んだ努力賞!)

●引き潮を渡る牛車や雲の峰=まさこ
◎ぶ○五△入、砂、水、裕、香=10点
(ぶ:何かの祭だろうか。波打際を牛車と人の列。そこに雄大な雲の峰…絵にならざるを得ない! 五:沖縄の竹富島?夏らしい! 水:絵にかいたような島の光景。 裕:海での神事でしょうか?)

●落雷や妣(はは)と繋がる糸電話=十志夫
◎裕○資、久△や、喋、雪=10点
(裕:糸電話で繋がる亡きお母上、雷が繋いでいるんでしょうか? や:真っ暗闇の布団に潜る。 資:糸でつながる親子の絆を感じるし,音の伝わり方が違う雷と糸電話の並べたところが巧み。理系の句? 久:繋がればいいですね。)

●炎帝が雷門を跨ぎけり=ラスカル
◎秀、葱△十、ぼ、雪=9点
(秀:「雷門」が見事に効いてます。 葱:ほんまに暑そうの二乗?? 十:虚実相半ばの句。巧みな句。 ぼ: 炎昼の浅草人混みを俯瞰。 雪:福岡の炎帝はしっかり腰を据えてます。)

●阿修羅像は永久の少年日雷=秀子
◎や○白、砂△十=8点
(や:束の間人生に喝が入る。 白: 少年ですよね。雷にちょっと驚いたような顔。 十:上五、中七で戴いた。季語は合っているかどうかは?)

●遠雷や引用の句に誤字ひとつ=ラスカル
◎資○清、淳△秀=8点
(資:遠雷は何かをふと気づかせる。そのしぐさを旨く捉えている。 秀:季語とかなり離れていますが、かすかに響きあってます。 清:句に誤字があると俳人ならば誰しも気になる所、それが遠雷と呼応している。)

●遠雷や縄文人の骨太き=清一
◎ス○修△白、久、葱=8点
(修人間の生命力みたいなのを感じる。 :白: 現代人の骨は細い。 久:雷は時間軸を思い切り跳べますね。 葱:古代遺跡から発掘された縄文人の遺骨が博物館に展示されているのでしょうか?自然の中で駆け回っていた我々のご先祖の姿を想います。)

●遠雷やニライカナイの彼方から=雪絵
○砂、ぼ△ま、葱=6点
(ぼ: 沖縄の海が目に浮かぶ。 ま:広大な海のかなた、確かにそれほど遠くで生まれるのかもしれませんね。 葱:海の向こう、まだ知らない素敵な場所があることを神が告げているかのように。)

●遠雷や非通知電話の呼び出し音=資料官
◎玻○水△メ=6点
(玻:非通知電話を受け取ったとき 妙に懐かしいと感じることがある。 知らない人からはなかなかかからないのが 非通知電話である。わざわざ「イヤよ」とダイアルしてから 自分の存在を主張する。かなりの自意識過剰な御仁の仕業であろうと目星はついたりする。しかし 鳴らしたまま 遠雷の中で じっと見つめる作者が見える。過去には親しく話もしたが もう関わりたくない。かといって 思いだしたくもないほどでもない間柄を感じる。遠雷やで詠嘆し またすっきり切れ そのあとの無味乾燥ともいえる体言が冷静にそのあとに横たわっている。過去を詠むならこうしたいと思う佳句です。作者は優しい女性のきがしてならない一句。 水:怖いドラマの始まりのような不気味さ。)

●幼子の手を引き巡る夜店かな=メゴチ
◎子○や△清=6点
(や:爺念願の夢が叶いて。 清:詠者は好々爺、孫の手を引いて夜店を巡る様子がよく出ている。)

●遠雷ややはり引かねばならぬ恋=ぼくる
○葱△入、ぶ、メ=5点
(葱:一度だけあったかなあー_| ̄|○ ぶ:逡巡の末の決断だろうか、恋を諦めようとする心理へ遠雷が効いている。)

●日雷ぴしと打ちたる車窓かな=十志夫
◎喋○淳=5点

●引菓子の富士の粉雪涼しかり=まさこ
○裕△ラ、砂、修=5点
(裕:富士の粉雪が涼しそうです。 ラ:富士山の形の和菓子なのですね。とても美味しそう! 修:こんな余裕がほしいです。引菓子も美しい。)

●暑き日に手を引かれ行く子の背揺れ=淳一
○玻、久=4点
(玻:最近よく見かけて不憫になる光景の一つがこれである。小さな子の手を引いて暑い日に歩いている母親の顔はおうよそ険しい。イクメンが流行っているとはいえ 大概は母親である。まだオムツも取れていないだろう お兄ちゃん お姉ちゃんはベビーカーの中の または お母さんの抱っこに中の弟か 妹かを尻目に もういっぱしのことを要求されている。その姿を見ていると どうも涙に暮れていそうでならない。はしゃいでる背中なのか ガックシな背中なのかと思うとき「手を引かれ」という措辞と「暑き」という季語が効いてくる。何気ない景色の中で これほど想像できるっていうのが十七音の面白さです。という佳句。 久:歩きたくないとぐずる子供ですね。)

●遠雷や誦経の僧の青つむり=砂太
○裕△ま、久=4点
(裕:若い僧侶が一生懸命誦経している感じがいいです。 ま:なんとはなしにユーモラスな感じがします。 久:どれもがとんがっている感じ。)

●大花火人さし指に引火せり=水音
○玻△十、雪=4点
(玻:花火大会の広告がいたるところに張ってある。もう納涼かと思いきや 世の中は真夏へ向かう。花火大会は個人的に雑踏が苦手なので行かないのだがどこかで雰囲気だけは 感じたりしたいという欲張りな私の納涼一句として選んだ佳句。大花火を見て 指を指す。「見て 見て」というように。その人差し指に 花火が引火してしまったようである。高い空の花火と 自分の人差し指を見事に 引火で結んだ佳句。引火したということは そこから何かが燃えひろがるのだろうか?花火の火花が引火ともなると ちょっとロマンティックな関係を望んでいるのかしら?などどぐんと跳躍力も高い措辞です。 十:夜空に広がる花火を指差したら引火したという俳諧味。)

●ジューサーと雷鳴とろり溶け合ひて=玻璃
○入、五=4点
(五:音を2つ盛り込んだ!)

●落雷や縫い針深く指を刺す=水音
○雪△や、淳=4点
(雪:驚きの瞬間が目に見えるようです。 や:常備薬箱よりカット絆出す。)

●雷や言葉に神の意志を知る=ぶせふ
○子△メ=3点

●ところてん生き字引かとおだてられ=資料官
△秀、清、子=3点
(秀: お世辞だとわかっていても嬉しいのよね。 清:誰しも得意分野があるものだ。そのような分野を持つと人は頼りにして呉れる。)

●はたた神海馬の底の記憶かな=清一
○修△白=3点
(修:海馬という名が想像を誘う。 白: はたた神が何かを呼び起こしてくれた。)

●はたた神無人駅にて遣り過ごす=資料官
○喋△ス=3点

●東山三十六峰雷わたる=ぼくる
◎修=3点
(修:すっきりと大景がうかぶ。何かしらドラマチック。)

●日雷ビビつと恋の生まれたる=五六二三斎
○ぼ△修=3点
(ぼ: 若々しくて、いいね! 修:報告的でなくもっと直せつ的に言ってほしい気もします。)

●引潮に穴ぼこ多し夏の雲=やんま
○紅△ぼ=3点
(紅:一読、景が浮かびました。 ぼ: 手堅い写生句、模範にします。)

●引力は烈し夕立のなかにゐて=弧七
△秀、水、ス=3点
(秀:「引力は烈しい」でいいのか、悩ましいんですが。けど感じはわかります。 水:そうとう激しい夕立だったのでしょう。)

●遠雷やバカラに酒の透き通り=秀子
△玻、ぼ=2点 (玻: 遠雷には なぜか硝子がよく似合う。その中でもバカラを選んで詠み込んだのには意味があろう。遠雷の中で透き通ってゆくバカラの中の「酒」という液体。いやそんな簡単な光景ではない。バカラに 酒が透き通ってゆくのである。外からでなく中の酒から バカラグラスをのぞいている。「に」と「の」という助詞の不可思議とパワーを見る佳句。いまだに位置関係と景色を想像しては頭のこんがらがる。理知的な作者を想像します。「酒」は バーボンでなさきキリッとしたスコッチウイスキーであるように願うばかり。 ぼ: おしゃれな句。乾杯!)

●片思ひ引きずるやうに夏果てる=五六二三斎
○香=2点

●雷や遠くにありて近き音=メゴチ
△資、玻=2点
(資:光との時差があるも音はやはり強烈。遠と近の並びが面白い。 玻:「ごろごろ」と音がしてどれくらいの感覚で鳴ったら 雷は遠い 近いなどど幼いころは教えられていて よく 間隔をはかったものである。案外遠いようでいて 近かったりするものである。遠くて近いものと言ったら 「思い出」であろうか。雷の音でまた何かを思いだすかも知れない。そんなことを想起させる幅のある佳句です。)

●日雷贔屓チームは負け模様=水音
△資、紅=2点
(紅:この後に夕立が来て、コールド負けとか・・?)

●雷光やはたと気づけば我はわれ=ぶせふ
○メ=2点


●雷鳴と硝子細工が割れてをり=玻璃
○喋=2点


●雷鳴の小児病棟ざわめくや=まさこ
○資=2点
(資:可愛いざわめきが聞こえる。)

●遠雷に風鈴もなる騒がしさ=淳一
△喋=1点


●遠雷や微動だにせぬ森の木々=修一
△淳=1点

●遠雷や杜よりのぞく入道雲=修一
△喋=1点

●神の代もかくありけりとはたたがみ=砂太
△紅=1点
(紅:スサノウノミコトも雷鳴を聞いたのですね!なんか感動です。)

●弘法の即身成仏いろは唄=子白
△や=1点
(や:ああありがたやありがたや。)

●蝉しぐれ五輪選手の引退す=茶輪子
△裕=1点
(裕:引退はこんな感じの寂しさでしょうか。)

●袖引かれ手花火の玉繋ぎけり=葱男
△修=1点
(修:こんな感じで人ってつながるんだね。)

●長法被似合ふ男に雷兆す=砂太
△ぶ=1点
(ぶ:季語の選択にいまいちの感があるが、祭りのいなせな男が浮かび上がっている。)

●夏の夕雷の音とどろきぬ=淳一
△子=1点

●襖抜く引き算の粋夏座敷=秋波
△裕=1点
(裕:引き算の粋 がいいです。)

●雷激しイエスを捨てた男たち=ぼくる
△子=1点


●雷鳴の響き会議の終はりけり=裕
△ぶ=1点
(ぶ:ユーモアが効いていると思う。会議がはたして有意義だったかどうかが気になるw)

●子守歌遠くよりして雷も=弧七
△入=1点


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