*B部門入選作発表*


兼題『季語:稲妻』『漢字:巻』=全75投句(入選56句)

【特選】

一席
●巻貝の奥の暗やみ星月夜=雪絵


◎清、虹、メ○五、ぼ、ま△秀、葱、村、香、砂、紅、裕、玻、ス=24点
(清:星月夜であっても巻き貝の奥は秘密のベールに包まれている。 虹:「奥の暗やみ」に季語がうまく収まっている。 五:巻貝も良い題材。星月夜にしたことで大きい景と小さい巻貝の取り合わせとなった。 ぼ:ミクロの世界と読みました。 ま:満天のもと暗闇はどこまで続くのでしょう。秀:いい感じですよね。でもそれ故に類想感も。 葱:「巻貝」のロマン三句。 村:不思議な世界へ誘われる。 香:その奥に何が広がっているのか?星月夜は、ミステリアス。 紅:季語がいいですね。 裕:暗闇と星月夜の対比が面白い。)


二席
●おにぎりに海苔巻く係文化祭=ラスカル


◎白、修、雪○十、秀、紅△砂=16点
(白:とても素直な句で好きです。 雪:大学での文化祭を思い出しました、おにぎりではなかったけれど青春の一ページですね。  修:ゆったりとしたリズム、何でもない一場面、これこそ文化。 雪:十:ほほえましい景が浮かぶ。 秀:文化祭の出し物で、おにぎりを売るのでしょうか。私も海苔を巻くくらいはできそうです。 紅:すぐに景が立ち上がる平明さがいいですね。)


三席
●しなやかに林檎巻き取る象の鼻=ラスカル


◎十、ま、ス○雪△葱、清、修、紅、子=16点

(十:写生の効いた秀句。 ま:なんどか詠み返すうちに、本当にそうですね!うまく巻き取っていますね。 雪:良く見る光景ですが、句にされたところがすごい! 葱:うまい写生。 清:象の鼻は手と変わらぬぐらい鋭敏な動きをする。 修:象と林檎がよく見えます。 紅:情景がすぐに浮かびます。)


【入選】

●稲妻の幾重に割れて田の広き=白馬
◎村、ぶ○葱、メ、ス△虹、資、秋=15点 (村:雷光にぱあっと広がった田園の景が鮮やかでダイナミック。 ぶ:うまい!こんな風に巧みに自然を切り取りたいものだ。 葱:目前の広い田んぼの風景の中に、あざやかな「稲光」が見えるようです。 虹:「幾重に割れて」が言い得て妙。)

●稲妻や卒業名簿の二本線=十志夫
◎砂、玻○村△秀、香、茶、メ、喋、雪=14点
(村:中八だが二本線がが切ない。 秀:当たり前のように増えてきましたね。ただ「二本線」よりもっといい言葉があるような。 香:ドキッとされたのでしょうね。悲しいですね。 茶:事故か何かの事情で、一緒に卒業できなくなってしまった衝撃は稲光との取り合わせとしてぴったりです。 雪:これから少しずつ増えていく年齢でしょうか。)

●巻き戻し叶はぬ生や墓洗ふ=ぼくる
◎紅○香、白、砂、メ△修、裕=13点
(紅:この年齢になると、心にしみます。巻き戻したい!とつくづく思います。 香:身につまされますね。せめてお墓参りを。 白: 本当に、本当に。 修:そうそう、そんな諦めと後悔といろいろ。洗ふが効いています。 裕:この時期実感です。)

●稲妻や湖底に柱立上る=秀子
◎葱○虹、ぼ、ぶ△五、裕=11点
(葱:はっきりとは意味が分かりませんが、光が湖底に達したとも、湖底に聳える木々の形が浮かび上がったとも、そんな強烈なイメージが眼前に浮かびました。 ぼ:不思議な感覚に惹かれる。 ぶ:琵琶湖の中に今も木立が林立するそう。稲妻が効いている。 虹:「柱」が勇壮。 五:物凄い火柱! 裕:すごい景色です。)

●くだを巻く奴も頼りや月見豆=十五
◎茶○し△ラ、修、ま、資=9点
(茶:くだを巻くことの多い自分にはそれこそ「頼り」の御句です。脇役の月見豆への視点が寛容さを滲ませます。 し:巻くを上手く使って面白いと思います! ラ:やや言い過ぎかもしれませんが、共感出来ます。 修:話し言葉で鷹揚なかんじがいいです。 ま:そういう人っていますね。温かい眼差しで佳いお月見になりました。 資:枝豆の気さくさが良く表れている。)

●爽籟や巻物運ぶ修行僧=ラスカル
◎香○ぶ△五、白、紅、ぼ=9点
(香:「爽籟」秋風のことですね。書物を風にさらす、爽やかな景がみえます。 ぶ:仏教伝来の時の流れを軽く描いて美しい。 五:巻物の経典? 白: 永平寺の長い廊下を思い出しました。 紅:「爽籟」を勉強させて頂きました。荘厳さを感じさせるお句ですね。 ぼ:いかにも清々しい。)

●稲妻や添ひ寝の嬰の夢まどか=ぼくる
○清、喋、資△秋、し=8点
(清:稲妻にも気が付かず眠っている赤子、平和な風景。 し:夢まどかと稲妻の対比がいいですね。)

●巻貝の螺旋をなぞる浪の秋=清一
◎秋○淳、し△葱=8点
(し:夏が過ぎた静かな海、ほっと美しい光景ですね。 葱:「巻貝」のロマン三句。)

●巻き髪を良夜の風に解きけり=秀子
○砂、紅△十、清、雪、資=8点
(紅:中七がいいですね〜! 十:一日の終りを告げる清々しい景。 清:風呂上がりであろうか。心地の良い風に吹かれて髪を解く。)

●稲妻や葉巻咥えるチェゲバラ=しゃが
◎秀、ぼ△白=7点
(ぼ:輝ける真の革命児ゲバラ、稲妻ぴったり。 秀:物できっちり押さえた句はほんと強いですね。おまけにこの句、2つの題を読み込まれた。すごいですね。 白:稲妻にあの革命児を思った。)

●稲妻やひとり夜業のビルの窓=ぼくる
○十、淳△ラ、ま、雪=7点
(十:窓から差し込む光によって、ふと一人いる「自分」を意識する瞬間。 ラ:季重なりですが、臨場感があります。 ま:鮮やかに景が浮かんできます。ひとり、何を想われたのかなといろいろ想像しています。)

●秋霖や源氏絵巻の中へ入る=十志夫
◎喋○五△村、ぼ=7点
(村:下五の措辞が源氏に打ち込んでいる作者を見せる。 五:源氏絵巻と秋霖が合う。 ぼ:優雅なるかな。)

●稲びかり茶わんにひとつ小さき欠け=雪絵
◎資○修△十=6点
(資:稲びかりと小さいものを対比したところがうまい 修:「いなびかり車窓に浮かぶ富士の影」の句同様、不穏不安を巧みに表現。 十:碗の欠けを修復する金地の光る一瞬。)

●オルゴールそつとねじ巻く夜の秋=資料官
○子、雪△メ、し=6点
(し:静かな夜ですね。)

●月あかりゆつくり竜頭巻いてをり=まさこ
◎し△村、ラ=5点
(し:幻想的な光景で惹かれました。 村:何かに思いを馳せている作者の心理描写。 ラ:「竜頭」にノスタルジーを感じます。)

●二巻目の治虫を捲る夜長かな=虹魚
◎裕△茶、し=5点
(裕:あるある 夜長です。 茶:「夜長」なら二巻ではなく、五巻目ぐらいでも。手塚作品はじっくり読むということでしょうか。再読したくなりました。 し:長い夜になりそうですね。)

●巻雲の空を深むる筆さばき=葱男
◎淳△茶、秋=5点
(淳:雲を筆さばきで描くっておもしろいですね。 茶:擬人は難しいところですが、「空深む」の措辞にロマンを感じました。)

●真つ黒な雲うつくしき稲光=修一
◎子○白=5点
(白: とても綺麗な句ですね。)

●稲妻や遅々と進まぬ針仕事=秋波
◎五△香=4点
(五:取り合わせの妙。稲妻に気を取られる。 香:心がザワザワして、いろいろ心配になりますね。)

●警官の埠頭に立てる稲光=紅椿
◎ラ△十=4点
(ラ:サスペンスドラマの、一場面のような句。 十:深夜の巡回でしょう。暗闇に浮かぶ警官のシルエットが鮮明。)

●すててこの柱に凭れ稲光=修一
○茶△ぼ、ぶ=4点
(茶:腰が引けたか、すくんだか。江戸川柳っぽいユニークな景にいただきました。 ぼ:とぼけた味あり。季語とのズレが面白い。ぶ:何気ない暮らしの中に存在をする人。)

●天空の城をうしろに稲光=清一
○ラ、裕=4点
(ラ:「ラピュタ」ですね! 裕:幻想的な眺めのようです。)

●とぐろ巻く少年背負ふ月明り=清一
○秀△十、ぶ=4点
(秀:びっくりしました。私も同じような句を、別の句会に出したばかりです。 十:深夜のコンビニに屯する「地ベタリアン」たち。「月明りを背負う」は、やや作りすぎかも。 ぶ:私自身の過去もまたこのようでありました。)

●稲妻の遠し触れたる指と指=砂太
○ス△玻=3点

●稲妻やついそこまでの宿の下駄=やんま
○秋△メ=3点

●渦巻の真ん中に浮く穂草かな=白馬
△ぶ、喋、ス=3点
(ぶ:台風の後の用水路だろうか?詩として成立していると思う。)

●走馬燈最終巻はゆうくりと=メゴチ
○香△砂=3点
(香:毎日が早すぎます。)

●膝折りて探す図書館稲びかり=十五
○ま△秀=3点
(ま:具体的で何気ない瞬間なのに、どこか日常とは違った空気感が漂い、何か起こりそうなわくわく感があります。 秀:句意はわかるんですが、膝を折って本を探してることが、はっきり伝わらないような・・・。)

●枕辺へ白き巻貝秋の声=まさこ
○虹△葱=3点
(虹:優しげなひと時がちょっと切なくて。 葱:「巻貝」のロマン三句。)

●秋白し巻きタバコ嗅ぐ父の癖=葱男
△ま、淳=2点
(ま:たばこの香りととともにくっきりとお父様が浮かんできます。季語もぴったりですね。)

●稲妻来涙に寝落つ幼子や=香久夜
○裕=2点
(裕:雷が怖かったんでしょうね。)

●稲妻に誘われ猫の髭ピンと=白馬
○清=2点
(清:稲妻の静電気が猫の髭を立たせたようだ。)

●稲妻の閃き空を泣かせたり=虹魚
△五、喋=2点
(五:稲妻に泣きそうな雰囲気。)

●稲妻は天上からのアラート音=メゴチ ○ラ=2点
(ラ:「天上からのアラート音」という表現がユニークです。)

●稲妻やいまの中へと引きこもる=ぶせふ
○玻=2点

●稲妻や鏡の裏のむき出しに=秀子
○玻=2点

●稲妻や木々妖怪の影落とす=やんま
○秋=2点

●稲妻や棚田にかかる波しぶき=資料官
△虹、淳=2点
(虹:「波しぶき」に躍動感。)

●稲びかり鏡の中の人は誰=まさこ
△子、玻=2点

●いなびかり車窓に浮かぶ富士の影=資料官
○修=2点
(修:「写生」風。富士の影が効いていて象徴性を獲得している。不穏な日本国。)

●稲光毎夜降る雨夏去りぬ=淳一
○子=2点

●百日白(さるすべり)原爆ドームの眩しけり=香久夜
○葱=2点
(葱:「白のサルスベリ」に着目したところに取り合わせの妙を感じます。)

●死と生を残し稲妻去りにけり=砂太
△十、白=2点
(十:光が去った後に「死」と「生」が残ったという哲学的な一句。 白: 人の生死と稲妻は無関係。)

●真夜なれば稲妻の音夥し=五六二三斎
○喋=2点

●魂迎普段着のまま手巻寿司=秋波
○資=2点
(資:飾り気のない盆の風景。)

●巻き寿司やテープを切りし運動会=葱男
○茶=2点
(茶:一等賞おめでとう!お弁当もより一層おいしくいただけますね。)

●妖怪の絵巻にゴロロ稲光=茶輪子
○村=2点
(村:さてどちらが強いのやらのユーモア。)

●アボカドの手巻き並びぬ良夜かな=十志夫 △ス=1点

●一巻の終りかこの世八月尽=ぶせふ
△虹=1点
(虹:恐怖のような諦めのような。)

●稲妻に鳴く声止まる秋の蝉=淳一
△子=1点

●稲妻やまたぶり返す片頭痛=雪絵
△清=1点
(清:人には目には見えないが感覚が鋭敏な所がある。詠者は頭痛となり顕在化する。)

●巻き舌で決める十八番や生身魂=紅椿
△し=1点
(し:バッチリ決まっていると思います!)

●巻き爪に難儀のはさみ秋暑し=紅椿
△淳=1点


B部門入選作〈back number〉

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