*B部門入選作発表*


兼題『季語:年の夜』『漢字:足』=全73投句(入選53句)

【特選】

一席
●足跡に足乗せてゆく深雪晴=十志夫


◎虹、資、砂、水○久、雪、ま、し、修△裕、紅=24点
(虹:巧いこと言うなあ。 資:足のリフレインがうまいし,深雪晴が良く効いている。 水:晴れた日は雪面が反射して足跡がとても見にくいのだけれど、目を凝らして足跡を追って行きますね。 久:体験がないと発想至らずですね。 雪:効率の良い歩き方!?雪国ならではの光景ですね。 ま:そうして歩くのですよね。空の青さと雪の白さと冷たさのなか一足一足歩いていく背中がみえます。 し:まさにこの通り! 修:真つ白な雪の実感。 紅:情景が浮かびます。色の対比も鮮やかです。)


二席
●足ることを知りて晩節葱甘し=ぼくる


◎子、紅、喋○秀、ラ、砂、メ、茶、ス△葱=22点
(紅:まだ、この境地には達していませんが・・。「葱甘し」が秀逸です! 秀:「足ることを知る」とは、まさしく「出来合い」の言葉ですが、「葱甘し」でオリジナルの句となり、ふっくら豊かな句になりました。 ラ:葱男さんに対する挨拶句のような感じがしました。 茶:葱の甘さをじんわりと感じる老境も悪くないですね。 葱:「吾唯足るを知る」ですね、「晩節」の語がきっぱりと効いています。)


三席
●セーターに寝不足の顔突っ込みぬ=裕


◎秀、雪、ま○虹、し△葱、十=15点
(秀:いいなあ。無駄な言葉がなく、イキイキしています。 雪:顔は出せたでしょうか。想像するとおもしろい。 ま: なにげない姿が上手に表現されていて、ユーモアがあり、力んでいなくて好きです。 虹:「突っ込む」に動き。巧い。 し:セーターから顔を出すのではなく突っ込むのが面白い。でも情景よく分かります。 葱:ユーモアと上等なペーソスのある句。マストロヤンニか誰かに演じさせたい感じ。 十:俳諧味あり。)


【入選】

●板の間に足袋を滑らす弓捌き=虹魚
◎十、裕△葱、砂、し、修、香=11点
(十:所作<動き>が目に浮かぶ。景鮮明な秀句。 裕:ピンと張り詰めた感じ。 葱:俳句熟練者のような句、スキがないのがちょっと物足りない。 し:ぴりっとした空気が伝わります。 修:床の照りが見えます。)

●足元に冬の蠢く仁王像=水音
◎ぶ○ぼ△葱、十、や、メ、雪=10点
(ぶ:実景と詩的世界の幸福な融合を堪能しました。 ぼ:いかにも厳しい冬が来そう。 葱:頭のほうは寒風は吹き抜けていくけれども、足元には「寒気」がたまりやすいということなのか? 感性の句。 十:寒風やら銀杏落葉など雑多な「冬」が蠢いているのでしょう。 や:吹きっ晒しの落葉空舞う。 雪:ほんとに寒そう!)

●聖堂に尺八響く年の夜=しゃが
◎村○子、ぼ、ス△裕=10点
(村:不思議なシチュエーションだが意外性が印象的。 裕:和洋の混在する日本の大晦日ですね。 ぼ:基督教と仏教のハーモニー。平和への祈りあり。)

●年の夜の見果てぬ夢の膝小僧=やんま
◎清、ぼ○ぶ、久=10点
(清:老年の中に青春が甦り夢を追う。共感の一句。 ぼ:叶わないから夢と言う。膝小僧の付け味がいい。ぶ:ふしぎな感覚の世界に誘われる。 久:足が不自由だと夢も叶わない。膝小僧ありがとう。)

●小走りに兄の背を追ふ除夜詣=雪絵
○十、久、淳△子、虹、メ=9点
(十:現実の景ともとれるが、デジャブと取るとより面白い。 虹:弟はどこまでもついてくる。 茶:その弟の背を見守る作者の温かな視点にぽかぽかしました。)

●雪の華一本足のフラミンゴ=まさこ
◎香○清、裕△十、ぶ=9点
(香:冷たそうだけど、きれいだろうね。清:フラミンゴとしんしんと降る雪の対比が絵画的である。 裕:フラミンゴと雪の華の取り合せが面白い。 十:フラミンゴは水の冷たさに耐えるために一本足になるのだとか。「雪の華」が効いている。 ぶ:美しい!色彩が鮮烈。)

●一片の足りないパズル冬の星=まさこ
○メ△秀、清、久、雪、香、ス=8点
(秀:好きなんですよ、この句。ただね、私も作ったし、ジグゾーパズルのワンピースがないという句はわりとよく見ました。 清:何となく一つ足りない淋しげな冬の星。)

●思ひ出の星屑となる年の夜=ぶせふ
○資、喋、修△秀、淳=8点
(修:もちろん嫌な思い出もですね。 秀:甘いと言われるんでしょうね。けど、この甘さ、好きです。)

●思ひ出の星屑となる年の夜=ぶせふ
○資、喋、修△秀、淳=8点
(修:もちろん嫌な思い出もですね。 秀:甘いと言われるんでしょうね。けど、この甘さ、好きです。)

●一合で足れる寝酒や除夜の鐘=ぼくる
◎や○砂△ラ、喋=7点
(や:我老いたり。 ラ:若い頃はもっと飲めたのに、という感慨が伝わってきます。)

●かき揚げのふやけてゆける除夜の鐘=紅椿
◎茶○ラ、ま=7点
(ラ:年越し蕎麦ですね。季語を替えたところが巧みです。 ま:そうそう!おもわず口をついて出ました。)

●風花や壱の字薄れ下足札=ラスカル
○や△葱、十、茶、ま、香=7点
(や:古きを訪ね明日を巡らす。 葱:昔からある老舗のお風呂屋さんの下駄箱か? 郷愁を誘われます。 十:古い銭湯でしょうね。 茶:レトロ感と言ってしまうと何ですが、風情を感じました。 ま:下足札、今は珍しくなっているでしょうね。風花と字薄れが響き合っています。 香:現在の侘しさと年月を経たものの侘しさが重なり合って素敵な厚みを感じます。)

●白足袋の尼僧の背(そびら)揺るぎなき=清一
○や、村△葱、砂、ま=7点
(や:女を捨てる覚悟はきっぱり。 村:下五がもっと具体的描写であればなおよかったのでは。 葱:上手すぎるのが欠点といえば欠点。 ま:凛とした尼さんの歩く姿、生き方がみえます。)

●年の夜や父の遺影の薄埃=資料官
◎淳○香△メ、茶=7点
(淳:しみじみとした情景が浮かびます。 香:もう何年もたってしまった、という感慨。 茶:大掃除で手が回らなかったのでしょうか。またはその後また埃が。暮の切なさが伝わってきました。)

●年の夜の消失点や大鳥居=十志夫
◎葱、メ△喋=7点
(葱:「消失点」で決まりました!)

●足袋はいて昭和の人となりにけり=雪絵
○秀、淳△砂、水=6点
(秀:平成ももう30年ですものね。 水:白足袋ですね。若い人たちの平成の足袋はとてもカラフルですもんね。)

●年の夜や大欠伸する詐欺師たち=水音
○葱、裕△久、村=6点
(葱:面白い発想ですね、どこからそんな突拍子もないイメージが浮かんでくるのか、頭の中を見てみたい! 裕:「大欠伸する詐欺師」が面白い。 村:詐欺師が何か想像かきたてさせる。)

●年の夜女々しい曲を聴いている=裕
◎し○水△や=6点
(し:現実味?があって面白いです。 水:女々しい曲って何だろう??? や:失恋未練は人の世の常。)

●足らぬこと数多ありけり鶴渡る=白馬
○清△ぶ、資=4点
(清:いつも鶴の渡る頃に足らぬものを感じる詠者。 ぶ:共感できるつぶやきにこの季語を持ってこれるのはスゴイ!)

●年の夜や朝まで回る山手線=資料官
○水△十、紅=4点
(水:時間の流れを具現化したのが終夜走る山手線なのかな。 十:当り前のことを言っていて巧みな句。 紅:「山手線」の斡旋がお上手です。)

●年の夜や終末時計なほ進む=清一
○香△資、紅=4点
(資:年の夜とめでたさをぶっ飛ばす物騒なものを対比させところが面白い。 紅:穏やかな一年であってほしいです。)

●早足の往来したる聖樹の灯=紅椿
○虹、雪=4点
(虹:ドラマのシーンをつなぐブリッジのよう。)

●日脚伸ぶ靴は一足づつ揃へ=秀子
○十△ま、ス=4点
(十:さりげない景をさらりと表現していて上手。 ま: 一足づつは普通だと思いますが、それをことさら言うところに想いが感じられます。)

●二人分足るか足らぬか年用意=香久夜
◎ラ△茶=4点
(ラ:去年までは三人だったのでしょう。作者の心情を思い、とても切なくなりました。 茶:買いすぎて食べ切れなくても…悩ましい所ですね。共感しました。)

●もう一品年の夜迫る厨ごと=香久夜
○淳△虹、ぼ=4点
(虹:「大晦日は私だけてんやわんや」と怒る母。 ぼ:主婦の気合がこもった句。)

●足遠くなりし古里年の夜=十五
○資△や=3点
(資:そうなんです実家に誰もいなくなると。 や:想い出だけが膨らんでゆく。)

●混浴の足湯にありて冬温し=やんま
△葱、喋、し=3点
(葱:「混浴」でビクッとしましたが、足湯でしたか、それでも十分に色っぽいですね。 ほっこりとします。 し:足だけの混浴も恋人となら幸せでしょう。)

●幸せを少し想いて年の夜=白馬
○紅△秀=3点
(紅:心に響きました。 秀:欲張らず「少し」というのが、いい。)

●ハイヒール一足分の榾火かな=葱男
◎ス=3点

●水鳥の足跡すこしづつ薄る=ラスカル
◎修=3点
(修:悩みも忘れ湖畔にいるような心持ちです。)

●竜の玉一言足りぬ子の言葉=まさこ
△十、資、水=3点
(十:何処の子もそうです<笑> 水:子どものこぼす言葉はまるで竜の玉の深い輝きに似ているのかもしれない。それが一言足りないとは、、)

●飽きましたホテル暮らしの年の夜=淳一
○子=2点

●いつせいに届く四文字除夜の鐘=十志夫
△ラ、雪=2点
(ラ:その答えは・・・「あけおめ」ですね!<笑>)

●数え日といへど付け足すことはない=ぶせふ
○喋=2点

●寒鰤の照り焼き母の大晦日=裕
△清、ぼ=2点
(清:決まって大晦日に寒鰤を食べさせる母、こんなことあるある。 ぼ:おお、うまそう!)

●ジョバンニの足跡たどり冬銀河=ラスカル
△ぶ、ス=2点
(ぶ:賢治の世界そのまま。)

●灯油売るつれなき声や年の夜=久郎兎
○村=2点
(村:つれないという措辞がいかにも機械的音声にあう。)

●年の夜や旅人として星数へ=秀子
○紅=2点
(紅:海外<観光地でない場所>を一人旅されているのでしょう。 こういう経験がないので、憧れます。)

●年の夜やパンダは夢に森を行く=ぼくる
△子、清=2点
(清:何となく愛くるしいパンダの様である。)

●年の夜ラーメン売りの声響く=淳一
△子、村=2点
(村:新年への準備を終え家でくつろぐ人はさて出てくるか?)

●初霰仏足石に転げ込む=清一
○ぶ=2点
(ぶ:ユーモラスでかつ緊張感の溢れる一句だと思ふ。)

●足代を上手に使ひ翁の忌=十五
△修=1点
(修:うまいなあ。)

●絵日記を拾い集めて年の夜=白馬
△村=1点
(村:中七がいかにも年の夜らしい。)

●勘定に入れぬ年末〆ラーメン=茶輪子
△久=1点

●禁酒から解き放たれて年の夜=虹魚
△修=1点
(修:枡酒かなんか溢れていて、いいですね!)

●年の夜の塵つかのまの星となる=葱男
△し=1点
(し:ー年の夜は塵も特別ですね。)

●年の夜の煮え切らぬ仲箸洗ふ=茶輪子
△ぼ=1点
(ぼ:ドラマあり、想像刺激される。)

●年の夜や灯に照る鱗龍の門=しゃが
△ぶ=1点
(ぶ:(横浜の中華街とかが眼前に浮かんだ。)

●平成のそろり消え行く年の夜=資料官
△ラ=1点
(ラ:「そろり」という一語が利いています。)

●まつさらな足もて嫁ぐ雪の朝=葱男
△淳=1点

●列成すやいつもの店の年の夜=メゴチ
△虹=1点
(虹:大晦日の賑わいが浮かんでくる。)


B部門入選作〈back number〉

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