*B部門入選作発表*


兼題『季語:亀鳴く』『漢字:立』=全87投句(入選54句)

【特選】

一席
●煙草の火小さく灯して立子の忌=朱河


◎秀、紅、喋△や、十、ぼ、資、五=14点

(秀:桃食うて煙草を喫うて一人旅 立子。 紅:立子忌は3月3日なのですね。お線香代わりの煙草でしょうか。今は嫌われ者の煙草ですが、とても雰囲気のあるお句だと思います。 や:殊更に何を思うや。 十:「煙草」と「立子」との関連を調べたら、「桃食うて煙草を喫うて一人旅 」など何句かありました。 ぼ:煙草好きだった立子へのオマージュ。)


二席
●石垣にいくつもの穴亀鳴けり=秀子


◎白、修○や、ラ△十、紅、ス=13点
(白:亀の合唱が聞こえてくるような。 修:なんでもない景色が季語の力で存在感をもつているように感じられてきます。 や:時に蛇が出ることあり。 ラ:亀が、穴の数を数えているような。 十:城跡の回りの堀の景色でしょうか。 紅:石垣の穴の中に、いくつも亀がいるような、不思議な気持ちになりました。)


二席
●立ち読みの肩の触れ合ふ雪解かな=ラスカル


◎葱、十○秀、ま△や、香、秋=13点

((葱:上手い取り合わせ! 十:春の到来の象徴としての「雪解」ですね。上5、中7が秀逸。 秀:立ち読みの句って、珍しいような。知らない人と肩先が触れ合ってる微妙さと「雪解」の季感は響いていると思いました。 ま:ちょっとドキッとするような人とのふれあいが優しく、季語に表れています。 や:春は諸々を溶かし込んでゆく。 香:電車とかだと、肩が触れるとちょっと緊張感ありますよね。)


【入選】

●亀鳴くや酒一合の日を終ふ=朱河
◎ま、秋○香△虹、雪、喋、メ=12点
(ま:一合のお酒にほろ酔いの意識の中、確かに亀は鳴いていると思え、何とも言えない味わいがあります。 秋:1合/日、これを守れば長生き出来るとか。 香:これくらいが良いですね。)

●聞き耳を立て早春の森に入る=雪絵
◎ラ○ま、し△虹、十、修、ぶ=11点
(ラ:どんな声が聞こえてくるのか、ワクワク。 ま:生命の息吹を体中で聴こうとしているさまが素直に表現されています。 し:樹木も生き物も目を覚ましていろいろな音をたてそう。 十:今の時期の木々からは、囀り、無音の芽吹きなど春の音が聴こえてくる。 修:アウトドアのいい季節になりましたね。 ぶ:たまたま今日同じような体験をしましたので・・・)

●はじめてのつかまり立ちや桃の花=紅椿
◎や○十△砂、秀、ま、ぼ、資、水=11点
(や:めでたしめでたい爺婆の目が潤む。 十:ほっこりする句です。 秀:ちょっと、季語が近いと思います。もう少し離したらよかったかも。 ま:とても可愛い! ぼ:おお可愛い?? 水:かわいらしい。)

●亀鳴くや妻の文箱にラブレター=やんま
◎水○清、メ△虹、久、白=10点
(水:亀鳴くの季語に一番マッチしているような気がします。 清:婚姻前のラブレターかそれとも浮気の相手からのラブレターか亀だけが知っている。 白:亡妻を偲んで。 秋:「亀鳴く」季語にちょっとドッキリの情景がよく合っている。)

●音量を上ぐるせせらぎ春立つ日=雪絵
○水、修、茶、五△葱=9点
(水:立春を迎えただけで音が大きくなったように思います。 修:せせらぎの生き生きした顔が見えるよう。 茶:雪解けを想起させる上五の措辞がよいと思いました。 葱:季語がやや強いか?)

●石鹸玉飛んで尻尾を立てる猫=裕
○砂、資、ス△村、ラ、し=9点
(村:そういうこともありそう。 ラ:可愛い〜♪ し:情景が可愛いですね。見てみたい。)

●春立つやオリーブオイルの白き澱=まさこ
◎茶○十、修△水、秋=9点
(茶:立春の空模様が壜の様子と重なったように思いました。 十:様々なところに人は「春」を感じますが、これもその一つ。 修:これは女性でないと気付かない?霞のよう。 水:君も寒かったんだねとつぶやいたりして。 秋:我が家のオリーブオイルも冬の間固まってました。目のつけどころに感心。)

●奉書紙の円き折り雛すくと立つ=水音
◎香、メ○朱△ス=9点
(香:電車とかだと、肩が触れるとちょっと緊張感ありますよね。)

●卒業や立看板の裏は虚無=十志夫 
◎久○村、秋△五=8点
( 村:表は予備校の募集? 秋:確かに看板の白いのは表だけ。卒業式も悲喜こもごも。光と影をうまく表現している。) 

●立ち漕ぎで歌う少年春田風=スライトリ・マッド
◎清○虹△ま、朱、葱=8点
(清:少年時代よくやったものだ、昭和の時代が懐かしい。 ま:ジブリの映画に出てきそうな、明るい気持ち良い景ですね。 葱:青い山脈、ですね(^^))

●手品師のハットの中味亀の鳴く=葱男
◎朱○清、し△茶=8点
(朱:一席で頂きましたが「中身」で良いのか?とは少し思う所。下五はやはり「亀鳴けり」と言い切った方が好きかなと。 清:帽子から鳩以外に何が飛び出したのだろう。 し:子供の頃からハットの中身気になってます。 茶:「なあんだ」っていう種のイメージが季語にしっくりきていると思います。)

●亀鳴いて独坐の膝を打ちにけり=葱男
◎村○ス△十、メ=7点
(村:長考の末素晴らしいアイデアが生まれた。 十:城跡の回りの堀の景色でしょうか。)

●亀鳴くや乗り合ひバスを乗り継いで=秀子
◎雪、五△朱=7点

●亀鳴くやリュウグウを射る着信音=清一
◎ぼ○秋△ス、香=7点
(ぼ:時空の広がりを確りと読み止めた。 秋:はやぶさ2はホントにすごいと思う。 香:玉手箱を持ち帰るんです。)

●恋猫の眼に火柱の立ち上がる=ラスカル
○虹、紅、ぼ△修=7点
(紅:猫を飼っている人にしか詠めませんね。眼の中まで見たことがありませんが、メラメラしているのですね。 ぼ:野性の生命が燃え上がる。 修:恋は火柱なんだ!)

●放蕩の果ての落暉や亀鳴けり=朱河
○砂、白△久、し、ぶ=7点
(白:淋しいが、これも人生。 し:物語をいろいろ想像させます。 ぶ:身につまされるお句です。)

●亀鳴くやどんな声かと妻が問ふ=メゴチ
○秀、ぶ△村、白=6点
(秀:ご夫婦の佇まいが、伝わってきます。 ぶ:難しい季語もこうやって使えばいいんだなと勉強になったw 村:ちょいとからかわれたか。 白:俳句を一緒にやりましょう。)

●春雷に素数のごとく立ちにけり=十五
◎ス○ラ△葱=6点
(ラ:「素数のごとく」という比喩がユニーク。 葱:ビックリしたポーズを素数に喩えるとはビックリ!!)

●口角を上げる顔ヨガ春立ちぬ=しゃが
○紅△久、葱、茶=5点
(紅:つい、自分でもやってしまいました。季語が効いています。 葱:一念発起して美顔に励むアラフォーの女子か? 軽いペーソスがあり微笑ましい。 茶:「上げる」「立つ」のベクトルの同じ点がよいと思いました。)

●天指して梅の小枝の並び立つ=香久夜
◎虹△し、メ=5点
(虹:みんな上を向いて。 し:本当に天指してのびますよね。)

●人見知りする子に亀の鳴きにけり=雪絵
◎資○朱=5点

●亀鳴くや空き家のままの父の家=裕
○五△白、ぶ=4点
(白:故郷の家の寂しさ。 ぶ:現代家庭の現実と幻想的な季語の響きあい。)

●亀鳴くや翁媼のジムに満ち=修一
○香△ラ、茶=4点
(香:ホントにお年寄りばかり。自分もその中の1人に。 ラ:若者より、翁媼の方が元気! 茶:枯れ木も山の賑わい的な…。高齢者の健康維持は応援したいです。)

●亀鳴くやカタカナ多き入門書=ラスカル
○久△清、十=4点
(清:確かにカタカナが多い本は読み難い。 十:季語が合っているか微妙だが、中7下5の面白さ。)

●亀鳴くやモビールずっと揺れてゐる=しゃが
○水△雪、資=4点
(水:揺れているに晩春のけだるさのようなものを感じます。)

●東風吹くや立漕ぎで行く一輪車=やんま
○村△秀、清=4点
(村:型よくすっきり。 秀:元気な子供の姿が見えますが、あえて言うなら「行く」を省略してほしかった。 清:東風と一輪車の組み合わせが良い。)

●彫刻の背後の無限亀鳴けり=しゃが
○久、ぼ=4点
(ぼ:芸術はカオスから生まれる。無限は、無間かも。)

●パソコンを立ち上げる間や月朧=香久夜
○ぶ△ラ、水=4点
(ぶ:本当に起動の遅いパソコンでも俳句を趣味にしているものの勝ちですねー。 ラ:立ち上がるまでの僅かな時間。着眼点がよいと思います。 水:無駄に思える時間だけど情趣ある時間。)

●目交ぜして席立つ夫婦養花天=十五
○や、雪=4点
(や:以心伝心、身は二つでも心は一つ。)

●亀鳴くや河馬の家族の小宇宙=資料官
◎し=3点
(し:河馬の家族の小宇宙が分かるような分からないような。。。亀鳴くに合っているように思いました。)

●立ち止まるひいふうみいの落椿=五六二三斎
○茶△砂=3点 (茶:中七で一つ一つ数え見る感じが表されている点でいただきました。)

●着信の唸り亀鳴く如きかな=虹魚
○白△十=3点
(白:成程! 十:言われてみると、そんな気がしてくる。)

●春の野に反戦の唄立ち上がる=葱男
△清、雪、ぼ=3点
(清:反戦歌これも昭和の時代の風景の一つ。 ぼ:シリアスなるも、若さあり。)

●風葬の崖に鳥肌立つ朧=清一
◎ぶ=3点
(ぶ:異国の風習に触れる思いがしました。月朧が何とも言えません。)

●老齢年金月額六万亀鳴けり=十志夫
◎砂=3点

●エプロンのパステルカラー春立てり=紅椿
  △清、修=2点
(清:台所仕事も明るい色のエプロンで捗る。 修:エプロンで現実感あり。)

●亀鳴くや止まれどきどき擦れ声=秋波
○喋=2点

●様変りしたる家並や亀鳴けり=紅椿
○雪=2点

●心字池過去いま未来へ亀も泣く=喋九厘 ○メ=2点

●地震速報なまずは眠り亀鳴けり=水音
△砂、朱=2点

●立ちこぎで登る鎌倉山は春=まさこ
○葱=2点
(葱:鎌倉がいいなあー(^^))

●立雛の浅葱の帯や草香山=秋波
△秀、香=2点
(秀:地名を使う場合、知名度は重要。私は、知らなくて、ネットにあたったんですが、この句の場合、帯の色と山の名がよく響き合っています。 香:浅葱色、とても春らしい色!)

●春立つや父の描きし水彩画=裕
△や、村=2点
(や:父の歳になって父を新発見する。 村:さわやかな田園風景が見えるよう。)

●誇らかに立ち枯るるなり黄水仙=ぼくる
○葱=2点
(葱:それぐらいの誇りと矜持を持って老いに向かいたいものです。)

●真夜中の保線作業夫亀泣くや=スライトリ・マッド
○喋=2点

●亀鳴くや赤い目薬ひとしずく=まさこ
△喋=1点

●亀鳴くやタモリぶらぶら心字池=資料官
△葱=1点
(葱:ブラタモリの林田アナ、可愛いですね(^^))

●亀鳴くや母は窓辺に昼寝する=香久夜
△紅=1点
(紅:「昼寝」は夏の季語ですので、ちょっと気になりましたが、春らしくて好きです。)

●献立のいつもと違う寒の明け=白馬 △五=1点

●春泥や改札横の立看板=茶輪子
△清=1点
(清:駅前にある立て看、春泥で汚れている感じが出ている。)

●座りては立ちては春を待ちにけり=秀子
△紅=1点
(紅:春を待つ心持ちが伝わります。)

●溜息を亀のつきたる石の上=修一
△喋=1点

●妻と来し税務相談亀鳴けり=十五
△ま=1点
(ま:いろいろな物語がありそうで、ちょっと可笑しく、季語が効いています。)


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