*B部門入選作発表*


兼題『季語:水仙』『漢字:初』=全83投句(入選57句)

【特選】

一席
●哲学の顔して来たり初鴉=やんま


◎秀、ラ、砂、裕○雪、五、し、メ△十、ぼ=22点
(秀:「哲学」と言い切られて、成功。 ラ:工藤直子の詩の「てつがくのライオン」を想起しました。 裕:どんな顔の鴉かみたいです。 雪:「哲学」が効いてます。 五:正月の鴉は哲学者? し:哲学の顔ってどんな顔? 十:「哲学の顔」で決まり。 ぼ:人間より賢いかも、たしかに。)

二席
●水仙のきりきり匂ふ空家かな=雪絵


◎葱、村、淳○香、紅、裕△資、砂=17点
(葱:なぜ水仙は「きりきり」と匂うのか、そこには深い悲しみがあるように思える。胸が痛むような歴史が、今は誰もいなくなったその空家にはうかがい知ることができる。 村:中七が新鮮な描写でいかにも空家を際立たせる。 淳:「きりきり」という表現が良いですね。 香:水仙の、ときにきついほどの匂い。きりきり、、という表現がピッタリです。 紅:水仙の香りは意外と強烈。「きりきり」がいいですね。 裕:吉里吉里匂ふがいいですね。 資:うちの実家もそうなんだろうなと思いつつ。)


三席
●珈琲の冷めやすき日や水仙花=雪絵


◎し、茶○ま、淳△清、や、水=13点

(し:こんな日ありますね。水仙が合っています。 茶: いくらカップを温めておいても部屋が暖かくても冷めてしまうんですよね、今の時季。自分の実感と重なりました。 ま:寒い日の様子が巧く表現されていますし、水仙と響き合っています。 清:珈琲の冷めやすい寒い日にも水仙は凜として咲いている。 や:遠き目をしてものを想う日。)


三席
●灯台へのぼりくる香や野水仙=まさこ


◎清、五、水○香△茶、修=13点

(清:灯台の周りに咲く野水仙、実景が良く浮かぶ秀句である。 五:海と水仙はぴったし。水仙の香りに包まれた灯台。素敵である。 水:かつて灯台守の人たちもその香の中で仕事をしていたんでしょうね。 香:まだ寒い海辺で力強く咲く野生の水仙の強さがつたわります。 茶:「のぼりくる」と「野」の韻に、野水仙だからこその強い香りが上手く表現されていると思いました。 修:岬の灯台に立っているよう。)


【入選】

●膝折りて瓦礫にそつと水仙花=十志夫
  ◎ぶ○淳、ぼ△秀、紅、久=10点
(ぶ:(被災地に赴かれた両陛下の姿を思い浮かべた。 ぼ:震災への鎮魂の句、風化させまじ。 秀:阪神・淡路大震災の時の美智子様。多分、皆さん、鮮明に覚えていらっしゃるのでは。 「そっと」がいらないような。 紅:皇后さまのことですね。TVで拝見しました。)

●海光る水仙の花揺るるたび=秀子
◎ぼ○砂、修△五=8点
(ぼ: 景の大小、音、色、香り、と多くの要素含みながら句はシンプル。 五:海と水仙。風が海を光らせ、水仙を揺らす。 修:海も水仙も生きているよう。)

●書初や墨摺りあがるまでの無為=葱男
◎久○や、資△水=8点
(久:墨摺りがあるのを忘れていました。 や:無念の顔に仄かな香りが。 水:無為なのか、無心なのか、集中の時ですね。)

●水仙に感染したる岬かな=葱男
○虹、紅、喋、メ=8点
(虹:増殖は感染だというユーモア。 紅:「感染したる」まで言い切った所がすごいです。)

●水仙のひそひそ話風に乗り=久郎兎
◎雪、喋○し=8点
(雪:風に揺れるさまがまさに、ひそひそ話をしている感じですね。 し:ひそひそ話、素晴らしい表現だと思いました。)

●千年の樟のにほひや初詣=雪絵
○村、裕△ラ、砂、香、ま=8点
(村:やや予定調和的だが大きな神社が見える。 裕:千年の樟が初詣の厳かさを感じさせます。 ラ:「千年」という一語が利いています。 ま: 由緒ある樟なのでしょう、よく良い香りがするといいますね。厳かな気分になりますね。)

●初空へ龍のかたちの波しぶき=ラスカル
◎虹○水△十、雪、淳=8点
(虹:今年も元気良く。好きな句。 十:いかにも目出度い新年の大景。 雪:「龍」で何か良いことがありそうな予感!)

●初空や国境線に兵わづか=茶輪子
◎や、修△五、水=8点
(や:せめて一日の平和愛しむ。 修:そうかも知れないと思います。初空には人々の生活の大切さを確認させてくれる力があるように思いました。 五:国境線は38°線か?正月と云えど緊張が走る。)

●日の丸を立てて来るバス初雀=ラスカル
◯葱、茶、ぼ△砂、紅=8点
(葱:昭和の昔はそんなだったかしらねえー? 土の道ですかねえ〜、のどかですねえ〜。 ぼ:平和日本への思い、初雀が象徴。 紅:最近は見かけないですが、昔はこうでしたね。 茶:ささやかだけどお目出たい。「初雀」の季語がぴたりと決まっていると思います。)

●足跡も飛び跳ねており水仙花=しゃが
◎香○や△久、ぶ=7点
(香:雨上がり、長靴のぐちゃぐちゃの足跡の表現が見事! や:足跡に知る心の機微など。 ぶ:(吟行句だろうか?喜びが伝わる。)

●天地を巡る水あり水仙花=やんま
◎資△葱、十、秀、喋=7点
(葱:水の永遠の循環の中で、あらゆる生命が息吹いている。 十:蒸気が雲となり、そして雨になって地下水系に。句意としては、やや既視感あり。 秀:句意はとても好きなんですが、2つの「水」のどちらかが消せたらよかったんですけどね。)

●水仙のくの字のままに咲みにけり=紅椿
○秀、ラ△し、メ=6点
(秀:素直な写生。 ラ:「くの字のまま」に、観察眼の鋭さが伺えます。 し:雪の重みでくの字になったのか、それでも咲く水仙はたくましい。)

●積荷から水仙の香の広がりぬ=虹魚
○秀、村△ま、ぶ=6点
(秀: この景は目に見えるようです。 村:花屋の荷台か、他の花も想像される。 ま:花屋のトラックでしょうか、良い香りがしてきます。 ぶ:匂いだけで時空を描いている。)

●初詣絵馬一杯の願い事=裕
○清△虹、香、し、ぶ=6点
(清:家族の願い事を絵馬一杯に書く父親の心境。 虹:願い事はいくらでも。「枝一杯」でも。 し:願い事がいっぱいあるのは良いことです。 ぶ:人間っていいな^^)

●金堂の鴟尾に留まる初鴉=清一
○子△資、し、裕=5点
(資:なんとなくめでたい感じがする。 し:イメージに惹かれました。 裕:金堂の鴟尾と鴉の組合せが面白いです。)

●水仙や海の面の照りかげり=修一
◎紅△や、秀=5点
(紅:水仙と海の取り合わせはいくつかありましたが、下五が勝っていると思いました。 や:いつか来た道想い出の道。 秀:水仙って、海とよく似あうんですよね。)

●水仙や「乙女の祈り」洩れ来る夜=ぼくる
◎子○五=5点
(五:夜の水仙が「乙女の祈り」に耳を傾けている。)

●いつの間に両手ふさがる初大師=十志夫
○子△や、ラ=4点
(や:衝動買いまた楽し。 ラ:いっぱい買い込んで、両手がふさがってしまったのですね。めでたい!)

●水仙のような男になれぬのか=淳一
○ぶ△ま、喋=4点
(ぶ:なれぬのか!!w 参りました。 ま:どういう「男」なのでしょう?気になります。)

●水仙や平身低頭して接写=資料官
◯葱△雪、淳=4点
(葱:「平身低頭」が面白い。カメラが大好きな作者の、被写体に対する愛情がよく表現されていている。 雪:想像すると可笑しくて<笑> 本人はいたって真剣、ですよね。)

●地祭や更地に守る水仙花=十五
○十、資=4点
(十:地祭(地鎮祭)で、ふと一輪の水仙花に気づく。「更地を守る」でなく「更地に守る」だから抜かずにおいた花ということだろう。 資:更地に咲く水仙,そのまま新しい家に引き継がれていく。)

●白鍵を上りつめたる水仙花=葱男
○雪△清、裕=4点
(雪:水仙に白鍵をもってくる感性がいいですね。 清:次第に高音部の白鍵を叩いてゆく、まるで水仙の丘を登るように。 裕:真っ白という意味でしょうか?)

●初句会他人に解せぬ恋一句=やんま
○久△葱、し=4点
(葱:分かる、分かる。ときどき詠みたくなりますねえー、恋句! 大抵なんだかよく分かんない。 し:面白い。そして良く分かります。気持ちが入り過ぎるのでしょうか。)

●初写真抱かれて眠る子を囲み=資料官
○ま△十、紅=4点
(ま: お幸せな家族の風景ですね。思わずにっこり。 十:赤子は何処の家でも一家一族の宝物。 紅:幸せが伝わってきます。)

●紅をさす如く黄を置く水仙花=修一
◎メ△資=4点
(資:日本スイセンの花冠の黄色を紅にたとえている。面白い着眼点。)

●青白き十指初演も冬の朝=弧七
◎ま=3点
(ま: 初演の張りつめた様子が巧く十指にこめられていて好きです。ただ、初演も、のもは気になります。)

●一輪の水仙挿して妻は出る=白馬
○久△五=3点
(五:なかなか粋な奥様である。旦那を置いて出かける奥様のちょっとした気配り。)

●水仙や桶に放たれ咲き始む=香久夜
○ラ△久=3点
(ラ:切り花となってから開花したというのは、何とも切ないです。)

●成田屋と目と目で話す初芝居=裕
○砂△葱=3点
(葱:詠者は今一番売れている歌舞伎役者の熱烈なファンなのでしょうか? 藪睨みでも目が合ったと思うのでしょうね^_^)

●野水仙その揺れたるは独り言=水音
○虹△メ=3点
(虹:独り言は聞こえぬように。水仙の自己愛が浮かぶ。)

●ばあちゃんが飴玉くれる初市場=水音
△ラ、雪、修=3点
(ラ:ほのぼのとした気持ちになりました。 雪:よくありそうな光景ですね、市場とは限らずに。 修:なつかしい、うれしい世間。)

●初釜に足袋の白さや弾む声=久郎兎
○清△香=3点
(清:初茶会のセレモニーが終わった後今年の抱負などを語らう至福の時。)

●初旅や鴨居に空の衣紋掛け=虹魚
◎十=3点
(十:洋服入れもないのだから恐らく「安宿」だろうが、初旅の楽しさが、そこはかとなく伝わってくる。)

●待人来ず失物出ずの初御籤=水音
○ぶ△し=3点
(ぶ:こんな風にさりげなく自分を描けるっていいな。 し:あちゃーですが、変に期待させるよりは良いです。)

●読初や本屋のソファ心地良き=まさこ
○修△茶=3点
(修:今の本屋さんの感じがよくわかります。宣伝にもなりそう。 茶:最近の大型書店はソファを置いたりしてサービス満点。読みながらついうとうとと。そんなほのぼのとした景が浮かびました。)

●露店はや片付いてゐる初詣=紅椿
○十△子=3点
(十:喧噪が一段落ついた寺社。松過ぎ10日頃の雰囲気が出ている。)

●片足で玉(ぎょく)に立つ龍初明り=しゃが
○水=2点
(水:厳かな雰囲気です。)

●川べりに夕べのチャイム黄水仙=まさこ
△裕=2点
(裕:昔を思い出します。 修:さあ家に帰って晩ごはん。平和な世界です。)

●饒舌な傾げた首の水仙花=清一
○喋=2点

●水仙の花茎に柔きひかりかな=十五
○茶=2点
(茶:「柔きひかり」句またがりの配置でいただきました。)

●ねんごろに練墨溶いて初仕事=ラスカル
△ま、ぼ=2点
(ま: 初仕事にのぞむ厳かな気持ちが伝わってきます。 ぼ:新年らしい気合が入っている。)

●初恋やあはあは消ゆる春の雪=秀子
△十、虹=2点
(十:「淡い恋」を淡雪といわずに「あはあは」と擬態語にした面白さ。 虹:初恋は滅多に実らない。ちょっと分かりやす過ぎか。)

●包丁を研ぐ山姥の初噺=虹魚
△清、村=2点
(清:正月から物騒な山姥の噺が始まる。 村:話者の姿が不気味に迫ってくる。)

●インド人の掛け声響く初落語=しゃが
△ぼ=1点
(ぼ:面白い、久しぶりに寄席に行きたくなった。)

●幼児や初雪踏みて不思議顔=メゴチ
△淳=1点

●水仙の影を慕いて野母崎に=喋九厘
△村=1点
(村:中七は情緒的だが地名が懐かしく。)

●水仙の香を楽しみて座しており=淳一
△子=1点

●大吉のくじを尻目に初みくじ=清一
△茶=1点
(茶:「あるある」の句。さて結果はどうだったでしょう。と、気にさせるとことがいいですね。)

●束ねたる髪の重しよ水仙花=秀子
△村=1点
(村:風呂上がりの妖艶さか。)

●初風に乗り高々とゆく鴉=修一
△子=1点

●初詣投げる賽銭願重し=香久夜
△し=1点
(し:私も一枚の賽銭にてんこ盛りの願い事です。)

●初雪をはらふワイパーはしやぎゐる=十志夫
△虹=1点
(虹:「燥ぐ」が面白い。「払う」と言わなくてもいいかも。)

●初夢や筑紫富士より海へ翔ぶ=五六二三斎
△喋=1点

B部門入選作〈back number〉

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