*B部門入選作発表*


兼題『季語:一月』『漢字:器』=全82投句(入選63句)

【特選】

一席
●静かに眠る一月のビオトープ=秋波


◎葱、清、ま、し○十、秀、や、ラ△水=21点
(葱:生命活動が静かに眠っている冬場のビオトープの姿は、この慌ただしい時代への警鐘でもある。 清:ビオトープという生態系を保って生息する特殊な環境に焦点を当てた所が良い。 ま:どこのビオトープでしょう。春を待つ静けさが見えるようです。 し:とても美しい情景、表現で好きです 十:「生態系環境」を意味する特殊な言葉を上手に活かしている。 秀:ビオトープが手柄。 や:自然環境いつまで清らか。 ラ:山も、ビオトープも眠る季節。 )


二席
●一月の阿吽のごとき欠伸かな=葱男


◎メ○ぼ、清、白△子、資、砂、雪、五=14点

((ぼ:いいね、この大らかさ。 清:人は阿と生まれ吽と死にゆく、一つ歳を重ねる一月に思わず出る阿吽の欠伸が面白い。 白:移った欠伸。 資:あ音とあ音で思わずあくび,絶妙の組み合わせ。)


二席
●不器用に老いて今宵の根深汁=やんま


◎資、香○ぼ、清、砂△白、修=14点

(資:根深汁が効いている。 香:しみじみとした安堵感が伝わります。 ぼ:正直・誠実 故の 不器用。哀感にも誇りあり。 清:根深汁の好きな人に不器用な人が多いのか、具である葱の性質とも呼応しているようだ。 白:自分で作ったのでしょうか?)


【入選】

●火焔土器発掘されし山眠る=ラスカル
◎ぼ、白○や、香△子=11点
(ぼ:悠久の時を経て来し山山よ。 白:大昔の力がこもった土器と静かな現在の山。 や:古代史ロマン興味津々。 香:現在の静かな冬山に対比して、大昔、土器を焼いていた頃の活気が想像されます。)

●日向ぼこ猫にも有りし器順=砂太
◎久○白、し△紅、香、ス、茶=11点
(白:面白い着眼。 し:確かに!と思いました。 紅:よく観察されていますね。 香:遠慮している小さい猫が、、。 茶:縁側ののどかな風景、争わずちゃんと順番通りがいいです。)

??不器つちよな切株ひとつ年流る=スライトリ・マッド
◎十、秀○メ、喋△ま=11点
(十:流れる歳月の長さを感じさせる年輪。武骨で「不器っちょな切り株」は我が身の生き様の投影でしょうか。 秀:切株を「不器っちょ」と言い切った手柄。 ま:誰が切ったのか、こういう切株がありますね、ずっと残ります。)

●一月や縄光りたる夫婦岩=雪絵
◎五、修○虹△葱=9点
(修:堅く艶つやしている縄。堂々たる性愛。 虹:夫婦は寄り添うもの。 葱:糸島の「夫婦岩」を思い出しました。)

●一月のカレーライスは具沢山=資料官
◎村△清、ラ、喋、雪、水=8点
(村:何気ない日常がいかにも一月と納得。 清:詠者の馴染みの店は一月に限りカレーが具沢山になるようだ、発想が面白い。  ラ:具沢山で、さぞかし美味しいことでしょう。 雪:なぜか納得です。)

●一月の私のココア甘くない=水音 
◎茶○ス、し△雪=8点
(茶:中七の「私の」がなかなかない発想かと思いました。甘くないけど、熱い! し:なんだか面白い。惹かれました。 雪:一月を味覚で詠む発想が面白いです。)

●一月や乾いた枝に日の名残=秋波
○メ、紅、ま、茶=8点
(紅:兼題の「一月」はとても難儀をしました。このお句は季語が効いていると思います。 ま:一月が効いている景で美しい。 茶:乾いた枝の気づき、着眼がいいと思いました。)

●一月や披講のこゑのうらがへる=十志夫 
○資、村、雪△清、紅=8点
(資:初句会の緊張感。 村:いつもと違う雰囲気が出ています。 清:新年句会で張り切る披講者は緊張のせいか声が裏返る。 紅:初句会の緊張が伝わってきました。) 

●空つぽの空の器や冬ざるる=清一
◎喋、雪△十、虹=8点
(十:雲一つない寒晴れの空の様子を巧く捉えている。 雪:スケールの大きさに圧倒です。)

●蔵出しの漆器に映ゆる雑煮かな=茶輪子
◎淳○五△虹、ス、し=8点
(淳:一年間使わなかった漆器に雑煮が映えますね。 し:品のある美味しそうな雑煮。)

●箱膳にかをる漆器や年新た=茶輪子
◎虹○香、裕△紅=8点
(虹:箱を開けた時の一瞬を描いた秀句。 香:お正月にだけ出すお膳。その趣や、心の豊かさがいいですね。 紅:今はなくなりつつある、端正なお正月の景が浮かんできました。 裕:いいですね おせち料理も一層おいしそう。)

●北欧の器によそふ冬至粥=しゃが
◎ス○子、虹△五=8点
(虹:一気に優雅な食卓に。)

●ボードかかへ立つ一月の沖へ向き=まさこ
◎紅○十、ス△や=8点
(紅:地名はありませんが、沖縄の辺野古埋め立てに反対している人々を詠んだと解釈しました。淡々と詠んでいるのに、伝わるものがありました。十:冬の海を眺めつつ波を見定めているサーファー。構図がしっかり目に浮かびます。 や:眩しき波へ命燦燦。)

●一月や一病ありて此の歩み=虹魚
○子、秋△久、砂=6点
(秋:一病息災といいますが、一抹のもどかしさも。)

●一月や小さき蕾のそこかしこ=紅椿
○ラ、修△喋、し=6点
(ラ:やがて訪れる春への期待感が感じられます。 し:自然はしっかり次の季節の準備していますね。)

●器量とは心のすがた初鏡=十志夫
  ○資、喋△白=5点
(白:これからも正しく生きよう。)

●山茶花や大器晩成まだ成らず=やんま
○砂、水△メ=5点
(水:山茶花の散り際は静かで美しい。そういう大器晩成かな。)

●兵卒の食器野ざらし冬離島=ぼくる
◎裕○茶=5点
(裕:冬の離れ島の寒々とした状況を感じます。 茶:「お国の為に」の哀れが「野ざらし」に託されていると感銘しました。)

●一月の坂の頂上はるかなり=五六二三斎
◎水△葱=4点
(水:感覚的にも観念的にも「はるかなり」がぴったりきます。一月はそういう月。 葱:過去を振り返り、未来を見渡すように。)

●一月の空に五欲の文字浮かぶ=清一
◎秋△白=4点
(秋:難解な句。五欲とは?その文字の形の雲が見えた?それとも心象?色々想像が膨らみます。 白:まだ修業が足りない。)

●一月の指やはらかき整体師=十五
◎や△清=4点
(や: 極楽極楽。 清:新年の整体師は張り切っているせいか、よく揉みほぐす、目の付け所が良い。)

●一月や海を見に行く事始め=やんま
○裕△子、ぼ=4点
(裕:こういう仕事始めっていいな。 ぼ:さすが、俳人。)



●一月や鎮座している遠き富士=資料官
○五、修=4点

●おせち盛る器の龍も老ひにけり=秋波
○雪、淳=4点

●染付けの器の清し寒の内=入鈴
◎子△茶=4点
(茶:冬の空気のぴんと張った景が清々しいです。)

●晩成とならぬ器や寝正月=ぼくる
○紅△十、資=4点
(紅:大器晩成の句の中で、一番季語がしっくりきました。 十:グータラ生活が一番いいですね(笑))

●美顔器の微かな波動冬の星=まさこ
○秋△秀、茶=4点
(秋:肌に伝わる振動を「波動」としたことで星につながりました。 秀:波動が星に届くんですね。 茶:取り合せが、上手いなと思いました。)

●加湿器の風のやさしき待合室=資料官
△十、砂、修=3点
(十:加湿器に優しさを覚える感性が素晴らしい。)

??カステイラ葉つぱの中に一月=スライトリ・マッド
○ま△喋=3点
(ま:家の内と外の対比がはっきり見えます。葉つぱの中、が良いですね。)

●語り草のデュシャンの便器鮫来たる=しゃが
○葱△資=3点
(葱:およそ俳句らしからぬ句材に挑戦して成功していると思う。 資:鮫と便器は金子兜太の追悼句でしょうか。)

●神様のご加護と言いて寝正月=裕
○村△や=3点
(村:うまい言訳が浮かんでハッピー。 や:生死の事は全てを神に。)

●潮騒と加湿器の音聞き分けて=秀子
△十、久、葱=3点
(十:異質な組み合わせが面白い。 葱:上手い!)

●電熱器ひとつの下宿生活です=葱男
△十、ぼ、修=3点
(十:神田川♪ の世界ですね。 ぼ: ザ・昭和! なつかしや。)

●年越しの蕎麦を見守る食器棚=久郎兎
◎ラ=3点
(ラ:人間ではなく、食器棚が見守っているのですね。)

●一つ減り器は二つおでん盛る=メゴチ
○久△淳=3点

●不器用と器用の握手悴めり=香久夜
○秀△ま=3点
(秀:すごい思い付きです。 ま: 握手はしたものの、でしょうか。)

●梟や無用あまたの食器棚=十五
△久、香、秋=3点
(香:「梟」の季語に、時の長さを感じます。)

●ああしようまだ一月にならぬうち=白馬
◎砂=3点 ●器用さが仇となりたる大掃除=白馬
△淳、裕、秋=3点
(裕:面白い! 秋:これだけのはずだった。ちょっと手伝ったのをきっかけに…。)

●青竹の花器となりたる時雨かな=紅椿
△秀、メ=2点
(秀:まさしく「the俳句」)

●一月の海煌めけり旅の島=ぼくる
△ラ、香=2点
(ラ:これから始まる一年への希望が感じられます。 香:晴れ渡る海、旅の景色は感動的ですね。)

●一月の片付けられない症候群=水音
△十、淳=2点
(十:大掃除の時期を過ぎても片付けられないまま新年に。現代社会の投影。中身は深い。)

●加湿器の機関車のごと吐く蒸気=雪絵
△五、ま=2点
(ま:こういう加湿器ありますね。楽しくなります。)

●石膏像の一月の白さして=雪絵
○水=2点
(水:句またがりが一月のただ事でない白さを際立たせているよう。)

●大器未だ成らず今年も日記果つ=香久夜
○久=2点

●一月の顔や晴衣やクラス会=砂太
△裕=1点
(裕:一月は確かにクラス会が多いですよね。)

●一月の朱塗り竃の伊勢茶かな=しゃが
△ラ=1点
(ラ:やや揃いすぎのような気もしますが、めでたい!)

●一月や箍の緩みしまま仕事=虹魚
△し=1点
(し:わかります!!)

●一月や廊下は校舎貫いて=秀子
△村=1点
(村:大規模学校の景?ミステリアス。)

●一輪の花器こぼれたる淑気かな=十志夫
△葱=1点
(葱:「水仙の香やこぼれたる雪の上 千代女 」を彷彿させますね。)

●大欠伸男やもめの初の月=砂太
△裕=1点
(裕:他人事ではない感じ…)

●古伊万里の鶴首の花器や春を待つ=ラスカル
△ス=1点

●此処彼処に災い残し一月来=香久夜
△メ=1点

●古来よりの器の町に淑気満つ=虹魚
△水=1点

●正月も忘れし母や初電話=裕
△秋=1点

●聖火台めく火焔型土器冬青空=水音
△秀=1点
(秀:比喩がかなり単純なので類想はあるかも。)

●不器用に生きたる蝶の凍て始む=ラスカル
△虹=1点

●振り返る好きな器で大晦日=五六二三斎
△ぼ=1点
(ぼ: 豊かですねえ。)

●まんぷくの大器晩成山眠る=入鈴
△や=1点
(や:日々の生活地道にこなす。)


B部門入選作〈back number〉

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号 63号 64号 65号 66号 67号 68号 69号 70号 71号 72号 73号 74号 75号 76号 77号 78号 79号 80号 81号 82号 83号 84号 85号 86号 87号 88号 89号 90号 91号 92号 93号 94号 95号 96号 97号 98号 99号 100号 101号 102号 103号 104号 105号 106号 107号 108号 109号 110号 111号 112号 113号 114号 115号 116号 117号 118号 119号 120号 121号 122号 123号 124号 125号 126号 127号 128号 129号 130号 131号 132号 133号 134号 135号 136号 137号 138号 139号 140号 141号 142号 143号 144号 145号 146号 147号 148号 149号 150号 151号 152号 153号 154号 155号 156号 157号 158号 159号 160号 161号 162号 163号 164号 165号 166号 167号 168号 169号 170号 171号