*B部門入選作発表*


兼題『季語:鳥曇、鳥雲に』『漢字:取』=全85投句(入選61句)

【特選】

一席
●補助輪の取れてジグザグ春帽子=雪絵


◎十、や、ス、茶〇香、葱、砂、秋△玻、ま=22点
(十:景鮮明。黄色い幼稚園帽子が見える。 や:初めて独立感を覚えたこの嬉しさ。 茶:取れてまだジグザグ、帽子もゆらゆら。とても春らしいお句です。 香:いつかみんな乗れるようになってますね。 葱:まだ補助輪を外したばかりでちゃんと乗れてないようですね、でも、その勇気と冒険心が男の子なんだ! 秋:子供の真剣な表情が浮かぶよう。 玻:独り立ちの季節に明朗快活な一句。 ジグザグ迷走しながら補助輪を外して自分の足で道を模索する姿が微笑ましい。ジグザグという措辞にあっちに行ったりこっちに行ったりとするモラトリアムの苦悩も含まれているよう。「春帽子」という季語が生き生きとした鼓動を感じさせて素敵です。 ま:明るく、楽しい気分にさせてくれます。ジグザグが良いです。)


二席
●不登校の子の落書きや鳥雲に=ラスカル


◎ぼ○香、白、ま、雪△秀、ぶ、玻、入=15点
(ぼ:不登校児にはいい子が多い。いつか飛び立つんだよと。 香:なかなか本音が見えないところが難しいですね。 白: 何処に落書きしているのか-----。気落ちしないでほしい。 ま:季語が巧くとらえられていると思います。切ないですね。 秀:鳥が雲に消えていくように、いやな気持を空に飛ばして、いつかは、大人になってください。 ぶ:私の昔を見られているような…w 玻:不登校する子は「学校に行きたくない」のではない。この視点を人は忘れがちだ。「学校に行きたくても行けないから」人目を避けて引きこもってしまう。「落書き」には算数の計算問題でも書いてあったのか。それともとりとめのない心象風景だろうか。 親である作者のじっと見守る視線と 行く末を案じる心象が複雑に「鳥雲に」という 季語に集約されている。我が事のようである一句。)


三席
●亀鳴きぬ取材テープのこのあたり=秀子


◎ぶ、葱、ラ、水△喋=13点
(ぶ:こん なに難しい季語を、こういう風に使えるんだと驚いた。 葱:そのあたりでなんかな〜、なんかしっくりと来ない、番組的にも間延びした感じなんでしょうね、かといってその理由もよく分からない。なんかなあ〜?( ? )? ラ:発想がとてもユニークです。 水:具体的にその場所まで指定したところが、、やっぱり亀が鳴く。)


三席
●関取のピンクの背中百千鳥=秋波


◎ま、紅○十、秀、葱△裕=13点
(ま:取り組みは短い時間なのにお相撲さんの背中は美しく、ピンクに染まりますね。 紅:誰もが連想するあの逆転優勝。百千鳥までがお祝いをしているようです。 十:国技館の歓声、熱気のざわつき感に「百千鳥」を合わせた上手さ。 秀:物だけできっちりと押さえて、上手い! 葱:私も「関取」で一句詠みたかったのですが、出さなくて良かったー、これは実感こもってる! 裕:関取は派手な着物を着ていますよね。)


【入選】

●チェロ弾きの漏らす吐息や鳥曇=しゃが
◎五○秀、白、修△智、ぼ、資=12点
(秀:楽器でも、ピアノじゃなくてチェロだから、よかった。 白:上五・中七の音調が佳いですね。 修:チェロの低音が聞こえるようです。 智:カタロニア民謡の鳥の歌が聞こえて来ました。チェロが奏でる音符が鳥雲に吸い込まれて行くようです。 ぼ:音楽も楽しいばかりではないのだ。 資:(なるほど,サンサーンスの白鳥はチェロの曲だ。T音の響きが良い。)

●面影も想いも連れて鳥雲へ=智雪
◎白、し、メ△ぼ=10点
(白: あの人も遠くへ行ってしまった。あぁ-----。 し:とても切ない鳥雲ですね。 ぼ:鳥にも人生<鳥生?>あり。)

●春昼や錆びたる鍬を取り出しぬ=修一
◎玻〇メ△秀、淳、秋、久、五=10点
(玻: 春昼は何故かあてもない気持ちを掻き立てる。 変な衝動が起きやすい。 作者は鍬を取り出した。冬の間に硬くなった菜園畑を耕そうかて取り出してみたら鍬は錆びていた。よくあることだ。なんにつけ仕舞い込むと錆びてしまう。さてさて 変な衝動に身を任すよりは 錆び取りをして感性でも耕そうかと春昼。 秀:この句意は春の昼によく合っていますよね。)

●春トマト取りどり古都のカフェテラス=まさこ
◎裕、秋△香、智、子=9点
(裕:トマトは京野菜に入らないかもしれませんが、おしゃれなカフェですね。 秋:色取り取りのトマトが都会的なイメージ。 香:と音の響きがリズミカル。 智:春になるとトマトも甘くなり嬉しくなります。トマトを使ったスイーツもありますね。リズムが楽しくて好きです。)

●ラマのゐるボリビア国旗鳥雲に=しゃが
○ぼ、ス△十、葱、ラ、雪、五=9点
(ぼ:望郷のラマか、面白い。 十:面白い視点。写真で旗を確認したら、ラマに加えてコンドルが。 葱:そんな風な、可愛らしい国旗はお国柄も感じられるようでいいですね。日本も見習って国旗、「日の出る国」は変更したらどうでしょうね、今や日本の文化の一番アピールするところは「カワイイ」なんだから。 ラ:観察眼の鋭さが感じられます。)

●遠投の球の行方や鳥曇=雪絵
○や、ラ△砂、紅、淳、秋=8点
(や: あの頃の野球少年は空 の彼方へ散りぢりに。 ラ:球だけでなく、鳥の彼方までもが想像されます。 紅:ボールは見つからなかったのでしょうか?読み手に委ねているところがうまいと思います。)

●お地蔵の遠き眼差し鳥雲に=やんま
◎資○し、メ△香=8点
(資:旅立つ鳥たちへの優しい遠き眼差しが伝わってくる。T音もぴった。 し:お地蔵さまの眼差しと鳥雲が合っていると思います。)

●春塵や爪先立ちで取る小箱=紅椿
◎久○ぶ△十、葱、ま=8点
(ぶ:少しも華やかな場面じゃないのに、華やいでいる。 十:景が見える。 葱:長い間置きっ放しの小箱、埃がうっすらと被っていそう。 ま:後ろ姿が目に浮かびます、小箱がいくつも取ってあるのですよね、何を入れるのでしょう。)

●秘密基地見取り図に無き桃の花=やんま
◎雪○ス、久△白=8点
(雪:秘密基地の見取り図、何だかわくわくですね! 白: 昔々の物語。)

●灰汁取りののの字が描く斑雪=メゴチ
○十、し△喋、ス、久=7点
(十:「のの字」の喩えは多くあるが、「灰汁取り」の句は初めてみた。 し:鍋の中の景色、斑雪がいいです。)

●すれ違ふ石のふたつよ鳥雲に=玻璃
○智、喋、清△ス=7点
(智:すれ違う石がどうしても分かり合えない二人の感情のように感じました。 清:鳥の恋にも駆け引きがあるのだろう。)

●ガレージの使はぬ車鳥曇=秀子
○水△十、ラ、修、茶=6点
(水:その車はタイヤの空気が抜けた黄色のオープンカーです。 十:鳥曇との微妙なマッチングがいい。 ラ:かつては活躍していた車なのでしょう。寂しいですね。 修:走れなくてつらそー。 茶:「使はれぬ」と受け身にした方がよいと思いましたが、字余り。さて…)

●口笛のとぎれとぎれや鳥雲に=まさこ
◎喋○資△水=6点


●水紋の二重に三重に鳥雲に=玻璃
◎智〇メ△や=6点
(智:水紋を起こしたのは何だろう。鳥雲に去って行ったのは何だったのか。詠み手の心の憂いを感じました。 や:羽ばたき終わった水にはまだ波紋が広がっている。)

●鳥帰る再の字多きテレビ欄=茶輪子
○ラ△十、裕、水、久=6点
(ラ:言われてみれば確かに! でも、これを詠んだ人は初めてでしょう。 十:諧謔の句。金の掛かるドラマは最早作らなくなった? 裕:確かに今多いです。)

●鳥雲に五色の味のあんこ玉=紅椿
◎修△や、ま、雪=6点
(修:さびしさを紛らわすには美味しものを。 や: そんなデリカシイの味があったのだ。 ま:全く無関係のものでありながら、響き合います。)

●予備校のひしめく街や鳥雲に=ラスカル
◎砂○資△ぼ=6点
(資:親不孝通りから見て海の方に鳥が帰る光景を思い浮かべた。いずれにしても旅立ちの季節。 ぼ:やれやれ地上は競争社会。)

●三両の電車東へ鳥雲に=玻璃
○や、智△資=5点
(や:空に大地に菜の花のローカル電車。 智:三両列車の走る片田舎、希望に満ちて東へ旅立つのでしょうか。見送る側には一抹の寂しさが宿ります。 資:鳥雲と電車の組み合わせは三輌ぐらいがちょうど良い。)

●褄取りて急ぐ白足袋月おぼろ=ぼくる
○ぶ、子△智=5点
(ぶ:白無垢の花嫁を連想した、童謡にもあったような。 智:祇園白河の辰巳橋辺りを急ぐ芸妓さんの姿が浮かびました。何故か桜も。)

●鳥雲に玄海灘に浮かぶ島=資料官
○淳、五△紅=5点
(紅:玄界灘に弱いのです、私。こちらと海の色が違うのです。)

●鳥雲に東京タワーのトリミング=資料官
○喋、五△メ=5点

●鳥雲に取り越し苦労ばかりして=資料官
◎秀○砂=5点
(秀:「苦労」してるのに、暗くないんですよね。そこがお見事。)

●鳥雲にポッケに残る五円玉=白馬
○雪、茶△修=5点
(茶:空とポケットの世界をつなげている点でいただきました。 修:暗い奥に忘れられたような五円玉。「ガレージの使はぬ車鳥曇」と発想が近いと思いました。)

●取りて見む荒れ野の中の花菫=砂太
◎香〇子=5点
(香:いかにも可憐だったのでしょう。「取りて見む」の動作を詠むのが珍しかった。)

●送られる身の軽重や鳥曇=秋波
○久△清、紅=4点
(清:鳥の大小に寄って雲の形も違って見えると言う。 紅:淡々と詠んでおられますが、考えさせられます。)

●下萌えや取説に無き恋心=やんま
○水△ぶ、ス=4点
(水:恋心のある取説が欲しい。 ぶ:ほんとうですね〜)

●出合橋縁を取り成す桃の花=久郎兎
◎子△喋=4点

●鳥風や絵には恋人たちが飛ぶ=ぶせふ
◎入△し=4点
(し:シャガールの恋人達かしら。)

●鳥雲に過ぎ去るものと残るもの=清一
△香、白、砂、玻=4点
(白: 過去は過去。現実は現実。 玻:なんだかものすごくわかる一句。鳥雲を眺めながら人生の取捨選択をする。人なのかものなのか?想いなのか。鳥雲に自分の迷いを重ねながら過去を精査するのもまた一興である。)

●鳥雲に整列の笛鳴り渡る=雪絵
○紅△清、や=4点
(紅:「整列」が気になります。何の「整列」にとるかで、鑑賞ががらりと変わりますね。 清:いよいよ北方に飛び立つ時の整列の合図の様だ。 や:規律ある集団生活には笛は必需品。)

●腸(わた)取られ一物もなしするめ烏賊=香久夜
○ぼ△白、修=4点
(ぼ:いいね、このとぼけた味。 白:それを肴に一杯の御仁。 修:ううむ、それをまた頂くのですね。)

●お水取火の粉抱くべき人の群=清一
△砂、秋、五=3点

●コンビナートの煙の流れ鳥曇=裕
○玻△水=3点
(玻:工業地帯の夕方はなんとも切ない。 廃墟のような美しさを感じるからか。 宇部や水島を想う私である。煙はどの方向に。鳥雲にすがりつくように 北に流れてゆく。孤独は南を選ばす北を選ぶ。 水:新幹線で小倉駅を通過するとき煙突の煙がいつも真横に流れている。真横の流れる時が鳥曇り。きっと。)

●忖度の取つ散らかつてゐて朧=紅椿
○入△し=3点
(し:忖度という言葉、最近随分と繰り返されていましたね。)

??天下取り十日で良けれ大桜=五六二三斎
○入△葱=3点
(葱:気持ち良い句ですね、大河からの発想ですか?)

●鳥風に耳を澄ませば笑みが湧く=淳一
◎清=3点
(清:幸せを呼ぶ鳥風が聞こえると思わず笑みが溢れるとの秀句。)

●鳥雲に入りたるほどにロブ上げる=メゴチ
○玻△入=3点
(玻:能動的な一句。ロブは窮地に陥ったときの逃げだと想うのだが作者は「鳥雲に入りたるほど」の高いロブを上げるという。テニスボールの黄色と鳥雲のグレーが美しいコントラスト。高度も高く思わず空を見上げてしまう。行動を引き出すような力のある佳句。)

●鳥雲に追われて子らの急ぎ足=智雪
◎淳=3点
(淳:子らの急いでいる様子が目に浮かびます。)

●鳥曇週末ひとりの出勤日=茶輪子
○裕△ラ=3点
(裕:身につまされます。 ラ:お疲れ様です。「鳥曇」に心情が反映されていますね。)

●入試問題一枚取りて芋を剥く=香久夜
○秋△ぶ=3点
(秋:たまたま取った新聞紙に載ってたのが入試問題だった?取合せが意表をついて面白い。ぶ:うちのカミさんみたいだw)

●盛りあがるミルクの表面鳥雲に=水音
○茶△修=3点
(茶:子どもの頃はよく飲んでいたホットミルクを思い出しました。 修:ふくれてゆく惜別の情がうまくものに託されていると思います。)

●老ノ坂手を取る孫や紫木蓮=茶輪子
○裕=2点
(裕:ほのぼのとしています。)

●静電気来るや来るぞと取っ手引く=久郎兎
△し、茶=2点
(し:心理状況を上手く表していて面白いです。 茶:この時季の瞬間の心持ちに共感しました。)

●そよ風に鳥風聞きて巣立つ人=淳一
△清、子=2点
(清:鳥が巣立つ様に巣立つ人には鳥風が聞こえる様だ。)

●図書館のいねむる人や鳥雲に=修一
○ま=2点
(ま:ときどき居眠りをする人を見かけますが、この季語がぴったりですね。)

●鳥曇り水道管の水の音=修一
△雪、入=2点

●取りどりにおもんばかつて花の冷=まさこ
○紅=2点
(紅:森友問題だけでなく、何事にも通じますね。季語が効いています。)

●遺されて守るマイホーム鳥雲に=ぼくる
○修=2点
(修:私もいずれ行くのだと思うのですが、忘れていることが多いです。)

●初虹を取らんと伸ばす白き腕=智雪
△裕、メ=2点
(裕:白き腕が女性なのか、病の人なのか どちらでしょう。)

●待ちわびるぬる燗もよし鳥曇=入鈴
△修、茶=2点
(修:一期一会、会うことと別れについて考えさせられます。 茶:待ちわびてぬるくなったのかな。曇のニュアンスを上手に詠まれていると思いました。)

●夢を取る網を仕掛けて鳥交る=しゃが
○清=2点
(清:鳥の恋にも駆け引きがあるのだろう。)

●気がつけば齢取っている鳥曇=裕
△淳=1点

●取っ組み合いの仕方を忘れ蒙古風=裕
△ぶ=1点
(ぶ:稀勢の里がんばれ〜といっているような・・・)

●鳥曇日本列島逆さ地図=清一
△資=1点
(資:(逆さ地図は大陸に日本が浮かんで見える。鳥たちも難しい方向に帰るのだ。)

●鳥曇リハビリ室は混みあつて=秀子
△十=1点
(十:腰痛に悩む身にはよくわかる句です。)

●菜の花や竹取姫待つふじの山=白馬
△子=1点

??水城より遥か対馬を鳥雲に=五六二三斎
△秀=1点
(秀:景色が大きくて、好きです。ただ「対馬を」の「を」が引っかかっています。)


B部門入選作〈back number〉

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